• 検索結果がありません。

戦後から 2007 年までの観光地づくりに関わる観光政策

第2章 日本の観光政策と観光地づくり

2.3 日本の観光地づくり

2.3.1 戦後から 2007 年までの観光地づくりに関わる観光政策

戦後間もない1940~1950年代の日本の観光政策は、前述2.2.1の通り、宿泊施設や 交通機関の整備、通訳案内や旅行業の法整備が主だったものであった。観光地づくりが 注目されるようになった政策は、1960~80年代の全国総合開発計画および総合保養地域 整備法の制定であろう。

1962年に閣議決定された第一次全国総合開発計画において観光資源の保護と利用の促 進を図ることが提起され、また1969年の第二次全国総合開発計画でも観光レクリエーシ ョンは基幹プロジェクトの1つに位置付けられている(佐野,2007:873-874)。1977年 の第三次全国総合開発計画で観光は一時遠ざけられたが、第四次・第五次の全国総合開 発計画では、再び観光関連施策は重要な位置づけとされた(佐野,2007:875-876)。第 四次全国総合開発計画が閣議決定された1987年には、総合保養地域整備法(通称:リゾ ート法)も制定された。寺前(2009b:69)は同法について、それまで外客用の名目で観 光施設整備が行われてきたことに比べれば、法制度上真正面から日本人観光者を対象と したものであったと評している。第四次全国総合開発計画と総合保養地域整備法が契機 となり、バブル景気を背景とした民間資本によるスキー場やゴルフ場など大規模リゾー ト開発が進められ、さらに1988年の「ふるさと創生基金」は日本各地の温泉掘削ブーム を巻き起こした(梅川,2009:71)。地域振興のために開発が推進された一方で、性急か つ無秩序な開発による自然破壊や景観問題が引き起こされた。また、宿泊施設の過剰な 設備投資が行われ、その後のバブル経済の崩壊と長引く景気の低迷の中で経営が圧迫さ れ、多くの観光地で大規模旅館の廃業、施設放置などの問題が顕在化した(梅川,2009:

71;十代田,2011a:62)。

1990年代に入ると、グリーン・ツーリズムやエコツーリズムという考え方が日本に浸 透してきた。グリーン・ツーリズムは、1994 年の「農山漁村滞在型余暇活動のための基 盤整備の促進に関する法律」(略称「農山漁村余暇法」)41の制定により、ゆとりある国民 生活の実現と農山漁村地域の活性化を図る施策に位置付けられた。具体的には、農林漁

41 農林水産省WEBサイト、「農山漁村余暇法」ページ(http://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/yokahou.html、

最終閲覧2018-1-28)

業体験民宿業者の登録制度の創設や、農業者及び農業者団体が農作業体験施設等を整備 するのに必要な資金の確保または融通の斡旋、必要な事業を行う者等に対する助言・指 導などの支援に国と地方公共体が取り組んだ。また、この施策において重要な役割を担 う農林漁業体験民宿について、その経営を安定的なものにし、開業しやすい環境を整備 するため、農林漁家が民宿を行う場合の旅館業法上の面積要件撤廃や、農家民宿が行う 農業体験サービスを旅行業法の対象外として明確化するなど、さまざまな規制緩和42が行 われた。一方でエコツーリズムについては、1990 年代前半から旧環境庁や国土交通省な どがその概念や普及に関する調査研究を実施し、1993 年の屋久島・白神山地の世界自然 遺産登録とそれによる観光客急増を契機に重要性が認識されるようになった(海津,

2009:181-182)。その後、各地でエコツーリズム協会が設立され、1998年にはエコツー

リズム推進協議会43が全国組織として設立された。そして 2007 年に、地域の自然環境の 保全に配慮しつつ、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムを推進するに当たり、具 体的な推進方策を定め、エコツーリズムを通じた自然環境の保全・観光振興・地域振興・

環境教育の推進を図るエコツーリズム推進法44が成立した。

グリーン・ツーリズムやエコツーリズムの考え方の浸透は、地域固有の文化や産業、

自然環境が注目されるようになってきたことを示す。それはすなわち、画一的な開発で はなく、地域主導で地域ごとに固有の資源を磨いて観光対象にしていく観光地づくりが、

求められるようになってきたということである。このような背景を踏まえ、2007 年の観 光立国推進基本計画における基本方針の3つ目は、以下の通り記載されている45

第三に、観光の発展を通じ、地域住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満 ちた地域社会を実現していく。

観光産業は多様な事業の分野における特色ある事業活動から構成され、多様な就 業の機会を提供するものであり、観光の発展は地域固有の伝統、文化、歴史などの

42 さらなる詳細は農林水産省WEBサイト内「農家民宿関係の規制緩和」PDFを参照

(http://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/pdf/kisei_kanwa.pdf、最終閲覧2018-1-28)

43 現在はNPO法人日本エコツーリズム協会となっている(http://www.ecotourism.gr.jp/index.php/jes/、最終閲 2018-1-28)

44 環境省WEBサイト、「エコツーリズム推進法」ページ

(https://www.env.go.jp/nature/ecotourism/try-ecotourism/law/index.html、最終閲覧2018-1-28)

45 国土交通省WEBサイト、「観光立国推進基本計画」(20076月)p.2

(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/01/010629_3/01.pdf、最終閲覧2018-1-28)

魅力を輝かせるものであることから、それらの優れた特質を地域社会の発展のため に最大限生かしていくことが重要である。

2.3.2 2008年以降の観光地づくりに関わる観光政策

2008年以降の日本の観光地づくりについて、清水・海津・森重・九里(2017:10-12)

は観光庁主導の政策を 3 つに分類し、整理している。ニューツーリズムの振興と着地型 旅行商品の造成、観光地域づくりプラットフォームと観光圏整備、日本版 DMO と広域観 光周遊ルートである。この分類を下敷きにし、各政策の内容や最新動向を盛り込みなが ら再整理する。

(1)ニューツーリズムの振興と着地型旅行商品の造成

観光庁はニューツーリズムを、「従来の物見遊山的な観光旅行に対して、これまで観光 資源としては気付かれていなかったような地域固有の資源を新たに活用し、体験型・交 流型の要素を取り入れた旅行の形態」と定義づけている46。そして、活用する観光資源に 応じて、エコツーリズム、グリーン・ツーリズム、ヘルスツーリズム、産業観光等を挙 げ、旅行商品化の際に地域の特性を活かしやすいことから、地域活性化につながるとし ている。

観光庁は2007年から3年間、ニューツーリズム旅行商品創出のための実証事業の計画 を募集し、採択された場合は旅行者ニーズの把握等に要する経費の一部を国が負担する

「ニューツーリズム創出・流通促進事業」47を実施した。全国で実証事業の募集を行った ところ、2007 年度は 134 事業の応募があり、そのうち 46 事業を採択・実施した。2008 年度は188件の応募があり、このうち第1期で45件、追加募集で24件の合計69件を採 択・実施した。2009年度は70件の応募があり、このうち28件を採択・実施した。そし て、各地域で実施した実証事業及び実証事業後の追跡調査等により得られた旅行者ニー ズの把握方法および旅行商品の効果的な流通等に関する事例を取りまとめ、各種の旅行 形態ごとに、旅行商品化を進めるための留意点等をまとめたガイドラインを2010年に策

46 国土交通省・観光庁WEBサイト、「ニューツーリズムの振興」ページ

(http://www.mlit.go.jp/kankocho/page05_000044.html、最終閲覧2018-1-28)

47 国土交通省・観光庁WEBサイト、「ニューツーリズム創出・流通促進事業」ページ

(http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/new_tourism.html、最終閲覧2018-1-28)

定した48。ガイドライン策定後、表 2.3の事業が実施されてきた。

表 2.3 観光庁によるニューツーリズムの振興事業

事業名 実施年度 概要

地域の観光振興のための 地域遺産の管理・活用状況 調査事業

2009年度

観光振興のための地域遺産の管理・活用状況について、全国 のさまざまな取り組み主体の地域遺産への関わり方や活動 の維持方法を明らかにした。

モニターツアーの造成に よるニューツーリズムの 推進に関する調査事業

2010年度

地域の発案に基づいて地域活性化に資する旅行商品のモニ ターツアーを企画・造成し、参加者や関係者へのアンケート 等の実施により、再来訪の意向や消費額等の経済効果を調査 外国人旅行者に対する地

域資源の意識調査事業

2011年度

外国人向けにニューツーリズム(着地型旅行商品)に取り組 む際の考え方や実施のためのヒント・事例集

着地型旅行市場現状調査 報告

運営者に対する全国的な実態(利用者数、販売実績等)の調 査と共に、旅行者のニーズや考え方、嗜好性等を把握するた め、消費者に対するアンケート調査も実施し、地域資源を活 かした個性ある観光地づくりに重要な着地型旅行商品等の 現状を調査

モニターツアーの造成に よるニューツーリズムの 顧客満足度調査事業

地域の発案に基づき、観光需要を創出し、国内観光活性化に 資する旅行商品を試験的に造成し、あわせて参加者や関係者 へのアンケート等を実施することにより顧客満足度を測り、

再来訪意向や消費額等の経済効果を調査 国内旅行プロモーション

効果調査事業

国内旅行需要喚起に資するプロモーション活動を試験的に 展開し、国内旅行振興に関するプロモーション活動として何 が効果的かを検証

地域の観光資源の魅力を 活かした顧客満足型旅行 商品推進事業

2012年度

着地型観光が発展する可能性のある地域に対する研修等を 通じ、マーケティング・商品造成・販売・商品改良等の実例 を把握し、旅行商品の顧客満足度を高めるためのPDCAサイ クル推進による品質向上策の策定・啓発を実施

将来的な商品化に向けた 観光資源磨きのモデル調

査事業 2013年度

アンケートによる調査分析と全国より選定した地域のモデ ル調査

ニューツーリズム普及促 進モデル事業

旅行商品を顧客に届けるためにニューツーリズム実施事業 者が行うべき効果的かつ効率的なプロモーション手法をま とめた手引きを作成

インバウンドを見据えた

着地型観光調査 2014年度

着地型観光におけるインバウンド対応について、先進事例を 調査し、またモデル地域におけるインバウンド対応の実証を 通じたインバウンド着地型観光の手引き書を作成

観光地ビジネス創出の総

合支援 2014年度

観光地域づくりの主体が観光地の魅力となり得る資源を見 直し、旅行商品化を通じて自主財源の確保を促進し、継続し て観光地域づくりに取り組む地域の担い手を育成し、自立的 経営を誘導することにより観光地域づくりをビジネスにつ なげる取り組みを支援(45地域+追加3地域)

出所:国土交通省・観光庁WEBサイト、「ニューツーリズムの振興」ページ49より作成

(2)観光地域づくりプラットフォームと観光圏整備

観光客の来訪及び滞在の促進を意図し、2008年に「観光圏の整備による観光旅客の来

48 国土交通省・観光庁WEBサイト、「ニューツーリズム旅行商品 創出・流通促進ポイント集」PDF

(http://www.mlit.go.jp/common/000114212.pdf、最終閲覧2018-1-28)

49 国土交通省・観光庁WEBサイト、「ニューツーリズムの振興」ページ

(http://www.mlit.go.jp/kankocho/page05_000044.html、最終閲覧2018-1-28)