第 3 章 日本語の「させる」とベトナム語の代表的な使役形式 について
3.2 ベトナム語に おける bắt、 cho、 để 、làm、 khiến の 違いについ て
ベトナ ム語 にお ける 使役 構文 は、 使役 の意味 を表 す動 詞を 用い る構 文で ある 。その 使役 動 詞のう ち、最 もよ く使 われ てい る真 正 使役動 詞は第 1 章で 述べ たよ うに、bắt、cho、để(cho)、
khiến(cho) 、làm(cho) で あ る 。 こ の 五 つ の 形 式 は 使 役 を 表 わ す が 、 そ れ ぞ れ 違 う 意 味 を 表し、異 なる 文法 的特 徴を 持っ てい る。つまり、意味 的に も構 文的 にも 性質 を 異にし てい る。
まず、bắt と choの 違い を見よ う。
(1) Công ty đấy bắt / *cho người lao động làm việc
会社 あの させる 労働者 働く
không lương cả vào ngày nghỉ.
無給 も に 休日
(あの 会社 は休 日に も労 働者 を無 給で 働かせ た。 )
(2) Con gái tôi thích đi du học,
娘 私 ~たい 行く 留学
nên tôi đã cho / *bắt con đi.
故 私 [既然] させる 娘 行く
(娘が 留学 した がっ てい るの で子 供を 留学さ せた 。)
上の例 文か ら見 ると 、bắtは被 使役 者が 行うつ もり がな かっ たり 行う のを 嫌が ってい る事 象 を、使 役者 が被 使役 者に それ をす るよ うに言 った り命 令し たり して 、強 制的 にさせ るこ とを 表す 。被 使役 者は その指 示に 従い 自ら の意志 でそ のこ とを 行う こと を表 して いる 。一 方、cho
では使 役者 は被 使役 者の 意志 に従 って 許可を 出す とい う意 味を 表す 。つ まり 、被使 役者 には 何らか の出 来事 を引 き起 こす 願望 があ り、そ れに 対し て、 使役 者は その 願望 の実現 に向 けて 許可を 与え たこ とを 表す 。
cho 使役 構文 では NP2が NP1の 許可 を 求める 時に 、使われ る 。よ り丁寧 な許 可を求 める 表 現とし て、cho phépが よく 使わ れる 。 一 方、bắt使役 構文 はこの 用法 はな い。
(3) Cho phép/*Bắt em được phát biểu ý kiến.
させる 私 得る 発表す る 意見
(私に 自分 の意 見を 話さ せて いた だけ ません か。 )
次に làm cho/khiến cho と bắt/cho の 違いに つい て 見 てお く。
(4) Anh ấy kể chuyện hài làm/khiến(cho) mọi người cười.
彼 話す 笑い話 させる 皆 笑う
(彼は 可笑 しい 話を して 、皆 を笑 わせ た。)
(5) Anh ấy nói dối làm/khiến(cho) mọi người thất vọng.
彼 嘘つく させる 皆 がっか りす る
(彼は 嘘を つい て、 皆を がっ かり させ た。)
例(4)、 (5) では NP1の 「彼 」は 「 話した 」「 嘘を つい た」 こと が原 因と なって 、NP2
が「笑 う」 「が っか りす る」 とい う状 態に変 化 す る。
bắt/choに よる 使役 文は 使役 者の 働き かけが 意図 的で ある のに 対し て、làm(cho)/khiến
(cho)は 使役 者の 意図 とは関 係が ない 。làm cho/khiến choの使 役構 文で は 、 使役 者に よる 指示や 命令 によ る働 きか けで はな く、使 役者の 行為 を受 けた 、自然 な結 果に よる もので ある 。 bắtと cho 使役 構文 では NP2は 動作主 として 意志 的動 詞と とも に用 いら れる のに対 して 、làm
(cho)/khiến(cho)使役 構文 では NP2は経験 者主 とし て無 意志 的動詞( 主 に感情 動詞 )と
ともに 用い られ る。
khiến はあ る事 象や モノな どの 無生 物で 、そ れが 原因 とな って 、人 間の 感情 、あ るいは 心 理
làm使役 構文は khiến使役 構文 と用 法が 類似し てい る。主語 の使 役者が ある 事象 やモノ 等 の 無生物 の場 合に 、そ れが 原因 とな って 当該の 事象 を生 じさ せる こと を表 す。 この用 法で は、
làmは khiếnと 置き 換える こと が可 能で ある。làm使 役構 文では khiếnと同 じよ うに、 人間 の
心理状 態の 変化 を表 す。
làmと khiếnと の重 要な違 いは 、khiến 使役構 文で は基 本的 に、 使役 者が 無意 図的に 使役 者
に働き かけ て被 使役 者が ある 動作 を行 うのに 対し て、làm 使 役 構文 は使 役者 が無意 図的 の場 合も意 図的 の場 合も あり うる 点で ある 。使役 動詞 の làmは 、使 役者 が意 図的 、 ある いは 非意 図的に 被使 役事 象を 強制 的に 引き 起こ す場合 に用 い ら れる 。それ は、khiến動 詞はも とも と原 因を表 す動 詞で あり 、動作 主が 無生 物で あるた め、動作 主の 意図性 が表 され ない のに対 して 、 làm動詞 はも とも と人 の動 作を表 す動 詞であ る 。làm動詞 の動作 主は 人間 であ り、意図 を持 っ て何ら かの 動作 を行 う。
例(4)、(5)では 、文 の主語 NP1が原 因とな って NP2を ある 状態 に変 化さ せ る。ある いは ある作 用が 及ぶ 点か ら、 原因 結果 構文 と呼ば れる 。原 因結 果を 表す ため 、ベ トナム 語で はこ のよう な構 文は làm cho/khiến cho の 他、vì~nên、tại ~nên のよ うな 原因 を 表す構 文に 置き 換える こと も可 能で ある 。
(6) Vì anh ấy kể chuyện hài nên mọi người cười.
ため 彼 話す 笑い話 だから 皆 笑う
(彼が 可笑 しい 話を した ので 皆は 笑っ た。)
(7) Vì anh ấy nói dối nên mọi người thất vọng.
ため 彼 嘘つく だから 皆 がっか りす る
(彼が 嘘を つい たの で、 皆は がっ かり した。)
最後に để使役 構文 につ いて見 てみ よう 。
(8) Tôi để con tự quyết định chuyện hôn nhân của mình
私 させる 子供 自分 決める 結婚の こと 自分の
(私は 子供 に自 分の 結婚 のこ とを 決め させた 。)
被使役 者が 自ら の意 思に よっ てあ る行 為を引 き起 こそ うと して いる 、 あ るい は引き 起こ し ている こと に対 して 、使 役者 が妨 げよ うとす れば 出来 るの に、 そう せず に成 り行き に任 せる 意味を 表す 。
また以 下の 例文 では 、NP1は ある こと を行っ て、NP2に「 何ら かの こと をす る/し ない よ うに」 させ る意 味を 表す 。
(9) Hãy gọi điện về nhà để gia đình khỏi lo.
~くだ さい 電話を かけ る に 家 させる 家族 ない 心配す る
(家族 を心 配さ せな いよ うに 、家 に電 話して くだ さい 。)
例(9)で は để は NP2 の 動作 ・作用 が NP1 の 指示 や命 令によ る働 きか け ではな く、NP1
の行為 を受 けた 自然 な結 果に よる もの である 。
以上 、ベ トナ ム語 にお ける bắt、cho、để(cho)、khiến(cho)、làm (cho)の違い につ い て考察 した 。