で開催した。
現状と将来の課題
馬渕教授が就任し、竹田教授時代の臨床・研究分野を発展的に継承するとともに、 臨床 例に基づいて、疫学から分子遺伝学まで追求する 方針が教室全体に浸透しつつある。家 族性高コレステロール血症、家族性CETP欠損症、家族性LCAT欠損症、家族性無βリポ 蛋白血症、肥大型心筋症、Wilson病、Gilbert症候群、Cowden病、Fabry病、Liddle病、
Bartter症候群、腎性尿崩症、多発性嚢胞腎、若年発症II型糖尿病、ミトコンドリア遺伝子 異常性糖尿病などに関して新しい遺伝子変異を見いだした。今後も内科疾患の遺伝子診断 と遺伝子治療を推進する予定である。内科学の専門化が進み、より高度な医療が求められ ているが、その進歩を担い得る人材の確保と、内科学の臨床と研究の均衡ある教室運営、
学生教育と卒後臨床教育の充実が、今後も追求すべき課題となっている。
り着任し、血液凝固学の研究が新たに加わった。松田教授は、1984年から1997年5月ま で附属病院輸血部長を併任し、また、同年から高密度無菌治療部の部長も併任した。さら に、1996年1月から同年6月まで医学部長を務めた。同教授は、血液凝固学を中心とす る研究業績により、1989(平成元)年には北國文化賞を受賞した。
診療と研究
服部教授時代(1969〜1984年) 服部教授は、既設の内科学講座の専門外領域であり、
同教授の専門分野でもあった血液学を中心に教室の運営に着手した。それまでは、北陸に は血液疾患を専門とする機関がなく、学内外からの期待は大きかった。研究は免疫血液学 が主で、当初抗体産生細胞の同定から研究が始まった。さらに、白血病、再生不良性貧血 などの致死的であった疾患に対する骨髄移植療法の基礎的研究を、全国に先駆けて開始し た。本研究は、典型的な集学的治療であるので、研究は造血幹細胞、移植免疫、腫瘍に対 する化学・放射線療法、無菌対策など広い範囲に及んだ。それぞれの研究グループは、骨 髄移植という大きなテーマに向かって活発に研究を進めた。しかし、我が国ではまだ全く 研究にも着手していなかった分野であり、試行錯誤の繰り返しではあった。あたかもこの ような状態の時期の1977年に、服部教授を会長として日本血液学会が開催され、この招 待講演として世界の骨髄移植の中心であるフレッドハッチンソンがん研究センターのトー マス(E.D. Thomas)教授(1990年にノーベル医学賞を受賞)を招くとともに、自らも 渡米し骨髄移植の現状を視察し、移植の実施に備えた。
1975(昭和50)年に、国立大学でははじめて病棟内に無菌室が設置され、移植実施の 体制が整い、1977年10月に、再生不良性貧血患者に対して我が国で最初の本格的な同種 骨髄移植が実施された。本例は、残念ながら拒絶により生着しなかった。しかし翌年、急 性リンパ性白血病患者に対して行った移植は成功し、教室員を大いに勇気付けた。本例は 現在、我が国の急性白血病の最長無再発生存例である。その後、服部教授は骨髄移植の健 康保険の適応並びに普及のための組織作りに奔走し、現在の日常的な治療法に成長させた。
その後も症例を重ね、移植成績の向上を目指して研究は続いている。
骨髄移植の研究に加えて、細胞回転を利用した造血器腫瘍化学療法の試み、白血病分類 に関する研究、細胞診断学における細胞変性にかかわる検討など、血液学、細胞学の分野 でも新しい知見を報告した。また内分泌学でも、視床下部・下垂体・副腎皮質系の日周リ ズムの検討及びステロイドホルモンの代謝の研究が、呼吸器病学ではアレルギー及び肺癌 に関する研究の基礎づくりがなされた。このほか、敗血症を中心とした造血器疾患に伴う 感染症学、並びに心身医学では神経性食欲不振症の研究も進められた。
教室の創設と骨髄移植の成功に向けて教室が一体となって努力した時代であり、研究の 成果は、53編の学位論文として発表された。
松田教授時代(1984〜1999年) 1984(昭和59)年、松田教授が就任した。同教授は 本学内科学第2講座在任中に血液凝固学の研究に着手し、既に我が国の血液凝固学をリー
ドする血液学者であった。特に、東京都老人総合研究所に転出してからは、播種性血管内 凝固症候群(DIC)の研究に精力的に取り組み、多くの臨床データを基にしてDICの診断 基準を作成し、「松田のDIC診断基準」として国内外から高い評価を受けており、DIC研究 の飛躍の基礎となっている。松田教授は就任後、北陸ではほとんど研究の進んでいなかっ た血液凝固学について研究室を組織し、研究の基礎をつくるとともに、臨床面での指導並 びに専門医の育成に努めている。また、厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班の班長 を務めるなど、DICの準備状態並びに早期診断法の確立のために、分子マーカーをはじめ とする新しい手法を取り入れた検討を進め、我が国の研究推進の指導的役割を果たしてい る。このような松田教授の精力的な指導の下で、教室では血液凝固学の研究が進み、この 業績を基にして白血病をはじめとする種々の疾患に合併するDICについて新しい考え方、
手法で診断並びに治療を行っている。激しい出血傾向のために、それまでは手を拱いて見 ているしかなかったDICが、的確な診断と治療によりコントロール可能であることが明ら かとなり、DICに対する考えは一変した感がある。さらに遺伝子解析など分子生物学的手 法を用いて、新しい血液凝固異常症を発見し報告している。このほか、脂質代謝異常を血 液凝固との関係についての研究も進めている。
血液凝固学に加えて、骨髄移植及び末梢血幹細胞移植を含めた造血幹細胞移植の基礎的、
臨床的研究が進められており、白血病、悪性リンパ腫を中心として年間20例を超える移植 が実施され、長期生存例も増加してきている。特に、末梢血幹細胞移植を利用した超大量 化学療法は、造血器腫瘍のみならず固形腫瘍にも応用が可能であり、これに関しての研究 を通していろいろな教室との研究交流が行われている。また、造血器腫瘍に関する集学的 治療が行われており、細胞死(アポトーシス)の誘導に関する検討も進められている。呼 吸器病学では、主に喘息を中心とするアレルギー性疾患の解明、並びに肺癌の化学療法に 関する基礎的臨床的研究が精力的に行われている。また感染症では、敗血症に関する臨床 的研究が進められている。
新たに血液凝固学が加わり、研究的にも臨床的にも教室に一層の厚みと幅ができた。ま た、血液、呼吸器の分野での人材が育ち、北陸を中心とする診療施設に多くの専門医を派 遣することができた。研究面では、現在までに51編の学位論文が発表されている。
現状と展望
分子生物学の発展に伴い、近い将来、血液学、呼吸器病学の分野でも遺伝子治療を含め た最先端医療が不可欠となる。血友病をはじめとする遺伝性血液疾患は、遺伝子治療の最 もよい対象となろう。造血幹細胞移植を含む集学的治療により、造血器腫瘍のかなりの例 が治癒を期待できるようになった。今後は、より質の高い予後を求めての検討が必要であ る。呼吸器疾患でも、次第に患者の増加している喘息や肺癌は社会的な問題となっており、
これらに対する効果的な治療、予防が急務である。解明すべき問題は山積しているが、一 層研究を進めるとともに、多くの専門医が育ち、多くの患者により質の高い医療を提供で
きるように人材を育成していきたい。