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観光振興におけるオンパクの有効性

第4章 別府ハットウ・オンパクのリーダーの発達

4.2 オンパクの概要

4.2.2 観光振興におけるオンパクの有効性

続いて、本項と次項で観光振興におけるオンパクの有効性と課題を整理する。これに あたっては大澤(2017)の論稿を中心にしながら、他の文献や第5章で詳細を述べる筆 者の調査で得られた情報も織り交ぜながらまとめていく。

まず有効性について述べる。大澤(2017:5-12)はオンパクの特徴として、①地域資 源の活用、②市場志向、③民間・住民主導、④分野横断的な横のネットワークという 4 つを挙げ、これらが観光振興にいかに有効かを考察している。

図 4.3 エリア別オンパク開催事業数

出所:ジャパン・オンパク事務局への聞き取り結果(2016929日時点)

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図 4.2 オンパクの開催形式(支援形式)

出所:ジャパン・オンパク事務局への聞き取り結果より作成(2016929日時点)

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(1)地域資源の活用

前述の通りオンパクは、地域の魅力の発掘と発信、地域人材の育成、地域資源を活か した観光サービスの創出等を目的としており、幅広いステークホルダーを巻き込んだ地 域活性化の活動である(野上,2010:21)。最初に「地域の魅力の発掘と発信」とある通 り、「地域資源の活用」はオンパクの第一の特徴である。

大澤(2017:5-6)は、1960 年代~1980 年代に日本の観光地で行われた観光施設やイ ベントを外部から誘致したり、模倣したりといった観光振興を「誘致型・模倣型」の観 光振興方法とし、観光者の嗜好が多様化・高度化するようになった1990年代以降、この ような方法では集客を望めなくなったと述べている。そして、こういった状況を前に、

観光の本来の原点に返って、その地域独自の魅力を見つめ直し、それを観光に使おうと する取り組みが広がっていった(大澤,2017:6)。オンパクの第一の特徴である「地域 資源の活用」は、こうした状況に対応した取り組みである。

ただし、オンパクを導入する地域が留意しなければならないことは、オンパクにおけ る「地域資源の活用」が即時的な集客や経済効果増大を生み出すわけではないという点 である。オンパクはまちの個性を磨くためのイベントであり、地域資源を活かすさまざ まな方法を提供してくれるもの(大澤,2017:7)、と捉えるべきであろう。

(2)市場志向

オンパクの第二の特徴は、テストマーケティングの機会を提供できる点である。地域 資源を発掘・活用しても、それが即時的でなくとも将来的に集客へつながるかどうかは 未知数である。オンパクは即時的な集客や経済効果を生み出さないが、観光振興の観点 からは、将来的な集客・経済効果につながっていくことが期待される。ここでオンパク の第二の特徴が大きな意味を持つ。

オンパクは地域資源から生まれたさまざまなプログラムを集め、博覧会という形で一 定期間、近隣住民や地元民へ提供する。遠方客を対象とするより、近隣や地元客を対象 としているため集客がしやすい。集客がある程度見込まれるため、さまざまなプログラ ムが実際に売れるのかどうか、改善点は何かなどテストすることが可能となる。すなわ ち、市場に向き合い、それを通じてプログラムを恒常的に販売する商品・サービスへと 昇華していくことが、オンパクでは可能である。このプロセスで磨かれた商品・サービ

スが地域で提供されるようになれば、将来的な集客・経済効果につながる可能性がある だろう。

また地域のプログラム提供者にとっては、開催が一定期間であるため、失敗しても損 失を限定化でき、チャレンジしやすい点もメリットである。これにより地域でチャレン ジする人が増え、地域で活発に行動する人材の育成につながることは、地域に対するオ ンパクの重要な貢献の1つであると考えられる。

(3)民間・住民主導

①と②は「何をするのか」であったが、③の「民間・住民主導」は「誰が、どのよう にして」という観点である(大澤,2017:9-10)。地域資源の発掘・活用には、多様な人々 の関わりが必要である。例えば行政が観光振興やまちづくりを図るために新たな地域資 源を発掘・活用しようとしても、彼らだけでは情報や人脈に限りがあるため限界がある。

その地域において新たな資源を発掘する目となり、耳となり、また活用に向けて知恵を 絞る多様な人々、すなわち行政以外の民間事業者や住民の力を活用することが、地域資 源の発掘・活用には必要である。

また、民間・住民が「主導する」という観点も重要であろう。地域資源の発掘・活用 に向けて、行政主導で民間事業者や住民の力を借りるという図式も考えられる。しかし この図式だと、民間事業者や住民は基本的に行政の指示によって活動する存在であり、

受け身になってしまう。受け身では彼らが本来持っている力を存分には発揮できず、継 続的な関わりも難しくなるだろう。民間・住民がその力を存分に発揮する、また継続し て関与してもらうために、彼らの主体性を引き出す必要がある。そうすれば、地域資源 の発掘・活用は効果的かつ継続的に進むと考えられる。

能登旨美オンパクの森山奈美氏は財団法人日本交通公社の「平成25年度観光実践講座」

における統括ディスカッション90で、オンパクパートナーの巻き込み方を「お誘いはする が、お願いはしない」と述べている。関係者の主体性の確保に留意していることがよく わかる発言であり、オンパクの「民間・住民主導」という特徴を示す考え方である。

(4)分野横断的な横のネットワーク

④「分野横断的な横のネットワーク」も③と同様、「誰が、どのようにして」という観

90 財団法人日本交通公社(2014:104-115)参照

点である(大澤,2017:9-10)。民間・住民主導で地域資源を発掘・活用し、それを市場 と向き合って磨き上げて商品・サービスへと昇華させていくプロセスは、イノベーショ ンであるといえる。このイノベーションを起こす仕掛けとして、大澤(2017:11)は「分 野横断的な横のネットワーク」を挙げている。

イノベーションには異なった知識の交流が必要であり、知識は文書化やデータ化が困 難な「文脈」依存的なものであるため、時間や場所を実際に共有しなければ効果的に交 ぜることができない(大澤,2017:31)。そのため地域でイノベーションを起こすには、

多様な人々が分野を越えて時間や場所を実際に共有する機会が必要である。オンパクに は図 4.1の通り、多様な人々が関わっている。そのため、ゲストとパートナーの交流 はもちろんのこと、パートナーのチャレンジを会場提供などで支えるサポーターや協賛 金を出すスポンサー、ガイドブックを置く協力企業、事務局などがオンパクのネットワ ークにおいて交流する。しかも彼らは「民間・住民主導」で述べた通り、行政等の指示 でオンパクに関わっているのではなく、個々が主体性を持って参画している。すなわち 地域内において、分野を越えた多様な知識の交流が積極的になされる。

オンパクという協働事業を通じて、地域でイノベーションを起こすための「分野横断 的な横のネットワーク」が構築されることは、オンパク以外の方法で観光振興を図る際 のプラットフォームにもなるという点で、重要な貢献であろう。また、このようなネッ トワークは観光振興に限ったことのみならず、地域の他の社会課題を解決していくこと にも活用可能であり、観光まちづくりのもう 1 つの側面である「住民の暮らしのための 改善を求めるまちづくり」にも寄与すると考えられる。