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第 9 章 投資形態

4. 電気電子機器

(1) 政策

2012 年 9 月に電気電子分野、いわゆるエレクトロニクス産業の振興策「The National

Policy on Electronics 2012」をインド内閣が承認し、当施策は2020年までに1,000億ドル

を同産業の育成に投じる施策となっている。政府からの補助金や税制優遇等により、半導 体工場の設立や電子機器の製造開発拠点の誘致を促進することが狙いである。これにより、

民生機器や医療機器、自動車用エレクトロニクス機器などをインド国内で一貫生産が可能 な体制を構築できるような構想となっている。

具体的な優遇措置としては、インド国内で製造を行うエレクトロニクス企業及びITハー ドウェア企業に対する免税措置が検討されている。また、2013年4月から2015年3月ま での間に工場または製造機械に10億ルピー以上の投資を行った企業に対しては、投資に対

して15%の投資控除を与えることも検討されている。但し、産業界は当施策に対して賛否

両論であり、「投資費用を上回る売上増加が見込めなければ、新たな設備投資はしない」や

「そもそもIT設備に対する追加関税(CVD)と特別追加関税(SAD)82がコスト押し上げ の要因となっている」といった否定的な意見もある一方で、「大衆向け製品生産の発展に寄 与する」、「半導体チップ製造工場設立の初期投資抑制効果もある」等の肯定的な意見も出 ている。

本振興策の承認に伴って、2013年2月には、インドのKapil Sibal情報技術相が日本に 訪れ、NTTドコモや日立製作所、NEC、京セラ等の日系大手企業の経営トップ、茂木経済 産業相等と会談し、当施策への協力を求めた。上記の背景には同国の輸入依存による貿易 赤字に対する危機感がある。インドでのエレクトロニクス製品は現在、ほとんどが輸入に 依存している状態であり、このままでは2020年にエレクトロニクス分野の輸入額が3,000 億ドルに達し、原油の輸入額を超えてしまうと予想されるため、自国での当産業の育成が 急務となっている。Kapil Sibal情報技術相はインドの低コストの経済環境と質の高い人材 を売りに、日系企業も含めた外資企業を巻き込んで当振興策を実行しようとしている。

(2) 業界動向

エレクトロニクス業界の生産高は徐々に成長しており、今後も成長することが見込まれ ている(図表 23-25参照)。インド通信・IT省(Ministry of Information Technology)に よると、2009 年 450 億ドル規模と推定されたインド国内の IT・エレクトロニクス需要は

2020年には4,000億ドル規模に拡大すると推定されており、それに対して先に示した振興

策を含め、現状200億ドル程度の国内供給能力は、2020年にはインド国内の需要を賄える 規模に拡大すると予測している。

82 追加関税、特別追加関税については第12章を参照。

171

図表 23-25 エレクトロニクス産業の生産高推移とその内訳

(出所)Ministry of Information Technology “Annual Report 2012”より作成

また、図表 23-25 のとおり、生産規模、成長率の両面において当業界を牽引しているの が通信用製品と家電製品である。携帯電話加入件数は2006年3月時点で1億件だったのが 2013年8月時点では9億件近くなっている。また、インドではテレビや冷蔵庫、洗濯機、

クーラー等がインド中流階級のステータスシンボルとなっており、家電需要が伸びている。

従来、掃除機や洗濯機はハウスキーパーの人件費より高価であったことから浸透はしてい なかったものの、女性の社会進出やインド経済全体の成長を背景に今後、伸びていくとい われている。実際、世帯普及率を見ると、インド全体で見た場合はまだ低いが、経済成長 に伴う中間所得層の増加を考えれば、今後、巨大な市場となることは間違いない(図表

23-26 参照)。インド家電製造協会(CEAMA: Consumer Electronics and Appliances

Manufacturers Association)によれば、品目別の販売台数は2007年度からの4年間で液

晶テレビが11倍、冷蔵庫と洗濯機、エアコンが約2倍に伸びている。テレビが急激に増加 しているのは、地方の貧しい地域で選挙の際、立候補者が票を獲得するために有権者に対 しテレビを配ることがあり、その結果とも言われている。

84,410

177,500

0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 200,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012(推計)

Electronics Hardware

家電, 23.2%

通信用, 31.0%

コンピュー ター, 13.7%

産業用, 12.1%

電子部品, 14.9%

軍事用, 5.1%

(千万ルピー)

(年度)

172 図表 23-26 家電製品の世帯普及率(2012年時点)

(出所)JETROより作成

(3) 主要プレイヤー概況

① 通信用製品

従来、通信用製品市場では、シンガポール・テレコムや香港のハチソンワンポア、英ボ ーダフォンなどの外資系企業がインドのサービス・プロバイダーに資本参加して経営ノウ ハウを提供してきている。1分当たり1ルピーを切る世界最低水準の料金体系や1秒単位の 細かい課金システムなどを導入したことにより、都市部の若年層を中心に地方や農村部で も急速に普及した。

与信管理が難しいインドでは多くの加入者がSIMカードとスクラッチ式のプリペイドカ ードを購入し、手持ちの端末に挿入し電話利用している。そのため、累計加入件数と実際 の端末数は一致せず、2012年7月からの半年で累積加入件数が約7,000万件減少したのは、

加入者が一斉に契約を取りやめたわけではなく、購入後一定期間以上にわたって利用がな く、新たに料金のチャージをしていないプリペイド式のSIMカードについて、携帯電話サ ービス各社が一斉に回線切断をした結果である。

プロバイダー別のシェアは、図表 23-27のとおりである。プロバイダー別のシェアでは、

Bharti が 21.7%で首位につき、次いで Vodafone(17.6%)、大手財閥系のリライアンス

(14.2%)と続く。かつての日本電信電話公社に相当する国営 BSNL は 5 位(11.7%)、 NTTドコモとの合弁事業を展開する財閥系のタタは6位(7.7%)となっている。

10%

69%

10%

21%

8%

44%

6% 3%

53%

97%

39%

77% 73%

92%

24%

43%

90%

97%

88%

99% 100% 96%

84%

71%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

エアコン カラーテレビ パソコン 冷蔵庫 洗濯機 携帯電話 カメラ DVD機器

インド 中国 日本

173

図表 23-27 インド国内の通信事業者の携帯電話加入件数・シェア(2013年3月時点)

順位 企業名 加入件数(万件) マーケットシェア(%)

1 Bharthi 18,820 21.7

2 Vodafone 15,235 17.6

3 リライアンス(Reliance) 12,297 14.2

4 IDEA 12,161 14.0

5 BSNL 10,121 11.7

6 タタ(Tata) 6,642 7.7

7 Aircel 6,007 6.9

8 Unitech 3,168 3.7

9 Sistema 1,191 1.4

10 MTNL 500 0.6

11 Loop 301 0.3

12 Videocom 201 0.2

13 Quadrant 137 0.2

合計 86,781 100%

(出所)TRAI ”TELECOM REGULATORY AUTHORITY OF INDIA, March 2013”より作成

一方、インド調査会社CyberMedia Reserch(CMR)によると、2013年1~4月までの 出荷台数ベースで従来型の携帯、いわゆるフィーチャーフォンが6,410万台で87%、スマ ートフォンが940万台で13%であり、徐々にではあるが、スマートフォンが売れ始めてい る(図表 23-28参照)。

携帯端末のブランド別シェアを見ると、携帯電話全体ではNokiaがトップシェアを維持 しているが、スマートフォンではサムスンがトップであり、2位、3位はインド地場企業と ノキアの牙城が崩されてきている傾向にある。

図表 23-28 インドの携帯端末出荷台数・メーカー別シェア(2013年1~4月期)

(出所)CMRより作成

7,350 万台 940 万台

携帯端末全体 スマートフォン

Nokia, 20.3%

Samsung, 14.2%

Microma x, 8.9%

Others, 56.6%

Samsung, 40.70%

Microma x, 19.30%

Karbonn, 8.60%

Others, 31.4%

174

② 家電製品

インドの家電業界はサムスンとLGという韓国の家電メーカー2社が市場をリードし、そ れに外資系や国内系メーカーが追随するという構図となっている。製造業における外資の 進出自由化に伴い、1990 年台後半に韓国・サムスン、LG がインドで生産を開始し、家電 市場が形成されていった。サムスンとLGの韓国メーカーは、現地に即した低価格商品の開 発、インド人社員への大幅な権限委譲による現地化の徹底、有名人を活用した巨額のマス 広告を展開することで、一気に市場のトップを獲得している。

インド家電業界紙TV Veopar Journalによると、インドでも比較的普及しているテレビ の2012 年の総出荷台数は1,345 万台であり、うちブラウン管は840 万台、液晶テレビは 505万台と、インドではまだブラウン管のテレビが多い(図表 23-29参照)。また、それぞ れ企業別のシェアをみると、ブラウン管ではLGがシェア33%で1位、インド地場企業の

Videocon Group(26%)が2位、サムスン(17%)が3位であり、ブラウン管市場では日

系企業のプレゼンスは見られない。一方、液晶テレビではシェアだけでみると、サムスン もLGもシェア22%で1位を競い合っている状況である。日系企業としてはソニーが3位

(19%)、パナソニックが5位(9%)、東芝が7位(3%)となっている。液晶分野で2009、

10年度にシェア1位を獲得したソニーであったが、現在は僅差でサムスンとLGにシェア を奪われている。他方、仕切り直しでインド市場に再び挑戦しているのがパナソニックで あり、シェア拡大を狙っている。

図表 23-29 インドテレビ市場の企業別出荷台数のシェア(2012年)

(出所)TV Veopar Journal April 2013より作成

840 万台 505 万台

ブラウン管テレビ 液晶テレビ

LG 33%

Videocon Group

26%

Samsung 17%

Onida ( including

lgo ) 12%

Others

12% Samsung

22%

LG 22%

Sony 19%

Videocon Group

16%

Panasonic 9%

Onida 7%

Toshiba 3%

Others 2%

175 ひとくちメモ(28):LGの戦略

ソニーやパナソニックが一度、インドから撤退している間に市場シェアを獲得した韓国メーカーのサム

スンと LG。近年は単なる商品力だけでは激しい競争に勝てないため、LG では、エアコンや冷蔵庫、

食器洗い機といった自社製品をビルやマンションに一括で納品し、スタッフを常駐させ、その管理を行 うというスタイルをとっているという。アフターケアに強みを有する日本メーカーの手法を取り入れてい る韓国メーカーは手強いかもしれない。