第4章 別府ハットウ・オンパクのリーダーの発達
4.1 研究の目的・方法
観光まちづくりにおけるリーダーの発達とその関連要因の探索的検討を目的に、本章 はオンパクに着目し、なかでもその発祥地である大分県別府市の観光まちづくりにおけ るリーダーを研究対象とする。
4.2で詳しく述べる通り、オンパクは観光まちづくりの手法の1つと考えられ、オン パクを推進した人物は「観光まちづくりにおけるリーダー」と考えられる。では、別府 ハットウ・オンパクを推進した人物はどのようにしてこれを立ち上げ、活動を推進した のだろうか。また、このプロセスの中でどのようにしてリーダーへと発達していったの だろうか。別府ハットウ・オンパクのリーダーを研究対象とすることにより、観光まち づくりにおけるリーダーの発達プロセスとその関連要因を探索的に明らかにする。
86 本章は、井手(2017a)を加筆修正した。
4.1.2 研究の方法
本研究では、別府ハットウ・オンパクを推進したA 氏とB 氏を観光まちづくりにおけ るリーダーとして設定し、両氏にインタビューを行った。加えて、両氏のフォロワーと して別府ハットウ・オンパク事務局員のC氏にインタビューを行った。3名の調査対象者 からは実名公表の許可を得たが、研究倫理を考慮し、本研究では氏名等を伏せて記載す る。なお、3名の調査対象者に分析結果を送付し、事実と異なる点がないか、記載に何か しら問題がないか、の確認をして頂いた。その上で、本研究の公表許可を得た。
調査方法は、半構造化面接による聞き取りである。聞き取りは2015年3月25日に、
大分県別府市内の調査対象者が指定する場所で行った。また、調査対象者の承諾を得て、
聞き取り内容をICレコーダーに録音した。それを逐語録にし、分析に用いた。
リーダーであるA氏・B氏への聞き取りは、①オンパクにおける具体的な役割、②オン パクに関わった経緯、③成長したとご自身が思われる経験、④プロフィール(性別、年 齢、略歴等)である。聞き取り内容①は聞き取り内容②とあわせて確認することにより、
調査対象者がオンパクあるいは活動してきた地域においてどのような役割を担ってきた のか、基礎的情報として把握することを意図した。聞き取り内容②は、オンパク実施以 前から実施までの調査対象者の関わりを把握することにより、発達との関連、すなわち 図 3.1のリーダー研究モデルにおけるリーダーの特性と媒介変数の関係の探索を意図 した。聞き取り内容③は、図 3.1のリーダー研究モデルの通り、リーダーの発達には さまざまな経験という媒介変数が大きく影響しているのではないかと考え、設定した。
聞き取り内容④は、調査対象者の基礎的情報把握と、聞き取り内容①~③を略歴と対照 させることによって調査対象者の発達をプロセスとして整理するために設定した。フォ ロワーである C 氏へのインタビューは、①オンパクにおける具体的な役割、②オンパク に関わった経緯、③リーダー(A氏・B氏)の行動と評価、④プロフィールである。
A氏・B氏の分析には、ライフストーリー研究の方法を用いた。ライフストーリー研究 は、文化人類学・社会学・医学・心理学・文学などの領域で用いられてきた。ライフス トーリーは個人が生活史上で体験した出来事やその経験についての語りであり、まだ十 分に知られていない社会的・歴史的リアリティの側面を照らし出すことがライフストー リー研究の原点である(桜井・小林,2005:28)。具体的には、調査者がインタビューを
通してライフストーリーの構築に参与し、それによって語り手や社会現象を理解・解釈 する共同作業に従事する。3.1の「観光地におけるリーダーに関する研究」で整理した 通り、観光まちづくりにおけるリーダーの発達についてはほとんど不明であり、量的に 仮説検証できる段階ではないと考えられる。まずは質的に彼らの発達プロセスの詳細を 把握し、その詳細から仮説生成を行う段階である。そのため本章では、仮説生成のため に対象のリアリティを照らし出すことに適したライフストーリー研究の方法を用いるこ とにした。まず、A氏・B氏の語りから出来事を時系列に編集した。その後、両氏の発達 に関連する要因に焦点を当て、その意味について分析を行った。