経済政策・産業政策の概要

ドキュメント内 報告書(和文) (Page 31-35)

第 1 章 相手国・セクターの概要

2) 経済政策・産業政策の概要

インドネシアの経済政策・産業政策は、 BAPPENAS (国家開発計画庁)の国家長期開発計画(National Long-term Development Plan(RPJPN))と国家中期開発計画(National Medium-term Development Plan (RPJMN))、経済担当調整大臣府の「経済開発加速化・拡充マスタープラン(MP3EI)」及び工業省の産業 政策法の3つの計画で推進されている。これらの政策は相互に補完的な関係ということになるが重複の

1 一方、燃料価格の引き上げによるインフレ率の上昇が懸念材料となるが、インドネシア中銀は 2014 年 11 月 18 日に緊

懸念は否定できない。インドネシアでは、関係省庁間でのハイレベルな政策調整は経済担当調整大臣府 が行うことになっており、産業ビジョンの推進では一致し対立は回避されると言われている。

a) 国家開発計画

国家開発計画システム法(Law No.25, 2004)により中央・地方レベルで 20 年間の国家長期開発計画

(RPJPN)、5 年間の国家中期開発計画(RPJMN)及び年次開発計画で推進される。大統領の任期と計画は 同じで、国家長期開発計画の枠組みの中で 5 年毎に政府は国家中期開発計画を設定している。

ジョコウィ新政権においては、2014 年 11 月 21 日、国家開発計画省(BAPPENAS)が新たに策定した中 期開発計画(2015~19 年)の概要を発表。海運網整備を中心とした物流改善に重点を置いたことが特徴 で、これらを遂行するためのインフラ整備に 5519 兆 4000 億ルピア(約 53 兆 6000 億円)を要すとし、そ の 50%を地方・中央政府予算で、20%を国営企業から、30%を外資を含む民間企業からの投資により賄う 想定である。計画の骨子は以下の通り。

新政権の構想「海上高速」輸送網整備のため、戦略港として中心となる 24 カ所を指定し、港を 新設または拡張する計画であり、この港湾整備などに要する事業費を 700 兆ルピアと算出してい る。このうち北スマトラ州クアラタンジュン港と北スマトラ州ビドゥン港を国際ハブ港として発 展させる。また、ジャカルタ特別州のタンジュンプリオク港、北スマトラのブラワン港、東ジャ ワ州のタンジュン・ベラック港、リアウ諸島集のバタム港、南スラウェシ州のマカッサル港を大 型船舶が停泊可能な主要港として海運網のハブとして整備する。

陸上交通では新たに 2,650 km の一般道と、1000 km の高速道路を建設する。海運網整備と合わせ 陸海の物流インフラ改善で、現在、国内総生産(GDP)の 23.5%を占める物流費用を 19.2%まで下 げることを目指す。

電力は 5 年間に発電容量を3万 5,000 MW 増やす。これにより、現在 81.5%の電化率を 19 年に 96.6%

に高める。

新たに 15 の工業団地を建設する。この団地造成に要する事業費を 47 兆 7000 億ルピアとみてい る。このうち 13 はジャワ島外につくり、開発が遅れている地域への投資を促進し、経済開発を 後押しする。ジャワ島外は原料に近い上流製品、ジャワ島は工業製品などの下流製品の生産を想 定する。

食糧自給達成のための農業分野では 30 の貯水池を整備する。灌漑は 100 万 ha を新設、330 万 ha を修復整備する。

b) MP3EI

「インドネシアの経済開発を加速し拡張するための経済開発マスタープラン 2011-2025」(MP3EI、

Master Plan – Acceleration and Expansion of Indonesia Economic Development 2011-2025)は、ユ ドヨノ前大統領第 2 期に作成され、2011 年 5 月に大統領規則で公表された開発計画で、経済担当調 整大臣府の前ハッタ・ラジャサ大臣のリードで策定された。2

2 2014 年 10 月に誕生したジョコウィ新政権においては、同プランを見直す方針が打ち出されている。バスキ公共事業・

国民住宅相は 2015 年 1 月 3 日、地元メディアに「2025 年までの包括的な開発計画『経済成長促進拡大マスタープラン

(MP3EI)』を再検討し優先順位を変更する」と公表。ジョコウィ氏が掲げる海洋国家構想において、開発が遅れている東 部地域を含む海上物流を向上させ、地方への投資を促す一方、これにそぐわないものは見直し、優先事業へ予算を振り分

同プランでは、「自立的、進歩的、正義でかつ繁栄するインドネシア」のビジョンのもと、均衡・公 正で、持続可能な経済成長を目指し、インドネシアを 2025 年までに名目 GDP を 2010 年比で約 6 倍に増 加させ、世界の 10 大経済大国となる目標を掲げている。具体的には、1 人当たり所得を 14,250~15,500 ドルとして、年成長率の目標を 7~9%に設定。戦略として、①ジャワ、スマトラ、カリマンタン、ス ラウェシ、マルク・パプア、バリ・ヌサテンガラからなる 6 経済回廊のポテンシャルの開発、②国内 及び国際的コネクティビティの強化、③人材と科学技術の強化、の 3 つの柱がある。そこで計画されて いる計 4,000 兆 Rp にのぼる多数の大型プロジェクトの資金は、中央政府、地方政府、国有企業、民間 等のすべてのアクターから支出されるとしている。特に両回廊の結節点に位置する首都ジャカルタは最 重点地域に位置付けられている。

スマトラ経済回廊:「天然資源生産加工センターかつエネルギー供給基地」

ジャワ経済回廊:「国家工業・サービス促進」

カリマンタン経済回廊:「鉱産資源生産加工センターかつエネルギー供給基地」

スラウェシ経済回廊:「農水産業・石油ガス・鉱産物生産加工センター」

バリ・ヌサトゥンガラ経済回廊:「観光のゲートウェイ及び国家食糧補助」

パプア・マルク諸島経済回廊:「食糧、漁業、エネルギー、鉱業促進センター」

c) MPA

投資促進特別地域(Metropolitan Priority Area、MPA)は、ジャカルタとその周辺地域のインフラ を大規模に整備するためのイニシャティブで、MP3EI の 6 経済回廊の1つであるジャワ経済回廊の中 の基幹案件で、日本政府は強力に支援している。MPA の目的は、JABODETABEK(ジャカルタ、ボゴール、

デポック、タンゲラン、ベカシの 5 つの地名の頭を連ねた呼称)のインフラ整備の加速及び ASEAN 内 で競争力をもつビジネス環境の創造を通じて、工業投資により魅力的な地域とすることにある。このた め、2010 年 12 月にインドネシア・日本両政府は協力協定に調印し、両国の政府や関連機関からなる 指導委員会及び技術委員会を設置し、そのもとで MPA マスタープラン調査を実施した。

MPA は JICA の対インドネシア経済協力の主要案件で、ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)、ジャワ・ス マトラ連系送電線、プルイット排水機場改修を支援している3。さらには、新港建設、道路、鉄道、下水 処理改善に関する案件形成支援も行っているが、その実施は土地収用等で当初計画より遅れている。

d) 新産業政策

前 KADIN (ジャカルタ商工会議所)会長で前モハマド・S・ヒダヤット工業大臣がリードした 2014 年 の産業政策法は、①優先セクターの範囲の拡大、②天然資源をそのまま輸出せず国内産業のための優先 的使用、③人材と能力開発の強調、④工業団地及び関連インフラの建設における政府の役割の拡大で、

ける方針である。〔出典:TEMPO.CO, Jakarta “Jokowi to Revise MP3EI Project”(Wednesday, 03 September, 2014, http://en.tempo.co/read/news/2014/09/03/056604143/Jokowi-to-Revise-MP3EI-Project)/じゃかるた新聞“インフラ 事業を再検討 スンダ海峡大橋を凍結 港湾・食糧自給を優先”(2014 年 11 月 05 日、http://www.jakartashimbun.com /free/detail/21286.html)他〕

3 ジョコウィ新政権において MPA 案件他、日本の ODA による開発計画が見直されており、アンドリノフ・チャニアゴ国家 開発計画相は、2015 年 1 月 15 日、じゃかるた新聞の取材に対し「ジャワ高速鉄道建設計画は中期開発計画(2015 年~2019 年)に盛り込まない」と事実上計画を中断すること等を明らかにしている。〔出典:じゃかるた新聞“イ「高速鉄道事業 を中断」 中期開発計画から除外 他の2事業も盛り込まず 国家開発計画相 日本政府 対応苦慮”(2015 年 1 月 16 日、http://www.jakartashimbun.com/free/detail/22615.html)他〕

ややナショナリスティックなものであると言われている。関係者の話によれば、外国人の勤務期間が制 限され、しかも国家労働能力基準で定められた知識と技能をクリアせねばならないとされる。ターンキ ー・プロジェクトを行う投資家に技術移転を要求しているが、それが商業的あるいは技術的に可能なの かという検討はなされていない。あるいは、国内産業に優先使用させるために、鉱産物輸出に対して政 府がクォータや禁止を設定する権限を有するとある。また、新法は安全性などの国家利益のために、価 格規制や戦略的産業の国家管理を可能にしている。さらに、国内企業には政府入札における優遇が与え られている。

新産業政策法は、産業開発のためのビジョン、ミッション、戦略、優先プログラムを明確化する「国 家産業開発マスタープラン」(RIPIN)が作成中で、マスタープランのドラフトは以下の政策構成をもつ 予定である。

6 つの基幹産業――食品、医薬品・化粧品、衣料・履物、輸送機械、電子・ICT、エネルギー

3 つの裾野産業――資本財、部品産業、機械部品・部材

3 つの上流産業――農業関連、鉱業、ガス・石炭

6 つの基本要求――天然資源、人材、技術・イノベーション・創造性、インフラ、政策・規則、

金融

(2) プロジェクトの対象セクターの概要

インドネシアの持続的な成長には、道路、港湾、空港等のインフラ整備とともに、エネルギーと電力 開発をどのように対処するかが重要である。インドネシアでは、現在、埋蔵量が枯渇しつつある石油は 石炭やガスへのエネルギーシフトが既に始まっているが、2020 年頃までエネルギーの大半は石炭に偏ら ざるを得ないと予測される。一方で環境汚染は、今後も大きな問題として直面せざるを得ない。この化 石燃料と環境汚染とのジレンマは、インドネシアが幸運にも豊富なエネルギー資源を持っているからで もある。

政府としては、経済成長にあった安定的な電力供給の維持が大きな課題で、更なるエネルギーの多様 化、効率的なエネルギーの利用、エネルギーの価格政策、エネルギー使用に伴う環境問題が大きなエネ ルギー政策の柱となる。インドネシアは広大な国で、エネルギーの供給と需要、そして環境問題を考え る場合には、全体のエネルギー消費の 70%を占めるジャワ島とジャワ島以外という複数のアプローチが 必要である。例えば、ジャワ島以外の電力需要は低いため、農村の電化が一番の課題である。また、地 域にあった再生可能エネルギー源の利用を増やす工夫も必要である。

また、インドネシアの GDP 当たりのエネルギー消費は日本の5倍で、効率的なエネルギーの利用(省 エネルギー)の推進が極めて重要である。特に、最も難しいのが電気料金の値上げをともなうエネルギ ーの価格政策である。省エネルギーについては、教育・広報活動を通じた次世代の若者への啓蒙活動が 大切である。

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