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人間の行動特性

ドキュメント内 製品開発における設計負荷とその低減 (ページ 84-87)

第 3 章 設計プロセスにおける状況認識と不確実性の源泉

3.3 設計プロセスにおけるスケジュール・リスク

3.3.6 人間の行動特性

  Goldratt (1997)は、スケジュールの不確実性を三つに分解している。タスク時間の不確実

性、リソースの不確実性、パス経路の時間の不確実性である。そしてそれらは人間の行動 特性に起因するとして、その不確実性に関連づけしている。図3.6にその人間の行動特性と スケジュールの不確実性の因果ダイアグラムを示す。このスケジュールの不確実性を引き 起こしている因子についてそれぞれ述べる。

i)  タスク時間の不確実性

人間の行動特性の視点からは四つの因子がある。これらがタスク時間の不確実性に影響 を与えている。一つ目は学生症候群的意識である。この意識は学生症候群(Goldratt, 1997; 津 曲, 2004)として取り上げられている。一般的なプロジェクト管理では、不確定さに対しては 安全余裕時間が付け加えられている。しかし安全余裕時間による工数見積もりは、実際と はかけ離れてしまう。なぜならば、納期ぎりぎりになるまで着手せず、最終的には一夜漬 けの集中作業となることがあるからである。そして納期が遅延してしまう。たとえ突貫作 業で間に合わせたとしても、逆にタスクの品質又は成果物が悪くなってしまう可能性が残 る。これが学生症候群である。つまりこの学生症候群により、付け加えられた安全余裕時 間は浪費されてしまう。この意識が高ければ、タスク時間の不確実性は大きくなる。従っ て、学生症候群的意識からタスク時間の不確実性への因果効果は正に働く。

  二つ目の因子は、自己の予防線(Goldratt, 1997; 津曲, 2004)の意識である。この意識は、自 己防衛が働き、自己に対して予防線を張る人間行動特性である。例えば、タスクが予定よ り早めに終了した場合には、その事実は管理者へ報告されにくい。それは正直に報告すれ ば、次回のプロジェクトで不利になると考えるからである。つまり作業が早く終了して浮 いた時間は無駄に消費されるだけになる。自己の予防線の意識も高ければ、タスク時間の 不確実性は大きくなる。従って、自己の予防線の意識からタスク時間の不確実性への因果 効果は正に働く。

  三つ目の因子は、パーキンソンの法則(Parkinson, 1996)に基づく行動意識である。この法 則によれば、人的リソースの数は仕事の有無にかかわりなく一定の割合で増加する。むし ろ不必要な仕事はいくらでも作り出せるという組織内力学が、組織の拡大を続けているこ

スケジュールの不確実性

図3.6  人間の行動特性による不確実性の因果連鎖ダイアグラム

人間の行動特性 自己の予防線の意識

学生症候群意識 +

掛け持ち作業の同時性 +

+ +

+ タスク時間の不確実性

パス経路の不確実性 リソースの不確実性

+ パーキンソンの法則に

基づく行動意識

とを示唆したものである。この行動意識が大きければ、タスク時間の不確実性は高まる。

従って、パーキンソンの法則に基づく行動意識から、タスク時間の不確実性への因果効果 は正に働く。

  四つ目の因子は、掛け持ち作業の同時性である。これは複数の作業が、一人の作業者に よって同時進行されることである。この場合、掛け持ち作業の中での優先権が明確にされ ていないことが多い。結果として一作業当たりの作業者の生産性は低下する。これがタス ク時間の不確実性を生み出す。従って掛け持ち作業の同時性から、タスク時間の不確実性 への因果の効果は正である。尚、タスク時間の不確実性が増大するとスケジュールの不確 実性は増大するので、タスク時間の不確実性からスケジュールの不確実性への因果の効果 は正である。

ii)  リソースの不確実性

リソースの不確実性に影響を与える人間行動特性は二つの因子を含む。パーキンソンの 法則に基づく行動意識と掛け持ち作業の同時性である。パーキンソンの法則に基づく行動 意識に従えば、人的リソースは膨張する可能性がある。そして無駄な仕事を新しく生み出 し、組織の肥大化が生じる。つまりリソースの無意識の増大である。従って、パーキンソ ンの法則に基づく行動意識からリソースの不確実性への因果効果は正に働く。

掛け持ち作業の同時性もリソースの不確実性に影響を与える。それは、複数のタスクが 同時に生じ、必要なリソースが競合してしまう場合である。特定の専門知識やノウハウを 持っている人や装置といったリソースが限られているならば、実際には二分化することは 困難である。つまり必要な時に、必要な場所で、必要なリソースを確保することが困難に なる状況がある。従って、掛け持ち作業の同時性からリソースの不確実性への因果効果も 正に働く。尚、リソースの不確実性が増大するとスケジュールの不確実性は増大するので、

リソースの不確実性からスケジュールの不確実性への因果の効果は正である。

iii)  パス経路の不確実性

このパス経路は、スケジュール計画をネットワーク図で表し、そしてそれを分析する際 に必要な構造図である。つまり、このパス経路はクリティカル・パスである。クリティカ ル・パスは計画から実践の適用において、経路に変更がないことを想定している。しかし、

実際にはクリティカル・パスの経路は状況に応じて変化する可能性があり、総所要期間の 最適化が検討されにくい。言い換えると、クリティカル・パスと考えていなかったパス経 路がクリティカル・パスになる可能性を残している。従って、パス経路の不確実性からス ケジュールの不確実性への因果効果は正に働く。

パス経路の不確実性は、他に掛け持ち作業の同時性とも関係がある。それは掛け持ち作 業が原因で、クリティカル・パスが別の経路に置き換わることがあるからである。従って、

掛け持ち作業の同時性からパス経路の不確実性への因果効果は負として働く。尚、パス経 路の不確実性が増大するとスケジュールの不確実性は増大するので、パス経路のの不確実 性からスケジュールの不確実性への因果の効果は正である。

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