道徳アンケート6/29実施より(資料F参照)
②合意(了解)は目指せたか。
従来の道徳授業は、モノローグの殻階である子ども同士の「相亙理解jに終 わっていた。今回の授業では、子どもたちによるそれぞれの妥当要求を調整し、
合意点を見出すことによって、ディアローグのレベルである「相互行為」への 移行が可能となった。表5から明らかなように、ディスクルス中心の授業では、
子どもたちの発言は活発化し、反論回数や質問も増加することが分かる。教師
一114一
主体の授業からは、反論・質問はほとんど生じていない。
合意点の数の多少は、ディスクルスのレベルの高さを表すのではなく、盗料 の葛藤状況によるものと考えられる。ギわたしのいもうと」・「どうずればいい の」の資料における葛藤は、正誤が明らかであり、ディスクルスによって、誤 った行為は正されていったと考えられる。しかし、資料「村長の決断」・「だ れが拾うの」を使ったディスクルスでは、どちらの行為も正しさの主張があり、
かなり難しい判断を迫られる。よって、なかなか合意を得ることは困難になっ てくるのである。子どもたちのディスクルスは、かなりのレベルの力を要する ため、教師の支援が必要な場合も生じてくる。しかし、この教師の支援は、戦 略的な行為にならないことが重要である。あくまで、子どもたちの考えに沿っ た支援(教師の誠実性に基づく)が望まれる。
実践を通して、合意するということがいかに難しいかということを実感した。
授業をするまでは、学級の中の力関係で安易に合意してしまうのではないかと いう心配をしていたが、ディスクルスにおいては、自己の誠実性においてそれ ぞれが主張しているので、本当に納得しないと考えを変えるということはなか った。教師主導型の授業に見られる相手の意図する考えに沿った意見を述べる、
所謂fたて前」を述べるという行為は見られなかった。本音と本音のぶつかり 合いがあるからこそ、子どもたちは真剣に授業に取り組み、今度は自分も発言
しようという気持ちがわくのである。授業後の学習の振り返りの際に、次の時 は自分も発言したいという感想が一番多く見られたことからも、子どもたちの 意欲が伝わってくる。
表5 授業での発言結果
資料名 蝉◎ 鞭の器 泥童の発言 発言なし 反翻数
質問
闘き返し 細づ協舗イルカ邊治事件 ① 一一一
Ai班53
a班 一
b班45 16
A班 6 a班一 b班15
〇一3 〇一〇 0−0
村長の瀟
③20 39 15 11
13 3
わたしのいもうと ④一 応 一⑤ 14一 嘘 膚 鞘 印 願 棚 曹 一 層
@ 7
43層 層 蝉 麿 輌 ρ 韓 噛 騨 騨 一 噛 ■
@92
6一 燭 一 蝉 鞘 鱒 噛 蝉
@5
0− o 層 一 嘩 一 撃 , 弾 欄 願 層
@25
0槻 層 一 嘗 一
R
〇一 璽 一 廓 噛 0
@5
〇一 轡 哺 鱒 向 鯛 贈 一 創
@5
どう弗はいいの ⑥切 聯 騨⑦ 5. 卿 o 一 ■ q 一 一 一 椰
@16
20一 欄 一 婦 輪 儲 伽 , 一 臨 一 騨 一
@63 一
g 鄭 蝋 鮪 噸 鳴 一 一@7
1劇 層 単 蟹 麟 輔 轄 一 一 嚇 轄 −
@ 9
Oo 枷 層 ● 一
R
0爾 昂 噸 僧 哨 鴨 ■
@4
0一 一 幕 噛 輔 嶋 一 軸 ■
@4
だれが捻うの ⑧鱒 一 ,⑨ 21騨 鞘 騨 , 獅 葡 一 櫓 唇 葡
@10
28職 回 脚 層 一 一 騨 鞘 幕 一 曹 一 一
@74
14隣 轍 o 卿 爾 一 一 一
@3
Oo 昌 囎 一 哺 脅 一 一 噌 齢 噛 一
@16
0一 一 凹 一 層
T
0ρ 昂 齢 噂 哺 卿 一
@2
〇一 噂 騨 噌 曹 曹 一 冒 聯
@2
B薮話し合い不成立 ④⑥⑧は教師中心の授業 ①⑧は塞での討議中心の授業 ③⑤⑦⑨はディスクルス申心の授業
魯II5一
ディスクルスに至るポイントとしては、以下の4点を掲げたい。
①話し合いにおける問題点を出し合い、解決策を考える。
②話し合いの際、みんなで決めたディスクルスのルールを確認し守る。
③道徳判断カードに自分の考えを書き込んでおく。
④話し合いのプロセスをつくる。
「合意を得るにはどうすればよいか。」という点については、グループエン カウンターによる「無人島SOS」のゲームの経験から子どもたちによって話
し合いがなされている。このゲームでは、個々に選んだ無人島で生き延びてい くために必要と考える8品目を、グループみんなで納得する8項目に話し合っ て決めていくというものである。最初は、それぞれが品物の名前を言い合うだ けで、それから話が進まないという班も見られた。また、自分の考えを押しつ けようとする自分勝手な行動をしたり、ふざける人がいて話し合いにならない という苦情も出てきた。さらに、話し合ったが言い合いになってしまってまと まらないというような問題点の多くが噴出してきたのである。
これらの多くの課題は、ディスクルスの成立に向けて重要な課題であると考 える。この課題を子どもたちと教師が、共に考え解決していこうとすることが ほミュニケーション行為をスムーズにしていくためのメタコミュニケーション と捉え、話し合いによって解決していこうとする基盤をまず身につけさせたい と考えた。以下に示す通り、子どもたちの課題からみんなで解決策をつくり、
話し合いの際には、ルールとして確認し合うというように実践化に向けて活用
していった。
【子どもの課題】
自分勝手な人がいて
困った。
【みんなで考えた解決策】
回りの人が注意してあげる。
「人の意見も聞こう。」「言い過ぎだよ。」など、
優しく言ってあげる。言われた人は素直に聞く。
ふざける人がいて悲しい。 ふざけないで真剣に話し合おう。
話がまとまらなかった。 自分の考えの理由を必ず書おう。
納得する意見には、合わせていこう。
納得しない意見には、質問していこう。
一116一
第3節の4項で述べたように、合意に至るディスクルスを行うためには第一 次において、資料の把握を十分に行った上(資料解釈の不十分や誤りによる判 断ミスを防ぐため)で、各自の第1回目の判断・根拠づけをしていくことが大 切である。次に、ディスクルスの事前に道徳判断カード(みんなの根拠づけが 分かるカード)を使って、みんなの意見に対する自分の考え(賛成か反対かと その根拠)をまとめておくことが重要なポイントとなるであろう。つまり、自 分の考えをもってディスクルスに臨むという姿勢が基本とされる。
合意をめざす授業のプロセスとしては以下に示す流れを基本としながら、子 どもたち自身が授業の中心となり、授業そのものをメタ認知していく姿勢を育 てていきたいと考える。
《ディスクルスによる授業のプロセス》
① 判断カードの中で、納得できない意見から発表していく。
bが拡散しないように一つだけにしぼって検討していく。
(出し合う)
② 反対意見・賛成意見の順で検討していく。 (検討する)
③ 質問で相手の矛盾を確かめていく。 (確かめる)
④ 意見や質問を出し合いながら一つ一つ削除・整理していく。 (まとめる)
⑤ 残った意見について討論させ、新しい根拠による合意を見 oしていく。
(合意する)
③ 相互行為調整能力は高められたか。
ハーバーマスは、コールバーグの道徳性の発達段階が抱える個人主義的な 限界を克服するために、社会的な環境やシステムと個々人の道徳性との相互性
という観点から、相亙行為(コミュニケーション的行為)の発達段階として捉 え直している。このハーバーマスによる相互行為の発達段階に基づき、子ども たちの根拠づけの段階をディスクルス前と後において判定し、どのような変容 が見られるかを表したのが表6である。
学級の3分の1から3分の2の子どもが、社会的なパースペクティヴの段階 を上げているのが分かる。段階がそのままの子どもたちも、ディスクルス後に おいては、様々な考えを取り入れ自己の考えを形成していることが、道徳判断 の根拠づけにみる社会的視点の変容(資料参照)からも捉えられる。
ディスクルスの成立が容易になってきた最後の授業「だれが拾うの」では、
道徳判断においても大きな変化が生じている。「ボールを拾う」という判断を
鴨U7一
した児童は9人から23人に増加し、反対に「ボールを拾わない」と判断した 児童は21人から7人に減少しているのである。このことから、ディスクルス によって子どもたちの料断も大きく揺れ動いたということが分かる。つまりこ れらは、子どもたちを主体にしたディスクルスの場によって、子どもたちの中 に積極的な相互行為調整が行われた結果であると考えることができる。
表6
道徳判断の根拠づけにみる社会的視点の変容資料名
道徳 ディスクルス 社会的視点の変容@判断 9
nめ1終わり
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