• 検索結果がありません。

第7章 観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデルの検討

7.1 研究の目的・方法

第4章・第5章の質的研究により、観光まちづくりにおけるリーダーの発達に影響す る要因として、「地域への想い」「積極的に学ぶ姿勢」「チャレンジ精神」「収益意識」と いったマインド、「地域外経験」「ショック」「ロールモデル」といった発達促進要因が抽 出された。また、観光まちづくりにおけるリーダーのスキルとして、「地域魅力発見」「プ ランニング」「周囲を巻き込む」が抽出された。そして第6章において、探索的に導出さ れたこれらの項目を質問紙に反映させて量的調査を実施し、探索的因子分析を行った。

その結果、観光まちづくりにおけるリーダーの回答データから、リーダーのマインドと して「積極的に学ぶ姿勢」「収益意識」「地域への想い」が抽出された。また、発達促進 要因として「ショック」「地域外経験」「他の人とのつながり」が抽出された。さらに、

リーダーシップスキルとして、「分析・プランニングスキル」「ファシリテーションスキ

99 まちづくりリーダーの発達影響要因とその構造に関しては、井手(2018)で詳細を報告している。

ル」が抽出された。

そこで本章では、これらの因子を共分散構造分析によって検証する。また、第4章・

第5章・第6章で得られた知見を統合した仮説モデルを設定し、発達影響要因を統合し た「観光まちづくりにおけるリーダーの発達モデル」の実証的検討を目的とする。

7.1.2 研究の方法

(1)調査対象・方法・期間

第6章と同一の回答データを用いるため、記述を省略する。

(2)分析方法

本章では、観光まちづくりにおけるリーダーの回答データ(n=87)を分析に用いる。

なお、分析にはSPSS Amos Version 24.0を用いた。

観光まちづくりにおけるリーダーの発達影響要因は、確認的因子分析と高次因子分析 によって検証する。またリーダーの発達構造については、第4章・第5章の結果をもと に因果構造を仮説モデルとして作成し、それを共分散構造分析のパス解析によって検証 する。

(3)分析項目

分析項目として、第6章で検討した「観光まちづくりにおけるリーダーの発達尺度」(表 6.25)を用いる。ただし、6.3で述べた通り、経験から学ぶ力については改善する 余地が多大にある。したがって、本章では経験から学ぶ力を除いて分析を行う。

本章で用いる項目は表 7.1の通りである。

表 7.1 観光まちづくりにおけるリーダーの発達尺度

カテゴリー サブカテゴリー 項目 α係数

マイ ンド

積極的に学ぶ姿勢

自ら進んで新しいことを学ぶ

.776 色々なことにチャレンジするのが好きである

色々なことを知りたいと思う

収益意識

まちづくり活動において収益を考える必要はないと 思う

.769 まちづくり活動の持続のために、収益を上げること

は重要であると思う

まちづくり活動の際は、収益が上がるよう収支バラ ンスをよく考える

地域への想い 地域のことが好きである

.602 地域の将来が気になる

発 達促 進要 因

ショック

自分とは異なる価値観に衝撃を受けたことがある

.673 地域に対する住民の低評価に衝撃を受けたことがあ

地域外経験

地域の外での仕事経験が、地域での自分の活動に影 響を与えた

.715 地域の外で暮らした経験が、地域での自分の活動に

影響を与えた 他の人とのつながり

他地域視察が、地域での自分の活動に影響を与えた

.675 他地域との人的交流が、地域での自分の活動に影響

を与えた

リー ダー シッ プス キル

分析・プランニング スキル

課題を明確に認識するため、情報収集と分析をする

.832 目標達成までの計画を具体的に立てることができる

自分の考えを論理的に説明し、周囲に理解してもら おうとする

地域の魅力は、誰にどのように魅力的なのか、分析 する

地域のことを知るために、地域をよく見て回る

ファシリテーション スキル

関係者の意見対立を解消し、合意を形成することが できる

.817 立場や価値観の異なる人同士が理解し合えるような

「場づくり」ができる

相手を理解しようと傾聴し、相手の考えを引き出す ことができる

※逆転項目

出所:調査結果に基づき筆者作成

7 . 2 観光まちづくりにおけるリーダーの発達影響要因の検証