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4.5 アクティブ・ラーニングに向けた師範大学におけるカリキュラム改革

4.5.4 二回目の実施( 2016−2017 学年の前期)

理解し、ゲームにばかり取り組んだ人がいる。または、どんな科目においても、学生にプ レゼンテーションさせた人がいる。また、アクティブ・ラーニングの本質を理解しても、

対応能力がないため、従来の教え方に戻った人もいる。他は、学習者主体とは、学生が自 習すると理解し、学生へのフィードバックをせず、学生に不安感を与えた場合も見られた。

アクティブ・ラーニングを応用した評価は高くなかったが、今回の試行で、学生の会話 能力を向上することと教師の認識を高めることという目的は達成したと思われる。学期末 に活発に日本語で会話できる 1 年生が多く見られたからである。かれらはプロジェクト型 学習は従来の学習方法より大変だが、これまで、1 年生だから話せないと思い込んでいた自 分を変えることができて、何より幸せだと言っている。教師は学生たちのその姿を見て、

文法面の欠如に関する心配があったが、改革の効果を認めた。また、アクティブ・ラーニ ングを試してはじめて、失敗に直面した教師がいた。それを超えて続けた人もいれば、諦 めた人もいたが、重要なのは教師を考えさせたということであった。

④交通及び旅行

⑤買い物

プロジェクトの進め方については、①の事例を取り上げて説明する。①のテーマにおい て、学生は自己紹介のはがきを作成した後、先輩に渡し、その先輩からコメントをベトナ ム語でもらうというタスクを課した。教師は紹介はがきの基本的な情報についてアドバイ スし、それをもとに学生は自由に紹介はがきを作成した。そして学生はどのように先輩と コンタクトをとるか、またコメントの依頼方法などを考えなければならない。最終的に先 輩からのコメントをクラスの前で発表し、反省点などをグループで話し合い共有する活動 を行った。教師は文法・語彙を中心に説明する役割から、新しい文法・語彙の勉強方法を 指導したり、応用タスクを課したりするという役割を果たすようになった。その結果、評 価についても変化があった。教師のフィードバックの他、自己評価、相互評価、グループ 内評価、外部の人からの評価という形成的評価も重視されるようになった。評価シートは 教師たちの合意で各種作成し、各授業で共有している。これらの評価は学生のポートフォ リオのデータになり、最終の評価の一部になる。このような状況を受けて、学生間の成績 を比べて評価を決める相対評価から、ある基準に沿って評価する絶対評価に変化している。

さらに、日本語によるコミュニケーションができる環境を提供するため、日系企業と緊密 に連携し、日本の大学との交流活動も広げた。

教案の作成については、KNLNNVNに沿って学期全体の学習目標(大目標)を設定し、

そのプロジェクトにおける中目標と詳細な活動における小目標を設定した(表22)。そし て、授業の毎回のレッスンプラン、評価シート(表23)などまで、皆の合意で設定した。

表22 中目標と小目標の設定

科 目: 聴 解 1 – 読 解 1 – 作 文 1 – 会 話 1 テ ー マ: お 気 に 入 り の 場 所 ( 交通及び旅行分野)  

中目標 小目標

読解 観光地の紹介を読み、基 本的な情報がわかる。

日本の地方のウェブサイトを読み、地方の位 置、産物、人口などを理解することができる。

聴解 相手の好きな場所の説明 を理解することができる。

友達の好きなところについての紹介を聞き、

基本的な情報を得ることができる。それから、

その場所に対して思っていること(いいところ や不便なところなど)を話すことができる。

友達の出身地についての紹介を聞き、そこに いきたいかどうか表現できる。

会話 相手を好きな場所に連れ て行き、その場所を紹介す ることができる。

お気に入りの場所に日本人を連れて行き、紹 介することができる。

友達に自分の出身地について紹介することが できる。

作文 自分が好きな場所につい て書くことができる。

日本人に好きな場所と一緒に行くという招待 メールを送ることができる。

お気に入りの場所に行ったとき、グーグルマ ップやフーディやフェイスブックなどに自分の 感想を書くことができる。

表 23 評 価 シ ー ト ク ラ ス メ ー ト の 発 表 の 評 価 シ ー ト  

テーマ:お気に入りの場所  

番号 名前 発表のテーマ 注意点 コメント 1 Aさん 私の出身地 間違った文型など 面白かった

2

3

師範大学の教師たちにとって、従来の教案は教科書の内容に沿って作ったものだったか ら、このように学習目標に沿って学習活動を考えるのははじめてである。時間がかかった し、想定できないこともあったが、授業の原理が教科書次第ではなく、教師の能動的な判 断によってできたことが分かって、従来の授業のやり方を反省したようであった。この成 長は4.3.2においても述べたが、他の機関の教師たちとの会合で各機関の問題をある程度見 通せる姿勢を見せたことでもわかる。

しかし、物事の理解と実施まで、まだギャップがあるのは事実である。皆で作ったレッ スンプラン通り実施しなかった教師もいた。学生に新しい学習目標、学習方法についての 十分な指導、フィードバックができないから、そのまま何もしない教師もいた。能動的に 活動などを考えることに慣れていないため、他の教師に頼っていた教師もいた。学生にヒ アリングしたら、よくフィードバックしてくれた教師もいるが、何も勉強できない授業も あったと分かった。1年生の授業を担当していた6人の教師の中、アクティブ・ラーニング を継続してきたのは2人しかいない。アクティブ・ラーニングの意義が分からないわけでは ないが、それを実施する能力がまだ足りないと考えられる。