第 3 章 企業の行動 92
3.17 外部性,外部経済・外部不経済
企業の利潤や消費者の効用が他の企業や消費者の活動によって影響を受ける場合外部性 が存在すると言う。よく取り上げられる例として畑で花を栽培する業者とその近くで蜜蜂 を飼う養蜂業者との関係がある。蜜蜂が花の蜜を吸ってくることによってより多くの蜂蜜 が生産できるが,この花は養蜂業社が栽培しているのではないから費用はかからないので 産出量が増えた分だけ利潤が増える。このように他の企業の活動がある企業の生産,利潤 を増加させる場合外部経済が存在すると言う。逆の例としては水質汚染などの公害が上げ られることが多い。ある川の下流から水を取ってジュースを作っている企業があり,その 川の上流では化学肥料を生産する企業があって汚染した排水を川に流しているとする。下 流のジュース会社では汚染した水を浄化しなければ商品になるジュースが作れず余計な費
3.17 外部性,外部経済・外部不経済 147 用がかかるが,本来これはジュース会社自身の責任ではない。このように他の企業の活動
がある企業の生産,利潤を減少させたり費用を増大させる場合,外部不経済が存在すると 言う。簡単な数値例を考えてみよう。X財を生産する競争的な企業Aがあり財の価格は 100,費用関数は産出量をxとして
cADx2
で表される。一方Y財を生産する競争的な企業があって財の価格は90,費用関数は産出 量をyとして
cB D2y2Cxy
であるとする。すなわち企業Aの産出量が増えれば(Y財の産出量を一定として)企業B の費用が増えるような外部不経済が存在する。このとき企業Aの利潤は
AD100x x2
となるから利潤を最大化する産出量は50である。それを前提にすると企業Bの利潤は B D90y 2y2 50y
となるので利潤を最大化する産出量は10である。しかし,社会全体にとって本来企業A の生産に伴う費用はx2だけではなくxyも含まれるものと考えなければならない。企業 A,Bを合わせた利潤は
D100xC90y x2 2y2 xy
である。これが最大化されるようにx,yを決めるとすると(ここは偏微分を使う)
@
@x D100 2x yD0 (3.20)
@
@y D90 4y xD0 (3.21)
という条件が得られる。(3.20)はyを一定としたときに利潤の合計を最大化するxの値 とy の関係を示すものであり,(3.21)はx を一定としたときに利潤の合計を最大化す るyの値とxの関係を示すものである。これらを連立させて解けば,x D 3107 44:3, y D 807 11:4となり,企業がそれぞれ選んだ産出量よりもXは少なく,Yは多い方が 全体の利潤が大きくなることがわかる*27。ここで競争的な市場を仮定しているので財の 価格が一定であれば消費者の消費量は変わらず(両企業の利潤の変化が消費に及ぼす効果 は無視できる程度であるとする)企業の利潤が社会全体にとっての利益であると考えて よい。
*27(3.20)よりxD50 12yを求め,それをに代入してyで最大化しても同じ結果が得られ る。
を与える企業Aに課税することを考えよう(この企業に対する課税であり,X財の生産 全体への課税ではない)。そのとき1単位当りいくらの税を課せばよいであろうか。企業 Aの産出量が310
7 となるように税を課せばよいのでこの企業の利潤が AD 620
7 x x2
となるようにすればよい。したがって1単位当り100 6207 D 807 の税を課すことになる。
そのとき企業Bの利潤は
B D90y 2y2 310 7 y となるので,利潤を最大化する産出量は 80
7 となり社会的に望ましい生産が行われる。こ のように外部不経済を発生させる企業に課税してその活動を抑制させるような税は(提唱 者の名前をとって)ピグー税と呼ばれる。外部経済を発生させる企業に対しては逆に補助 金を与えるべきである。
■外部性と減産補助金について ある企業の生産に外部不経済がある場合にその企業に税 を課すことによって望ましい産出量に減らすことができるが企業の負担は増える。そこで 税を課すのではなく補助金を与えることを考える。企業A,Bの産出量をx,yとしてそ れぞれの利潤が次のように表されるとしよう(価格は一定であるとする)。
AD80x 2x2 B D80y y2 xy 企業Aの利潤を最大化する産出量は20なので
B D80y y2 20y
より企業Bの利潤を最大化する産出量は30である。一方両方の利潤の和は ACB D80x 2x2C80y y2 xy
となるからx,yで微分して
80 4x yD0; 80 2y x D0
より,xD 807 < 20; yD 2407 > 30が求まる。これが社会的に最適な産出量である。この 産出量を実現するためには企業Aの利潤が
AD 320
7 x 2x2C定数
3.18 公共財 149