• 検索結果がありません。

動学的なゲームと部分ゲーム完全均衡

ドキュメント内 i * III () 23. *1 (ページ 196-200)

第 4 章 ゲーム理論入門 172

4.3 動学的なゲームと部分ゲーム完全均衡

X Y Z

Aの X 4, 4 0, 4 3, 6 戦略 Y 4, 2 2, 0 3, 3

となる。このゲームではBにとってX,YがともにZに強く支配されているのでそれら を削除するとナッシュ均衡(X,Z),(Y,Z)の2つの状態しか残らない。一方もとのゲーム においてAにとってXがYに弱く支配されているのでそれも消去するとナッシュ均衡

(X,Z)が消えてしまう。ただしBにとってYがXに弱く支配されているので,それを先

に消去するとゲームは

     Bの戦略

X Z

Aの X 4, 4 3, 6 戦略 Y 4, 2 3, 3 Z 2, 2 1, 0

のようになりAにとってXがYに弱く支配される関係ではなくなるのでZのみが消去 され2つのナッシュ均衡はともに残る。このように弱く支配される戦略を消去する順番に よっては残る均衡が異なることがある。

4.3 動学的なゲームと部分ゲーム完全均衡

前節では二人のプレイヤーがそれぞれの戦略を同時に1回限り選択するという構造を もったゲーム,同時決定ゲームを考えた。先に述べたように同時にというのは時間的に同 時であるかどうかということではなく,各プレイヤーが相手がどのような戦略を選んだか を知ることができない状況で自分の戦略を選ばなければならないという意味である。それ に対して一方のプレイヤーが先に意思決定をして行動を選び,その結果を見てからもう一 方のプレイヤーが行動を選ぶという構造をもったゲームも考えられる。プレイヤーが交互 に行動を選ぶのでこのようなゲームは交互行動ゲームと呼ぶことができる。またゲームの 進行の中で時間の流れを考えているので動学的なゲーム(dynamic game)とも呼ばれる。

やはりプレイヤーは互いに相談・協力することができないと仮定するので非協力ゲームで ある。

この節と次の節では純粋戦略のみを考える。

4.3.1 動学的なゲームとゲームの樹・展開型ゲーム

前節のゲーム2をもとにして次の例を考えてみよう。

A

B1

B2 X

Y

X

Y

X

Y

(8,6)

(4,4)

(3,3)

(6,8)

図4.1 ゲーム4–動学的な互換性のゲーム(展開型ゲーム)

ゲーム4 ゲーム2と同様に企業Aと企業Bが製品の規格XまたはYを選ぶゲームであ るが,企業Aが先にどちらの規格を選ぶかを決め,その結果を見てから企業Bが 規格を選ぶ。

ゲーム4の構造を図に表すと図4.1のようになる。このようにゲームにおける意思決定の 流れを樹が枝分かれするように表したものをゲームの樹(game tree)あるいは展開型ゲー ム(extensive form game)と呼ぶ*8。図の点Aは企業Aが戦略を決める時点を,点B1と B2は企業Bが戦略を決める時点を示す。AとB1あるいはAとB2を結ぶ線の上または 下に書かれているXやYは各プレイヤーが選択した戦略を表す。右側に並んでいる4つ の黒い点は各プレイヤーがそれぞれの戦略を選んでゲームが終了する状態を表しており,

各点の右に書かれている数字は各プレイヤーの利得である。左側の数字が企業Aの利得 を右側の数字が企業Bの利得を表す。

このゲームでの企業Aの戦略の選択肢は静学的なゲームの場合と同じく規格Xと規格 Yの2つであるが,企業Bは企業Aの行動を見てから自分の行動を決めるので,企業A が規格Xを選ぶか規格Yを選ぶかに応じて4つの戦略の選択肢を持つ*9。企業Bの戦略 は具体的には次のように表される。

(1). 戦略XX

企業Aが規格Xを選んでも規格Yを選んでも規格Xを選ぶ

*8展開型ゲームは各プレイヤーにとっての行動の選択肢だけではなく,その行動を選ぶ順番や ゲームの流れの中での位置関係,意思決定をする時点での情報の状態などがわかるように ゲームを記述するものでありゲームの樹を用いるとは限らない。

*9戦略とは状況に応じて選ばれる行動の組み合わせであるが,ここでは企業Aが選んだ行動に 応じて企業Bが選ぶ行動の組み合わせが企業Bの戦略である。

4.3 動学的なゲームと部分ゲーム完全均衡 187         企業Bの戦略

企 の XX XY YX YY 業 戦 規格X 8,6 8,6 4,4 4,4 A 略 規格Y 3,3 6,8 3,3 6,8 表4.7 ゲーム4–動学的な互換性のゲーム(標準型ゲーム)

(2). 戦略XY

企業Aが規格Xを選べば規格Xを,企業Aが規格Yを選べば規格Yを選ぶ。

(3). 戦略YX

企業Aが規格Xを選べば規格Yを,企業Aが規格Yを選べば規格Xを選ぶ。

(4). 戦略YY

企業Aが規格Xを選んでも規格Yを選んでも規格Yを選ぶ。

戦略XYとYXに見られるように,企業Bは企業Aの戦略に応じて同じ規格を選ぶこと も異なった規格を選ぶことも可能なので4つの選択肢を持つ。このように動学的なゲーム で後から戦略を選ぶプレイヤーは静学的なゲームにおけるよりも多くの選択肢を持つこと になる。通常静学的なゲーム(同時決定ゲーム)は表を用いた標準型ゲームとして,動学 的なゲーム(交互行動ゲーム)はゲームの樹を用いた展開型ゲームで表されることが多い が,動学的なゲームを標準型ゲームとして表すこともできる。ゲーム4を標準型ゲームで 表現すると表4.7のようになる。

4.3.2 部分ゲーム完全均衡

表4.7によってゲーム4のナッシュ均衡を考えてみよう。まず各プレイヤーの最適反応 を調べてみる。

(1). 企業Aの最適反応

(i) 企業Bが戦略XXを選ぶ場合!規格Xを選ぶのが最適 Xを選ぶと利潤は8,Yを選ぶと利潤は3

(ii) 企業Bが戦略XYを選ぶ場合!規格Xを選ぶのが最適 Xを選ぶと利潤は8,Yを選ぶと利潤は6

(iii) 企業Bが戦略YXを選ぶ場合!規格Xを選ぶのが最適 Xを選ぶと利潤は4,Yを選ぶと利潤は3

(iv) 企業Bが戦略YYを選ぶ場合!規格Yを選ぶのが最適 Xを選ぶと利潤は4,Yを選ぶと利潤は6

(2). 企業Bの最適反応

(i) 企業Aが規格Xを選んだ場合!戦略XXまたはXYを選ぶのが最適

(ii) 企業Aが規格Yを選んだ場合!戦略XYまたはYYを選ぶのが最適 XXを選ぶと利潤は3,XYを選ぶと8,YXを選ぶと3,YYを選ぶと8 このゲームのナッシュ均衡は次のように3つある。

(1). ナッシュ均衡1–企業Aは規格Xを選び,企業Bは戦略XXを選ぶ。

企業Aが規格Xを選んだ場合の企業Bの最適反応は戦略XX(またはXY)であ り,企業Bが戦略XXを選んだ場合の企業Aの最適反応が規格Xなので,この戦 略の組合せはナッシュ均衡である。

(2). ナッシュ均衡2–企業Aは規格Xを選び,企業Bは戦略XYを選ぶ。

企業Aが規格Xを選んだ場合の企業Bの最適反応は戦略XY(またはXX)であ り,企業Bが戦略XYを選んだ場合の企業Aの最適反応が規格Xなので,この戦 略の組合せはナッシュ均衡である。

(3). ナッシュ均衡3–企業Aは規格Yを選び,企業Bは戦略YYを選ぶ。

企業Aが規格Yを選んだ場合の企業Bの最適反応は戦略YY(またはXY)であ り,企業Bが戦略YYを選んだ場合の企業Aの最適反応が規格Yなので,この戦 略の組合せはナッシュ均衡である。

以上の3つのナッシュ均衡はいずれも合理的なものであろうか。ナッシュ均衡3につい て検討してみよう。ナッシュ均衡3では,企業Bは図4.1の点B1でも点B2でも規格Y を選ぶという戦略をとる。この均衡で想定されているように『企業Aが規格Yを選ぶと いう前提で考えれば』点B1は各企業が均衡戦略に示された行動を選択する限り実際には 実現しない状態なので,企業Bはその時点で規格Xを選ぶと考えても規格Yを選ぶと考 えても利得に影響はなく戦略YYは最適反応になっている。一方企業Aが規格Yを選ぶ にあたっては,もし『自分が規格Xを選んだとき相手は規格Yで応じてくるであろう』

という想定のもとに行動することになっているが,この想定は合理的ではないのではなか ろうか。もし実際に企業Aが規格Xを選んでゲームが点B1に達したとすれば,企業B にとっては規格Yよりも規格Xを選んだ方が利潤が大きくなり有利である。したがって

『合理的な均衡では点B1で企業Bが規格Xを選ぶという戦略になっていなければならな い』。すると企業Aは,規格Xを選べば8の規格Yを選べば6の利潤を得られることに なり,点Aにおいて規格Xを選ぶであろう。以上のことからナッシュ均衡3は合理的で はない。この均衡は,Bが「AがXを選んだらYを選ぶ」という脅しをかけ,Aがその 脅しを信用していることによって成り立っている。しかし実際にAがXを選ぶとBはY ではなくXを選ぶ方が利得が大きいのでYを選ぶインセンティブはない。このような脅 しは信用できない脅し(incredible threat)と言う。以下で述べる部分ゲーム完全均衡は信 用できない脅しにもとづくナッシュ均衡を排除する。

ドキュメント内 i * III () 23. *1 (ページ 196-200)