第6章 観光まちづくりにおけるリーダーの発達尺度の検討
6.2 結果
6.2.2 まちづくりリーダー回答データの因子分析結果
負荷量(.30以上)を示す場合、その項目は削除した。分析の結果、2因子が抽出された。
各因子の固有値は 1 以上であり、回転前の 2 因子で 6 項目の全分散を説明する割合は
47.2%であった。カイ2乗による適合度検定の結果、有意確率.638であったため、この
2因子構造は十分なモデルと判断できる。プロマックス回転後の因子パターンと因子間相 関を表 6.9に示す。
第1因子は3項目で構成されており、「まちづくり活動において収益を考える必要はな いと思う」という項目に対して負の負荷量を示す一方、収益を上げることの重要性の認 識や収益が上がるよう収支バランスを考えることに対して正の負荷量を示した。そこで この因子を「収益意識」と命名した。第2因子は3項目で構成されており、「自ら進んで 新しいことを学ぶ」や「色々なことにチャレンジするのが好きである」といった項目に 高い負荷量を示した。そこでこの因子を「積極的に学ぶ姿勢」と命名した。
表 6.9 リーダーのマインドの因子分析結果
項目 Ⅰ Ⅱ
まちづくり活動において収益を考える必要はないと思う -.752 -.004 まちづくり活動の持続のために、収益を上げることは重要であると思う .728 -.011 まちづくり活動の際は、収益が上がるよう収支バランスをよく考える .633 -.015 自ら進んで新しいことを学ぶ .074 .725 色々なことにチャレンジするのが好きである -.024 .715 色々なことを知りたいと思う -.070 .539
因子間相関 Ⅰ Ⅱ
Ⅰ ― .112
Ⅱ ―
出所:調査結果に基づき筆者作成
抽出された因子の内的整合性を検討するため、クロンバックの信頼性係数を算出した。
その際、負の因子負荷量を示した「まちづくり活動において収益を考える必要はないと 思う」は逆転項目の処理を行う必要があるため(小塩,2011:155)、信頼性係数を算出
する前に処理を行った。「収益意識」のα係数は.741で高い値であった。一方で、「積極 的に学ぶ姿勢」のα係数は.690でやや低い値であった。
(2)リーダーの発達促進要因
リーダーの発達促進要因を6件法で測定した10項目について、基本統計量を表 6.1 0に示す。天井効果・床効果まではいかなかったが、マインド項目に続き得点の偏りが 見られた。
表 6.10 リーダーの発達促進要因項目についての基本統計量
項目 平均値 標準偏差
地域の外で暮らした経験が、地域での自分の活動に影響を与えた 4.81 1.405 自分とは異なる価値観に衝撃を受けたことがある 4.95 0.909 自分の考え方の手本になった人物がいる 4.98 1.112 他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた 4.90 0.991 地域の経済状況の悪化に衝撃を受けたことがある 4.30 1.256 自分の行動の手本になった人物がいる 4.72 1.233 他地域との人的交流が、地域での自分の活動に影響を与えた 4.92 1.041 地域に対する住民の低評価に衝撃を受けたことがある 4.05 1.261 まちづくり活動で行き詰まった際に、対処の仕方を相談した人物が
いる 4.50 1.193
地域の外での仕事経験が、地域での自分の活動に影響を与えた 4.71 1.413 出所:調査結果に基づき筆者作成
次に、探索的因子分析を行った。抽出法は最尤法を選択し、因子間に相関があること を仮定してプロマックス回転によって分析した。共通性0.16以上、因子負荷量.40以上 を基準に項目の取捨選択を行った。また、1つの項目が複数の因子に高い負荷量(.30以 上)を示す場合、その項目は削除した。分析の結果、1因子が抽出されたため、因子間の 相関がないことを仮定するバリマックス回転で再度因子分析(抽出法は最尤法)を行っ た。その結果、因子の固有値は1以上であり、因子寄与率は44.0%を示した(表 6.1 1)。カイ2乗による適合度検定の結果、有意確率.286であったため、この1因子構造は 十分なモデルと判断できる。
抽出された因子は4項目で構成されており、「他地域との人的交流が、地域での自分の
活動に影響を与えた」や「他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた」などの 項目が高い負荷量を示した。そこでこの因子を「他の人とのつながり」と命名した。
表 6.11 リーダーの発達促進要因の因子分析結果
項目 Ⅰ 共通性
他地域との人的交流が、地域での自分の活動に影響を与えた .728 .530 他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた .710 .504
自分の考え方の手本になった人物がいる .613 .375 まちづくり活動で行き詰まった際に、対処の仕方を相談した人物が
いる .590 .348
因子寄与 1.76
寄与率 44.0
出所:調査結果に基づき筆者作成
抽出された因子の内的整合性を検討するため、クロンバックの信頼性係数を算出した。
「他の人とのつながり」のα係数は.752で高い値であった。
(3)リーダーシップスキル
リーダーシップスキルを6件法で測定した11項目について、基本統計量を表 6.12 に示す。「地域のことを知るために、地域をよく見て回る」で天井効果が見られた。その 他の項目は天井効果・床効果まではいかなかったが、得点の偏りが見られた。
表 6.12 リーダーシップスキル項目についての基本統計量
項目 平均値 標準偏差
自分の考えを論理的に説明し、周囲に理解してもらおうとする 4.69 0.964
地域のことを知るために、地域をよく見て回る 5.09 0.687 課題を明確に認識するため、情報収集と分析をする 4.74 0.901 自分の考えを、パンフレットや自分自身の行動といった「形」で見
せることで、周囲に理解してもらおうとする 4.48 0.992 地域の魅力を、他の地域の魅力と比較する 4.35 1.149 さまざまな情報を組み合わせて、新しいものを創り出すことができ
る 4.75 0.898
立場や価値観の異なる人同士が理解し合えるような「場づくり」が
できる 4.64 1.031
地域の魅力は、誰にどのように魅力的なのか、分析する 4.58 0.938 相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出すことができる 4.57 0.903
目標達成までの計画を具体的に立てることができる 4.56 0.868 関係者の意見対立を解消し、合意を形成することができる 4.44 0.948 出所:調査結果に基づき筆者作成
次に、探索的因子分析を行った。抽出法は最尤法を選択し、因子間に相関があること を仮定してプロマックス回転によって分析した。共通性0.16以上、因子負荷量.40以上 を基準に項目の取捨選択を行った。また、1つの項目が複数の因子に高い負荷量(.30以 上)を示す場合、その項目は削除した。分析の結果、3因子が抽出された。各因子の固有 値は1以上であり、回転前の3因子で6項目の全分散を説明する割合は52.0%であった。
カイ2乗による適合度検定の結果、有意確率.470であったため、この3因子構造は十分 なモデルと判断できる。プロマックス回転後の因子パターンと因子間相関を表 6.13 に示す。
第1因子は3項目で構成されており、「関係者の意見対立を解消し、合意を形成するこ とができる」や「相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出すことができる」と いった項目に高い負荷量を示した。そこでこの因子を「ファシリテーションスキル」と 命名した。第2因子も3項目で構成されており、「地域の魅力は、誰にどのように魅力的 なのか、分析する」や「地域の魅力を、他の地域の魅力と比較する」といった項目に高
い負荷量を示した。そこでこの因子を「分析スキル」と命名した。第3因子は、「さまざ まな情報を組み合わせて、新しいものを創り出すことができる」と「自分の考えを、パ ンフレットや自分自身の行動といった“形”で見せることで、周囲に理解してもらおう とする」で構成されていた。そこでこの因子を「クリエイティブスキル」と命名した。
表 6.13 リーダーシップスキルの因子分析結果
項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
関係者の意見対立を解消し、合意を形成することができる .765 -.150 .090
相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出すことができる .717 .189 -.108
立場や価値観の異なる人同士が理解し合えるような「場づくり」が
できる .666 -.061 .294
地域の魅力は、誰にどのように魅力的なのか、分析する .135 .669 -.057 地域の魅力を、他の地域の魅力と比較する -.260 .630 .199
課題を明確に認識するため、情報収集と分析をする .272 .520 -.051
さまざまな情報を組み合わせて、新しいものを創り出すことができ
る .017 .112 .736
自分の考えを、パンフレットや自分自身の行動といった「形」で見
せることで、周囲に理解してもらおうとする .132 .003 .456 因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
Ⅰ - .511 .564
Ⅱ - .442
Ⅲ -
出所:調査結果に基づき筆者作成
抽出された因子の内的整合性を検討するため、クロンバックの信頼性係数を算出した。
「ファシリテーションスキル」のα係数は.802、「分析スキル」のα係数は.657、「クリ エイティブスキル」のα係数は.589であった。
(4)経験から学ぶ力
経験から学ぶ力の尺度検討として、木村ら(2011)の「職場における経験学習尺度」
16項目について6件法で回答を求めた。その基本統計量を表 6.14に示す。「経験から 学んだことを実際にやってみる」と「様々な経験の機会を求める」で天井効果が見られ た。その他の項目は天井効果・床効果まではいかなかったが、得点の偏りが見られた。
表 6.14 経験から学ぶ力項目についての基本統計量
項目 平均値 標準偏差
困難な仕事に立ち向かう 4.94 0.779
必要な情報を集めて、経験したことを分析する 4.84 0.859 様々な仕事場面に共通する法則を見出す 4.60 0.954 経験から学んだことを実際にやってみる 5.07 0.700 常に新しいことに挑戦する 4.93 0.885 経験したことを多様な視点から捉え直す 4.85 0.772 経験の結果を自分なりのノウハウに落とし込む 4.92 0.750 あるやり方が他の場面でも使えるかどうか実験する 4.55 0.931 失敗を恐れずにやってみる 4.84 0.868 自分の仕事の成功や失敗の原因を考える 4.90 0.759 他の状況にもあてはまるような仕事のコツを見つける 4.65 0.856 新しく得たノウハウを実際に応用する 4.81 0.790 様々な経験の機会を求める 5.01 0.791 様々な意見を求めて自分の仕事のやり方を見直す 4.63 0.950 経験から自分の仕事のやり方を見出す 4.86 0.736 自分のやり方が正しいかどうか試す 4.58 0.866 出所:調査結果に基づき筆者作成
次に、探索的因子分析を行った。抽出法は最尤法を選択し、因子間に相関があること を仮定してプロマックス回転によって分析した。共通性0.16以上、因子負荷量.40以上 を基準に項目の取捨選択を行った。また、1つの項目が複数の因子に高い負荷量(.30以 上)を示す場合、その項目は削除した。分析の結果、2因子が抽出された。各因子の固有 値は1以上であり、回転前の2因子で11項目の全分散を説明する割合は55.0%であった。
カイ2乗による適合度検定の結果、有意確率.058であったため,この2因子構造は十分 なモデルと判断できる。プロマックス回転後の因子パターンと因子間相関を表 6.15 に示す。