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集団のかたち:自律と他律

ドキュメント内 間柄の自律 (ページ 42-49)

1. 社会集団

1.3. 現代の社会集団

1.3.1. 集団のかたち:自律と他律

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図 1 ゲマインシャフトとコミュニティの概念比較

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代においても)存在するものであり、その組織形態や領域、性質が変化してきたと考える べきである。共同性実現のために必要な社会集団もそうした共同態の一つである。集団の 構造を分類・整理することにより、集団の自律がいかに共同性の構築に関係するのか検討 する。

見田(1996,2006)は、社会集団が存立する構造を四つの論理的象限をもって説明する(図 2)。縦軸に「意思的」と「意思以前的」、横軸に「共同態」と「社会態」を置き、それら二 つの軸を直交して組み合わせると、<共同体><集列体><連合体><交響体>の4つの社 会類型が導出される(見田, 2006, p. 17)。社会類型とは、個々人の行為が「社会」を形成する 仕方の類型を意味する。また、ここで言う<共同体>は、前項で論じられた村落共同体等 の実在の集合体を指すのではなく、社会集団の概念的な分類の一つである。

見田の言う「意思的」と「意思以前的」は、本稿の言う「自律」と「他律」の関係に対 応すると考えられる。図2の左下の象限に示される<共同体>は、即自的で、「個々人がそ の自由な選択意思による以前に、「宿命的」な存在として、全人格的に結ばれ合って」存立 する社会であり、人格的な共同性が認められる。伝統的な家族共同体や村落共同体などに 代表される。また、<集列体>は、即自的な社会態であり、個々人の自由な選択意思が互 いにせめぎ合い、干渉し合う帰結として、どの当事者にとっても疎遠な、「社会法則」を客 観的=対象的に存立せしめる。市場において、個々人が私的な利害を追求することで、「市 場法則」(価格変動、景気変動等)を存立させることに見られる社会である。これらはいず れも集団のうちに、それを律する倫理・規範を持たず、外的な指針に則って成員は行動す る。

これに対し、<交響体>は、対自的であり、「個々人がその自由な意思において人格的」

に呼応しあい存立する社会とされる。個々人の「自由」を優先し、この上に立つ交歓だけ を望ましいものとする(=他者の他者性を相互に享受する)「コミューン的」な関係性とし て説明される。また、<連合体>は、対自的な社会態であり、会社、協会、団体のように 個々人の自由な意思によって、しかしながら「愛」のように人格的な結ばれ方ではなく、

特定の利害や関心の共通性等によって結合した社会を言う。すなわち、これらは、どちら も自律した社会集団でありつつも、個々の成員のつながりが人格的なものであるか契約的 なものであるかで異なる。

先の項(1.1. 共同代の変遷)で見た個々の共同体をこれらの類型に当てはめると、原始・

古代においては即自的で自由な意思以前の結びつきである<共同体>に類別できる。しか し、農の発展や土地の私有化とともに契機ごとの共同体が形成されるようになり、個別の

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ルールに従った結びつきへとシフトする。これは、意思決定の機会を与えられた個人が、

個々の生計を成り立たせるために必要な利益を獲得するため、どのような相手とどのよう な結びつきを形成すべきかを決定する社会態の様相を呈し、いわゆるゲマインシャフトか らゲゼルシャフトへの移行と考えられる。図2でも示される通り、ゲマインシャフトとゲゼ ルシャフトは、自律・他律(意思的・意思以前的)いずれをも取りうるが、この段階は、

他律性の高い<集列体>であると考えられる。近代以降においては、個人の解放と人々の 社会意識の芽生えにより、自律した個人による<連合体>の形成も可能である。しかし実 際には、<共同体>的要素を色濃く残したまま、新たな社会システムとして台頭した工場 や学校などの組織に、人々は他律的な状態で埋没したり、戦時下においては、誰もが自身 の行動に責任を持たず、周りに流されて行動したりした。本来であれば、近代化において、

共同体の解体とともに、真の意味における個人主義の発展を見ることにより、多様な個人 が対自的に関係する<交響体>や<連合体>が形成されるはずであったが、外発的な側面 や産業面に特化した近代社会の形成により実現が阻まれた。見田は、<交響体>の形成を 目指すべき集団構造と置くわけであるが、この集団の自律の形態が果たして共同性を達成 できるのであろうか。

2 社会の存立の4つの形式(見田, 1996, 2006, p. 18)

見田は、社会の構想の一般的な形式の表現として、<関係のユートピア・間・関係のル 交 響 体 連 合 体

共 同 体 集 列 体 共同態

communality

社会態 sociality

意思以前的 pre-voluntary

個々人の自由な意思による存立

(主体的=対自的)

symphonicity association

communit y

seriality

個人の意思とはかかわりなく存立

(客観的=即自的)

意思的 voluntary

脱人格的impersonal

(ゲゼルシャフト的)

人格的personal

(ゲマインシャフト的)

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ール>というものを提示する。これは、<交響するコミューン・の・自由な連合>あるい は<交響体・の・連合体>と表すことが出来る。すなわち、<交響体>が、他の<交響体

>と交わるときには、協定を結んで<連合体>として連合するという社会の複層構造が形 成されるという(見田, 2006, pp. 174–188)(図3)。

3 見田による社会構想の一般形式(一部抜粋)(見田, 2006, p. 191)

<交響体>の<連合体>が、社会集団が最終的に向かうべき方向であるとすれば、異な る<交響体>同士は絶えず<連合体...

>としての....

「間」を維持することになり、役割や個別 の集団間の約束事が両者をつなげる唯一のくさびとなる。しかし、実際の個人や社会集団 間のつながりは、見田も想定するように、(a)集団と集団のつながり、(b)集団の成員が他 集団の成員と人格的に結ばれるつながり、(c)集団の成員が他集団の成員と脱人格的に結ば れるつながり、(d)集団に属さない個人が結節点となるつながり、(e)多重属性を持つ成員 によるつながり、など多様な形が存在する(図 4)。これらのうち、見田は、(a)にあたる

<交響体>の<連合体>を一般的な形態と置くが、(b)~(e)のように個人の関係性なし に(a)のみが存在する場合はそれほど多くない。例えば、企業であれ大学であれ、組織間 で連携協定を結ぶ場合、その前提として、それぞれの組織のキーパーソンが事業や研究を 介して、あるいは協定に向けた交渉を通して互いの関係性を高めた上で組織同士の連携が なされる((c)の状態)。また、結婚によって新しい家族が形成された際に、結婚した当事 者らと生まれ育った家族との関係性が協定やルールに縛られる<連合体>に転換すること は考えにくく、多重的な<交響体>として新たな関係性が構築されるであろう((e)の状態)。

社会集団は、そもそもそれ自体が一つの意思を持ち判断を下すものではない(MacIver, 中, &

松本, 2009)。見田の構図は、社会集団に独立性を持たせるあまり、それを構成する人間の個

別の関係性が見えにくくなっているが、実際は、集団を形成する人間の関係性こそが、共 関係のユートピア(交響)

関係のルール(連合)

40 同性の安定性を決定する。

4 集団における成員間の関係

ビジネスを例にとると、経営戦略上、組織間の提携が必要と判断された場合、個別の人 間(成員)間の関係が小さく、より集団としての条件が重んじられることは大いに考えら れる。しかし、図4の組織Zが、W、X、Yとそれぞれ関係性を構築する場合、いずれの共 同性に最も安定性がもたらされるであろうか。WからZの集団は、いずれも自律の状態に あり、実線で描かれた集団がゲマインシャフト的(交響体)であり、点線で描かれた集団 がゲゼルシャフト的(連合体)であると想定する。まず、Z にとって、W との共同性は、

単純に組織と組織の経営上の合意などであり、その交渉がうまくいかなければ、関係性は 途絶える。Yとの共同性で言えば、組織同士の提携以外に、複数の成員が個別に相手組織の 成員と仕事上の協力関係を持つため、組織全体の交渉が不調に終わっても、個別の関係性 が残りうる。ただし、個別事業の終了や成員の配置換え等により、仕事上の協力の必要が なくなれば関係性は途絶える。残る X については、両集団に属する特定の成員が、役割や 契約に依らない人格的なつながりで結ばれており、組織間の連携や共同事業の有無に関わ らずその成員らの関係は継続する。個別の成員のつながりが、集団の連携に直結するわけ ではないが、特定の目的や利益のみで協力関係を構築するよりも安定的な共同性の構築が 期待できる。

これらの差異がどこにあるかと言うと、集団としての自律性だけではなく、集団を形成 する個別の成員間の関係性、特に人格的な関係性の有無に集団の共同性の安定性が決定づ けられるということである。

人格的関係性

(a)

(b)

(d)

(e)

脱人格的関係性 X

Z

Y

(c)

W

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