第 2 章 消費者の行動 25
2.1.1 消費者行動理論入門 - ビールと大福の世界
2.1.1.2 予算の制約と効用最大化
上で述べた消費者Aが1週間に3000円の所得を得てビールと大福を買って消費すると き,最も効用が大きくなる消費の仕方,つまりビールと大福への予算の配分について考え てみよう。今,ビール1本の価格が200円,大福1個の価格が100円であるとする。ビー ルの消費量をxで,大福の消費量をyで表すと次のような式が得られる。
200xC100yD3000
この式は予算制約式と呼ばれる。3000円の範囲内でできるだけ効用を大きくしたいと考 えるから予算はすべて使った方がよいので予算制約式は不等式ではなく等式になる。
ビールの消費量が8から13までのケースについて大福の消費量とこの消費者の効用を 求めると表2.3が得られる。
これ以外のケースも同様にして求められる。この表でビールの消費量が8の場合の
『ビールの限界効用と価格の比』とは,表2.1の8本目のビールの効用79をビールの価格 200で割った値を指し,大福の消費量が14の場合の『大福の限界効用と価格の比』とは,
表2.2の14個目の大福の効用23を大福の価格100で割った値を指している。他のケー スも同様である。この表からビールが11本で大福が8個の場合が最も効用が大きいこと がわかる。そのとき各財の限界効用と価格の比が以下の関係を満たしている。「価格の比」
は「相対価格」とも呼ばれる。
2.1 効用と無差別曲線 29 ビールの
消費量
大福の
消費量 効用 ビールの限界効 用と価格の比
大福の限界効 用と価格の比
8 14 1220 0.395 0.23
9 12 1248 0.38 0.27
10 10 1265 0.365 0.31
11 8 1271 0.35 0.35
12 6 1266 0.335 0.39
13 4 1240 0.32 0.43
表2.3 効用最大化
効用が最大となる消費量の組み合わせ(ビールの消費量と大福の消費量の組み合わ せ)においては,『ビールの限界効用と価格の比』が『大福の限界効用と価格の比』
に等しい。すなわち
ビールの限界効用
ビールの価格 D 大福の限界効用大福の価格 が成り立つ。この式は
ビールの限界効用
大福の限界効用 D ビールの価格大福の価格
と書き直すことができるので,効用が最大となる消費量の組み合わせにおいては
『ビールの限界効用と大福の限界効用の比』は『ビールの価格と大福の価格の比』に 等しい。
ここで
ビールの限界効用
大福の限界効用 Dビールの大福に対する限界代替率 と呼ぶことにすると,上の条件は
効用が最大となる消費量の組み合わせにおいては,ビールの大福に対する限界代替 率はビールと大福の価格の比に等しい。
と表現される。
このように消費者は,各財の価格と自分の所得(あるいは予算)との関係を考えながら,
各財の消費量のバランスを図って消費をしている。
上で述べた条件をちょうど満たす消費量の組み合わせが存在しなければ,その前後すな わち『ビールの限界効用と価格の比』と『大福の限界効用と価格の比』との大きさの関係 が入れ替わる前後の二つの消費量の組み合わせのうちのいずれか(あるいは両方)が,効 用を最大にする消費量の組み合わせになる。その例を考えてみよう。別のある消費者(消
は表2.2に替えて表2.4のようであるとする。
1個目の大福の効用 50 1個大福を食べて得られる効用 50 2個目の大福の効用 48 2個大福を食べて得られる効用 98 3個目の大福の効用 46 3個大福を食べて得られる効用 144 4個目の大福の効用 44 4個大福を食べて得られる効用 188 5個目の大福の効用 42 5個大福を食べて得られる効用 230 6個目の大福の効用 40 6個大福を食べて得られる効用 270 7個目の大福の効用 36 7個大福を食べて得られる効用 306 8個目の大福の効用 32 8個大福を食べて得られる効用 338 9個目の大福の効用 28 9個大福を食べて得られる効用 366 10個目の大福の効用 24 10個大福を食べて得られる効用 390 11個目の大福の効用 20 11個大福を食べて得られる効用 410 12個目の大福の効用 16 12個大福を食べて得られる効用 426 13個目の大福の効用 12 13個大福を食べて得られる効用 438 14個目の大福の効用 8 14個大福を食べて得られる効用 446
表2.4 大福の効用と限界効用(消費者B)
この消費者Bが消費者Aと同じ予算制約式
200xC100yD3000
のもとで効用が最大になるようにビールの消費量xと大福の消費量yを決める。消費者 Aの場合と同様にビールの消費量が8から13までのケースについて大福の消費量と消費 者Bの効用を求めると表2.5が得られる。
ビールの 消費量
大福の
消費量 効用 ビールの限界効 用と価格の比
大福の限界効 用と価格の比
8 14 1162 0.395 0.08
9 12 1218 0.38 0.16
10 10 1255 0.365 0.24
11 8 1273 0.35 0.32
12 6 1272 0.335 0.4
13 4 1254 0.32 0.44
表2.5 効用最大化(消費者B)
2.1 効用と無差別曲線 31 この表から,消費者Aの場合と同じくビールが11本で大福が8個の場合が最も効用が
大きいことがわかるが,そのときビールの限界効用と価格の比は大福の限界効用と価格 の比に等しくはなく,大福の限界効用と価格の比の方が大きい。このようなケースでは,
ビールの限界効用と価格の比の方が大きい最大のビール消費量11(大福の消費量8)の場 合と,大福の限界効用と価格の比の方が大きい最大の大福消費量6(ビールの消費量12) の場合とのいずれか(あるいは両方)が効用が最大となる消費量の組み合わせであるが,
この例ではビールが11本で大福が8個の場合の効用の方がわずかではあるが大きい。