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データの妥当性検討

第 3 章 調査概要

3.4 データの妥当性検討

因子構造を検討するため、IBM SPSS Statistics 22を用いて、「言語・パラ言語および非 言語行動」に関する評価観点と「対人印象」に関する評価観点の結果の探索的因子分析を 行なった後、Amosを用いて確認的因子分析23を行なう。なお、以下に用いる質問紙の項目 の数が多く、項目のまとまりを確認するため、質問紙1は1から17、質問紙2は1から 20、

質問紙3は1から 14までの番号を振った。

3.4.1 探索的因子分析による分析

本節では、「言語・パラ言語および非言語的特徴」「対人印象」「発音およびプレゼンテー ション」の 3 つの質問の全項目について日本語教師と韓国人学習者の順に、探索的因子分 析を用いて分析を行なう。なお、以下の分析は韓国人学習者6名の個別結果ではなく、6名 全員の結果である。

まず、全51項目について韓国人学習者6名に対する40名の日本語教師の評価値を用い て重み付けのない最小2乗法とプロマックス回転による因子分析を行なった(表3-9)。

ここでは固有値の減衰状況とスクリープロットの形状24から総合的に判断し、9因子解を 採用することとした。

第1因子は、12.「まじめさ」6.「誠実さ」8.「信頼性」19.「落ち着き」という社会的に 望まれていることに関する項目の因子負荷量が大きいので【社会的望ましさ】因子と解釈 した。また、これらの項目の命名においては、林(1978)を参考にした。第2因子は1.「積 極的」16.「元気さ」14.「明るさ」5.「自信」という活動する際の要素に関する項目の因子 負荷量が大きいので【活動性および発表のスキル】因子と解釈した。 第3因子は6.「撥 音」4.「長音」5.「促音」7.「イントネーション」という単音の発音に関する項目の因子負 荷量が大きいので【発音の良さ】因子と解釈した。第 4 因子は 4.「語彙」6.「表現力」1.

「文法」という言語の正しさに関する項目の因子負荷量が大きいので【言語の正確さおよ び流暢さ】因子と解釈した。第5因子は14.「資料」12.「わかりやすさ」10.「発表の良さ」

という発表に対する評価に関する項目の因子負荷量が大きいので【発表内容】因子と解釈

した。第6因子は8.「フィラー」9.「語尾伸び」10.「途中終了」という会話をする際に発

話者のストラテジーに関する項目の因子負荷量が大きいので【会話ストラテジー】因子と 解釈した。第7 因子は 12.「間」13.「スピード」という話のスキルに関する項目の因子負 荷量が大きいので【言語の流暢さ】因子と解釈した。第8因子は3.「破擦音」2.「摩擦音」

という韓国人が苦手とする日本語の発音に関する項目の因子負荷量が大きいので【韓国人

23 探索的因子分析は特別な仮説を設定して行なうわけではない。一方、確認的因子分析(あるいは検証的

因子分析)は、研究者が立てた因子の仮説を設定し、その仮説に基づくモデルにデータが合致するか否 かを検討する手法である(小塩2004:206)。よって以上の図3-1および図3-2を確認的因子分析と呼 ぶ。

24 スクリープロットを参照し、固有値の減衰状態に基づいて因子数を決める基準があり、スクリー基準と 呼ばれる。

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の特徴的な発音】因子と解釈した。第9因子は4.「親しみやすさ」17.「話しやすさ」とい う個人的に親しみを感じているかどうかに関する項目の因子負荷量が大きいので【個人的 親しみやすさ】因子と解釈した。

以上をまとめると、日本語教師が韓国人学習者のプレゼンテーションを評価する観点に は、【社会的望ましさおよび個人的親しみやすさ】、【活動性および発表のスキル】、【発音の 良さ】、【言語の正確さおよび流暢さ】、【発表内容】、【会話ストラテジー】、【言語の流暢さ】

【韓国人の特徴的な発音】、【個人的親しみやすさ】の9つの観点が働いていると言える。

また、第6因子の【会話ストラテジー】は崔(2013)も同様の因子を抽出しており、【話 し手の方略】と命名している。崔(2013)は本研究とは異なる初対面会話であるため、異 なる名を付けたが、同じ結果が得られて、背景に同じ現象があるのではないかと思われる。

さらに、表3-9に示したように、第1因子【社会的望ましさおよび個人的親しみやすさ】

と中程度の相関が見られた因子は、第 2 因子【活動性および発表のスキル】(.560)、第 5 因子【発表内容】(.529)、第7因子【言語の流暢さ】(.454)であった。第2因子【活動性 および発表のスキル】と中程度の相関が見られた因子は、第 4 因子【言語の正確さおよび 流暢さ】(.465)、第5因子【発表内容】(.535)、第7因子【言語の流暢さ】(.492)であっ た。第3因子【発音の良さ】と中程度の相関が見られた因子は、第4因子【言語の正確さ および流暢さ】(.592)、第7因子【言語の流暢さ】(.505)であり、第4因子【言語の正確 さおよび流暢さ】と中程度の相関が見られた因子は、第 5 因子【発表内容】(.454)、第 7 因子【言語の流暢さ】(.645)であった。第5因子【発表内容】と第7因子【言語の流暢さ】

(.487)との間に中程度の相関が見られた。特に第7因子【言語の流暢さ】は第1因子【社 会的望ましさおよび個人的親しみやすさ】から第5因子【発表内容】の5つの因子におい て相関が見られたため、【個人的親しみやすさ】はまったく独立というものではなく、複合 的な感情であると示唆された。

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表3-9 日本語教師の探索的因子分析

共通性

【社会的望ましさ】

まじめな人だ。 . 9 3 1 -.247 .095 -.079 .121 -.046 -.106 .031 -.035 .720 誠実な人だ。 . 9 1 5 -.102 -.069 .066 -.007 .047 -.079 .062 .077 .690 信頼できそうな人だ。 . 8 0 2 .122 -.079 -.012 .101 -.014 -.061 .115 -.018 .770 落ち着いていそうな人だ。 . 7 7 9 -.267 .066 -.128 -.047 .005 .320 .007 .085 .634 責任感が強そうな人だ。 . 6 7 7 .249 -.017 -.142 .138 -.003 -.047 .031 -.063 .701 知的な人だ。 . 6 7 0 .083 -.065 .211 .013 -.085 -.042 -.082 .035 .672 好きになれそうな人だ。 . 5 5 2 .151 -.115 .148 -.012 -.019 .004 -.066 .358 .675 協調性がありそうな人だ。 . 5 3 6 -.074 .024 -.096 .019 -.049 .285 .130 .382 .649 しっかりした人だ。 . 5 2 7 .446 .016 -.013 .102 -.007 -.121 .047 -.137 .741 話し方が丁寧である。 . 5 1 9 -.236 .149 .219 -.041 .051 .116 -.019 .115 .432 好感の持てる人だ。 . 5 0 9 .183 .017 .109 -.067 -.093 .121 -.065 .376 .792 魅力のある人だ。 . 4 6 7 .357 -.181 .140 -.038 -.036 .057 -.026 .282 .751 礼儀正しそうな人だ。 . 2 9 4 .053 -.023 .036 -.048 .104 .117 -.038 .010 .132

【活動性および発表のスキル】

積極的な人だ。 -.035 1 . 0 5 1 -.052 -.068 -.011 .050 -.111 .039 -.088 .835 元気そうな人だ。 -.103 1 . 0 0 1 .085 -.172 -.059 .098 -.023 .060 .178 .738 明るい人だ。 -.078 . 8 6 9 .030 .007 -.065 .036 .003 -.021 .275 .747 自信のある人だ。 .110 . 8 5 1 .018 .030 -.082 .008 -.044 -.025 -.141 .746 表情が豊かである。 -.202 . 6 1 1 -.061 .054 .041 .001 .297 .169 .123 .630 率直な人だ。 .411 . 4 9 4 .150 -.071 .003 .081 -.158 -.036 .156 .577 発表に慣れている。 -.100 . 4 6 5 -.107 .173 .269 -.008 .285 .050 -.073 .745 聴衆への目や体の向け方が適切である。 .000 . 4 6 5 -.128 .186 .113 -.093 .136 .045 -.042 .553 身振り手振りが適切である。 -.034 . 4 3 1 -.003 -.168 .133 -.080 .394 .160 .025 .577 外見が魅力的である。 .348 . 4 1 1 -.131 .059 -.122 -.154 .123 .078 .118 .613

【発音の良さ】

撥音「ん」の発音が正しく分かりやすい。 -.143 -.008 . 7 1 6 .091 .136 -.101 -.261 .093 .116 .494 長音「-」の発音が正しく分かりやすい。 -.004 -.226 . 7 0 5 -.195 .282 -.028 .054 .115 .202 .566 促音「っ」の発音が正しく分かりやすい。 -.062 -.046 . 7 0 2 .152 -.119 .032 .050 .041 .165 .566 イントネーション(抑揚)が正しく分かりやすい。 .188 .059 . 6 9 2 -.083 -.139 .062 .261 -.115 -.123 .724 プロミネンス(強弱)が正しく分かりやすい。 .030 .254 . 5 9 9 -.036 -.156 .077 .351 -.170 -.051 .709

「ぱ行」や「ば行」等の(破裂音)が正しく分かりやすい。 -.076 .106 . 5 8 5 .083 .073 .081 -.217 .265 .094 .479 アクセントが正しく分かりやすい。 .152 -.082 . 5 2 9 .049 -.055 .001 .236 .068 -.126 .599 日本語が聞き取りやすい。 .013 .129 . 3 3 8 .250 .146 -.133 .052 -.031 -.120 .595

【言語の正確さおよび流暢さ】

語彙の使い方が正しい。 .076 -.111 .100 . 8 2 0 -.022 .158 -.130 .059 -.009 .636 単語や表現をよく知っている。 -.046 .093 -.063 . 7 8 4 .030 .241 -.110 -.003 .125 .494 正しい文法を使っている。 .290 -.251 .051 . 7 2 7 .009 .136 -.102 .110 -.081 .624 日本語を使いこなせている。 -.085 .107 .117 . 5 5 4 .123 -.111 .129 -.016 .018 .713 話し方が日本語として自然である。 -.103 -.024 .236 . 5 2 2 .043 -.081 .247 -.094 -.035 .702 話し方が流暢である。 -.104 .164 .187 . 5 0 4 -.079 -.104 .174 .040 -.028 .675 一つひとつの言葉を正しく発音している。 -.030 -.078 .344 . 5 0 0 .042 -.085 -.047 .125 -.086 .631

【発表内容】

資料が適切である。 .118 -.098 .040 .118 . 7 9 6 -.023 -.085 -.108 .037 .698 内容がわかりやすい。 .122 .045 .019 .045 . 6 4 9 .108 .149 -.079 -.030 .703 いい発表だと思う。 .118 .151 .061 -.074 . 5 9 3 .044 .206 -.014 .018 .750 内容に興味がある。 .230 .225 -.021 -.126 . 4 0 5 .017 -.025 -.123 .069 .445

【会話ストラテジー】

フィラー(え~と、まあ、等の言い方)の使用が多い。 .013 .136 .005 .187 -.048 . 8 6 2 .162 .005 -.034 .613 語尾伸び(私は-、~ですが-、等の言い方)が多い。 .050 -.172 -.149 -.040 .051 . 6 5 0 .643 .126 -.010 .496 途中終了の言い方が多い。 -.120 .049 .130 .298 .186 . 4 6 8 .028 -.143 .064 .345

【言語の流暢さ】

間の取り方が適切である。 .035 .115 .102 -.037 .038 .073 . 6 7 2 -.038 .051 .608 話し方のスピードが適切である。 .095 .070 .099 -.047 -.003 .163 . 5 7 0 -.026 .040 .405

【韓国人の特徴的な発音】

「語頭のざ行」や「つ」等の(破擦音)が正しく分かりやすい。 .061 .087 .218 .048 -.154 -.081 -.035 . 7 4 7 .009 .707

「さ」や「語中のざ行」等の(摩擦音)が正しく分かりやすい。 .025 .206 .062 .185 -.091 .095 .060 . 6 8 6 -.125 .711

【個人的親しみやすさ】

親しみやすい人だ。 .316 .319 .121 .027 .049 .044 -.054 -.072 . 5 5 8 .743 話しやすそうな人だ。 .196 .424 .107 -.073 -.004 -.021 .093 -.051 . 4 8 3 .693

因子間相関

.560 .328 .378 .529 -.201 .454 -.082 .112

.261 .465 .535 -.484 .492 .031 .120

.592 .393 -.022 .505 .265 -.194

.454 -.229 .645 .344 -.084

-.163 .487 .183 .052

-.388 -.157 -.109

.184 .070

-.074

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次に、全51項目について韓国人学習者6名に対する40名の韓国人学習者に対して、第

8 因子までの累積説明率は 68.5%であった(表 3-10)。ここでは固有値の減衰状況とスク

リープロットの形状から総合的に判断し、8因子解を採用することとした。そして、重み付 けのない最小2乗法とプロマックス回転を行なった。なお、α 係数が0.836 であることか ら因子分析の結果は信頼性が高いと示唆される。

第 1 因子は、17.「話しやすさ」11.「魅力」14.「明るさ」という親しみを感じる心理的 な要因に関する項目の因子負荷量が大きいので【個人的親しみやすさ】と解釈した。第 2

因子は 7.「自然さ」16.「使いこなし」3.「流暢さ」という言語の流暢性に関する項目の因

子負荷量が大きいので【言語の流暢さおよび発表のスキル】と解釈した。第 3 因子は 12.

「まじめさ」13.「礼儀の良さ」6.「誠実さ」という社会的に求めている社会性に関する項 目の因子負荷量が大きいので【社会的望ましさ】と解釈した。第 4 因子は 2.「摩擦音」5.

「促音」3.「破擦音」という韓国人が苦手とする日本語の発音に関する項目の因子負荷量が 大きいので【韓国人の特徴的な発音】と解釈した。第5因子は1.「文法」4.「語彙」6.「表 現力」という日本語の正しさや正しく表現することに関する項目の因子負荷量が大きいの で【言語の正確さおよび適切さ】と解釈した。第6因子は12.「わかりやすさ」11.「興味」

14.「資料」という発表の内容に関する項目の因子負荷量が大きいので【発表内容】と解釈

した。第7因子は1.「積極的」5.「自信」3.「率直さ」という人と接する際の行動に関する

項目の因子負荷量が大きいので【活動性】と解釈した。第8因子は9.「語尾伸び」8.「フィ ラー」10.「途中終了」という会話をする際のストラテジーに関する項目の因子負荷量が大 きいので【会話ストラテジー】と解釈した。

また、第1因子【個人的親しみやすさ】と中程度の相関が見られた因子は、第2因子【言 語の流暢さおよび発表のスキル】(.469)、第 3因子【社会的望ましさ】(.434)、第 6因子

【発表内容】(.475)、第7因子【活動性】(.479)であった。第2因子【言語の流暢さおよ び発表のスキル】と中程度の相関が見られた因子は、第 4 因子【韓国人の特徴的な発音】

(.618)、第5因子【言語の正確さおよび適切さ】(.410)、第6因子【発表内容】(.473)、 第7因子【活動性】(.472)であった。第3因子【社会的望ましさ】と中程度の相関が見ら れた因子は、第6因子【発表内容】(.439)であり、第4因子【韓国人の特徴的な発音】と 中程度の相関が見られた因子は、第6因子【発表内容】(.433)であった。特に第6因子【発 表内容】は第1因子【個人的親しみやすさ】から第 4因子【韓国人の特徴的な発音】の 4 つの因子との間に中程度の相関が見られたため、これらの因子は独立的ではなく、複合的 にとらえなければいけないと考えられる。