プロジェクトの資金調達の見通し

ドキュメント内 報告書(和文) (Page 175-184)

(1) 資金ソースおよび資金調達計画の検討

対象プロジェクトについて想定されるスキームを図 9-1 に示す。

現地に SPC(特定目的会社)を設立して発電事業を行い、PLN と ASC に売電を行う。SPC が、PPA(電 力需給契約)、EPC 契約、O&M 契約、FSA(燃料供給契約) 等プロジェクト契約の契約主体となる。

プロジェクト費用の一部を出資金、残りをプロジェクト・ファイナンスにより調達する。

図 9-1 想定されるプロジェクト・スキーム(再掲)

注:橙色の網掛部分: 日本企業または日系企業の関与が期待される分野 水色の網掛部分: 日本の公的機関

出典:調査団作成

表 9-1 資金調達規模

(単位:US$百万)

ケース1 比率 ケース2 比率

投融資規模 706 100% 491 100%

出資 200 28.3% 200 40.7%

プロジェクト・ファイナンス 506 71.7% 291 59.3%

JBIC 304 60.0% 175 60.0%

その他 202 40.0% 117 40.0%

注)上記の金額は本 FS 調査での設定値であり、実際の事業の際には変わり得る。

出典:調査団作成

本発電所向けのプロジェクト・ファイナンスの組成に関し、金融機関の考え方は以下の通りである。

① 国際協力銀行(JBIC)

・単なる投資利益のみが目的の投資ではなく、実業目的の投資であること。

・発電プラントの O&M は、日本企業(ASC、または O&M の外注先企業)または日本企業が株式を保有 発電会社

SPC) 売電先

(PLN)

売電先

(ASC)

JBIC

融資 出資

日本の銀行 海外の銀行等

日本企業(商社、電力 会社等)

日本企業(AGC)

海外電力系投資会社 現地企業

設計・調達・建

設(EPC) 運営・管理 石炭の供給

プロジェクトコーディ ネータ(商社等)

製造(メーカ)

投資

保険 NEXI

する等によりコントロール・指導し得る企業(例:現地の外注先企業)が行うことが必須。

・特にボイラ、タービン等の主機に日本企業の技術が多く関わっている方が好ましいが、発電設備等 は必ずしも日本製である必要はない。

・発電プラントの事業体への出資比率は、日本企業が最低でも全体の 30%以上を占めていること。

・事業運営(の意思決定を含む)に、日本企業が積極的、かつ融資期間を超える長期にわたり継続的 に関与すること。

・経済性の評価も重要な要因。(出力規模との関係で、どのような技術方式が可能か→設備・運転コ ストに影響。PPU の場合、PLN への売電価格・契約期間が幾らとなるか 等)

・以下の点も投資判断の重要な要素となる。

・PLN に売電する場合、PLN が長期にわたり電力を買い取ってくれるか(そのような契約を PLN と 締結できるか)。

・オフテイカー(電力の購入者)が誰になるか。オフテイカーが長期にわたり、当該発電プラント からの電力を購入できるか。

・なおもし自家発の場合であっても、投資金融の対象になり得る。但し、系統に常時連系し、いざと いう時には電力会社からバックアップを受けられること。

(2) 資金調達の実現可能性

本プロジェクトでは JBIC のプロジェクト・ファイナンスの活用を想定している。そのためには、SPC への出社者のうち日本企業が 30%を占める必要がある。

その他、上記の条件を満たせば、第5章で求めた FIRR の水準から見ても、JBIC からの融資は充分可 能と考えられる。

JBIC 及び他の融資機関にとって懸念材料があるとすれば、それは PPU(SPC)から PLN への売電契約 の期間が何年になるかである。できる限り長期の契約を結ぶことが望ましい。

これは、現時点では PLN との相対交渉に委ねられている。ただし、エネルギー鉱物資源省が現在関連 する省令の制定を準備中であり、契約期間がどの程度になるかは現時点では不透明とのことであるが、

同省令において長期の契約が推奨されることが期待される。

PLN への売電価格については、第5章での分析結果によれば、自家発余剰電力と同等の 656 ルピア/kWh 程度の安価な価格であっても、十分高い FIRR が実現できる可能性が高い。かつ、PLN との交渉によりこ の価格を少しでも上げることができれば、収益率はさらに高まることも期待される。

(3) キャッシュ・フロー分析

第5章では融資による資金調達分も含むプロジェクト内部収益率として FIRR を算定したが、本章で は SPC のエクイティ内部収益率(自己資本内部収益率)を算定した。その結果を以下に示す。

表 9-2 エクイティ内部収益率(自己資本内部収益率)(ケース1)

(単位:US$百万)

年 投資 収益 運営費 元利返済 償却 税前利益 税金 税後利益 キャッシュフロー

1 2 3 4 5 6=2-3-4-5 7 8=6-7 9=8+5-1

1 66.67

-66.67

2 66.67

-66.67

3 66.67

-66.67

4 245.48 144.80 53.63 20.94 26.10 6.53 19.58 40.52 5 251.35 148.26 53.63 20.94 28.51 7.13 21.38 42.33 6 257.35 151.80 53.63 20.94 30.97 7.74 23.23 44.17 7 263.50 155.43 53.63 20.94 33.50 8.37 25.12 46.07 8 269.80 159.15 53.63 20.94 36.08 9.02 27.06 48.00 9 276.25 162.95 53.63 20.94 38.72 9.68 29.04 49.99 10 282.85 166.84 53.63 20.94 41.43 10.36 31.07 52.02 11 289.61 170.83 53.63 20.94 44.20 11.05 33.15 54.10 12 296.53 174.91 53.63 20.94 47.04 11.76 35.28 56.23 13 303.62 179.10 53.63 20.94 49.95 12.49 37.46 58.41 14 310.88 183.38 53.63 20.94 52.93 13.23 39.69 60.64 15 318.31 187.76 53.63 20.94 55.97 13.99 41.98 62.92 16 325.92 192.25 53.63 20.94 59.09 14.77 44.32 65.26 17 333.71 196.84 53.63 20.94 62.29 15.57 46.72 67.66 18 341.68 201.55 53.63 20.94 65.56 16.39 49.17 70.11 19 349.85 206.36 20.94 122.54 30.64 91.91 112.85 20 358.21 211.29 20.94 125.97 31.49 94.48 115.42 21 366.77 216.34 20.94 129.48 32.37 97.11 118.06 22 375.54 221.51 20.94 133.08 33.27 99.81 120.75 23 384.51 226.81 20.94 136.76 34.19 102.57 123.51 24 393.70 232.23 20.94 140.53 35.13 105.39 126.34 25 403.11 237.78 20.94 144.39 36.10 108.29 129.23 26 412.74 243.46 20.94 148.34 37.08 111.25 132.20 27 422.61 249.28 20.94 152.38 38.10 114.29 135.23 28 432.71 255.24 20.94 156.53 39.13 117.39 138.34 29 443.05 261.34 20.94 160.77 40.19 120.58 141.52 30 453.64 267.59 20.94 165.11 41.28 123.83 144.78 31 464.48 273.98 20.94 169.56 42.39 127.17 148.11 32 475.58 280.53 20.94 174.11 43.53 130.58 151.53 33 486.95 287.23 20.94 178.77 44.69 134.08 155.02 34 498.59 294.10 20.94 183.54 45.89 137.66 158.60 35 510.50 301.13 20.94 188.43 47.11 141.32 162.27 36 522.70 308.32 20.94 193.44 48.36 145.08 166.02 37 535.20 315.69 20.94 198.56 49.64 148.92 169.86 38 547.99 323.24 20.94 203.81 50.95 152.85 173.80 39 561.09 330.96 20.94 209.18 52.29 156.88 177.83 40 574.50 338.87 20.94 214.68 53.67 161.01 181.95 41 588.23 346.97 20.94 220.31 55.08 165.23 186.18 42 602.28 355.27 20.94 226.07 56.52 169.56 190.50 43 616.68 363.76 20.94 231.98 57.99 173.98 194.93 計 200.00 804.50 837.77 3,735.47 4,373.25

自己資本内部収益率 21.26%

出典:調査団作成

表 9-2 エクイティ内部収益率(自己資本内部収益率)(ケース2)

(単位:US$百万)

年 投資 収益 運営費 元利返済 償却 税前利益 税金 税後利益 キャッシュフロー

1 2 3 4 5 6=2-3-4-5 7 8=6-7 9=8+5-1

1 66.67

-66.67

2 66.67

-66.67

3 66.67

-66.67

4 181.44 87.27 30.88 14.32 48.97 12.24 36.72 51.04 5 185.78 89.36 30.88 14.32 51.22 12.80 38.41 52.73 6 190.22 91.49 30.88 14.32 53.52 13.38 40.14 54.46 7 194.76 93.68 30.88 14.32 55.88 13.97 41.91 56.23 8 199.42 95.92 30.88 14.32 58.30 14.57 43.72 58.04 9 204.18 98.21 30.88 14.32 60.77 15.19 45.58 59.90 10 209.07 100.56 30.88 14.32 63.30 15.83 47.48 61.80 11 214.06 102.96 30.88 14.32 65.90 16.47 49.42 63.74 12 219.18 105.42 30.88 14.32 68.55 17.14 51.41 65.73 13 224.42 107.94 30.88 14.32 71.27 17.82 53.45 67.77 14 229.78 110.52 30.88 14.32 74.05 18.51 55.54 69.86 15 235.27 113.17 30.88 14.32 76.90 19.23 57.68 72.00 16 240.89 115.87 30.88 14.32 79.82 19.96 59.87 74.19 17 246.65 118.64 30.88 14.32 82.81 20.70 62.11 76.43 18 252.55 121.48 30.88 14.32 85.87 21.47 64.40 78.72 19 258.58 124.38 14.32 119.88 29.97 89.91 104.23 20 264.76 127.35 14.32 123.09 30.77 92.32 106.64 21 271.09 130.39 14.32 126.38 31.59 94.78 109.10 22 277.57 133.51 14.32 129.74 32.43 97.30 111.62 23 284.20 136.70 14.32 133.18 33.30 99.89 114.21 24 291.00 139.97 14.32 136.71 34.18 102.53 116.85 25 297.95 143.31 14.32 140.32 35.08 105.24 119.56 26 305.07 146.74 14.32 144.01 36.00 108.01 122.33 27 312.36 150.25 14.32 147.80 36.95 110.85 125.17 28 319.83 153.84 14.32 151.67 37.92 113.75 128.07 29 327.47 157.51 14.32 155.64 38.91 116.73 131.05 30 335.30 161.28 14.32 159.70 39.92 119.77 134.10 31 343.31 165.13 14.32 163.86 40.96 122.89 137.21 32 351.52 169.08 14.32 168.12 42.03 126.09 140.41 33 359.92 173.12 14.32 172.48 43.12 129.36 143.68 34 368.52 177.26 14.32 176.94 44.24 132.71 147.03 35 377.33 181.50 14.32 181.51 45.38 136.14 150.46 36 386.35 185.83 14.32 186.19 46.55 139.65 153.97 37 395.58 190.27 14.32 190.99 47.75 143.24 157.56 38 405.03 194.82 14.32 195.89 48.97 146.92 161.24 39 414.72 199.48 14.32 200.92 50.23 150.69 165.01 40 424.63 204.25 14.32 206.06 51.52 154.55 168.87 41 434.78 209.13 14.32 211.33 52.83 158.50 172.82 42 445.17 214.13 14.32 216.72 54.18 162.54 176.86 43 455.81 219.24 14.32 222.24 55.56 166.68 181.00 計 200.00 463.22 572.80 3,868.88 4,241.68

自己資本内部収益率 23.80%

算定の結果、エクイティ内部収益率(自己資本内部収益率)は、ケース1が 21.3%、ケース2が 23.8%

となり、高い収益率が見込まれることが判明した。

これは出資者にとって歓迎すべき結果であり、配当等により投資家に魅力的なリターンをもたらす可 能性がある。

第 10 章 案件実現に向けたアクションプランと課題

169

(1) 当該プロジェクトの実施に向けた取り組み状況

インドネシアでは電力危機が顕在化している。経済成長に伴い、電力需要が産業用、民生用ともに増 加する一方で、電力供給が計画通りに進んでいない。PLN の資金不足と IPP 認可遅れに伴い、各発電所 プロジェクトの進捗が遅れており、送電系統の整備も遅れている。中国製の石炭火力も順調に稼働して いるとはいえない。

インドネシア政府は PLN に対する補助金を削減するとともに、2014 年 1 月から大口需要家を対象に計 4回(5 月、7 月、9 月、11 月)の料金値上げを実施した。このため ASC の電力コストが増加し、経営 を強く圧迫している。

クロールアルカリ製品(苛性ソーダ、塩ビモノマー、塩ビ樹脂)のアジアでのシェア拡大のため製造 プラントの増設を計画している ASC にとって、電力コストの削減は喫緊の最重要課題となっており、早 急な対応が求められている。

このため ASC は、本プロジェクト(石炭火力発電プラントの建設)をできる限り早急に実現すべく、

社内で検討・準備を深めるとともに、現地の関連機関(PLN 等)と水面下での調整を進めている。

(2) 当該プロジェクトの実現に向けた相手国の関係官庁・実施機関 の取り組み状況

インドネシア政府は、電力供給の増強に向けて、クラッシュプログラムをはじめ、第1章で詳述した 各種のプログラム・施策・計画を進めている。

政府・PLN は特に IPP(全量売電)の新設に期待しているが、IPP だけでなく、新電力法により生まれ た PPU(Private Power Utility)、自家発も含めて、民間資本による発電プラントの新設・増設を歓迎 している。

PPU の際に必要となる WU(事業区域)の取得についても、以前より容易になっているとのことである。

また、PPU の PLN への売電部分の料金や需給契約期間について、エネルギー鉱物資源省は省令の策定を 準備している。

またエネルギー鉱物資源省は、Power Wheeling という小売託送・電力託送の仕組みを実現すべく、省 内での検討やセミナーの開催等を実施している。

こうした流れは、本プロジェクトの実現にとって、プラスの影響を与えると考えられる。

(3) 相手国の法的・財務的制約等の有無

本プロジェクトを進める上でキーとなるポイントは以下の通りである。

1) WU の取得

MEMR(エネルギー鉱物資源省)、PLN、チレゴン市からのヒアリング結果を総合すると、PPU のために 必要な WU(事業区域)と IUPTL(電力供給事業許可)の取得は、需要家が1社の場合も十分可能と考え られる。その地域は、必ずしも PLN が供給できない地域(例:島嶼部)だけでなく、PLN の供給地域も 含まれる。PPU は電力自由化の流れの中で出てきた事業モデルであり、むしろ PLN の供給地域の一部を

開放するという考え方である。

MEMR は、PPU の方が自家発に比べて WU の取得など手続きが煩雑とはいえ、PPU(及びそれに必要な WU、

IUPTL)の取得は可能とのことである。

またチレゴン市も、1社を対象とする PPU(それに必要な WU、IUPTL)は充分可能とのことである。

特に逆潮流という形で PLN の電力系統に貢献する PPU に期待している。PPU に必要な WU は、書類が整っ ていれば、3~4 日でチレゴン市としてのレコメンデーションを出せるとのことである。その書類とは、

当該発電プラントに関する FS レポート及び地図(位置を示すもの)である。なおこれら(FS レポート、

地図)は、自家発の IO(Izin Operasi:操業許可)を取得する場合も必要となる。

チレゴン市によれば、WU 取得の流れは以下の通りである。

①チレゴン市からレコメンデーションを受ける(WU 取得のための必要要件の1つ)

②MEMR 電力総局に申請書類及びチレゴン市からレコメンデーション文書を提出 ③PLN の了解

PLN の了解は、重要な要件になると考えられる。PLN から了解を得るためには、事前の根回しが必要 である。PLN によれば、「WU の取得は、以前は非常に難しかったが、今は以前よりは容易になっている」

とのことである。

2) PPU(SPC)から ASC への小売料金

PPU(SPC)から需要家への小売料金は、チレゴン市によれば、以下の流れで決まる。ここには国や PLN の関与は特にない。

①SPC(PPU)と需要家の相対交渉

②SPC(PPU)とチレゴン市との相談→合意→OK

この小売料金は、PLN から一般需要家への小売料金よりたとえかなり安い価格であったとしても、チ レゴン市としては、何ら問題はないとのことである。

第5章の経済性評価では、この価格を MEMR 省令(2012 年第 4 号)で定められた自家発余剰電力に関 する標準売電価格(656 ルピア/kWh)と同じ水準と仮定して試算した。これを安くすれば ASC の電力コ ストは低下し、一方で SPC(PPU)の収入は減少する。高くすればその逆となる。

3) PPU(SPC)から PLN への売電料金及び契約期間

PPU(SPC)から PLN への売電料金は、基本的には両者間の相対交渉で決まる。

第5章の経済性評価では、この価格を MEMR 省令(2012 年第 4 号)で定められた自家発余剰電力に関 する標準売電価格(656 ルピア/kWh)と同じ水準と仮定して試算し、良好な FIRR を得た。

これ以上の価格となればさらに採算性が高まる。PLN との具体的な価格交渉は、今後の課題である。

売電の契約期間も、特に PPU への投融資機関にとって重要な要素である。この期間も現在は PLN との 相対交渉で決まる。エネルギー鉱物資源省は関連する省令を準備しているが、そこでの契約期間の扱い は現時点では不透明である。

売電の契約期間は、長ければ長いほど良い。IPP の場合のように 20 年以上となればベストであるが、

それは期待できないと思われる。もし短期の契約しかできない場合は、売電量が多いケース1よりケー ス2の方が投融資機関に好まれる可能性はある。PLN 及び投融資機関との具体的な交渉は、今後の課題 である。

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