第 4 章 ベトナム語における使役動詞とそれに対応する日本語 の表現
4.2 使役性がやや 高いグルー プ
このグ ルー プの 代表は bắt「~ させ る」、sai「遣 いに 出す 」、bảo/biểu「言 いつ ける」、yêu cầu
「要求 する 」等 であ る。bắt「~ させ る 」、は第 1、3 章 で述 べた が、 この 節で は yêu cầu「 要 求する 」、sai「遣 いに 出す」、bảo/biểu「いい つけ る」 を見 て み る。
4.2.1 yêu cầu「要求」使役 文
「NP1 yêu cầu NP2 V」構文 では「NP1が NP2に要求 をし て、NP2に 何か をし てもら う、ま
たは何 かを する こと を禁 ずる 」意 味を し、Vは NP2に よる 未来の 動作 /行 為 を表す 。NP1は NP2が その 行為 を実 行す る能 力が ある と信じ てお り、NP2がそ の行 為を する かどう かは 自明 ではな いが 、NP2 によ るそ の行 為の 実 現を欲 して いる 。NP1 が要 求し た内 容 は NP2 の権 限、
責務、能力 の範 囲に 属す こと であ り、NP2は その 行為 の実 行の 義務 を負 う。この yêu cầu「 要 求する 」は NP1が NP2 に何 らか の行 動 を促 し たり 、阻ん だり する 際によ く使 われる 。yêu cầu
「要求 する 」を 使う 構文 では 、NP1は NP2よ り社 会的 地位 が高 いか 、ま たは 場合に よっ て は 同等の 社会 的地 位で あり、NP2に無 理 矢理行 為を させ るわ けで はな い。通 常 、yêu cầu「 要求 する」 は公 式的 な表 現に 用い られ 、家 族や友 達等 の親 しい 関係 では あま り用 いられ ない 。そ して使 われ る場 合は 、強く 要求 するか 、または NP1が NP2に 距離 を置 いて 要求 する意 味を 表 す。
yêu cầu「 要求 す る 」 も、 遂 行 的用 法 と陳 述 的 用法 の 両方 で の使 用 が 可能 で ある 。 遂 行的 用法で は NP1に要 求さ れて から 、NP2が直ぐ にそ の要 求に 応じ て動 作を 行う ことを 意味 する ため、yêu cầu「 要求 する」を使 う構 文 は必ず 現在 形で ある。遂行 的用 法で 使 われる 場合、yêu
cầu「要 求す る」 の文 の主 語は 通常 第一 人称(tôi「私」、chúng tôi「私 達」)であ る 。ta「我 々」、
chúng ta「私 達」、chúng mình「 私達 」 等の包 括的 一人 称は NP1に 来な い。NP2の位置 に来 る 目的 語は 通常 二人 称 (anh、em「 あ な た」、các anh「 貴方 たち 」) であ る。 時 制、 アス ペク ト を表わ す đã[過 去]、sẽ[未来 ]、đang[進行 形]、vừa mới[ ~た ばか り]、sắp[も うす ぐ]
…等は 来な い。一方 、陳 述的 用法 とし て使わ れる 場合 、文 の主 語で ある NP1も、NP2の 位置 に来る 目的 語に も制 限は なく 、時 制、 アスペ クト を表 わす đã[過 去]、sẽ[ 未来]、đang[ 進 行形]、vừa mới[ ~た ばか り]、sắp[ もうす ぐ]…等 を共 に使 うこ とが でき る。
遂 行 的 用法
(5) Tôi yêu cầu cô quên thằng Tân đi!
私 要求す る 貴女 忘れる 奴 タン なさい
(タン さん のこ とは 忘れ ても らい ます。)
(6) Tao chỉ yêu cầu mày một điều,
僕 ただ 要求す る お前 一つ
kiếm được bao nhiêu phải đưa về!
儲ける いくら 必ず 持って 帰る
(一つ だけ 頼み があ る。 儲け たお 金は すべて 持ち 帰っ ても らい たい。)
yêu cầu「 要求」文で は、NP1を 省略 す ること も可 能で ある。NP1を省 略す る かしな いか に
よって 、使 役性 が異 なる 。
(7) a. Yêu cầu em đóng sách lại.
要求す る あなた 閉じる 本
(本を 閉じ なさ い。)
b. Tôi yêu cầu em đóng sách lại.
私 要求す る 貴方 閉じる 本
例(7)bは(7)a より 、使役 性が 高く 、使役 性が 高ま ると 同時 に丁 寧さ が減 じる。
陳 述 的 用法
(8) Ông chủ tịch ấy hai ba lần yêu cầu nhà tôi dạy bình dân học vụ.
主席 その 二、三 回 要求す る 旦那 教える 平 民教 育 (そ の主 席は 二、 三回 、う ちの 旦那 に平民 教育 を教 える よう に求 めた。)
(Nam Cao- Đôi mắt)
陳述的 用法 とし て使 われ る場 合は 、文 脈がな い限 り、NP1を省 略で きな い。
4.2.2 sai「遣いに出す 」使役文
sai の 本動 詞の 意味 は「 遣い に出 す」、 命ずる であ る。「NP1 sai NP2 V」 構 文 では、NP1 が 言葉に よっ て、NP2に何 らか のこ とを やらせ る。sai 使役 構文 では NP1と NP2は統制 と被 統 制の関 係で ある 。目 上の 人が 目下 の人 に何ら かを する よう に指 示・ 命令 を出 す。ra lệnh「命 令を下 す 」使 役文は NP1が NP2に公 的 なこと につ いて 何ら かす るよ うに 命令 するの で 、軍 に 関係す るこ とを 表現 する 際に よく 用い るのに 対し て、sai 使役 文は NP1が NP2に私的 なこ と をする よう に指 示を 出す ため 、主 に家 族にま つわ るこ とを 表現 する 際に よく 使われ る。 以下 の例(9)(10) では 公的 な場 面な ので 、saiを用 いる こと は不 可能 であ る。
(9) *Chỉ huy sai binh lính ngừng bắn.
指揮官 遣いに 出す 兵士 止める 撃つ
(意図 され た意 味: 指揮 官は 兵士 に撃 つのを 止め るよ う命 じた )
(10) *Thầy giáo sai sinh viên viết luận văn.
先生 遣いに 出す 学生 書く 論文
(意図 され た意 味: 先生 は学 生に 論文 を書か せた )
例(9)で は、ra lệnh「 命令 を下 す」 を 用いら れな いと いけ ない 。一 方、 例(10)では yêu
cầu「 要求 する 」 あ るいは bắt「さ せる 」を用 いる 。
(11) Bố sai em đi mua thuốc lá.
父 遣いに 出す 私 行く 買う タバコ
(父は 私に タバ コを 買い に行 かせ た。)
(12) Mẹ sai con gái nấu cơm.
母 遣いに 出す 娘 ご飯を 作る
(母は 娘に ご飯 を作 らせ た。)
例(11)、(12)は自 然な 文であ る 。sai 使役 文で は 、NP1が 自分 、あるい は 自分に 関わ る人 間のた め、NP2に 何か をさ せる 意味 を 表すの で、例(13)では NP2が 行う こ とは NP1のた め ではな く NP2のた めで ある ため 、非 文 である 。例 (14)も 不自 然で ある 。
(13) *Mẹ sai con gái học bài.
母 遣いに 出す 娘 勉強す る
(意図 され た意 味: 母は 娘に 勉強 させ た)
(14) ? Giám đốc đã sai tôi phát biểu ý kiến.
社長 [既然] 遣いに 出す 私 発表 意見
(意図 され た意 味: 社長 は私 に意 見を 発表さ せた )
例(13)で は bắt の 方が 自然で ある 。 そして 、例 (14)で は bắt、yêu cầuの 方が自 然で あ る。一 方、 例(15) では 公的 場面 であ るが、 社長 の自 分の 都合 で会 議に 行け ないた め、「私」
に頼ん で、 行っ ても らう 場合 にも 使え る。こ の文 では 、公 的場 面で ある とい う印象 より も個 人的な 関係 であ ると いう 印象 が強 い。
(15) Giám đốc sai tôi đi họp thay cho ông ấy.
社長 遣いに 出す 私 行く 会議 代わり に 彼
(社長 は私 を彼 の代 わり に会 議に 出さ せた。)
sai 使 役構 文は 主に 陳述用 法と して 用い られる 。遂 行的 用法 も使 われ るが 、比 較的少 ない 。 遂行的 用法 とし て使 われ る場 合NP1がNP2に 対し て威張 るよ うな イメ ージ が 強いか らで ある 。
4.2.3 bảo/ biểu
4「 言い つ ける」使 役文
bảo/ biểu「 言い つけ る」 使役 文は 意 味的 に bắt と 同じ よう に、NP1 が NP2 に働き かけ を して、 何ら かの こと をさ せる とい う意 味を表 す。
bảo は以 下の 三つ の意 味を 持っ ている 。
(16) Taro dạo này đi chơi suốt ngày,
太郎 最近 行く 遊ぶ ずっと
anh phải bảo nó đi.
あなた ~べき 言いつ ける 彼 ~くだ さい
(太郎 は最 近遊 んで ばか りな ので 、彼 に言い 言い つけ る く ださ い。)
(17) Taro bảo Hanako đi đón mẹ.
太郎 言いつ ける 花子 行く 迎える 母
(太郎 は花 子に 母を 迎え に行 かせ た。)
(18) Anh ấy bảo mọi người ở nhà vẫn khỏe.
彼 言う 皆 家 元気
(彼は 家の 皆が 元気 だと 言っ てい た。)
例(16)では「忠 告す る/ 勧誘 する」で、例(17)では「命令・指示 を下 す」、例(18)で
は「 言う 」の 意味 を 表す 。bảo は 「忠 告す る/ 勧誘 する 」 と「 言う 」の 意味 も表 すの で、 命 令・指 示の 意味 の使 役性が bắt、sai よ り低い と言 える 。
(19) Tôi đã bảo anh ấy viết báo cáo.
私 [既然] 言いつ ける 彼 書く レポー ト
(私は 彼に レポ ート を書 いて もら った。)
bảo「 言う 」は陳 述的 用法と 遂行 的用 法 として 使わ れて いる が、陳述 的用 法の 方が比 較的 よ く使わ れる 。遂 行的 方法は NP1が NP2に強調 的に 命令 を出 す場 合に 用い る。
4 Biểuは 南部 方言
(20) Mẹ bảo con ở nhà, không được đi đâu cả.
母 言いつ ける あなた いる 家 できな い 行く どこも
(家に いな さい 。ど こに も行 かな いよ うにし なさ い。)
遂行的 用法 とし て使 われ る場 合、日本 語の「~ させ る」では なく「 ~な さい 」に対応 する 。