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第 9 章 投資形態

2. 自動車関連産業

(1) 政策

インドの自動車産業は植民地時代の1920年代にGMとフォードがノックダウンによる組 み立て生産を行ったことが始まりである。1940 年代には財閥グループの参入が相次ぎ、ビ ルラ・グループがヒンドスタン・モーターズを、タタ・グループがタタ・モーターズを、

マヒンドラ・グループがマヒンドラ&マヒンドラをそれぞれ設立した。その後、1947 年の 独立後の国内産業保護政策の下で GM 及びフォードは撤退したが、80 年代に入ると部分 的自由化が行われ、日系のスズキが乗用車部門(インド政府との合弁でマルチ・ウドヨグ を創設、その後2007 年 9 月に社名をマルチ・スズキ・インドに変更)に、ホンダが二輪 部門(ヒーロー・グループと合弁企業を設立)にそれぞれ参入した71

このような歴史的経緯からインドの自動車産業は、新興国としては稀なことに一定の技 術ベースを備えている。91 年以降の自由化政策の下で、自動車産業については93 年に乗 用車部門のライセンスを撤廃したのに次いで、2000 年に輸入枠規制を撤廃したほか、外資 について自動認可制の下で100%出資を容認するようになった。このような自由化の進展や

71 2010 年 12 月、ヒーローとホンダは合弁を解消している。

150

高成長の持続を背景に外資系企業の参入が相次ぎ、二輪・三輪を含んだ自動車生産台数は

2004年度の847万台から2012年度は2,063万台に拡大している(詳細後述)。

乗用車及び二輪では、80 年代から参入していた日系のスズキとホンダがそれぞれ市場を リードしている。インド経済の重要な課題である格差の是正や貧困の緩和には、雇用創出 効果の大きい製造業部門の成長が不可欠との認識が高まるなか、このように拡大を続ける 自動車部門は、新興産業(Sunrise Sector)としてますます重視されるようになっている。

こうした認識のもと、2006 年12 月、重工業・公的企業省(Ministry of Heavy

Industries & Public Enterprises)は、今後の自動車産業の発展戦略としてオートモーティ ブ・ミッション・プラン(AMP:Automotive Mission Plan)を策定し、2016年までに世界 第7位の自動車生産国になる目標を掲げていたが、6年も前倒しで2010年に達成し、2012 年時点では世界第6位の自動車生産国となっている(図表 23-1 参照)。自動車部品工業会

(ACMA:Automotive Component Manufacturers Association of India)は2020年度の 予測生産台数を970万台に達するとしており、2020年までに世界第3位の自動車生産国に なることが次の目標と言える。

図表 23-1 Automotive Mission Planの概要

概要 2016年までの中長期自動車産業政策で、2006年12月にインドMinistry of Industries & Public Enterprises によって発表された。

要旨  インド自動車産業を重要なグローバルプレーヤーとして育成すること

 特に、設計・製造・輸出拠点となることで、自動車及び部品産業の生産規模を

1,450億ドルに拡大し、GDPに占める比率を10%引き上げること

 直接・間接的に2,500万人の新規雇用を創出すること 主な目標

(2016年3月 期)

 自動車産業生産額:1,450億ドル(2005年度比4.3倍増)

 自動車産業のGDPに占める割合:10%

 自動車産業輸出額:450億ドル(2005年度比11倍増)

 投資額:350~400億ドル(2016年3月期までの累計)

 乗用車市場:300~350万台

 生産目標:乗用車生産世界7位(達成済とみられる)/トラック生産世界4位

(達成済とみられる)/二輪車生産世界2位(達成済)

 雇用規模:4,000万人(うち、新規雇用2,500万人)

重点施策・方針

(一部抜粋)

 小型乗用車、多目的車、二輪車、部品などの製造・輸出促進

 自由貿易体制整備の障害要因の明確化と対策

 投資誘致のための関税政策の最適化

 競争力向上に向けた技術開発力の獲得

(出所)FOURIN「インド自動車・部品産業2013」より作成

(2) 自動車産業

① 世界の自動車生産におけるインド

日本自動車工業会によると、同国の四輪車の生産台数は、2012年は415万台と400万の 大台を超えた。対前年比では5.6%の伸び率である。国別で比較すると、インドは生産台数 でブラジルを抜き、韓国に次ぐ世界第6位の自動車大国となっている(図表 23-2参照)。

151

一方、インドの二輪車の生産規模は中国に次いで世界第 2 位の地位を維持している(図表 23-3参照)。2011年の二輪車生産台数は1,545万台であり、対前年比15.8%の伸び率であ った。世界において、二輪の生産では中国が圧倒的なシェアを占めている。しかし、2009 年では中国の生産台数はインドの2.42倍であったが、2011 年には1.75倍となり、徐々に その差を縮め、第3 位のインドネシアを引き離している。

図表 23-2 主要国の四輪車生産台数(単位:万台)72

順位 国名 2010 2011 2012

1 中国 1,826 1,842 1,927

2 アメリカ 776 866 1,033

3 日本 963 840 994

4 ドイツ 591 615 565

5 韓国 427 466 456

6 インド 356 393 415

7 ブラジル 338 341 334

8 メキシコ 234 268 300

9 タイ 164 146 248

10 カナダ 207 214 246

図表 23-3 主要国の二輪車生産台数(単位:万台)73

順位 国名 2009 2010 2011

1 中国 2,543 2,668 2,701

2 インド 1,051 1,335 1,545

3 インドネシア 588 740 801

4 ブラジル 154 183 214

5 タイ 163 202 204

6 台湾 102 103 121

7 パキスタン 74 84 83

8 フィリピン 68 81 76

9 日本 64 66 64

10 マレーシア 44 47 50

(出所)図表 23-2、図表23-3ともに日本自動車工業会より作成

② インドの自動車所有の拡大とその背景

総務省によると、2011年時点でインドの自動車普及率(1,000人あたり保有台数)は18 台とまだまだ低い水準にある。BRICsでは、1,000人あたり保有台数はロシアが271台、

ブラジルが209台、中国が47台となる。一般的に一人あたりのGDPが2,500ドルを超え るとモータリゼーションが始まるとされているが、現状のインドの一人あたり GDP が

1,500ドル程度であることを踏まえると、自動車の普及はまだ時間がかかることが予想され

る。但し、都市別に見ると、デリー首都圏の一人あたりGDP(2011年度)は3,000ドルを

72 順位は2012年のものを記載。

73 順位は2011年のものを記載。

152

超えており、すでにモータリゼーションの域に達しているとも言われている74。 図表 23-4 主要国の1,000人あたり自動車保有台数75

(出所)総務省「世界の統計2013」より作成

自動車普及拡大の背景には、インド経済の成長に伴う所得水準の上昇や中間所得層の台 頭がある。インドにおける中間層は世帯年収が 5,000~15,000 ドルの下位中間層と、世帯

年収が15,000~35,000ドルの上位中間層に区分されるが、2006年に20%程度であった中

間層が 2010年には 50%程度、2020 年には 80%に拡大することが見込まれている(図表

23-5参照)。

図表 23-5インドの所得階層別世帯数推移

(出所)経済産業省「通商白書2012」より作成

74 各州の一人当たり名目GDPは地域編を参照。

75 日本は2011年の値。それ以外は2009年の値。

802

576

271

209

134

79 47

18

米国 日本 ロシア ブラジル タイ インドネシア 中国 インド

79.1

51.8

33.6

15.4 18.7

42.1

51.3

50.9

1.4 4.6

11.4

26.9

0.8 1.5 3.7 6.8

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2006 2010 2015年(推計) 2020年(推計)

低所得層(5千ドル以下) 下位中間層(5-15千ドル) 上位中間層(15-35千ドル) 富裕層(35千ドル超)

153

③ インドの自動車生産・販売・輸出の推移

インド自動車工業会(SIAM:Society of Indian Automobile Manufacturers)によると、

インドの二輪・三輪を含む自動車生産台数に関して、2005~12 年度における年平均成長率

は13.3%であり、2012 年度は2,063万台になった(第6章参照)。2012年度の生産台数の

内訳は、乗用車は対前年度比3.5%増の323万台、商用車は同8.8%減の83万台、三輪は

4.3%減の84万台、二輪は1.7%増の1,572万台となっている。また、乗用車、商用車を合

わせた四輪車生産台数は2005年度から2012年度までで2.4倍に増えており、同様に二輪 車、三輪車の合計は約2.1倍に増えている。

直近では、燃料費の高騰やインフレによる高金利政策などが影響し、国内販売台数が鈍 化したことから生産台数も鈍化傾向にあるが、このガソリン高騰を受けて、販売台数でみ た場合、2011年度のディーゼル車比率は37%に達し、2012年度には50%まで拡大した模 様である(図表 23-6参照)。

図表 23-6 インドの四輪車(商用車、乗用車)及び二輪車、三輪車生産台数の推移

(出所)SIAM 資料より作成 131

39 323

83

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

乗用車 商用車

761

1,572 43

84

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

二輪車 三輪車

(万台) (万台)

170

406

804

1,656 約2.4倍 約2.1倍

(年度) (年度)

154

図表 23-7 自動車燃料価格の推移(2009年1月~2013年7月)76

(出所)Indian Oil Corporation、FOURIN「インド自動車・部品産業2013」より作成

インド国内販売動向は、前述のとおり、燃料費の高騰やインフレによる高金利政策など が影響した結果、直近は鈍化している。2008年度以降、200万台ベースで伸びてきたこと もあって、直近の成長鈍化はインパクトがあるが、それでも 2005~2012 年度における年 平均成長率は12.2%であり、2012 年度の二輪、三輪、四輪(乗用車、商用車)の販売総数

は1,782万台である。

なお、同年度の国内販売台数の内訳は、乗用車が対前年比2.6%増の269万台、商用車が

同2.0%減の79万台、三輪は同4.9%増の54万台、二輪は同2.7%増の1,380万台となっ

ている。また、乗用車、商用車を合わせた四輪車販売台数は2005年度から2012年度まで で2.3倍に増えており、同様に二輪車、三輪車の合計は約1.9倍に増えている(図表 23-8 参照)。

76 Indian Oil Corporationのデリーにおける小売店の販売価格の推移。HP上、公表していない月は前月 の価格と同様とし、公表値は原則、月末の値を使用している。

20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7

2009 2010 2011 2012 2013

(月)

(年)

2010年6月、ガソリン価格を 自由化(ディーゼル燃料に は補助金給付継続)

2011年後半以降、ガソリンと ディーゼルの価格差が25ル ピー超に拡大

2012年9月、ディーゼル燃料 に対する補助金を減額

ガソリン

ディーゼル

(ルピー/ℓ)

155

図表 23-8 インドの四輪車(商用車、乗用車)及び二輪車、三輪車販売台数の推移

(出所)SIAM より作成

インドの二輪、三輪を含めた自動車輸出台数については、2005~2012 年度における年平 均成長率は24.7%であり、2012 年度は290万台になった(図表 23-9参照)。同年度の輸 出台数の内訳は、乗用車が対前年比9.3%増の55万台、商用車が同13.7%減の8万台、三

輪は同16.5%減の30万台、二輪は同0.7%増の196万台となっている。ドル高ルピー安の

中、自動車メーカー各社はインドからの輸出を強める傾向があるものの、2012年度は成長 が鈍化している。なお、相手国別乗用車輸出入額でみた場合、輸出相手先としてはアルジ ェリア、南アフリカが最も多く、輸入相手先はドイツが圧倒的に多い(図表 23-10参照)。 図表 23-9 インドの輸出台数の推移

(出所)SIAM より作成 114

35 269

79

0 50 100 150 200 250 300 350 400

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

乗用車 商用車

705

1,380 36

54

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

二輪車 三輪車

(万台) (万台)

149

348

741

1,434 約2.3倍 約1.9倍

(年度) (年度)

51

196 8

30

4

8

18

55

0 50 100 150 200 250 300 350

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

二輪車 三輪車 商用車 乗用車

(年度)

(万台)