第7章 観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデルの検討
7.3 観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデル検討
7 . 3 観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデル検討
て図示したのが、図 7.7である。
この発達仮説モデルに基づき作成した分析モデルが、図 7.8である。これは、7.2.
2の高次因子分析を踏まえて作成した。
まずマインドについて、「収益意識」と「地域への想い」は発達仮説モデルの分析に用 いる変数として問題があると考えた。「収益意識」は図 7.4の通り、仮定した高次因子 からのパス係数が非常に小さかった。またこれは、リーダーの発達の基軸となるマイン ドではなく、活動時の実務的な留意点であると考えられる。「地域への想い」は、他の潜 在変数に比べて信頼性係数が低く(表 7.1)、かつマインドの確認的因子分析および高 次因子分析において不適解を引き起こしていた。したがってマインドからは、「積極的に 学ぶ姿勢」のみを採用した。
発達促進要因については、二次因子モデルの適合度がかなり高かったため、そのまま 発達仮説モデルの分析に採用した。リーダーシップスキルについては、適合度が低かっ たために二次因子モデルを活用した分析は困難と考え、「分析・プランニングスキル」「フ ァシリテーションスキル」といった潜在変数を発達仮説モデルの分析に採用した。
図 7.8 統合モデルの分析モデル
図 7.7 観光まちづくりにおけるリーダーの発達仮説モデル
7.3.2 発達仮説モデルの検証
(1)作業仮説1の検証
作業仮説 1 のモデルを分析した結果が、図 7.9である。パス(図中のパス係数は標 準化推定値)は、「発達促進要因」から「他の人とのつながり」、「他の人とのつながり」
から2つの観測変数へのパスが有意ではなかった。その他のパスはすべて有意であった。
具体的には、「発達促進要因」から「ショック」へのパスが5%水準で有意、「積極的に学 ぶ姿勢」から「発達促進要因」へのパスと、「発達促進要因」から「地域外経験」へのパ
スが1%水準で有意であった。それ以外のパスは0.1%水準で有意であった。
適合度指標を確認すると、カイ2乗値=24.876、自由度=23、p=.357、GFI=.942、AGFI=.886、
CFI=.990、RMSEA=.031、AIC=68.876であり、モデルはデータによく適合していると判断 できる。
以上を踏まえ、作業仮説 1 の「観光まちづくりにおけるリーダーのマインドは、リー ダー発達促進要因に正の影響を与える」は支持されたと考えられる。
(2)作業仮説2の検証
作業仮説 2 のモデルを分析した結果が、図 7.10である。パス(図中のパス係数は 標準化推定値)は、「発達促進要因」から「ショック」へのパスが有意ではなかった。そ の他のパスはすべて有意であった。具体的には、「ショック」から【2】2(「自分とは異 なる価値観に衝撃を受けたことがある」)へのパスが5%水準で有意、「発達促進要因」か
図 7.9 作業仮説1の分析結果
ら「分析・プランニングスキル」「地域外経験」「他の人とのつながり」それぞれへのパ ス、「ショック」から【2】8(「地域に対する住民の低評価に衝撃を受けたことがある」)
へのパスが1%水準で有意であった。それ以外のパスは0.1%水準で有意であった。
適合度指標を確認すると、カイ2乗値=98.159、自由度=72、p=.022、GFI=.877、AGFI=.820、
CFI=.937、RMSEA=.065、AIC=164.159であり、モデルはデータにまずまず適合していると 判断できる。
以上を踏まえ、作業仮説 2 の「観光まちづくりにおけるリーダーの発達促進要因は、
リーダーシップスキルに正の影響を与える」は支持されたと考えられる。
(3)作業仮説3の検証
「観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデル」の分析結果が、図 7.11である。
図中のパス係数は標準化推定値であり、すべて有意であった。具体的には、「発達促進要 因」から「ショック」へのパスが 5%水準で有意、「発達促進要因」から「地域外経験」
「他の人とのつながり」「分析・プランニングスキル」それぞれへのパスが1%水準で有 意であった。その他のパスは0.1%水準で有意であった。
適合度指標はカイ2乗値=146.916、自由度=113、p=.018、GFI=.852、AGFI=.800、CFI=.936、
RMSEA=.059、AIC=226.916であった。カイ2乗検定で帰無仮説(「モデルとデータに差は ない」)は棄却されず、GFI・AGFI・CFIはそれぞれ.90や.95以上、RMSEAは.05~.08以 下であると、モデルとデータは適合していると一般的に考えられている(今野,2012b:
図 7.10 作業仮説2の分析結果
215-217)。この基準に照らし合わせると、本研究の統合モデルの適合度は十分とは言え ない。しかし豊田(1998:170)は、モデルの評価基準を機械的に適用することなく、実 質科学的な立場から多角的に因果モデルを評価しなくてはならないとしている。そして GFIを具体的に取り上げ、モデル評価の留意点の1つとして次のことを述べている。実質 科学的な議論を積み重ね、データをとる前に構成され、分析後に改良されていないモデ ルは、たとえ GFIの値が 0.9を下回っていても、そのことだけでモデルを捨て去る必要 はない。むしろモデル探索の末に「GFI>0.9」を達成した改良モデルよりもすっきりと した役に立つ知見を提供することが多い(豊田,1998:174)。
本章のモデルは、質的研究から導出した発達仮説モデルを分析した結果であり、分析 後にモデル改良を行ってはいない。また、カイ2乗検定は1%水準であれば帰無仮説が棄 却されず、またサンプルサイズが小さくても比較的安定した適合度を示す CFI(今野,
2012b:217)は.936と高い数値を示し、RMSEAは.059でまずまずの数値であった。さら に、前述の通りモデルの部分的評価であるパス係数はすべて有意であった。これらの点 を考慮すると、十分な適合とはいえないまでも、本研究の統合モデルはデータにまずま
図 7.11 観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデル分析結果