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第6章 観光まちづくりにおけるリーダーの発達尺度の検討

6.3 まとめ

本章では、リーダー発達の状態を評価するツールとして「観光まちづくりにおけるリ ーダーの発達尺度」を検討した。

まず、質問紙調査の配布対象となったまちづくりリーダーの回答データの中で、リー ダーのマインド12項目、リーダーの発達促進要因10項目、リーダーシップスキル11項 目、経験から学ぶ力16項目を探索的因子分析にかけた。その結果は表 6.24の通りで ある。次に、「観光」を活動分野の1つに選んだ回答者のデータ(観光まちづくりにおけ るリーダー回答データ)の中で、マインド12項目、リーダーの発達促進要因 10項目、

リーダーシップスキル 11 項目、経験から学ぶ力16項目を探索的因子分析にかけた。そ の結果は表 6.25の通りである。

リーダーのマインドについては、まちづくりリーダー・観光まちづくりにおけるリー ダーともに、多くの項目が天井効果ないし床効果を示した。この尺度については、項目 のワーディングや回答法など、今後検討することが必要である。また経験から学ぶ力に おいて、まちづくりリーダー・観光まちづくりにおけるリーダーともに、「具体的経験」

が因子の 1 つとして抽出された。これは、第4章・第5章に基づいて作成したマインド の項目と重複する部分が多い。したがって、木村ら(2011)の「職場における経験学習 尺度」を観光まちづくりにおけるリーダー発達尺度に応用するには、マインドと統合し ながら尺度改善を行っていく必要があると考えられる。以上の状況を踏まえ、本研究の 第7章におけるリーダー発達モデルの検討においては、経験から学ぶ力は要因として採 用しない。第4章・第5章の質的研究に基づいて導出した項目から、探索的因子分析で 抽出された因子のみを活用することとする。

マインド・発達促進要因・リーダーシップスキルのカテゴリーにおいて、まちづくり リーダーと観光まちづくりにおけるリーダーの探索的因子分析結果を比べてみると、リ ーダーシップスキルでは大きな相違を確認できなかった。しかし、マインドと発達促進 要因に関しては、両リーダー区分の間に相違を確認できた。まずマインドにおいては、「積 極的に学ぶ姿勢」と「収益意識」は両リーダー区分で抽出されたが、「地域への想い」は 観光まちづくりにおけるリーダーのみで抽出された。第4章・第5章で取り上げた観光 まちづくりにおけるリーダーは、生まれ育った地域の外で暮らした経験あるいは仕事を

表 6.24 まちづくりリーダーの発達尺度検討結果

カテゴリー サブカテゴリー 項目 α係数

マイ ンド

収益意識

まちづくり活動において収益を考える必要はないと 思う

.741 まちづくり活動の持続のために、収益を上げること

は重要であると思う

まちづくり活動の際は、収益が上がるよう収支バラ ンスをよく考える

積極的に学ぶ姿勢

自ら進んで新しいことを学ぶ

.690 色々なことにチャレンジするのが好きである

色々なことを知りたいと思う 発達

促進 要因

他の人とのつながり

他地域との人的交流が、地域での自分の活動に影響 を与えた

.752 他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた

自分の考え方の手本になった人物がいる

まちづくり活動で行き詰まった際に、対処の仕方を 相談した人物がいる

リー ダ ーシ ッ プス キ ル

ファシリテーション スキル

関係者の意見対立を解消し、合意を形成することが できる

.802 相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出す

ことができる

立場や価値観の異なる人同士が理解し合えるような

「場づくり」ができる

分析スキル

地域の魅力は、誰にどのように魅力的なのか、分析

する .657

地域の魅力を、他の地域の魅力と比較する

課題を明確に認識するため、情報収集と分析をする

クリエイティブ スキル

さまざまな情報を組み合わせて、新しいものを創り 出すことができる

.589 自分の考えを、パンフレットや自分自身の行動とい

った「形」で見せることで、周囲に理解してもらお うとする

経 験か ら学 ぶ力

省察・応用

自分のやり方が正しいかどうか試す

.868 他の状況にもあてはまるような仕事のコツを見つけ

経験から自分の仕事のやり方を見出す 新しく得たノウハウを実際に応用する 自分の仕事の成功や失敗の原因を考える

様々な意見を求めて自分の仕事のやり方を見直す

具体的経験

常に新しいことに挑戦する

.844 困難な仕事に立ち向かう

失敗を恐れずにやってみる 様々な経験の機会を求める

必要な情報を集めて、経験したことを分析する

※逆転項目

出所:調査結果に基づき筆者作成

表 6.25 観光まちづくりにおけるリーダーの発達尺度検討結果

カテゴリー サブカテゴリー 項目 α係数

マイ ンド

積極的に学ぶ姿勢

自ら進んで新しいことを学ぶ

.776 色々なことにチャレンジするのが好きである

色々なことを知りたいと思う

収益意識

まちづくり活動において収益を考える必要はないと 思う

.769 まちづくり活動の持続のために、収益を上げること

は重要であると思う

まちづくり活動の際は、収益が上がるよう収支バラ ンスをよく考える

地域への想い 地域のことが好きである

.602 地域の将来が気になる

発 達促 進要 因

ショック

自分とは異なる価値観に衝撃を受けたことがある

.673 地域に対する住民の低評価に衝撃を受けたことがあ

地域外経験

地域の外での仕事経験が、地域での自分の活動に影 響を与えた

.715 地域の外で暮らした経験が、地域での自分の活動に

影響を与えた 他の人とのつながり

他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた

.675 他地域との人的交流が、地域での自分の活動に影響

を与えた

リー ダー シッ プス キル

分析・プランニング スキル

課題を明確に認識するため、情報収集と分析をする

.832 目標達成までの計画を具体的に立てることができる

自分の考えを論理的に説明し、周囲に理解してもら おうとする

地域の魅力は、誰にどのように魅力的なのか、分析 する

地域のことを知るために、地域をよく見て回る

ファシリテーション スキル

関係者の意見対立を解消し、合意を形成することが できる

.817 立場や価値観の異なる人同士が理解し合えるような

「場づくり」ができる

相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出す ことができる

経験 から 学ぶ 力

省察

経験の結果を自分なりのノウハウに落とし込む

.855 経験したことを多様な視点から捉え直す

経験から学んだことを実際にやってみる 必要な情報を集めて、経験したことを分析する 様々な仕事場面に共通する法則を見出す 具体的経験

常に新しいことに挑戦する

.841 困難な仕事に立ち向かう

失敗を恐れずにやってみる

※逆転項目

出所:調査結果に基づき筆者作成

した経験を持つ。彼らは、一定期間外に出ることによって生まれ育った地域を客観視し、

地域の魅力にあらためて気づくことや、あるいは課題を抱える地域を見て「何とかした い」と思うようになった。すなわち、地域の外に出て自地域を客観視することにより、「地 域への想い」が強くなっていったのである。これが、マインドにおける探索的因子分析 結果の違いを生んでいるのではないだろうか。今後の継続した検証が必要である。

次に発達促進要因においては、「他の人とのつながり」は両リーダー区分で抽出された が、「ショック」と「地域外経験」は観光まちづくりにおけるリーダーのみで抽出された。

第4章・第5章の観光まちづくりにおけるリーダーは、地域の外へいったん出て外の目 を持って元の地域に戻ることにより、住民の地域に対する低評価や、価値観の異なる人 物との議論に「ショック」を受け、「地域への想い」や観光まちづくりにあたっての思考 力を鍛えた。また、観光まちづくりには地域内の視点のみならず、観光者を迎え入れる ための外の視点も必要となってくる。これを鍛えるために「地域外経験」は、観光まち づくりにおけるリーダーの発達にとって重要である。安村(2006:94)は観光まちづく りにおけるリーダーに共通する経歴として「青年期のある期間を大都市で暮らした後に 故郷に戻る」と述べている。そして、定住地から一時的に離れて再び元の定住地へ戻り、

異質な文化を定住地に伝播するという鶴見(1996:25)の「一時漂泊者」の概念を引用 しながら、彼らが出身地と大都市の生活で形成する「比較の視点」の重要性を主張して いる。安村(2006:95)は、この「比較の視点」が新時代の動向を反映する観光まちづ くりの考え方を構成したとみなしている。以上のことから、「ショック」と「地域外経験」

は観光まちづくりにおけるリーダーに特有の発達促進要因である可能性が指摘できる。

なお今回の質問紙調査では、調査対象者に「成長したとご自身が思われる経験」を記 述式で回答を求めた。本調査に返答のあった観光まちづくりにおけるリーダー87名のう ち、65名がこの質問に回答した。記述回答を、佐藤(2008:33-43)の定性的コーディン グを参考にコーディングした。そのコードを集約して抽象化したところ、16個の概念が 生成された。これらの概念をさらに集約し、7個のカテゴリーに統合した(表 6.26)。

観光まちづくりにおけるリーダーたちは、さまざまな経験から学んだことがうかがえる。

そのなかでも総合的に出現数の多かった「地域外での異分野経験による多様な視点の獲 得」「他の人とのつながり」「修羅場」というカテゴリーは、本章で述べた発達促進要因