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日本人日本語教師と韓国人日本語学習者による評価の違いに関する考察

第 5 章 言語・パラ言語および非言語的特徴に関する評価の観点

5.6 日本人日本語教師と韓国人日本語学習者による評価の違いに関する考察

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X2=720.853, df=37, p<.001, GFI=.842, AGFI=.792, CFI=.845 RMSEA=.104, AIC=794.853 図5-4 「言語・パラ言語および非言語行動」の確認的因子分析(韓国人学習者)

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語教師と韓国人学習者ともに「途中終了」であり、平均値を比較してみると、日本語教師

の結果は3.95、韓国人学習者の結果は3.77であった。途中終了が一番高い平均値を得たと

いうことは、韓国人学習者がプレゼンテーションをする際に、途中終了があまり見られな かったということになる。プレゼンテーションのような改まった場面では、途中終了が多 いとマイナスな印象を与えやすいといわれるが、本論文では実際の数ではなく、印象を測 ったものであり、この結果からは、発表時の「途中終了」は多くなかったと言える。

続いて平均値がもっとも低かった項目は、日本語教師が「表情」(2.58)、韓国人学習者が

「語尾伸び」(2.92)という結果であった。日本語教師から表情の項目に低い平均値が得ら れたということは、プレゼンターの表情が乏しかったということになる。

韓国人学習者の結果でもっとも低かった項目は語尾伸びであるが、その次に表情(2.98)

が低く、日本語教師と韓国人学習者両方のグループにおいてプレゼンターの表情は乏しい と評価された。この背景にはいくつかの理由が考えられるだろうが、聴衆の前でプレゼン テーションをすることと、母語でない日本語で行なうことで緊張をしたため、表情が固く なってしまったことが考えられる。その他に、プレゼンテーションを行なう際には表情の 重要性まで考える余裕がなかったため、重要視していなかった可能性も考えられる。

韓国人学習者の結果で、平均値がもっとも低かった項目は、「語尾伸び」であったが、日 本語教師による「語尾伸び」の結果は、上位から5番目で評価に差異が生じた。

このことから、韓国人学習者の特徴の一つである「語尾伸び」は、日本語教師に比べ同 じ母語話者のほうが気になるのではないかと考える。学習者は、自分自身の学習経験から 教師から語尾伸びに関して注意されたことを思い出して評価した可能性もある(趙,1991)。 評価項目順に平均値を比較してみると、「文法」においては、日本語教師(3.52)、韓国人学 習者(3.50)であり、両方とも平均値から高く、文法は正しい方であると考えていることが わかった(表5-6)。

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表5-6「言語・パラ言語および非言語行動」の平均および標準偏差

平均値 標準偏差 平均値 標準偏差

文法 3.52 0.67 3.50 0.49 0.10,n.s.

発音 3.04 0.62 3.10 0.51 0.46,n.s.

流暢さ 3.36 0.60 3.16 0.52 1.59,n.s.

語彙 3.38 0.55 3.34 0.47 0.37,n.s.

丁寧さ 3.77 0.54 3.51 0.52 2.15* 表現力 3.69 0.52 3.35 0.48 3.01**

自然さ 3.27 0.61 2.91 0.52 2.83**

フィラー 3.50 0.69 3.48 0.56 0.21,n.s.

語尾伸び 2.92 0.61 3.37 0.53 3.48**

途中終了 3.95 0.64 3.77 0.56 1.31,n.s.

目や体方向 3.29 0.57 3.13 0.63 1.17,n.s.

間 3.39 0.53 2.93 0.47 4.09***

スピード 3.48 0.66 3.07 0.41 3.33**

表情 2.98 0.45 2.58 0.56 3.51**

身振り手振り 3.00 0.49 2.89 0.45 1.06,n.s.

使いこなし 3.46 0.53 3.08 0.47 3.42**

聞きやすさ 3.22 0.57 3.28 0.51 0.52,n.s.

平均 3.37 0.58 3.20 0.51

日本語教師 韓国人学習者

t値

*p < .05, **p < .01, ***p < .001

次に、「一つひとつの言葉を正しく発音している。」においては、日本語教師(3.04)、韓 国人学習者(3.10)であり、日本語教師に比べ、韓国人学習者のほうが発音については高め の評価を下していることがわかった。

図5-5 文法 図5-6 発音

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「話し方が流暢である。」においては日本語教師(3.36)、韓国人学習者(3.16)であり、

この項目は、平均値が高いほど話し方が流暢であるとみなされるものであり、韓国人学習 者に比べ、日本語教師のほうが少し高い平均値であったが、どちらも平均値に満たなかっ た。

「語彙の使い方が正しい。」においては日本語教師(3.38)、韓国人学習者(3.34)であり、

どちらも韓国人学習者に比べ日本語教師の方が少し高い平均値を得られていたが、ほとん ど変わりはなかった。

図5-7 流暢さ 図5-8 語彙

「話し方が丁寧である。」においては、日本語教師(3.77)、韓国人学習者(3.51)であり、

どちらも平均値から高かった。この項目は、話し方が丁寧であれば高い点数が得られるも のであるが、韓国人学習者より日本語教師の評価が高かった。

「単語や表現をよく知っている。」においては、日本語教師(3.69)、韓国人学習者(3.35)

であり、どちらも平均値から上回っている。このことから単語や表現をよく知っているか 否かについては、どちらのグループにおいても高い評価が得られ、さらに韓国人学習者よ り日本語教師のほうが高い評価を与えていたことがわかる。

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図5-9 丁寧さ 図5-10 表現力

「話し方が日本語として自然である。」においては、日本語教師(3.27)、韓国人学習者

(2.91)であり、どちらも平均値を下回り、さらに日本語教師に比べ、韓国人学習者のほう が低く評価していた。このことから、話し方が日本語として自然かに関する項目には、韓 国人学習者のほうが厳しい評価を与えたということがわかる。

「フィラー(え~と、まあ、等の言い方)の使用が多い。」においては、日本語教師(3.50)、 韓国人学習者(3.48)であり、どちらのグループも平均値を超え、フィラーの使用について は少ないほうであったと評価されたことがわかった。

図5-11 自然さ 図5-12 フィラー

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「語尾伸び(私は-、~ですが-、等の言い方)が多い。」においては、日本語教師(2.92)、 韓国人学習者(3.37)であり、韓国人学習者は多いほうであると判断している反面、日本語 教師は少ないほうだと判断していた。このように、韓国人学習者と日本語教師の間に差が 見られたということは、韓国人学習者が語尾伸びを感知できないことが原因ではないかと 思われる。

「途中終了の言い方が多い。」においては、日本語教師(3.95)、韓国人学習者(3.77)で あり、どちらも平均値を大きく上回った。これは、プレゼンターの途中終了が少ないほう であったと言い換えられる。

図5-13 語尾伸び 図5-14 途中終了

「聴衆への目や体の向け方が適切である。」においては、日本語教師(3.29)、韓国人学習 者(3.13)であり、聴衆への目や体の向けた方は適切なほうだと判断されたといえるが、平 均値には及ばなかった。

「間の取り方が適切である。」においては、日本語教師(3.39)、韓国人学習者(2.93)で あり、日本語教師と韓国人学習者との比較では有意差が見られた。

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図5-15 目や体方向 図5-16 間

「話し方のスピードが適切である。」においては、日本語教師(3.48)、韓国人学習者(3.07)

であり、話し方のスピードの適切さにおいては両グループ間に有意差があり、韓国人学習 者のほうが厳しい評価を与えていた。

「表情が豊かである。」においては、日本語教師(2.98)、韓国人学習者(2.58)であり、

これもまた両グループ間に差は大きく、韓国人学習者のほうが厳しい評価を与えていた。

図5-17 スピード 図5-18 表情

「身振り手振りが適切である。」においては、日本語教師(3.00)、韓国人学習者(2.89)で

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あり、どちらも平均値からは低かった。これは、身振り手振りが規定において適切でない ほうであったといえる。

「日本語を使いこなせている。」においては、日本語教師(3.46)、韓国人学習者(3.08)で あり、両グループ間に差は大きく、韓国人のほうが厳しいと評価していた。

図5-19 身振り手振り 図5-20 使いこなし

「日本語が聞き取りやすい。」においては、日本語教師(3.22)、韓国人学習者(3.28)で あり、どちらのグループにおいても聞き取りやすいほうであると判断していたことがわか る。

図5-21 聞きやすさ

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以上の平均値を、t検定を用いて有意差を確認した結果、「間の取り方が適切である。」(t

=4.086)には 0.1%水準で有意差が見られた。また、「単語や表現をよく知っている。」(t=

3.01)、「話し方が日本語として自然である。」(t= 2.825)、「語尾伸び(私は-、~ですが-、

等の言い方)が多い。」(t= 3.483)、「話し方のスピードが適切である。」(t= 3.329)、「表情 が豊かである。」(t= 3.514)、「日本語を使いこなせている。」(t= 3.416)には1%の水準で 有意差が見られ、「話し方が丁寧である。」(t= 2.148)には5%水準で有意差が見られた。

表5-6で示したように、「言語・パラ言語および非言語行動」に関する評価の観点におい て、日本語教師と韓国人学習者の2つのグループの間に、全体的にt検定の結果に有意差は 見られなかったが、項目ごとには有意差が見られた。また、有意差が見られた 7 つの項目 のうち4つの項目は【正確さおよび流暢さ】に、2の項目が【非言語およびパラ言語能力】、 1つの項目が【会話ストラテジー】に含まれており、日本語教師と韓国人学習者では正確さ や流暢さを評価する際に差が大きかったということがわかる。さらに「語尾伸び」以外の 項目は日本語教師の評価が高かったことから、先行研究でいう言語の面では非教師より日 本語教師のほうが厳しい評価を下したという結果(趙,1991;Hadden,1991;Brown,1995;

Okamura,1995;渡部,2003a 等)とは一致していない。しかし、本研究の対象は非教師の

なかでも韓国人学習者という特殊性があるため、日本語母語話者非日本語教師より韓国人 学習者のほうが評価に厳しいという可能性が示唆された。

続いて、因子分析の結果、日本語教師が韓国人学習者のプレゼンテーションを聞く際に は、【正確さおよび流暢さ】、【非言語およびパラ言語能力】、【プレゼンテーション向きの話 し方】、【会話ストラテジー】という 4 つの観点を持っていることがわかった。一方、韓国 人学習者は、【正確さおよび流暢さ】、【非言語およびパラ言語能力】、【会話ストラテジー】

という3つの観点を持っていた。

これらの結果を比較してみると、異なる因子は、日本語教師が持っている【プレゼンテ ーション向きの話し方】に関する評価の観点であり、残りの 3 因子は同じであった。この ことから、日本語教師と韓国人学習者は、正確さや流暢さ、非言語やパラ言語、そして会 話ストラテジーに関してほぼ同じ評価の観点を持っているが、日本語教師においては、プ レゼンテーション向きの話し方という観点も持っていることがわかった。日本語教師は普 段から日本語学習者に接しており、学習者の間違いについて修正しなければならないとい う意識を持っているかもしれない。これが日本語教師と韓国人学習者の因子構造の違いを もたらしたのかもしれない。

また、日本語教師と韓国人学習者の両グループにおいて、「語尾伸び」、「フィラー」、「途 中終了」の 3 つの項目で構成された【会話ストラテジー】因子は項目が完全に一致してお り、【非言語およびパラ言語能力】の因子においては、「間の取り方」の項目以外は「表情」

「身振り手振り」「目や体の向け方」の3項目が一致していた。

このことから、上記の 2 因子については、日本語教師と韓国人学習者のどちらのグルー プも全く同じ評価の観点を持っている可能性が示唆される。さらに、これらの結果は確認