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消費者余剰と生産者余剰

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第 3 章 企業の行動 92

3.8 消費者余剰と生産者余剰

とっての価値を表すのが需要曲線Dである。1単位目の消費は点Aに対応した価値があ り,消費者はその1単位目の財にはOAの金額を支払ってもよいと考える。同様に点K に対応した財の消費にはp0支払ってもよいと思い,点Jに対応した財の消費にはp 払ってもよいと思う。財の消費者にとっての価値,すなわち支払ってもよいと思う額を合 計すると台形AOJEの面積になる。これはOJの消費量に対して消費者が支払ってもよい と考える最大の金額を表しているから,その消費から得られる消費者の効用を貨幣で測っ たものを表していると見なされる。消費者余剰はこの台形AOJEの面積から実際に消費 者が支払う金額である長方形COJEの面積を引いたものになっている。支払ってもよい と考える金額から実際に支払う金額を引いた残りなので余剰と呼ばれる。これは消費から 得られる効用の貨幣価値と支払う金額の差に等しい。

ここで実際に支払う金額を引く理由は以下の通りである。政府の政策やその他何ら かの事情によってある財(X財とする)の消費量が変化すればその財の消費から得 られる人々の効用も変化する。それが「支払ってもよいと考える金額」の変化に表 れる。一方X財の価格が変化すると一定の消費量を実現するために必要な支出額 が変る。価格が上がれば支出は増えるが,所得が変らない限りそれによって他の財 に対する支出額が減り,それらの価格が変っていなければ消費量が減って効用が下 がる。X財の価格が下がった場合には逆の変化が起きる。したがってX財の消費 に「実際に支払う金額」の変化は他の財の消費から得られる効用に影響する。「支 払ってもよいと考える金額」と「実際に支払う金額」とは消費者の効用に逆の影響 を与えるので,前者から後者を引くことによって上で説明した2つの効用の変化を 消費者余剰の変化によって表すことができる。

一方生産者余剰は,均衡価格を表す直線と供給曲線との間の部分の面積である。供給曲線 が企業の限界費用を表していることを考えれば,生産者余剰は企業の収入である長方形 COJEの面積から可変費用の合計である台形BOJEの面積を引いたものであり,企業の利 潤に相当するものである。正確には利潤と固定費用の和である。固定費用は供給曲線には 表されていない。消費者余剰と生産者余剰とを合わせたもの,すなわち三角形ABEの面 積は総余剰と呼ばれ,この財の市場についての社会的厚生を表すものと見なされる。固定 費用は社会的厚生に含まれるべきものではないが短期的には一定であるから政策の効果を 分析するときなどには問題にならない。生産者余剰が総余剰に含まれることについては,

消費者は労働者であるばかりでなく資本家でもあり企業の利潤も国民の所得に含まれ,そ の所得によって財の消費をすることができるから生産者余剰も社会的厚生に含まれるべき ものであると考えることができる。政策の変化などによって生産者余剰すなわち利潤に変

で,ここで貨幣というのはそれで購入可能な財一般を指している。その意味では貨幣ではな く『購買力』あるいは『所得』と呼んだ方がよいかもしれない。

3.8 消費者余剰と生産者余剰 123 化があれば,所得が変化し消費者の消費も影響を受ける。ただし,ある特定の財の需要曲

線は消費者の所得が一定であるとの仮定のもとに描かれているので消費者余剰の定義にお いては生産者余剰の変化による消費の変化は考慮されていない。また財の価格変化がもた らす所得効果も無視されている。しかし,消費される財の種類がたくさんあって1つの財 が消費者の予算に占める割合が小さければ生産者余剰の変化や所得効果による消費の変化 は小さくなるであろう。

もし何らかの理由で(たとえば政府の規制によって)この財の価格がpからp0に上 昇し,需要の減少によって消費量がOKになったと考えてみよう。消費者余剰は三角形 AHIの面積になり,生産者余剰は台形HBGIの面積になる。生産者余剰は増えるが消費 者余剰がその増加分以上に減り,総余剰は台形ABGIの面積になって価格がpのときよ り三角形IGEの面積だけ小さくなる。同様に価格がpより低いp1になると供給が減っ てやはり消費がOKまで減る。この場合は生産者余剰が三角形LBGに,消費者余剰が台 形ALGIになり,総余剰は三角形IGEの面積の分だけ小さくなる。したがって総余剰は 均衡価格において最大となることがわかる。これは競争経済における消費と生産の効率性 を示すものである。

■生産者余剰と消費者余剰–少し数学的な取扱い 競争的な企業の利潤は次のように表さ れる。

Dpx c.x/ f

pは財の価格,xは産出量,c.x/は固定費用を除く費用すなわち可変費用,定数f は固 定費用である。各企業はpを与えられたものとして利潤を最大化すべくxを決める。そ の条件はこの式を微分して0とおくことによって

p c0.x/D0

となる。c0.x/は限界費用である。pが変化するとそれに応じて限界費用がpに等しくな るようにxを決めるから,限界費用曲線が企業の供給曲線となる。供給曲線が右上がりな のは限界費用曲線が右上がりであるという仮定を反映している。各々の価格の値に対して 各企業の供給を合わせたものが市場全体の供給を表す。各企業について価格と限界費用曲 線の間の部分の面積は次のようになる。

Z x 0

.p c0.x//dxDŒpx c.x/x0 Dpx c.x/; c.0/D0とする

xは実際に選んでいる産出量である。c0.x/はc.x/を微分して得られたものであるから c0.x/を積分するとc.x/になる。この式は各企業の利潤に固定費用を加えたものに等し い。これが各企業の生産者余剰であり,それをすべての企業について合計したものが市場 全体の生産者余剰である。市場の供給曲線は市場全体の産出量に対応した企業の限界費用 を表しているので,価格と供給曲線の間の面積が市場全体の生産者余剰を表す。貿易政策

で生産者余剰の変化は政策の効果を表す1つの指標になる。

次に消費者余剰を考える。財をX財とそれ以外に分類し,それ以外の財(Y財と呼ぶこ とにする)はまとめて考えその価格は1であるとして(財の消費量の単位を適当にとれば よい),消費者の効用と予算制約式が次のように表されるものとする。

u.x; y/; pxCyDm

xはX財の消費量,pはその価格,yはY財の消費量,定数mは消費者の所得である。

各消費者にとってはmは与えられたものである。pxCy Dmよりy Dm pxとして 効用関数に代入すると

u.x; m px/

とxだけの式で表される。これをxで微分して0とおくと ux puyD0

となる。ux,uyはX財,Y財の限界効用である。この式から ux

uy Dp

が得られる。これはX財のY財に対する限界代替率が相対価格に等しいことを意味する ものである。ここでさらにuyが一定で1に等しいものと仮定すると

ux Dp

が得られる。これは効用関数をu.x; y/D u.x/Cy と仮定して計算した結果u0.x/Dp と同じであり,X財の限界効用がその価格に等しいことを意味する。効用は序数的効用で あるから効用や限界効用の値そのものには意味がなく限界代替率のような相対的な比較に 意味がある。Y財の限界効用uyが1で一定であると仮定するとu0.あるいはux/,u.x/

はY財1単位の効用を基準としたX財の限界効用,効用を意味することになる。Y財の 価格を1と仮定しているから,このY財は事実上お金(貨幣あるいは所得)を表してい る。すなわちu0u.x/はお金を単位として表現したX財の限界効用,効用である。

消費者の需要曲線は価格と需要との対応関係を表したものであるが,その価格が限界効 用に等しくなるように消費量すなわち需要を決めるというのがこの式の意味することであ る。したがって個人の需要曲線は消費量と限界効用の対応関係を表していることがわか る。市場の需要曲線は各価格における個々の需要を合計したものであるから市場全体の 需要と消費者の限界効用の対応を表す。需要曲線と価格の間の部分の面積は次のように なる。

Z x 0

.u0.x/ p/dxDŒu.x/ pxx0Du.x/ px; u.0/D0とする

3.9 独占企業の行動 125

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