3.3.5.1 許可 を与 える
両言 語に は「 許可 を与 える 」使 役構 文が存 在す る。 この 構文 では ある 出来 事を引 き起 きそ うとい う願 望が 被使 役者 にあ り、 その 願望の 実現 に向 けて 使役 者 が 許可 を与 えると いう 文で ある。
(28) 顔色 が悪 い花 子を 見て、 先生 は彼 女を 早く帰 らせ た。
(29) Nhìn sắc mặt Hanako không tốt,
見る 顔色 花子 ~ない よい
nên thầy giáo đã cho cô ấy về sớm.
だから 先生 [既然] させる 彼女 帰る 早く
(顔色 が悪 い花 子を 見て 、先 生は 彼女 を早く 帰ら せた 。)
「許 可を 与え る」 使役 では 使役 者が 被使役 者に プラ ス的 な影 響を 及ぼ す意 味を表 す場 合も
トナ ム語 の場 合は 、cho は元 々恩 恵の 授受 を表 すも ので あ る。 この タイ プの 使役 構文 は被 使 役者に とっ て利 益を 得る タイ プで ある 。
(30) 彼女は 娘を 日本 に留 学さ せて やっ た。
(31) Cô ấy đã cho con gái du học Nhật.
彼女 [既然] させる 娘 留学す る 日本 (彼女 は娘 を日 本に 留学 させ てや った。)
また、 使役 者は 被使 役者 にあ るこ とを する〈 許可 〉を 与え るの が使 役者 にと って不 本意 で あるこ とを 表す 場合 もあ る。こ の場 合 、日本 語で は「~ しか ない 」、ベ トナ ム 語では đành phải
「仕方 がな く~ する しか ない 」と いう 言葉と 結合 する 。
(32) 花子が 熱が 出た ので 、太 郎は 花子 を休 ませる しか なか った 。
(33) Hanako sốt nên Taro đành phải cho Hanako nghỉ.
花子 熱があ る ので、 太郎 仕方が ない させる 花子 休む (花子 が熱 が出 たの で、 太郎 は花 子を 休ませ るし かな かっ た。)
(32)(33)で は本 来なら 「花 子を 休ま せる」 つも りは ない が、「 花子 が熱 が出 たので 」太 郎 はやむ を得 ず、「花 子を休 ませ る」 こと を表す 。
3.3.5.2 許可 を求 める
両言語 には「許 可を 求め る」使 役構 文 が存在 する 。日 本語 では「NP2を Vさ せる/V を さ せてく ださ い/Vさ せ てい ただけ ませ んか」とい う表 現で ある。ベト ナム 語で は「cho phép NP2
V」 であ る。 どち らも 、NP1に 何らか の行為 をさ せる よう に許 可を 求め る意 味を表 す。
(34) 自己紹 介さ せて いた だき ます 。
(35) Cho phép tôi được tự giới thiệu.
させる 私 できる 自己紹 介す る
(自己 紹介 させ てい ただ きま す 。)
「許可 を与 える 」と 「許 可を 求め る」 意味を 表す 使役 構文 では 、統 制と 被統 制の関 係を 前提 とする 。
3.3.6 放任の意味を 持つ
両言語 にお ける 使役 構文 には 「放 任」 を表す 意味 用法 があ る。 被使 役者 が自 らの意 志に よ ってあ る行 為を 引き 起こ そう とし てい る、あ るい は引 き起 こし てい るこ とに 対して 、使 役者 は妨げ ず 、邪魔 をせ ず、放っ てお くと いう意 味を 表す 。「 放任 」は「許 可」と 同様で 統制 と被 統制の 関係 を前 提と する が、「許 可を 与 える 」場 合で は、使役 者は 被使 役者 が 主体と なる 出来 事の発 生に 許可 を与 える とい う形 で積 極的に 関与 する。一方 、「放 任」の 場合 は、使 役者 は被 使役者 が主 体と なる 出来 事の 発生 を妨 げない で、 成り 行き に任 せる こと で消 極的に 関与 する という 意味 を表 す。日本 語で は、よ く「 ~てお く」と結 合す る。一 方、ベト ナム 語では để (cho)
「~さ せて おく 」の 形で 表現 され る。
(36) 彼女が 泣き たい なら 、泣 かせ てお いて 。
(37) Nó muốn khóc cứ để cho nó khóc.
彼女 ~たい 泣く そのま ま ~てお く させる 彼女 泣く
(彼女 が泣 きた いな ら、 泣か せて おい て。)
「放任 」使 役で は使 役者 が被 使役 者に プラス 的な 影響 を 及 ぼす 意味 を表 す場 合もあ る。 つ まり、 使役 者は 思い やり の気 持ち で被 使役者 の願 望に 基づ く動 作、 行為 の実 現を妨 げず 、成 り行き に任 せる とい う意 味を 表す 。
(38) 子供の 成績 がよ かっ たの で、 母親 は子 供を好 きな だけ 遊ば せて おい た。
(39) Vì thành tích học tập của con tốt,
~ので 成績 学習 の 子供 よい
nên cô ấy đã để cho con chơi thỏa thích 故 彼女 [既然] させて おく 子供 遊ぶ 満足す る (子供 の成 績が よか った ので 、母 親は 子供を 好き なだ け遊 ばせ てお いた。)
また 、被 使役 者の 動作 、行 為の 実現 を妨げ ない こと が使 役者 によ って 不本 意であ ると いう 意味を 表す 場合 もあ る。
(40) 何回言 って も子 供が 聞い てく れな かっ たので 、彼 女は 子供 に好 きな こと をや らせて お
いた。
(41) Vì nói mãi mà con chẳng chịu nghe, nên
~ので 言う ずっと しかし 子供 ~ない 聞く 故 cô ấy để cho con thích làm gì thì làm.
彼女 させる てお く 子供 好き する 何 は する
(何回 言っ ても 子供 が聞 いて くれ なか ったの で、彼女 は子供 を好 きな こと を やらせ て おいた 。)
また、 使役 者は 被使 役者 にマ イナ ス的 影響を 及ぼ す意 味を 表す 場合 もあ る。
(42) 花子は 見ぬ ふり をし て、 子供 たち に喧 嘩させ てお いた 。
(43) Hanako giả vờ không thấy để cho lũ trẻ đánh nhau.
花子 ふり 見えな い させる てお く 子供た ち 喧嘩 する
(花子 は見 ぬふ りを して 、子 供た ちに 喧嘩さ せて おい た。)
3.3.7 責任の意味を 持つ
日本語 にお ける 使役 構文 でも ベト ナム 語にお ける 使役 構文 でも 、た とえ ある 者があ る出 来 事の発 生に 全く 関与 して いな かっ たと しても 、そ れが 使役 者の 立場 にあ る人 間であ れば その 者に責 任が ある こと を表 して いる 。そ の出来 事の 発生 は使 役者 の立 場に ある 人間に とっ ては 望まし くな い出 来事 であ る。 そし て、 使役者 はそ の出 来事 の発 生を 防ぐ 責任 がある 。
(44) 私は息 子を 戦争 で死 なせ た。
(45) Tôi đã để/khiến cho con trai chết trong chiến tranh mất rồi.
私 [既然] させる 息子 死ぬ で 戦争 ~てし まう
(私は 息子 を戦 争で 死な せた。)
また、 責任 があ ると いう 意味 を超 えて 、使役 者に は自 らに とっ て望 まし くな い出来 事を 防 ぐ責任 や義 務が ある にも かか わら ずそ れをし なか った こと によ り望 まし くな い出来 事を 発生 させて しま い、 自分 を非 難、 つま り自 責する 場合 もあ る。 ベト ナム 語の この 種類の 使役 構文
はよく mất rồi「~ てしま う」 とい う表 現と結 合す る。
(46) 私は娘 に風 邪を 引か せた 。
(47) Tôi đã để cho con bị cảm mất rồi.
私 [既然] させる 子供 風邪を 引く ~てし まう
(私は 娘に 風邪 を引 かせ た。)
(48) 私は息 子を 事故 に遭 わせ てし まっ た。
(49) Tôi đã khiến cho con trai bị tai nạn mất rồi.
私 [既然] させる 息子 遭う 事故 ~てし まう
(私は 息子 を事 故に 遭わ せて しま った。)
以 上 は 日 本 語 に お け る 「 さ せ る 」 使 役 表 現 と ベ ト ナ ム 語 に お け る 使 役 文 の bắt、cho、để
(cho) 、khiến(cho) 、làm (cho) の 共 通 点 を 示 し た が 、 こ れ を ま と め る と 次 の 通 り で あ る。
1)日 本語の「さ せる」使役 表現と ベ トナム 語に おけ る使 役文の bắt、cho、để(cho)、khiến
(cho)、làm(cho)使役 構文は いず れ も、NP1が 働き かけ 、NP2が その 働き かけを 受け て動 作を行 う、 ある いは NP1が 原因で NP2にある 状態 変化 をも たら すと いう 意味 を表す 。 2)日 本語の「さ せる」使役 表現と ベ トナム 語に おけ る使 役文の bắt、cho、để(cho)、khiến
(cho)、làm(cho)使 役構文 は両 方と も補文 構造 を持 って いる 。
3)日 本語の「さ せる」使役 表現と ベ トナム 語に おけ る使 役文の bắt、cho、để(cho)、khiến
(cho)、làm(cho)使 役構文 は両 方と も様々 な動 詞と 結合 でき る。
4)日 本語の「さ せる」使役 表現と ベ トナム 語に おけ る使 役文の bắt、cho、để(cho)、khiến
(cho)、làm(cho)使 役構 文は 両方 と も誘発 、強 制、許 可、放任、責任 を表 す ことが 出来 る。