第3章 プロジェクトの内容および技術的側面の検討
2) 関連規制・政策の詳細
本節では、本 FS 調査の対象プロジェクトに関連する電気事業規制に焦点を当て、その詳細について 述べる。
a) 規制の概要
・現在、インドネシアにおける電力関連事業は、電力法(2009 年法律第 30 号、通称:新電力法)及 び関連する法令(政令、大統領令、エネルギー鉱物資源省令(以下では単に省令と呼ぶ)等)によ り規制されている。
・インドネシアにおける「電力供給事業」は、新電力法第9条に基づき、大きく以下の2種類に区分 されている。
① 公共向け電力供給事業(法第9条のa): PLN(国有企業)、IPP(Independent Power Producer)、
(PLN 以外の)PPU(Public Power Utility)
(注:PLN は、PPU の一種とも言える。)
② 自家用の電力供給事業(法第9条のb): 自家発
・以下では、法令・文献調査、及びエネルギー鉱物資源省・PLN からのヒアリング結果に基づき、IPP 及び(PLN を除く)PPU に関する規制の概要を述べる。
b) IPP に関する規制
① 新電力法上の位置付け
・法第9条のa(公共向け電力供給事業)に該当 ② 事業ライセンス
・新電力法第 19 条(2)に基づき、電気事業ライセンス(IUPTL:Ijin Usaha Penunjang Tenaga Listrik)
を得ることが必要 ③ PLN への売電
・PLN への全量売電が必須 ・25 年間等の長期契約が前提
・PLN との長期売電契約(PPA)の優先交渉権は、PLN が実施する入札に基づき獲得される。
・詳細は、政令第 14 号(2012)、省令第 1 号(2006)及びその改正省令第 4 号(2007)、並びに省 令第 5 号(2009)で規定
④ 需要家への売電(小売)
・PLN への全量売電が必須のため、需要家への売電は必然的にできない。
・かつて旧電力法の時代には、チカラン等の工業団地では、IPP から需要家への直接供給(特定供 給)が認められたケースがあるが、現在は不可。
c) PPU に関する規制
① 新電力法上の位置付け
・法第9条のa(公共向け電力供給事業)に該当 ② 事業ライセンス
・新電力法第 19 条(2)に基づき、電気事業ライセンス(IUPTL:Ijin Usaha Penunjang Tenaga Listrik)
を得ることが必要
③ PLN への売電
・PLN への売電は可能。PLN がその電力を必要とすることが必要。
・発電量の一部を PLN に売電する方式と、一旦全量を PLN に売電して PLN から買い戻す方式がある。
・売電価格は、基本的に PLN との BtoB の交渉により決まる。なお一旦全量を売電して買い戻す場 合の売電価格は、原価積み上げ方式をベースに、BtoB の交渉により決まる。
・エネルギー鉱物資源省が、関連する省令の制定を準備中。同省令における標準契約期間が単年と なるか長期となるかは不透明。
④ 需要家への売電(小売)
・新電力法第 10 条に基づき、WU(後述)を取得すれば、発電・送電・配電・小売を統合的に行っ たり、配電及び(又は)小売を行うことが可能。
・小売価格は、BtoB の交渉のうえ、最終的には地方政府の承認が必要
・一旦全量を PLN に売電して買い戻す場合の標準的な買電価格は 1,191Rp./kWh であり、これを交 渉により下げることも可能
⑤ WU の取得
・PPU から需要家に配電・小売を行うためには、新電力法第 10 条(3)~(5)により、配電・小売を行 う区域(例:工場内)を対象とする WU(Wilayah Usaha:事業区域)の取得が必要
・WU 取得のためには、PLN の了解と MEMR の許可が必要 ・WU は、根回しをすれば最短 2 カ月で取得可能
・WU の詳細については、省令第 28 号(2012)で規定されている。
表 3-3 インドネシアの電力供給事業に関する法制度
※1 電源を PLN の系統に連系する場合、KKO(グリッドインパクトスタディ)に最低 1 ヶ月必要
※2 WU(Wilayah Usaha):事業区域
※3 IUPTL(Ijin Usaha Penunjang Tenaga Listrik):新電力法に基づく公共向け電気事業許可
※4 IPP:Independent Power Producer(独立系電気事業者)
※5 PPU:Private Power Utility
※6 IPP、PPU、自家発が PLN の送電網を使用(借用)して需要家に電力託送/小売託送を行うパワーホイーリングの仕組みについ て、エネルギー鉱物資源省が現在検討中
制度 実施項目 可否
要否 法制度 説明
売電(PLN) 可
・法第9条のa(公共向け)に該当
・詳細は、政令第14号(2012)、省令第 1号(2006)及びその改正省令第4号
(2007)、並びに省令第5号(2009)で規 定
・入札方式
・長期契約
・PLNへの全量売電が必須
売電(需要家) 不可 ・PLNへの全量売電が必須のため、需 要家への売電は必然的にできない。
・チカラン等の工業団地では、かつて IPPからの特定供給が認められたケース があるが、現在は不可
バックアップ ― ・特になし(推定)
・全量売電のため、所内消費分を除き、
PLNからバックアップを受ける必要性は 少ない
WU取得 不要 ・法第10条により不要
・発電のみ(PLNへの全量売電が必須)
で、需要家には配電・小売を行わないた め、WU取得は不要
IUPTL取得 要 ・法第19条(2)に基づき、電気事業許可
(IUPTL)が必要
売電(PLN) 可 ・MEMRが省令を準備中
・BtoB契約(前例なし)
・一旦PLNに全量売電して買い戻す場 合の売電価格は、原価計算とBtoB交渉 で決定
・省令での標準契約期間は、1年となる か長期か不透明
・PLNが必要とすることが要件
売電(需要家) 可
・法第9条のa(公共向け)に該当
・法第10条により、WUを取得すれば、
発・送・配電・小売(統合的)、又は配電 and/or 小売が可能
・価格はBtoB+地方政府承認
・一度、全量をPLNに売電した場合の標 準価格は1,191Rp./kWh、交渉により低 下可能
バックアップ 可
・PLNの一般的な電気料金は、省令第 31号(2014)で規定されている。但し バックアップ料金は、PLNの規程による 可能性もある。
・常時連系/非常時連系を選択
WU取得 要 ・法第10条(3)~(5)により必要
・省令第28号(2012)に詳細規定
・PLNの諒解とMEMRの許可が必要
・根回しをすれば最短2カ月で取得
IUPTL取得 要 ・法第19条(2)に基づき、電気事業許可
(IUPTL)が必要
売電(PLN) 可 ・法23条(3)により可
・省令第4号(2012)に詳細規定
・標準価格:656Rp./kWh(これを上回る 場合は、MEMRの承認が必要)
・単年度契約
自家消費 可
・法第9条のb(自家用)に該当
・法第19条(2)に基づき、Cilegon市によ る操業許可(Izin Operasi)が必要
バックアップ 可
・PLNの一般的な電気料金は、省令第 31号(2014)で規定されている。但し バックアップ料金は、PLNの規程による 可能性もある。
・常時連系/非常時連系を選択
WU取得 不要 - -
IUPTL取得 不要 - -
IPP
PPU
自家発
出典:調査団作成