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交換経済の均衡とパレート効率性

ドキュメント内 i * III () 23. *1 (ページ 69-72)

第 2 章 消費者の行動 25

2.7 交換経済とパレート効率性

2.7.2 交換経済の均衡とパレート効率性

化する。ここではワルラス的な調整過程によって価格が変化するものと考える。消費者A のXに対する需要が消費者BによるXの供給を上回っている場合にはXに超過需要が 存在し,Xの価格は相対的に上昇してYの価格は下落する。逆に消費者BによるXの供 給が消費者AのXに対する需要を上回っている場合にはXに超過供給が存在することに なり,Xの価格は相対的に下落しYの価格は上昇する。

Xの価格が上昇した(正確にはXのYに対する相対価格が上昇した)ときの消費者A の消費量の変化を考えてみよう。以前の節で考えたように所得が一定でXの価格が上昇 すると予算制約線はY軸上の切片,点Mを不変として傾きが大きくなるが,ここでは変 わらないのは点Mではなく消費者Aの初期保有量を示す点Aである。したがって予算 制約線は点Aを支点として回転するように変化する。図2.20のM0N0がXの価格が上昇 した後の予算制約線であり,点Eは価格上昇前の消費,点E0は価格上昇後の消費を表す。

Xの価格の上昇は代替効果によってXの消費を減少させるとともに,Yを自分の消費量 以上に多く保有する消費者Aにとって,Xの価格の上昇は実質所得の減少につながるか ら,Xが上級財ならば所得効果によっても消費が減る*14。Yの消費は代替効果によるプラ スの効果と所得効果によるマイナスの効果のいずれが大きいかによって決まるが,この図 では所得効果の方が大きく,Yの消費も減少するケースが描かれている。消費者Aの無 差別曲線がM0N0と,点Eより左上の位置で接している場合にはX財価格の上昇によっ てYの消費量が増加する。

予算制約線が逆にM0N0からMNに変化したと考えると,それはY財の価格が上昇し た場合を表すものと見ることができる。消費はE0からEへ変化する。Xの消費量はプラ スの代替効果と,保有するYの価格上昇による実質所得の増加がもたらすプラスの所得 効果が相まって増加するが,Yの消費量はマイナスの代替効果とプラスの所得効果のいず れが大きいかで決まる。

2.7 交換経済とパレート効率性 59

M

N M0

N0 A E

E0

Xの量 Y

の 量

図2.20 価格変化と消費-消費者Aのケース

に描かれている。点EのOを原点とする座標,すなわちOC,OBの長さががそれぞれ消 費者AのX,Yの消費量であり,同じく点EのO0を原点とする座標,O0F,O0Dの長さ がそれぞれ消費者BのX,Yの消費量を表している。図の長方形の横の長さはOC+O0F に等しく,二人合わせたXの消費量,したがって初期保有量になっており,縦の長さは OB+O0Dに等しく,二人合わせたYの消費量,初期保有量を表す。図には書かれていな いが,点AのOを原点とする座標が消費者Aの初期保有量,O0を原点とする座標が消費 者Bの初期保有量に等しい。この図の点Eにおいては,消費者Aの無差別曲線,消費者 Bの無差別曲線および予算制約線MNの三つが互いに接している。言い換えれば,MN が二つの無差別曲線の共通接線になっている。†ENRと†AMQとはいわゆる平行線の 錯角で等しいが,†ENRは図2.18のMNの傾きに等しく,また†AMQは図2.19にお けるMNの傾きに等しい。これらが等しいということは,図2.21において消費者Aは点 Oを,消費者Bは点O0を原点として同じ価格のもとで消費量を決めているということを 意味する。したがって,点Eは点Aを初期保有量として予算制約線MNのもとで消費者 A,Bそれぞれが最適な消費量を選択している状態を表している*15

点Eより右上の点は,消費者Aにとって原点から見て点Eより遠くにありより効用が 大きい望ましい点であるが,消費者Bにとってはより原点O0に近いので効用が小さい点 である。同様に,点Eより左下の点は消費者Bにとってはより効用が大きい点であるが,

*15このような図はそれを発案した人の名をとってエッジワース・ボックス(Edgeworth box) 呼ばれる。本書に出てくる様々な名称,ロイの恒等式,スルツキー方程式,パレート効率性,

ラグランジュ乗数法などもそれらを研究した経済学者や数学者の名前をとったものであるが,

どのような人物か興味のある人は各自調べていただきたい。

M

N Q

R

B D

C F

E A

O

O0

図2.21 交換経済の均衡とパレート効率性

消費者Aにとっては効用が小さい点になり,両者の無差別曲線の間にある右下,左上の点 は両方の消費者にとってより効用が小さい点になる。したがって点Eにおける二人の消 費者への財の配分を変化させると,必ずどちらかの消費者の効用が下がる,言い換えれば 点Eから両方の消費者の効用を高めるように配分を変更することはできない。このよう な状態をパレート効率的(Pareto efficient)(またはパレート最適(Pareto optimal))である と言い,経済状態や政策の望ましさの判断規準の一つになっている。

厳密に言えば,一方の効用を下げずにもう一方の効用を上げることができないとい う状態がパレート効率的である。もしパレート効率的な状態において,消費者に対 する財の配分を変更しても2人の消費者(一般的にはすべての消費者)の効用が変 らない場合は変化前,変化後ともにパレート効率的である。一般的にはそうである が2人の消費者の無差別曲線が凸であれば均衡から財の配分を変えると必ずどちら かの消費者の効用が下がる。ある状態がパレート効率的でなければ一方の効用を下 げずにもう一方の効用を上げることができる別の配分がある。次の項の代数的証明 を参照。

各消費者の無差別曲線はその効用水準に応じて無数に描くことができるから,二人の無 差別曲線が接する点も無数にある。その点で互いの無差別曲線に接する共通の接線を引 き,その接線上に適当に一点をとれば,その点を各消費者の初期保有量とし共通接線を均 衡価格とする別の均衡を求めることができる。図2.22参照。このようにして求められた 均衡点を結んだ曲線は契約曲線(contract curve)と呼ばれる。図のEとE0を通る太い線 が契約曲線である。契約曲線は二人の消費者についてパレート効率的な点(の集合)を表

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M

N E

A E0

A0

O

O0

図2.22 契約曲線

している。以上のことから次のことが言える。

1. 交換経済の均衡はパレート効率的である。(厚生経済学の第一定理)

2. あるパレート効率的な点は初期保有量を適当にとることによって交換経済の均衡と なるようにすることができる。(厚生経済学の第二定理)

『初期保有量を適当にとる』とは,各消費者が持っている財を再配分配することと解釈で きる。

図2.22からわかるように,初期保有量が異なれば均衡も異なる。特に二人の消費者の 初期保有量に大きな格差(あるいは不平等)があれば,均衡における財の消費量について も格差が生じる。図2.22の点Eと点E0とを比べると,点E0の方が消費者Aにとって,

点Eの方が消費者Bにとって有利な状態である。

したがって,パレート効率性という規準は,出発点をそのままにして効率的な調整を考 えるということであり,社会的公正とか平等というような概念は含まれていない。パレー ト効率性を維持しながらより平等な状態を実現しようとすれば上で述べたように初期保有 量を再分配する必要がある。

この節で述べた議論は消費者の数が多い場合にも一般的に当てはまる。

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