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属格助詞 =ga, =no

ドキュメント内 甑島里方言記述文法書 (ページ 98-101)

第 6 章 統語論

6.1 格

6.1.4 属格助詞 =ga, =no

属格助詞は =ga と =no の 2 種である。属格助詞の統語機能は連体修飾であり,所有を始め,属 性,所属,全体/部分の関係などを広く表す。たとえば,次のようなものである。

(10) a. taroo-saN=no moN=jai=doo

太郎-TTL=GEN もの=VLZ:NPST=SFP

‘太郎さんのものだよ。’ 《所有》

b. isi=N hasira=ni atama=ba uQcuke-ta 石=GEN 柱=DAT 頭=ACC 打ちつける-PST

‘石の柱に頭をぶつけた。’ 《属性》

属格助詞 =ga, =noは,これを取る名詞の階層と待遇に応じて使い分けられる。まず,当該名詞に 対する上位待遇を欠く (=同等以下である) 場合は,階層に応じて次のように使い分けられる。

24 属格《待遇なし》

人称名詞 親族・固有名詞 人間

動物 無生物

一人称 二人称 (同等・目下) (同等・目下)

=ga =ga =ga, =no =ga, =no =no =no

25 属格《待遇なし》

二人称 親族・固有名詞 人間名詞

(目上) (目上) (目上)

=no =no =no

まず,人称名詞は =gaを取る。

(11) oi=ga tebukuro

1SG=GEN 手袋

‘私の手袋’ 《一人称名詞》

(12) omai=ga tebukuro

2SG=GEN 手袋

‘おまえの手袋’ 《二人称名詞》

親族・固有名詞,人間普通名詞は基本的に =gaを取る。ただし,=noも許容する。

(13) boozu=ga tebukuro

息子=GEN 手袋

‘息子の手袋’ 《親族名詞》

(14) [友人である太郎の落しものについて]

太郎=ga=to=jai=ka=mo wakar-aN=naa.

太郎=GEN=NLZ=VLZ:NPST=Q=も わかる-NEG:NPST=SFP

‘太郎のかもしれないなあ。’ 《固有名詞》

(15) aN ko=ga=to=jai=doo.

あの 子=GEN=NLZ=VLZ:NPST=SFP

‘あの子のだよ。’ 《人間普通名詞》

動物名詞と無生物名詞は =noを取る。これらが =gaを取ることはない。

(16) iN=no kobo 犬=GEN 子ども

‘犬の子ども’ 《動物名詞》

一方,目上の人物を指す名詞は =noを取る。

(17) omai-sama=no tebukuro

2SG-TTL=GEN 手袋

‘あなたさまの手袋’ 《二人称名詞・目上》

(18) otoQcjaN=no=to=jai=doo.

お父さん=GEN=NLZ=VLZ:NPST=SFP

‘お父さんのだよ。’ 《親族名詞・目上》

また,属格助詞 =gaにさらに =noを付加する,再属格と見られる例もある。次の (19)aは,被所 有者がKという家族で,所有者名詞の一人称単数oiに =gaが付き,さらに =noが =gaに接尾して いる。なお,このような例は,被所有者が家族である場合に限らず,たとえば,(19)bのように被所 有者が物 (例文では ie) の例もある。また,所有者側の名詞の性質には,現時点では特に制限は見 られず,(19)cのように複数形に,(19)aのように普通名詞に付く場合もある。

(19) a. oi=ga=N K 1SG=GEN=GEN 個人名

‘私のところのK’

b. oi=ga=N ie 1SG=GEN=GEN

‘私たちの家’

c. oi=do=ga=N ojazi=do 1=PL=GEN=GEN 親父=PL

‘私たちの親父たち’

d. koocjooseNsee=ga=N ko 校長先生=GEN=GEN

‘校長先生のところの息子’

なお,属格助詞 1つと =ga=noの違いについては,まだ調査不十分であるが,面接調査での回答 によると,単純な属格の方は,所有の含意がその所有者名詞の指示範囲のみに留まるのに対し,

=ga=noの場合は,その所有者名詞を含む構成員全体での所有を含意するとのことであった。たとえ

ば,(20)a は属格助詞 1 つの例であるが,所有者としては oi1 人が含意されるという。一方,(20)b は =ga=noの例であるが,この場合はoiを含む集団の所有という意味になるという。

(20) a. oi=ga ie 1SG=GEN

‘私 [だけ] の家’

b. oi=ga=N ie 1SG=GEN=GEN

‘私 [を含む集団] の家’

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