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2.3 ベトナムの外国語教育政策

2.4.3 外国語教師の現状

2020国家外国語プロジェクト」の規定によると、外国語教育を担当する教師は担当し ている教育課程の外国語能力基準より2レベル以上、上の能力が必要とされている。その結 果、教育訓練省が規定した基準を満たす外国語教師の不足が深刻な課題になっている。初 等教育において、17, 00018, 000校に対して、約7, 000人の外国語教師が採用されている。

「2020国家外国語プロジェクト」を実施するため、外部から非常勤の教師を採用している 学校もある。ホーチミン市市内の地域においても、英語のB2レベルの教師が足りない学校 が3分の1に上るという現状である。他に、英語のB2レベルの教師は30%のみという地域も ある。元ロシア語教師から英語の研修を受けて英語教師になった教師もいるし、英語専攻 の教師が政治科目を担当しているという状況も生じ、教師の能力を向上させることは困難 になる。

さらに、地方の教育管理所の責任者62から教師の質の考察、教師研修などにおいても、課 題があることと実質的ではないという指摘が取り上げられた。例えば、A県の教育訓練所の 副所長にようと、A県の外国語能力基準に達成した教師は80%であるが、実際に調査してみ たら、多くの教師がどの技能においても弱いことが分かった。すなわち、「基準に達成し た」の「基準」は「疑問のある基準」だという問題がある。この問題に対する対策をとら ないと、数字面においては、目標を達成できるが、実際には教師の質が向上していないし、

                                                                                                               

62教育新聞 2016919日の記事などによる  

 http://giaoduc.net.vn/Giao-duc-24h/Hoc-ngoai-ngu-gio-moi-chi-de-thi-khong-the-dung-de-giao-tiep-hang-ngay-post170957.gd

外国語教育の質に影響を与えるとの意見であった。また、一人の教師が一回しか研修を受 けなかったため、能力検定試験に合格しても、現場で効果的に応用できる人が少ないとい うのが現状である。

また、ある地方の英語教師の状況についての報告によると、「英語教師の90%は基準を 達成していない。内、修士号を持っている教師も含まれている。」という現状がある。プ ロジェクトは大学の教師の外国語能力はレベル5(C1)だと規定しているが、ベトナムの現 状において、そのレベルに到達することは困難だと、教師の能力考察結果によって明確に なった。教師の能力を向上させるため、研修を受けることが必要だが、実際にレベル5を教 育できる機関は多くはなく、特に地方では困難な課題になる。教育訓練省の2012年6月19日 に認証された3837/ BGDĐT-VP号の公文書によると、A2-CEFR 又はB1-CEFRレベルになっ ている中学校の英語教師を対象として新しい教授法と教科書に関する教師研修を実施する とのことである。研修の時間数は450コマ(45分/コマ)である。内、言語能力の時間数は 400コマ(300コマはクラスにおいて、100コマはパソコンでの学習)、教授法は50コマであ る。この公文書の存在によって中学校の英語教師が、①B1レベル、②A2レベル、①と②に なっていないという三つのグループに分かれていると考えられる。これらの教師は中学校 の学生をA2レベルに到達させる義務を果たさなければいけないため、「2020国家外国語教 育プロジェクト」の実現の可能性に疑問がある。また、上述した集中研修によってこの状 況が本当に改善されるかという疑問もある。特に、外国語の母語話者と接する機会がほと んどないし、インターネットなど、外国語を学ぶ設備がまだ完備されていない地方にとっ ては大きい負担になると考えられる。

2012年12月に、ハノイ師範大学において開催されたシンポジウムでは、「2020国家外国 語プロジェクト」の実行委員長グェン・ゴク・フン(Nguyễn Ngọc Hùng)が基準に達して いる外国語教師が少ないことや日本語能力が非常に低い教師が多いのが現状であると述べ た。具体的には、多くの高等教育の外国語教師は聴解、読解、会話、作文のいずれの技能 も弱いし、外国語でのコミュニケーション能力に問題があると指摘した。現在の高等教育 機関の外国語教師の中には、修士号・博士号の学位を取得している人が多いが、海外から の来客があっても、ほとんどの教師がその対応を避けているとのことである。

この状況の原因について、実行委員長グェン・ゴク・フンは「中等教育のすべての外国 語教師は高等教育機関の卒業資格を持っているが、実際には、正規教育ではなく、遠隔研 修、専門研修などの制度で養成された教師が多くいるため、学士号と外国語教師の資格を 持っているものの、外国語教師の能力が等しい状況ではない。また、教師養成機関の正規 外国語教育が実質的ではないのも課題になっている。」と説明した。

上述してきた状況をみると、外国語教師については、人数も質も課題を抱えていること がわかる。この課題を解決するため、教師研修などの対策を行っているが、充分だとは言 えない。

2. 4. 42020 国 家 外 国 語 プ ロ ジ ェ ク ト 」 の 目 標 達 成 度

2020 国家外国語プロジェクト」を実施している機関における外国語学習者と教師の現 状を 3. 2 において述べてきた。その状況のもとに、2008 年に確立された目標がどれほど実 現されているか、またはどのように調整されたかについて次に述べたい。

ベトナムの教育新聞によると、2016 年 1116 日のベトナム国家議員の会議において、

ベトナムの教育訓練省のフン・スン・ニャー(Phùng Xuân Nhạ)大臣は「「2020 国家外国 語プロジェクト」は2020年まで目標に達成できない」と述べている。2016年度の高校卒業 試験の結果によると、学生たちの英語試験の成績は科目の中で一番低かったと分かった。

英語試験を受験した学生の約 90%は不可であった。2015 年度において、70%以上の学生が 英語試験に不合格という結果であった。また、2016年817日の全国の各教育訓練所の会 議において、外国語教師の質、教師研修の様々な課題が取り上げられた。8 年間をかけて、

プロジェクトをしてきた結果、ベトナム人の学生の外国語使用能力が極めて弱いことと多 くの外国語教師は十分な外国語能力を持っていないことが分かった。特に、ベトナム人の 若者たちのコミュニケーション能力はあまり期待できないと言われている。

外国語教師の能力を向上する目標においても、未達成であった。「2020 国家外国語プロ ジェクト」では 2016 年に、外国語能力基準を達成する小(CEFR の B1)・中(CEFR

B2)・高(CEFRC1)の外国語教師の割合の目標を45%、55%、65%だとしたが、2016

年の時点において、外国語能力基準に達した教師の割合は 37%、55%、26%であった。ま た、2018 年に、高等教育では 100%の外国語教師が外国語能力基準(CEFRC1)に達す ることを目標とした。しかし、20145 月に開催した高等教育において「2020 国家外国語 プロジェクト」を展開する会議で、このプロジェクトの管理委員長のグェン・ビン・ヒェ ン(Nguyễn Vinh Hiển)次長は「高等教育の外国語教師の外国語能力を調査した結果、教師

90%が基準に未達成である。小学生の基準レベルにさえ到達していない教師もいた」と

報告した63

前述したフン・スン・ニャー大臣によると、「2020 国家外国語プロジェクト」の目標に 達しない原因は次の四つが挙げられる。

                                                                                                               

63 Tuoi Tre 新聞 教育コラム 2014 年 5 月8日の記事などによる

http://tuoitre.vn/tin/giao-duc/20140508/trinh-do-ngoai-ngu-giang-vien-dh-bang-chuan-hs-tieu-hoc/606435.html

第一に、外国語の役割と外国語教育の改革の必要性が十分認識されていない。多くの 地方は、プロジェクトの目標を達成させるための積極的な行動をせず、受動的に実施 している。

第二に、実践の可能性を考慮せず、高すぎる目標を立てた。現時点の教師・学習者の 能力と全国の外国語教育の状況に不適合な目標があった。

第三に、ベトナム全土で同じ想定でプロジェクトを実施する方針であったが、地方・

教育機関のニーズと実施条件の相違がある。学習者は膨大な数であるが、外国語を教 える人の能力と師範技能が条件に応えられているとは言えない。

第四に、プロジェクトの実施時間を確保できなかった(2008 年から開始する計画であ ったが、実際の開始は 2011 年であった)。また、予算も確保できなかった(20082015で引受けた経費は実際の経費の70, 3%であった)。

これらの原因をみると、実践可能性を考慮せず、プロジェクトの目標を確立したことが、

目標を達成できなかった理由だといえる。また、今後の方策について、フン・スン・ニャ ー氏は教師の重要な役割を強調していた。多くの教師がベトナム外国語能力の枠組みを応 用することを軽視して、形ばかりに実施しているとのことであった。フン・スン・ニャー 氏によると、教師研修においても、実質的な研修が見られなかったとのことである。多く の教師研修は学校の夏休みに集中して開催されているが、短期間の研修で外国語能力を向 上することは困難である。教師の普段の自習を支えるため、e ラーニングの教師研修のプロ グラムを開発するべきだということであった。

ベトナムの教育訓練省は現状の課題を認めた上で、プロジェクトの目標を再度設定した。

プロジェクトの実施期間は2025年まで延長された。それによると、2025年までに、教師研 修、試験の改革、外国語教育政策の実施体制の確定という三つの内容が重視される。また、

2016−2017学年の中心的な任務は各教育課程における外国語教育(特に英語)の質を向上さ

せることである。

2008 年に設定された目標、2016 年時点の現状と 2016 年に調整された目標について表7 にまとめた。