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第 9 章 投資形態

4. 雇用関係

(1) 従業員の募集

進出日系企業では、インターネット、新聞広告、人材派遣会社などを通じて採用を行っ ている。特に、携帯電話やインターネットの普及により、パソナ、リクルート、アデコ、

マンパワーといった人材会社への登録や相談が一般的となっている。自社で募集するとな ると、膨大な手間や時間と費用がかかることも要因といえる。エンジニアについては、技 術専門学校に直接出向いて卒業生を面接・採用したり、学生のインターンシップを受け入 れ条件があえばそのまま採用したりするなどしている。

インドでは1年間のうち、約30%の人材が離職しており、主に3年で退職する人材が多 い。また、インドでは58歳が定年と言われているが、40-50代で最後の転職を考える人も 多いという。優秀だから給料が高いというのではなく、うまく転職できたから給料が高い というのが進出日系企業の共通認識のようである。

管理職・技術者の転職は多いものの、製造業については今のところ手当てができないと いうことではない。とはいえ、良質の人材を確保するには、給与水準を引き上げるしかな いということもある。一方、ワーカーは地元出身者が多いこともあり、転職はあまりない。

また、ワーカーの雇用では、一般にインドにおいて従業員(正社員)の解雇が困難である ことから、日系製造業企業では、まず期間工(契約社員)として採用し、パフォーマンス の良い場合に正社員とする方法が多くとられている。

(2) 雇用契約の締結

インドでは被雇用者を雇用する場合、会社と被雇用者の間で書面の雇用契約を締結する ことが一般的となる。実務上は全ての被雇用者に共通する、出・退勤時間や休暇などの雇 用条件を服務規定として策定している。個別契約では給与や手当等の個別条件のみを規定 し、「その他の勤務条件は服務規定に従う」旨を記載することが多い55

インドの労働法では「ワークマン(Work Man)」を適用対象者とし、「ノンワークマン

(Non-Work Man)」と呼ばれる雇用形態で雇用されている者はインド雇用法の保護を受け ず、1872年インド一般契約法(Indian Contact Act, 1872)上での問題として取扱うこと になっている。

「ワークマン」は原則、事業主に雇用されている者を指し、「ノンワークマン」は以下の 例外規定4項目に該当する者を指す。すなわち、「ワークマン」とは比較的安い給料で単純 な業務を行う工場労働者や雑用係をいい、「ノンワークマン」とは比較的高額の給料で管 理・監督的な業務を行う、いわゆるホワイトカラーの管理職をいう。

以下の項目のうち、「経営者的」、「経営管理的」等のような抽象的な表現について明確な 基準はないため、該当する可能性がある場合には個別に判断する必要がある。

55 日本とは異なり、服務規定の策定が法律上、要求されているわけではない。

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・空軍、陸軍、海軍に所属する者

・警察または刑務所で雇用されている者

・経営者的・経営管理的な立場にある者

・賃金が月額10,000ルピー以上の監督的な立場にある者

インドでは、「ノンワークマン」に該当した場合には多くの労働法の保護対象から外れ、

特に解雇に関しては「ワークマン」と別の扱いとなるため、労使紛争になった場合の管轄 も異なる。「ワークマン」は労働裁判所で審議することになるが、「ノンワークマン」は民 事裁判で争うことになる。インドでの雇用は「ワークマン」、「ノンワークマン」のどちら の形態で雇用するかを明確にして雇用契約を締結する必要がある。

(3) 従業員の解雇

インド労働法上の解雇規制は原則、「ワークマン」のみに適用される。「ノンワークマン」

については、法令上の解雇規制が存在しないため、解雇は雇用者と「ノンワークマン」の 間の契約の規定に従って行われる。「ワークマン」の解雇については、1947年産業紛争法が 規制している。日本と同様、解雇の実体規定は記載されておらず、解雇の手続き内容のみ の記載に留まる。解雇の日に先立つ 1 年間に継続的雇用されていた「ワークマン」は図表 19-4の条件が満たされない限り、解雇されない。

また、日本と同様、インドでも解雇手続きに加え、労働裁判所(Labor Court)における 判例上、解雇には相当な理由が必要とされる。少なくとも、「ワークマン」については整理 解雇や能力不足等による解雇は簡単ではなく、実際は自主退職を促すのが一般的といえる。

図表 19-4 ワークマンの解雇手続き

条件① 最低1ヶ月前までに解雇の理由を示した書面による通知が行われる。

または、通知に代えて通知期間の賃金相当額が支払われること。

条件②

継続的雇用にあった期間の1年ごと、または6ヶ月を超える1年において、「平均給与

(月払いの労働者の場合、過去3ヶ月の賃金の平均)」の15日分の割合で計算した解 雇補償金が解雇時に支払われること。

条件③ 所定の様式による通知が、当該地域を管轄する労働審判所に、条件②の通知から3 日以内に書留郵便で送付されること。

112 ひとくちメモ(14):トヨタ自動車における訓練学校

トヨタ自動車では進出先であるカルナタカ州の経済的に恵まれない家庭の子弟たちに教育の機会を 無償で与えるトヨタ工業技術学校(TTTI)、通称、トヨタ学園と呼ばれる全寮制の工業高校を運営して いる。当校では、経済的な理由で高校に進学できない生徒を対象としており、1学年64名を受け入れ ている。

現在は3学年で192名在籍しており、2007年から生徒の受け入れを開始している。当校では技術訓 練だけでなく、1年目は毎月1,800ルピー、2年目は2,000ルピー、3年目は2,200ルピーを支給し、

そこから寮費を支払ってもらうことで経済観念も持ってもらえるよう教育している。彼らは残ったお金を 実家に仕送りしており、当校を見学に来る人は皆、彼らが喜々として学ぶ姿に感銘を受けているようで ある。

当校は今年で4期目となり、卒業生は全員、トヨタ自動車を希望して入社しているそうである。トヨタ自 動車はこのTTTIとは別にグルクルと呼ばれる、社内トレーニングにも注力しており、継続的なトレーニ ング資料や方法を開発している。その他、日本で研修を行うなどの人材育成活動も豊富にある。その ような教育を通じ、入校当初は「Respect for Myself」である彼らが、3 年間の教育を経てその考えか ら脱することができるとされる。

トヨタ自動車では、毎年、海外工場スタッフを対象とした技能大会を開催、20 種目につき技能の高さ を競う機会を設けている。アジア地区大会においてインドのToyota Kirloskar Motorは、2012年は 金メダル9個、銀メダル5個、銅メダル3個という成績で、初のアジア地区第1位を獲得、2013年は 金メダル 7 個、銀メダル 5 個、銅メダル 6 個という好成績ながらも、ライバルであるタイの Toyota Motor Thailandにつぐ第2位となった。また、技能大会以外にも、インドのToyota Kirloskar Motor は、2011 年には、本社実施の出荷品質監査においては世界第 1位を獲得している。TKMが掲げる ビジョン、「インドにおいて最も人々に愛され尊敬される企業」になるのはもう時間の問題かもしれな い。

【写真説明】中等教育終了後、能力があるにもかかわらず、高校、職業訓練校へ進学できない層から 選抜

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【写真説明】休憩時間にバドミントンに興じる生徒たち、中にはホームシックになる生徒も

【写真説明】WELD道場!!

(出所)上記全てトヨタ自動車より提供

ひとくちメモ(15):解雇規制への対応

インドでは容易に解雇できない一方で、企業の持続的な成長には人材の充足は欠かせない。そのよ うな中、ワークマンの解雇規制への対応として、現地企業は「雇用を有期雇用とすること」、「雇用の初 期段階では正式雇用(雇用者が使用者の元で常勤する期間を定めない雇用)とせず、3 ヶ月から半年 程度の試用期間の設置」、の2点で対応している。

前者の場合、インド法上、有期雇用の不更新は原則として解雇にはあたらず、従って解雇規制も適用 されない。但し、1~2 年程度の有期雇用契約を繰り返している場合には、解雇規制が適用されてしま う場合があるので、注意が必要である。また、後者の場合、企業側の意見として試用期間の半年はあ っという間にすぎてしまうので、試用期間を延長したいという声も多くあるようである。インドにおいては 人選が経営上、非常に重要であることがうかがえる。

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