3. 品目別 BtoB の現状と展望
3.11. 金融・保険サービス
3.11.1. 金融・保険サービス〜市場規模
金融・保険サービスについて、2002年のBtoB電子商取引市場規模は40億円、電子商 取引化率で約0.01%と推計される。
金融・保険サービスの品目には、銀行、証券、決済サービス、生命保険、損害保険のサ ービスが対象となる。また、金融・保険サービスの市場規模の計上方法は、事業者間で取 引された金額ではなく、事業者が受け取る手数料収入を計上している。
金融・保険サービスの市場規模推計は、TCP/IP ベースの電子商取引の事例は少ないた め、アンケート、大手金融機関、保険会社へのインタビューからの積み上げによる推計方 法をとっている。
金融サービスにおいては、大手金融機関同士の取引は、これまで専用線を利用した従来 型EDIを活用してきており、今回の定義とは異なるため市場規模に入れていない。また、
大手金融機関と主要取引先との電子商取引も上記のシステムの利用が多い。TCP/IPベー スの電子商取引を活用した金融サービスは、個人向けの銀行系のオンラインバンキングや 証券系のオンライントレードなどが主流である。法人向けでは、前記のような個人向けサ ービスに比べると事例の数は少なく、取引金額も小さい。現在確認されているBtoB電子 商取引市場規模は、銀行による企業間の振込み、残高照会等の Web-Banking で数億円、
商社系のネット決済サービス事業者やリース会社の決済サービスで約10億円の市場規模 があることが確認されている。証券では、法人のオンライントレードの手数料収入が約 10億円あったことが確認されている。
一方、保険サービスでは、個人向けサービスで、外資系企業を中心にネットでの保険商 品の販売が行われている。しかし、法人向けサービスでは、契約行為の前段階でインター ネットを活用した商品情報提供などが行われているものの、インターネットを利用して法 人向け商品の契約を行うものは確認されていない。
表 3-21「金融・保険サービス」BtoB電子商取引市場規模
前回調査 今回調査 品目 2001 年 2002 年(予測) 2002 年 EC 化率
金融・保険サービス 10 億円 20 億円 40 億円 0.01%
3.11.2. 金融・保険サービス〜2002 年の動向・背景
金融サービスにおいては、銀行間、銀行と大手系列企業との間で早期から専用線を使っ た従来型EDIを利用して、残高照会、振込み、為替予約等のElectric Bankingが行われ てきた。しかし、今回の電子商取引の定義を「インターネット技術(TCP/IP)を用いた 取引」としているため、上記のシステムで取り扱われた金額は市場規模に算入していない。
金融機関の通信ネットワークは、流れるトラヒックも非常に多く、かつセキュリティ、安 定性等で高い品質が要求される。したがって、既存のネットワークシステムを更新するに は、多大な労力とリスクを抱えることとなるため、既存のシステムを TCP/IP ベースの EDI へ移行するインセンティブを見出しにくい。今後とも大手取引先企業との間では、
これまでの専用線を使った従来型EDI の利用が続くと考えられる。しかし、この従来型 EDI を利用した取引まで含めれば、日本の銀行は世界的に非常に電子化の進んだ金融機 関であるため、見方を変えれば電子商取引がかなり進んでいる品目ともいえる。
しかし、いくつかの品目で TCP/IPベースの EDI を利用した事例も確認されている。
大手銀行において、主にトラフィックの小さい中小企業向けにWeb-Bankingを立ち上げ ている。従来までは、大手企業と金融機関との間では EDI 化が進んでいたものの、中小 企業は固定の金融機関との相対取引が中心であった。このシステムにより、中小企業と金 融機関の固定化した取引が多様化し、様々な資金調達が可能になってくると考えられる。
また、商社、銀行、リース会社等が設立したECサイト運営事業者向けの決済・与信サ ービスが登場している。決済サービスは、eマーケットプレイス等のECサイト運営事業 者に対して、決済機能を提供し、取引金額に応じた手数料を得るビジネスである。決済手 数料は取引金額に依存し、リスクが大きいため、事業者によっては、与信サービスの方に 軸足を置きつつある。あるeマーケットプレイスでは与信サービスを充実させた結果、取 引金額も大幅に増加した事例もあり、与信サービスはECサイト運営事業者にとって、重 要な機能となっている。決済・与信サービス提供事業者には商社系、銀行系、リース系と 様々な業種が母体となっている。各事業者によって扱う顧客層も異なっており、収入面で 格差はあるものの、一部の事業者では手数料収入を大きく伸ばしているところもある。
保険サービスでは、個人向けではインターネットで契約行為を行うものはあるが、法人 向けで契約行為を行うものは確認されていない。そもそも保険商品は、商品内容の複雑さ から説明力を必要とする商品特性があるため、顧客への情報提供という意味でインターネ ットの利用価値は高い。しかし、インターネットで契約行為を行うことは、法人契約とも なると金額面も個人以上に高額になるため、リスクが高い。したがって、保険サービスの 電子商取引は情報提供のみの限定的なものに留まっている。
3.11.3. 金融・保険サービス〜将来予測
金融・保険サービスのBtoB電子商取引市場規模は、2007 年に1,090億円に拡大し、
電子商取引化率では0.3%になると予測される。
今後とも銀行間や銀行と大手取引先との間で既に構築されている従来型 EDI は、セキ ュリティの問題等により、TCP/IPベースのEDIへ移行するメリットがそれほど見出せな いため、この部分での市場規模の拡大は考えにくい。しかし、トラフィックが少なく、既 存インフラが構築されていない中小企業との間ではWeb BankingなどのTCP/IPベース の取引システムが増加していくと考えられる。大手銀行の WebBankingも立ち上がった ばかりであるので、今後の市場規模拡大余地は大きいと考えられる。
ECサイト運営事業者向けの決済・与信サービスは、取扱いサイトでの取引金額に応じ て市場拡大していく。したがって、取引額の大きい顧客を取り込むことが重要だが、与信 枠や手数料率の戦略的設定等により収益を伸ばしている事業者も存在している。今後、電 子商取引の普及拡大に伴い、決済・与信サービスも順次拡大していくことと考えられる。
保険サービスでは、先に述べたように情報提供へのインターネット利用は考えられるが、
契約行為をネット上で行うことは、リスクが大きいため、今後とも契約行為がTCP/IPベ ースのシステムで行われることは難しいと考えられる。
以上のことから、金融・保険サービスは大手銀行のWebBanking を中心に TCP/IPベ ースの電子商取引が進み、市場規模を拡大するものと予測される。
表 3-22「金融・保険サービス」BtoB電子商取引市場規模・電子商取引化率調査比較
2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 EC 市場規模(億円) 40 80 150 300 570 1,090
今回調査
EC 化率 0.01% 0.02% 0.05% 0.09% 0.16% 0.31%
EC 市場規模(億円) 10 20 40 80 180 350 前回調査
EC 化率 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.1% 0.1%
0 200 400 600 800 1,000 1,200
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
前回調査 今回調査
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
前回調査 今回調査
図 3-21「金融・保険サービス」BtoB電 子商取引市場規模調査比較(単位:億円)
図 3-22「金融・保険サービス」BtoB電 子商取引化率調査比較