第 2 章 消費者の行動 25
2.1.3 無差別曲線
2種類の財をX財とY財として,それらの消費量の組み合わせ.X; Y /を,横軸にX財 の消費量,縦軸にY財の消費量をとってグラフ上の点で表すことができる。.X; Y /はそ の点の座標である。
上で説明した2 財の場合の選好順序を図に表したものが無差別曲線 (indifference
curve)である。図2.1に2財をX,Yとしたときの無差別曲線が描かれている。無差別
曲線とは,ある消費量の組み合わせと,それと効用が等しい(無差別な)すべての組み合 わせとを曲線で結んで描かれたものである。(3,2)と(2,3)が無差別であると思う消費者の 無差別曲線はその両点を通る。(3,2)の方が(2,3)より望ましいと思う消費者については,
その消費者がY(先の例では卵)をあまり好まない消費者であっても,Yの量が多けれ
ば,(2,10)ならば(3,2)より望ましいというような組み合わせがあるであろう。とすれば,
(2,3)と(2,10)との間に(3,2)と無差別な点(組み合わせ)を見つけられるはずであり,そ
の消費者の無差別曲線は(3,2)とその点を通る。(2,3)を(3,2)より好む消費者については,
*5たとえばパン,卵,コーヒーの3財の消費量の組み合わせの比較を考えればよい。その場合 消費量の組み合わせは.1; 3; 2/のように表され,図形としては空間内の点に対応する。
U1 U2
A B
C
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.1 無差別曲線
X(先の例ではパン)をあまり好まないとしても,それが生活に欠かせないものであれば,
Xの量が少なくなると,(0.1,3)ならば(3,2)の方がより望ましいという点があるであろう。
そうすると(2,3)と(0.1,3)の間に(3,2)と無差別な点を見つけて無差別曲線を描くことが
できる。(3,2)に限らず消費量の組み合わせを表すあらゆる点について,それと無差別な
点を結ぶ無差別曲線を描くことができる。
図では点A(またはC)と無差別な点が無差別曲線U2によって表されている。
無差別曲線は次のような性質をもつ。
1. 無差別曲線は右下がりである。
図2.1の点Bは点AよりXの量が多くYの量はAと等しい消費の組み合わせを 示しているから,明らかに点Bの方が点Aより効用が高い。したがって点Aと等 しい効用を与え,Xの消費量が点Bと等しいような組み合わせは,Yの消費量が点 Aよりも少ない点Cのような組み合わせでなければならない。すなわち,点Aと 無差別な点CはAよりも右下に位置しなければならないので無差別曲線は右下が りとなる。
2. 無差別曲線には幅がない。
図2.1の点Aよりほんの少し右側の点が表す組み合わせも,ほんの少し上の点が表 す組み合わせも点Aよりわずかではあっても明らかに大きな効用を与えるもので なければならない。したがってそれらの点は点Aと同じ無差別曲線上にあること はできないので,無差別曲線は幅のない曲線である。
以上は選好の単調性から導かれる性質であるが,さらに選好順序の推移性の仮定に
2.1 効用と無差別曲線 35
U1
U2
U1
U2
A0 A
B C
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.2 互いに交わる無差別曲線
よって無差別曲線は次の性質をもつ。
3. 2本の無差別曲線は互いに交わらない。
もし交わったらどうなるかを考えてみよう。図2.2において,点Aと点Cが無差 別で点Cと点Bが無差別であるから,推移性の仮定により点Aと点Bも無差別 でなければならない。一方点A0と点Bは同じ無差別曲線上にあるので無差別であ るから,やはり推移性の仮定により点Aと点A0が無差別ということになってしま う。しかし,点A0は点Aの左下にあるからXの消費量もYの消費量もAより少 なく,したがって効用が低いから矛盾する。このようなことになったのは二つの無 差別曲線が交わっていたからである。
無差別曲線はX-Y平面上のある点を通る曲線として,いくつも,正確には無数に描くこ とができる。より右上に位置する無差別曲線は左下の無差別曲線よりも大きい効用水準に 対応している。
無差別曲線は地図に描かれている等高線(標高が等しい地点を結んだ線)と似ている。
というより無差別曲線は(標高の代わりに)二つの財の消費量の組み合わせから得られる 効用の大きさが等しい点を結んだ等高線に他ならない。山の頂上(頂点)の回りに円を描 くように閉じた曲線になっている地図上の等高線と違って,(単調性の仮定によって)消 費量が多ければ多いほど効用が大きくなるので無差別曲線には頂点がなく,また常に右下 がりになっているので閉じてはいない。
A
B C
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.3 無差別曲線の凸性