• 検索結果がありません。

費用最小化

ドキュメント内 i * III () 23. *1 (ページ 108-115)

第 3 章 企業の行動 92

3.3 費用最小化

労働投入量の増加とともに小さくなると考えられる。労働投入量を一定にして資本の投入 量を増やす場合も同様である。これを収穫逓減の法則(あるいは限界生産力逓減(ていげ ん)の法則)と呼ぶ。

3.2.4 規模に関する収穫

限界生産力を考えたときには他の生産要素の投入量を一定にして一つの生産要素の投入 量だけを増加させたが,生産技術は変えないですべての生産要素が同じ割合で増加した場 合の生産要素の増加と産出量の増加との関係は規模に関する収穫と呼ばれる。すべての生 産要素を同じ割合で増加させたときに生産要素の増加率と同じ割合で産出量が増加すると き規模に関して収穫一定(不変)という。生産要素の増加率以上に産出量が増加するとき は規模に関して収穫逓増(ていぞう),生産要素の増加率以下でしか産出量が増えないと きは規模に関して収穫逓減(ていげん)と言う。財の種類や生産技術によって異なるであ ろうが,一般的には産出量が少ない間は収穫逓増であるが産出量が多くなるにつれて収穫 一定となり,やがて収穫逓減の傾向を示すようになると考えられる。その理由としては,

産出量も労働投入量も少ないうちはそれらの増加によって生産工程を分けて分業体制をと ることができるようになり,一人一人がそれぞれ専門的な仕事に従事するようになって生 産性が向上する一方、生産規模があまり大きくなりすぎると全体の管理,調整が困難に なって生産性が低下するということが考えられる。規模に関する収穫を考える場合はすべ ての生産要素の増加を考えるので,限界生産力よりは逓増あるいは一定となる範囲が大き い。規模に関する収穫逓増は規模の経済性(economies of scale)とも呼ばれる。大量生産 の利益というのも同様の意味である。産業によってはかなりの生産規模(各企業が利潤を 最大化すべく選択する産出量程度まであるいはそれを越えて)になるまで規模に関する収 穫逓増の性質を持つかもしれない。特に大規模な生産設備を必要とする産業においてその ようになると考えられる。そのような場合,それらの産業には規模の経済性があると言わ れる。

3.3 費用最小化

3.3.1 等産出量曲線

生産関数は生産要素の投入量と産出物の産出量の関係を式で表すものであるが,これを 労働の投入量を横軸,資本の投入量を縦軸にとって図で表現したものが等産出量曲線であ る。等産出量曲線はある与えられた生産技術のもとで,一定の産出量を生産することがで きるさまざまな生産要素の組み合わせを表す。一定の生産技術のもとで一定の量の財を生 産するための生産要素の組み合わせを生産方法と呼ぶことにする。図3.1のI1,I2はそれ

A

B C

I1(x=100) I2(x=150)

労働投入量 資

本 投 入 量

図3.1 等産出量曲線

ぞれ産出量が100と150のときの等産出量曲線である。I1上の点A,Bはともに100の 生産が可能な資本と労働の投入量の組み合わせであり,Aは資本を多く用いる(機械化さ れた)生産方法,Bは労働を多く用いる生産方法を表している。各生産要素が生産に正の 貢献をする,言い換えれば各生産要素の限界生産力がプラスであれば,労働の投入量が減 ると産出量が減るので産出量を一定に保つには資本の投入量を増やさなければならないか ら等産出量曲線は右下がりになる。また,資本・労働のどちらかに偏った生産方法よりも 両方をバランスよく用いる生産方法の方が効率的であると仮定すると,図のように等産出 量曲線は原点に向かって凸になる。図の点CはAとBの中間的な組み合わせであるが,

この点はA,Bを通る等産出量曲線より上にあるので産出量は100より多い。等産出量曲 線は消費者の無差別曲線と図形的には(あるいは数学的には)同じ性質を持っている。

3.3.2 等費用線

労働と資本の2つの生産要素がありそれぞれの1単位当たりの価格,すなわち賃金率と 資本レンタルをw,r で表し,ある一定の産出量を得るために必要な労働・資本の投入量 をそれぞれLとKで表すと,その産出量を生産するのに要する費用cは

cDwLCrK

3.3 費用最小化 99

M

N 労働投入量

本 投 入 量

図3.2 等費用線

と表される。ある一定のcの値についてこの関係を等産出量曲線と同様に労働の投入量を 横軸,資本の投入量を縦軸にとって図に表したものを等費用線と呼ぶ。図3.2のMNにそ の例が示されている。その名のとおり等費用線上の各点が示す労働・資本の投入量の組み 合わせ,すなわち生産方法は,一定の生産要素価格(資本レンタルと賃金率)のもとで生 産にかかる費用が等しい組み合わせを表している。一本の等費用線上の各点における産出 量は異なる。等費用線の直線としての傾きの大きさは2つの生産要素の相対価格w=r 等しい。これを賃金レンタル比率と呼ぶ。賃金率が資本レンタルに比べて高くなれば等費 用線の傾きは大きくなる。そのとき縦軸の切片は横軸の切片に比べて相対的に大きくなる が,これは資本レンタルが相対的に低くなるために一定の費用で利用可能な資本の量が労 働に比べて相対的に増えることを意味する。一方,資本レンタルが賃金率に比べて大きく なれば等費用線の傾きは小さくなる。等費用線は消費者の予算制約線と数学的な性質が同 じである。

3.3.3 費用最小化の条件

同じ産出量を生産するのならば費用が安いほど企業の利潤は大きくなる。したがって企 業は自らが選んだ産出量を生産できる生産要素の組み合わせのうちで,最も費用の小さい 組み合わせを選ぼうとするであろう。これが『費用最小化問題』である。費用が最も小さ い生産方法を見つけるということは,ある一定の産出量について,等産出量曲線上の点の 中で最も低い等費用線上にある点を選ぶ,ということになる。これは予算制約線上の点の 中で最も高い無差別曲線上にある点を見つけるという消費者の効用最大化問題とは逆の問 題設定であるが,最適点が満たす条件は同じものになる。図3.3には産出量を100とした

I1(x=100) I2(x=150) M

N M0

N0 E

E0

B A

労働投入量 本

投 入 量

図3.3 費用最小化

場合の費用最小化を図示してある。この図で点A,Bはともに産出量100の生産が可能な 生産要素の組み合わせであるが,費用が最小となる点ではない。なぜならばAを通る等 産出量曲線I1上でAより少し右下の点あるいはBより少し左上の点は,A,Bを通る等 費用線よりも下にあるので同じ100の産出量をより低い費用で生産できる。このように

考えるとx=100の等産出量曲線上で最も低い費用となる点は,その点の右下の点も左上

の点もその点を通る等費用線より上にある点ということになる。それは等産出量曲線と等 費用線が接する点Eである。点Eより右下の点も左上の点も点Eを通る等費用線より上 にあり費用が高い。同様にして産出量がx=150のときに費用が最小となる資本と労働の 組み合わせは点E0で示される。図からもわかるように,費用最小化問題は,予算制約線 と無差別曲線とが接する点が最適な消費量になるという消費者の効用最大化問題と同じ形 になっている(正確には70ページの支出最小化と同じ形)。

3.3.4 生産要素価格と費用最小化

等費用線は一定の生産要素価格のもとで描かれているが,生産要素の相対価格が変化す ると等費用線の傾きが変わる。資本レンタルが一定で賃金率が高くなると,賃金レンタル 比率は大きくなって等費用線の傾きは大きくなり,それによって費用が最小となる生産要 素の組み合わせも変わる。図3.4にその様子が描かれている。図のM0N0はMNと比べて 賃金率が高くなったときの等費用線であり,費用が最小となる生産要素の組み合わせは点 Eから点E0に移り,労働投入量が減って資本投入量が増えている。一般に等産出量曲線 が原点に対して凸であれば,相対的に価格の高くなった生産要素の投入量が減り,安く

3.3 費用最小化 101

I1(x=100) M

N M0

N0 E

E0

労働投入量 資

本 投 入 量

図3.4 生産要素価格と費用最小化

なった生産要素の投入量が増える。これは,消費者の行動についての分析の中で,価格の 変化に伴う消費量の変化の内,代替効果(効用一定のもとでの消費量の変化)によるもの と同じ形になっている*5

3.3.5 費用関数と費用曲線

等産出量曲線と等費用線とを用いてある財のさまざまな産出量に対して費用が最小とな る生産要素の組み合わせを見つけることができれば,産出量とその産出量を生産するのに 必要な費用との関係が得られる。それを

C DC.x/; xは産出量

という関数で表すことができる。これを費用関数あるいは総費用関数と呼ぶ。費用関数を 図3.5に描かれているように曲線で表したものを費用曲線(総費用曲線)と呼ぶ。ここで は産出量がいくらでも細かく分割できるものと仮定して費用曲線をなめらかな曲線として 描いている。費用関数や費用曲線は各産出量水準における最小の費用を表している。産出 量が増えれば必ず費用は増えるから費用曲線は右上がり(傾きがプラス)である。

*5生産要素価格の変化による生産要素投入量の変化は同一の等産出量曲線上での変化を考えて いるので,同一の無差別曲線上での価格の変化による消費の変化を考える代替効果と同じ形 になる。

ドキュメント内 i * III () 23. *1 (ページ 108-115)