第 9 章 投資形態
1. FTA 及び EPA の進捗状況
図表 24-1~図表 24-3は、インドの各国とのFTA及びEPAの交渉・発効の進捗状況を まとめたものである。同国は既にアジア諸国を中心に FTA及びEPA を締結しており、他 にも幅広い国・地域と積極的に交渉を進めている。同国が積極的にFTA戦略を進めている 背景には、2001年から開始された中国とASEANのFTA交渉が挙げられる。ASEANへの 中国の影響力が高まることに危機感を抱き、従来の保護主義的な通商政策を転換させたと 考えられる。しかし、こうした急速な方針転換から、国内のコンセンサスも得られにくく、
各国との交渉は長期化する傾向にある。
図表 24-1 インドの二国間FTA及びEPAの進捗状況 対
象 地 域
対 象 国
協定名称
(略称)
*印は特恵関税 協定
発 効 状 況
2013年時点での交渉進捗及び関税撤廃状況
東ア ジア
日本
日 本 ・ イ ン ド 経 済連携協定 済
2011年2月署名、同年8月1日より発効。両国の貿易額(約185億ド ル)のうち約94%に相当する品目の関税を10年間で撤廃。関税以外に もさらなる貿易の自由化や投資環境の改善、日本側での後発医薬品の 承認審査の迅速化なども盛り込まれている(詳細は第5章を参照) 。
中 国
中 国 ・ イ ン ド 自 由貿易協定 未
2003年に共同研究グループ(JSG)を立ち上げ、合同タスクフォースを設 置。しかし、インド国内では安価な中国製品の流入を警戒する産業界の 反発が強く、2008年1月に共同研究終了を宣言。
韓 国
韓 国 ・ イ ン ド 包 括 的 経 済 連 携 協定(CEPA)
済 2009年8月調印、翌年1月に発効。本協定で、韓国は93%、インドは 75%の品目の関税を即時・段階的に撤廃。
東南 アジ ア
タイ
インド・タイ経済 協力枠組協定 未
2003年10月に署名。アーリーハーベストで指定された82品目の関税 については、2006年9月1日に撤廃。なお、当該82品目の原産地規則 の多くは「関税番号変更基準」及び「現地調達比率(累積付加価値基準)
40%以上」が必要。その他の品目の関税引き下げやサービス貿易、投 資分野については、交渉が難航している。
シン ガポ ール
インド・シンガポ ー ル 包 括 的 経 済 協 力 協 定
(CECA)
済
2005年8月1日発効。対象分野は、モノの貿易、サービス貿易、投資保 護協力、二重課税防止、その他保険・教育・メディア・観光分野での協 力。インド側はHSコード8桁レベルで506品目の関税を協定発行時に 即時撤廃、シンガポールは全てのインドからの輸入品の関税を撤廃。
マレ ー シア
インド・マレーシ ア 包 括 的 経 済 連携協定
済
2011 年 2 月署名、同年年 7 月より発効。ノーマルトラック 1(NT1)が 2013年9月30日までに撤廃、ノーマルトラック2(NT2)は2016年6 月30日までに撤廃、センシティブトラック(ST)は2016年6月30日まで
に5%へ引き下げが決定。ASEAN・インドFTAに比べ、早いスケジュー
ルでの適用となる。
177 イン
ドネ シア
インド・インドネ シ ア 包 括 的 経 済協力協定
未
2011年10月よりCEPA締結に向けた公式交渉を開始。また、貿易投資 フォーラムの設置ならびに貿易障壁の撤廃に向けたワーキンググループ の設置に合意。
南ア ジア
スリ ラン カ
インド・スリラン カ 自 由 貿 易 協 定
済
2000年3月1日発効。インド側は2005年3月時点で、ネガティブ・リス ト以外の対象品目の引下げスケジュールを完了。スリランカ側も2008年 に完了。
ネパ ー ル
イ ン ド ・ ネ パ ー ル貿易協定 済
2009 年に締結、発効。協定の有効期間を7 年間と設定し、その後は7 年単位で自動更新することに合意。双方からの一次産品輸入に対して は関税を免除。インドはネパールからの輸入品に対して 30%の付加価 値基準と関税番号4桁変更を条件に関税を免除。
ブー タン
インド・ブータン
貿易協定 済 2006年7月に署名、発効。発効後、10年間有効。
バン グ ラデ シュ
バ ン グ ラ デ シ ュ ・ イ ン ド 自 由 貿易協定
未
2006年4月1日に署名、発効。2015年3月31日で有効。本協定によ り、両国間での貿易にあたり、互いの水路・道路・鉄道を利用することが 可能に。
西 アジ ア
イス ラエ ル
インド・イスラエ ル 自 由 貿 易 協 定
未 2004 年 12 月に、共同研究グループ(JSG)を立ち上げて交渉を開始。
2013年6月時点で、交渉は大詰めの段階に入っている。
アフ ガニ スタ ン
インド・アフガニ スタン特恵貿易 協定
済 2003年5月に発効。対象品目(インド側38品目、アフガニスタン側8品 目)に対し、50%~100%の範囲で関税を引き下げる特恵関税を適用。
北ア ジア
ロシ ア
インド・ロシア包 括 的 経 済 連 携 協定
未 2006年2月に共同研究グループ(JSG)を設立し、2008年2月合同タ スクフォース会合を設置。現在、政府間予備協議中。
オセ アニ ア
豪 州
イ ン ド ・ 豪 州 自
由貿易協定 未 2006年3月に締結。エネルギー、鉱業、インフラ開発、情報通信、観光・
娯楽、繊維、農産品などの分野での協力関係構築に合意。
178 NZ インド・ニュージ
ーランド自由貿 易協定
未 2007年4月に共同研究グループ(JSG)の立ち上げを決定し、2012年6 月に第8回会合を開催。
北 米
カナ ダ
カナダ・インド経
済連携協定 未 2009年11 月に、共同研究グループ(JSG)の立ち上げに合意し、2012 年7月第5回交渉を開催。2013年中のCEPA締結を目指す。
南 米 チ
リ
インド・チリ経済 協力枠組協定 済
2005年1月に署名、2007年8月発効。枠組協定のもと、2006年3月 特恵関税協定を締結。HSコード8桁レベルでインド側178品目、チリ側 296品目の関税を10%~50%の範囲で引き下げる。
(出所)JETRO「世界と日本のFTA一覧(2012年10月)」及び各種報道より作成
図表 24-2 インドの二国間FTA及びEPAの進捗状況(概略図)
(出所)JETRO「世界と日本のFTA一覧(2012年10月)」及び各種報道より作成
締 結 済
( 発 効 年
)
交 渉 中
日本
(2011年)
韓国
(2010年)
シンガポール
(2005年)
マレーシア
(2011年)
スリランカ
(2000年) ネパール
(2009年)
ブータン
(2006年)
アフガニスタン
(2003年)
チリ
(2007年)
中国 タイ インドネシア バングラデシュ
イスラエル ロシア 豪州 ニュージーランド カナダ
179 図表 24-3 インドの多国間FTA及びEPAの進捗状況
対 象 地 域
協定名称(略称)
*印は特恵関税協定 発 効 状 況
2013年時点での交渉進捗及び関税撤廃状況
ASEAN
ASEAN・インド包括 的経済協力枠組協定
(AIFTA) 済
2003年10月に締結し、2009年8月に調印、2010年1月に発効。2011 年にフィリピン、カンボジアが批准を済ませ、10 カ国全ての国と発効。な お、インドとブルネイ・インドネシア・マレーシア・タイ間では、大部分の品 目が2016年末までに関税撤廃予定。但し、フィリピン・インド間の関税削 減スケジュールは、他の ASEAN5 ヵ国とは異なることに注意。インド側 はフィリピンに対し、18年末までに64.1%、19年末までに74.3%の品目 にかかる関税を撤廃予定。なお、当該FTAの原産地規則では、付加価 値35%かつ関税番号6 桁変更(CTSH)基準が適用される。
2012年8月の会合では、サービスと投資の分野についての交渉を早期 に妥結する方向で合意。
メル コス ー ル
インド・メルコスール 特恵関税協定* 済
2004年1月特恵関税枠組み協定を締結し、詳細ルールを定めた本協定 を2005年3月に締結。2009年6月1日より発効。インド側450品目、
メルコスール側 452 品目の関税を 10%〜100%の範囲内で引き下げ る。
EFTA EFTA・インドネシア
自由貿易協定 未 2008 年 10 月より交渉開始し、共同研究グループ(JSG)を立ちあげ、
2012年2月に第9回目の会合を開催。
EU EU・インド自由貿易
協定 未
2005年9月に合同通商委員会を設立し、2007年6月より政府間交渉 を開始。 2012年2月に第12回インド-EUサミットを開催。インドにおけ る自動車の輸入関税の引き下げや保険分野の外資出資規制の緩和な どを巡って交渉が難航している。
GCC インド・GCC 自由貿
易協定 未
2004年8月に締結。2007年末までに物品の貿易、投資、サービス貿易 などの面における経済関係緊密化を図ることに合意。2013 年度中の締 結が期待されている。
SACU
インド・南部ア フリカ 関税同盟(SACU)特 恵貿易協定
未 2004年9月、特恵貿易締結に向けた枠組みを決定し、2008年11月に 交渉促進のための協力覚書を締結。
SAFTA
南アジア自由貿易地 域(SAFTA) 済
2006 年 1 月に発効。域内先進国(インド、パキスタン、スリランカ)は、
2006年7月1日から2007年末までに20%以下まで関税を引き下げ、
2012年末までの5年間で0%~5%まで引き下げる(スリランカについて は更に1年延長し6年間で実施)。域内後発開発途上国(バングラデシ ュ、ネパール、ブータン、モルディブ)は、2006年7月1日から2007年 末までに、30%以下まで引き下げ、2016年末までの8年間で0%~5%
にまで引き下げることで合意。
BIMSTEC ベンガル湾多分野技
術経済協力イニシア ティブ
(BIMSTEC)
未
2004年2月に合意。関税譲許、税関の協力関係の構築、サービスや投 資の促進について交渉が進められ、2017年までに自由貿易と商業の自 由化を盛り込んだ協定を締結予定。
180
APTA
アジア太平洋貿易協 定 (APTA) 第4次 関 税減免措置*
未
1975 年に、インド、バングラデシュ、韓国、スリランカ、ラオス、フィリピ ン、タイ間で締結。原産地基準のもと、協定国からの特定品目に対して、
特恵関税を適用。さらに非関税障壁の撤廃や原産地規則の改定などの 交渉を継続。
RCEP
東アジア包括的経済 連携協定(RCEP) 未
2013年5月に初回会合を実施。インド、日本、中国、韓国、豪州、NZ、
ASEAN10か国の計16 か国が参加し、関税や投資規制の緩和など8
つの分野で交渉を継続。
(出所)JETRO「世界と日本のFTA一覧(2012年10月)」及び各種報道より作成