1. 社会集団
1.3. 現代の社会集団
1.3.5. 集団の範域
コミュニティは、共同の関心を持ちうる、直接的な関係を結ぶことが可能な範域を基盤 とする。関心とは、たとえば動物が食物を求める関心であれば、それぞれの動物の関心の タイプは同じであっても共同的な関心ではない。しかし、町や国、家族などの集団が、福 祉や名声、組織的成功を得ようとするときには、人びとが共通の包括的な関心を持つよう
になる(MacIver et al., 1975, p. 128)。マッキーヴァーにおいて、コミュニティの集団としての
特性を認識する範囲は、1)共同関心を成立させる客観的機縁ないし基礎条件をなす<類似 関心>の複合であり(MacIver et al., 1975, p. 128)、2)共同の居住条件という結合基盤として、
また基本的諸関心の充足が土地に密接に関係するという意味での共同生活の基盤として、
あるいは社会関係の堆積する地域的空間として共同生活を成立させるための共同の土地
(場所)という機縁をなす(MacIver et al., 1975, p. 483)。
松原(1978)もまた、コミュニティという用語には、単なる地理的空間ではなく、地域生 活を等しくする地域住民の心のなかに形成される価値観、意識の問題が含まれると指摘す る。また、一方でそうした意識を共通基盤として共同の地域生活の向上に向け共通の行動 を起こそうとする人々の存在範囲であるともいう(松原, 1978, p. 36)。
大藪(1969)は、都市開発の進むコミュニティにおいて、「住民組織が単に形式的なもの、
または行政機構の末端的、連絡的、媒介装置的なものに形骸化されないためには、住民組 織に包含された住民のすべての人々の間に、共感に基づく批判や共感に基づく同調がなけ ればならない」と主張した。つまり、「形式的なものではなく、実体としての住民組織が成 立する基礎的条件となるものは、組織内の住民内の住民間に存在する共感度である」(大藪,
1969)。しかしながら、その「共感度」は、大藪が高度経済成長の終盤に見た(1)古い、形
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式的な生活圏に準拠した住民組織や、(2)外部から作られた形式的範囲に準拠した住民組織 には存在しない。また、同時期に展開された、近代化論への実証的批判として挙げられた 農村集落の共同性は、都市コミュニティにおいては、もはや形骸化している。であるから して、形式的ではない住民組織の形成契機である(3)住民の共感に基づく住民組織の形成 を促す条件づくりが必要である。その第1の条件は、住民組織の範囲ならびに単位が住民生 活の実体に合った生活圏とマッチしていること、第2は、それぞれの生活権の地域的、住民 類型的特性に適分したものであることである。
すなわち、住民の共同関心とそれが生まれる範域が問題とされる。あるいは、人間生活 が営まれる土地と、協力関係を維持する社会的コミュニティ(人間の集合)の結合体の合 致が求められる。その単位(範囲)は、ローカルな世界、直接的に関係が結べる世界が適 当であり、家族はそのうちでも最小単位と考えられる。
またそれは、行政的な範域と重なる場合もあるであろうが、同一ではない。外から与え られた行政的な区切りによると、対象者が明確に限定されることに加え、実際の共同性に 適した範域(サイズ・地理的領域)を前提しないため、関心の基盤や社会関係の基盤とは 異なりが生じる。すなわち、コミュニティの対象であるための条件を満たすことを前提す るのではなく、共通関心とそれに見合った範域というゆるやかかつ曖昧な規定が前提され る。さらに、コミュニティを、共同生活を基盤とする地域コミュニティに限定することの 妥当性も問われる。
コミュニティの定義において、社会的相互作用、地理的範域、共通特性が主要な概念と して提示された。このうち、現代の社会状況に応じて最も修正を必要とするのは、地理的 範域ではないだろうか。前近代社会において一体的であった生産と消費が分離し、生活集 団における共同性の必要が減少したところに主要な要因があると思われる。共同体は生産 と消費、今日的に言えば仕事と家庭が一体化した存在であり、そのために共同性が高く、
必然的に共同作業を生みだしていた。今日、家庭と仕事の範域が一致することは減少し、
そうであれば、地域コミュニティという生活の居住部分だけを取り出し、「コミュニティ」
を呼ぶのは今日の状況に合致しない。「生活」から「職(生産活動)」分離したことに加え、
現代のグローバル化、情報化、モビリティ等の発展は、共同性に多様な意味を与える。グ ローバル化により、社会的相互作用が生じる対象は、文化的背景や民族を限定するもので はなくなり、集落や自治会等の地域コミュニティに異なる宗教や国籍を持つ人がいること は珍しくない。また、情報化は、遠く離れた土地に住む相手とも関心を共有し同類意識を 育むことを可能にし、モビリティの進展は、住と職の地理的共通性を前提しなくなった。
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就労形態が多様化すると同時に、家制度の喪失とともに住居の固定度も低くなっている。
人々の居住地域がコミュニティの地理的範域の前提とされてきたが、生産が居住地域から 切り離された現代において、職場が時間的にも空間的にも主要な社会的相互作用が生じる 場となっている。すなわち、職と住という2つのあるいはそれ以上の共同の集団が存在する ということに加え、現代のグローバル化、流動性(モビリティ)、移動距離の増加、によっ て、コミュニティの地域性、範域性自体が拡大したり、分散したりと変容する可能性が増 した。グローバル化により単に範域が広がるというものではなく、コミュニティを作る場 が必ずしも居住地域に限定される必要がないということや、成員の地理的な近接性も限定 されない。仕事、学校、住居、等の生活の主要な活動の場それぞれがコミュニティの範域 として捉えることが必要となる。
外枠をつけたコミュニティという感覚が見直される時期に来ている。外枠に縛られない、
社会的相互作用、地域性(それぞれの生活の主要地域)、共同性が見いだされるはずである。
なお、そうは言いつつも、単発的に共同関心のみにおいてつながる関係性はアソシエーシ ョンやあるいは集列型共同態でしかありえず、コミュニティにはそれを拘束するものが必 要である。インターネット・コミュニティのように匿名性が認められ単発的に関係性を切 りうるものではなく、対立する相手とも共存し、維持される関係性として成立することが 前提される。まさにそれはアソシエーションで包摂し得ない領域であり、忍耐や信頼、が 存在して初めてコミュニティと言うことが出来る。
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