第 3 章 企業の行動 92
3.21 費用最小化と利潤最大化の数学的分析
3.21.1 費用最小化:シェパードの補題
産出量がxに等しいという条件を満たすように資本,労働投入量が決まり,それによって 最小の費用が求められる。それは与えられた生産関数のもとでr,wおよび産出量xの関 数となる。この関数を費用関数と呼び
c.r; w; x/DrK.r; w; x/CwL.r; w; x/
と表す。K.r; w; x/,L.r; w; x/は資本,労働投入量がr,w,xによって決まるというこ とを意味する。これをx一定のもとでr で微分すると
@c
@r DKCr@K
@r Cw@L
@r
が得られる。一方f .L; K/Dxという式をx一定のもとでrで微分すると
@f
@K
@K
@r C @f
@L
@L
@r D0 を得る。(3.31)より
r@K
@r Cw@L
@r D0 (3.32)
となるので
@c
@r DK が導かれる。同様にして
@c
@w DL
が得られる。これらは産出量一定のもとで生産要素に対する需要が費用関数をその生産要 素の価格で微分したものに等しいことを示しており,シェパードの補題と呼ばれている。
消費者行動の分析におけるマッケンジーの補題に対応するものである。
(3.30)の意味を考えてみよう。この式のfL
w は賃金1円当たりの労働の限界生産力であ り,同様に fK
r は1円当たりの資本の限界生産力である。したがって企業の費用最小化問 題におけるラグランジュ乗数(の符号を変えたもの)は各生産要素1円当たりの限界生 産力,すなわち1円の費用の増加による産出量の増加を表していると見ることができる。
序数的な効用関数が用いられている消費者の効用最大化問題と違ってこの場合のラグラン ジュ乗数の値には実質的な意味がある。
費用が
cDrKCwL
と表されるのでL,Kを一定とすると @c@r D Kとなるのはあたりまえのように思われる がそうではない。rが変化すればLもKも変わるが,費用最小化の条件によって打ち消 し合っているのである。(3.32)がそれを表している。
3.21 費用最小化と利潤最大化の数学的分析 161
■例1 具体的に次の生産関数のもとで(3.26)の費用を最小化する問題を考えよう。
xDL13K23 (3.33)
この形の生産関数はコブ・ダグラス型の生産関数と呼ばれる。ラグランジュ関数は LDwLCrKC.L13K23 x/
である。これをL,Kで微分すると wC 1
3L 23K23D0 (3.34)
rC2
3L13K 13D0 (3.35)
が得られる。(3.34),(3.35)よりを消去すると,
KD 2w
r L (3.36)
あるいは
rKD2wL (3.37)
を得る。(3.36),(3.37)は(3.33)の生産関数のもとにおいては,企業の資本への支出が労
働への支出の2倍になることを意味する。(3.36),(3.37)を(3.33)へ代入して LD r
2w 23
x (3.38)
および
K D 2w
r 13
x (3.39)
が導かれる。これらは企業の労働および資本に対する需要を表すものである。(3.38)よ り,wが上昇すると労働の需要が減少しr が上昇すると増加することがわかる。同様に
(3.39)より,rが上昇すると資本の需要が減少しwが上昇すると増加する。
ここでL13K23 Dxを満たすわずかなLとKの変化をそれぞれL,Kとすると
@x
@KKC @x
@LLD0 より
K
L D @x
@L
= @x
@K
D 1 2
L 23 K23 L13 K 13 D 1
2 K L が得られる。その変化に対するcの変化は
cDrKCwLD 1
2 K LrCw
L
と表される。等産出量曲線上でL < .>/ 2w xのときK > .</ r xであり,した がって KL > .</2wr であるから,L < .>/ 2wr 23
xのとき Lc < .>/0である。これはL が小さいときはその増加に伴ってcが減少し,大きいときはLの増加によってcが増加 することを意味するから,LD 2wr
23
xのときcは最小値(正しくは極小値)をとる。