第6章 観光まちづくりにおけるリーダーの発達尺度の検討
6.1 研究の目的・方法
6.1.2 研究の方法
(1)調査対象
調査対象抽出のため、内閣府の「地方創生の専門家一覧」97と、『まちづくり会社等の 活動事例集』(国土交通省,2012)・「中心市街地活性化のまちづくりWEBサイト」リンク 集98、観光庁の観光地域づくり事例集(観光庁,2006;観光庁,2008;観光庁,2011;観 光庁,2012;観光庁,2013;国土交通省・観光庁編,2015)を参考にした。
内閣府 WEB サイトに掲載されている「地方創生の専門家一覧」には、日本の各省庁が 推薦している地方創生の専門家がまとめられている。この中には、大学教員やまちづく りコンサルタント、ICTや農林水産技術など特定の専門知識に基づいてまちづくりに寄与 する支援者も名を連ねている。すなわち、まちづくりに地域外から関わる外部人材、も しくは技術的な側面からまちづくりに関わる側面支援人材もリストに含まれている。本 調査は住民運動を根源とするまちづくり、あるいは観光まちづくりを牽引するリーダー に着目する。したがって、外部人材・側面支援人材といったリーダーを支える側の人物 を除き、地域を活性化する活動を牽引している人物・団体を調査対象とする。
2017年1~3月に行った具体的な対象絞り込み作業は、次の通りである。まず、内閣府 がWEBサイトに掲載している地方創生の専門家721件から、VISIT JAPAN大使50名(観 光庁)と自治体の部署9件を除いた。その結果、地域活性化伝道師(内閣府推薦)・地域 人材ネット(総務省推薦)・観光カリスマ(観光庁推薦)・タウンマネージャー(経済産 業省推薦)に登録されている 663 名が残った。この 663名の取り組み内容を各省庁 WEB サイトで確認し、外部人材・側面支援人材を除した。また、663名の中には重複して一覧 に掲載されている人物が3名いたので、その重複分を除した。さらに、国土交通省の『ま ちづくり会社等の活動事例集』・中心市街地活性化のまちづくりWEBサイトリンク集、観 光庁の観光地域づくり事例集に掲載されている人物・団体の中から、2017年3月時点で インターネット検索によって活動実体を確認できた人物・団体を調査対象に加えた。
以上の手続きにより、居住する地域を活性化する活動を牽引していると考えられる人
97 内閣府地方創生推進事務局WEBサイト、「地方創生の専門家一覧」ページ
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/expert/index.html、最終閲覧2017-1-28)
98 国土交通省「中心市街地活性化のまちづくり」WEBサイト(http://www.mlit.go.jp/crd/index/index.html、参 最終閲覧2017-2-26)
物を272名、団体を220件、合計492件を抽出した。これらの人物・団体に質問紙を送 る前に事前告知のハガキを郵送した結果、対象者他界や調査趣旨に適合する団体ではな いといった調査辞退があった。調査辞退人物・団体を除した479件(個人 265名、団体 214件)を本研究の調査対象とした。
(2)調査方法・期間
調査方法は質問紙郵送調査である。事前告知ハガキを2017年4月上旬に送付し、質問 紙を同年4月下旬に郵送で調査対象へ送付した。回答期限を2017年4月30日としたが、
返信用封筒の有効期限を同年5月31日に設定していたため、2017年5月31日まで質問 紙の返送を待った。なお団体に関しては、実務面での実質的責任者に依頼した。
2017年5月31日までに、149の回答を得た。回収率は31.1%である。このうち、後述 する尺度項目において無回答がある質問紙は無効回答とした。第7章にて発達影響要因 の確認のために確認的因子分析、発達モデルの検討のためにパス解析を行うが、これら の分析ソフトとしてSPSS Amos Version 24.0を用いた。このソフトにおいては尺度項目 に無回答がある場合、モデル適合度が算出されない。そのため、尺度項目において無回 答がある質問紙を無効とした。有効回答数は124で、有効回答率は83.2%である。
(3)調査項目 回答者属性
回答者の基本的情報として、活動分野、性別、年齢、最終学歴、組織所属年数・役職、
連絡先を設定した。なかでも活動分野は、内閣府「地方創生の専門家一覧」の分野を選 択肢に複数回答可とし、その中でも最も関わりが深い分野をさらに1つ選ぶ形式とした。
なお、概念が大き過ぎると考えられる「まちづくり」については、「市街地活性化(例え ば、中心市街地活性化、都市再生、環境モデル都市)」に置き換えた。
観光まちづくりにおけるリーダーのマインド
第5章のリーダー4名の言語データから生成された14個の概念は、マインド・発達プ ロセスに関連する要因・リーダーシップスキルという 3 つのカテゴリーに統合された。
マインドとは、リーダー個々の性質や、彼らの経験から形成される地域への想い、活動 にあたっての姿勢・考え方のことである。発達プロセスに関連する要因とは、リーダー シップスキルを身につけていくことを促進する要因のことで、本章ではこの意味をより
強調するため「発達促進要因」とする。リーダーシップスキルとは、リーダーが地域の 活動をリードする上で発揮したスキルのことである。
第4章・第5章の結果から、観光まちづくりにおけるリーダーのマインドについて、
カテゴリーごとにそれぞれ3項目ずつを作成し(表 6.1)、5件法で回答を求める方式 とした。本調査はリーダー発達に関する質的研究を材料に調査設計・質問項目づくりを 行ったため、回答が「あてはまる」側に集中する可能性が考えられる。このように一方 向に偏ることが想定される場合、回答が少ないと考えられる「あてはまらない」側の選 択肢を減らし、「あてはまる」側の選択肢を多くすることがある(丹野,2014:89-90)。
これを踏まえ本調査の質問紙初稿は、「5=非常にあてはまる」「4=かなりあてはまる」「3=
ややあてはまる」「2=あまりあてはまらない」「1=全くあてはまらない」という選択肢と した。なお、質問紙において出てくる「地域」とは、特記しない限り回答者がまちづく り活動を行っている地域のこととした。
表 6.1 観光まちづくりにおけるリーダーのマインド質問項目
カテゴリー 質問項目
地域への想い
地域のことが好きである
地域がどのようにあるべきか、ということは気にならない
(逆転項目)
地域の将来が気になる 積極的に学ぶ姿勢
色々なことを知りたいと思う 自ら進んで新しいことを学ぶ
難しいことは理解することを諦める(逆転項目)
チャレンジ精神
色々なことにチャレンジするのが好きである
リスクが高い場合、新しいことには取り組まない(逆転項目)
困難なことでも前向きに取り組む
収益意識
まちづくり活動において収益を考える必要はないと思う
(逆転項目)
まちづくり活動の際は、収益が上がるよう収支バランスをよく 考える
まちづくり活動の持続のために、収益を上げることは重要であ ると思う
出所:筆者作成
観光まちづくりにおけるリーダー発達促進要因
第4章・第5章の結果からカテゴリーごとにそれぞれ3~4項目ずつを作成し(表 6.
2)、5件法で回答を求める方式とした。
表 6.2 観光まちづくりにおけるリーダー発達促進要因質問項目
カテゴリー 質問項目
地域外経験
地域の外で暮らした経験が、地域での自分の活動に影響を与え た
他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた
他地域との人的交流が、地域での自分の活動に影響を与えた 地域の外での仕事経験が、地域での自分の活動に影響を与えた ショック
自分とは異なる価値観に衝撃を受けたことがある 地域の経済状況に衝撃を受けたことがある
地域に対する住民の評価に衝撃を受けたことがある ロールモデル
自分の考え方の手本になった人物がいる 自分の行動の手本になった人物がいる
まちづくり活動で行き詰まった際に、対処の仕方を相談した人 物がいる
出所:筆者作成
観光まちづくりにおけるリーダーシップスキル
第4章・第5章の結果と堀(2016:218)を参考に、カテゴリーごとにそれぞれ 3~5 項目ずつを作成し(表 6.3)、5件法で回答を求める方式とした。
表 6.3 観光まちづくりにおけるリーダーシップスキル質問項目
カテゴリー 質問項目
地域魅力発見
地域のことを知るために、地域をよく見て回る 地域の魅力を、他の地域の魅力と比較する
地域の魅力は、誰にどのように魅力的なのか分析する プランニング
課題を明確に認識するため、情報収集と分析をする
さまざまな情報を組み合わせて、新しいものを創り出すことが できる
目標達成までの計画を具体的に立てることができる
周囲を巻き込む
自分の考えを論理的に説明し、周囲に理解してもらおうとする 自分の考えを、パンフレットや自分自身の行動といった「形」
で見せることで、周囲に理解してもらおうとする
立場や価値観の異なる人同士が理解し合えるような「場づく り」ができる
相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出すことができ る
関係者の意見対立を解消し、合意を形成することができる 出所:筆者作成