• 検索結果がありません。

3.3       カリキュラムの現状と課題

3.3.2       大学のカリキュラム

3.3.2.3 評価

と。2点目は課外活動の経費がないこと。3点目は大学と社会との関係が浅いことである。

例えば理想的な通訳の授業は、企業などで実際に通訳させることであるが、現在は教師と 学生間で練習するという教室内の授業に限られている。

 

04/2017/TT-BGDĐT号の『2017 年高等卒業試験の規定』の第 VIII 章、第 32 条では、教育 訓練省が規定した外国語能力認定証を持っている学生は外国語の試験を免除すると明記さ れている。外国語の試験を免除された学生の外国語試験の成績は 10 点(10 点満点)である と認められる。採用される外国語能力認定証は下記の通りである。また、いずれも 2017 年 6 月 20 日まで有効であることが条件である。

表 21 外国語試験を免除されるための外国語能力認定証 外国語科目 能力認定証 主催機関

1 英語

TOEFL ITP 450TOEFL iBT 45IELTS 4.0

Educational Testing Service (ETS) British Council (BC)

International Development Program (IDP) 2 ロシア語 TORFLレベル1 ロシアの科学と文化センター

3 フランス語 TCF 300-400

DELF B1 国際師範研究センター

4 中国語 HSKレベル3 中国外交漢語センター 国家漢語審査委員

5 ドイツ語

Goethe-Zertifikat B1

Deutsches Sprachdiplom (DSD) B1 Zertifikat B1

ドイツの海外中等教育委員会(ZfA)

6 日本語 JLPTN3レベル 国際交流基金

出点:教育訓練省が指導した 2017 年の高校卒業試験の案内資料により

一部の高校生は外国語試験を避けるため、JLPT の N3 を目指して受験勉強をする傾向が 見られる。現在のベトナムでは、高校卒業試験の成績は大学入学の根拠になるし、JLPT の N3 を取得することは外国語科目で満点を取れるという意味であるから、JLPT の N3 は日本 語を勉強している多くの高校生の学習目標になる可能性が高い。従って、高校での学習活 動もJLPTの N3 を取得するため、その試験対策を重視し、JLPTで扱わない会話と作文を軽 視する可能性があると考えられる。

以上が、ベトナム南部の日本語教育における学習目標、学習活動、評価についての現状 である。教育革新の指導のもとに、各機関では、学習目標を明確にし、公開している。教 授法において、黒板と教科書のみであった学習環境から、プロジェクター、ユーチューブ などの情報技術が活用された学習環境に変わった。学生が受動的に教師の説明を聞くこと

   

132 だけでなく、スライド、ポスターなど用意し、プレゼンテーションする能動的な活動も見 られるようになった。

しかし、このような変化はまだ極めて少ない。また、学習者の総合的な資質・応用能力 を向上させる学習目標に対して、会話・作文を実施しない日本語能力検定試験のみを評価 ツールとして採用することは適正ではない。人生に関わる重要な試験で採用された評価ツ ールだから、学習者が勉強する目標は JLPTとなることは当然で、そうなると総合的な能力 を育てることは困難だと考えられる。会話と作文という提示が必要な能力は、相手に伝え たいことを表現することにより、学習者の能動性が発揮されるからである。これらの練習 活動、又はこの能力を育てる学習目標がなければ、教授法を変えても、知識を取得する伝 統的な日本語教育そのままである。

以上、ベトナム教育訓練省が計画した教育改革の指導内容と、その教育改革を実施して いる日本語教育の現状を見てきた。日本語教育は教育、外国語教育の一部だから、当然、

教育と外国語教育の課題を抱えているが、ここで、それと合わせて、日本語教育の革新活 動の現状において見られた特徴的な課題をまとめたい。

1)日本語教育の理念が明確になっていない

2)教育目標:日本語の構造、語彙を習得すること、日本語の言語面を重視する傾向が ある。

3)学習活動:日本語授業の形態から見ると、学習者を中心とした授業の仕方に変えよ うと言う姿勢は見られるが、実際は伝統的な教師主導の授業がまだ行われているところも ある。

4)評価:日本語能力基準(CEFR に基づいて作られたベトナムの KNLNNVN)と公的 に採用されている評価ツール(JLPT)が統一されていない。学生による評価がまだ重視さ れていない。家族評価、社会評価を実施していない。

5)日本語教師は、日本語教育の質が良くないという課題を認識しているものの、その 原因は教師の教え方が良くないと考えている。すなわち、学習目標、教育活動、評価の緊 密な関係を問わず、教育活動のみに注目している。

6)日本語に対して受動的な態度を取っている。専門に対する受動的な態度から、日本 語教育環境を改善しようという姿勢も見られない。

       

第 2 章の 3.において述べたように、教育訓練省は「2020 国家外国語プロジェクト」が 効果的に実現できていないと報告した。この状況は日本語教育においても、ほとんどの改

革目標が達成できていない。カリキュラムと教授法では、変化があるように見えるが、主 に文章の書き直しと授業の行う方法という表面的な変化である。政府も、教師も改善した いという姿勢を表しているが、なぜ効果がなかっただろう。次の 4.において、第 3 章につ いてまとめ、ベトナム南部の課題の原因を再度取り上げるとともに、その方策を考えたい。