第 2 章 消費者の行動 25
2.4 価格の変化と消費
2.3.3 需要の所得弾力性
所得の変化に対して財の需要がどのように反応するかを表す指標が需要の所得弾力性で ある。式で表現すると以下のようになる。
需要の所得弾力性D 需要の変化率所得の変化率
先頭にマイナスはつけない。所得が10%増えて需要が20%増えれば需要の所得弾力性 は2になり,所得が5%減って需要が15%減れば需要の所得弾力性は3である。需要の 所得弾力性は上級財についてはプラス,下級財の場合はマイナスの値をとる*8。主食や電 気・ガス・水道など生活必需品は所得が少なくてもある程度消費しなければならないが,
所得が増えても消費量がさほど多くならないと考えられるので需要の所得弾力性は小さく なる,具体的には1より小さいプラスの値になると考えられる。一方,教養,娯楽関係へ の支出など生活にゆとりをもたらすような消費項目については需要の所得弾力性は1より 大きくなるものと考えられる。
2.4 価格の変化と消費 45
U1
U2
U3
M1
N1 N2 N3
A
B C
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.9 価格の変化と消費
2.4.2 代替効果と所得効果
上で述べたように,所得が一定のとき一つの財の価格が低下すれば消費者の効用が大き くなることがわかった。しかしこれは2財の相対価格の変化によってもたらされたもので はなく,一方の財の価格の低下が消費者の実質所得(所得の実質的な価値)を高めたため に起きたことであると考えられる。そこで価格の低下が財の消費量におよぼす効果を,相 対価格の変化によるものと実質所得の変化によるものに分けて考えてみよう。図2.10に 描かれているようにX財の価格が低下して予算制約線がM1N1からM1N2に移ると,消 費者にとって最適な(最大の効用を達成する)消費量の組み合わせはAからBへ移る。
もしX財とY財の相対価格と消費者の所得が,消費者の効用が変わらないように変化し たとすると,予算制約線は図のM01N01のようになる。すなわち,新しい予算制約線M1N2 と平行で,もとの無差別曲線U1に接するような直線である。図のA0はその予算制約線 のもとでの最適な消費の組み合わせを示している。この図によってXの価格の低下がX, Yの消費に及ぼす効果を以下のように2段階に分けて考えることができる。
1. AからA0への変化
これは効用一定のもとでの相対価格の変化による消費量の変化であり,代替効果と 呼ばれる。無差別曲線が右下がりであるから,代替効果においては必ず相対的に安 くなった財(今の例ではX)の消費が増え,高くなった財(今の例ではY)の消費
U1
U2
M01 M1
N1 N01 N2
A
B A0
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.10 代替効果と所得効果
が減る。
2. A0からBへの変化
この関係は先に説明した価格一定のもとでの所得の増加による消費の変化と同じ形 になっている。つまり,Xの価格の低下に伴う実質所得の増加の効果を表すもので ある。この効果を所得効果と呼ぶ。上級財の場合は所得効果によって消費が増え,
下級財の場合は減る。図2.10に示されているのは上級財の場合である。
代替効果と所得効果を整理すると表2.8のようになる。?で示したところは代替効果と所 得効果の合計がどのようになるか一概には言えないケースである。Xが下級財の場合,そ れ自身の価格の低下によって消費量が増えるかもしれないし減るかもしれない。減る場 合,その財は以下で説明するギッフェン財と呼ばれる。Yが上級財の場合,Xの価格の低 下によってYの消費量は増える場合もあるし減る場合もある。これは図2.9に表されて いるとおりである。
2.4.3 ギッフェン財
価格の変化が財の消費に及ぼす効果を分析することによって右下がりの需要曲線が導か れたが,場合によっては需要曲線が右下がりにならないこともあるかもしれない。需要曲 線が右下がりにならないとは価格の低下によってかえってその消費が減少する(価格の上 昇によって消費が増加する)財があるということである。表2.8よりそのようなケースは
2.5 労働サービスの供給 47