出典 浅田宗伯家方(本朝経験方)
血証、上衝、眩暈を治し、産前後通治の剤なり。(『勿誤薬室方函』)
腹候
腹力中等度(2‑4/5)。ときに臍上悸、臍下 悸を認める(腹候図)。
気血水
気血水のいずれも関わる。
六病位
少陽病。脈・舌
舌質は舌尖紅。脈は細数。
口訣
この方は元、安栄湯となづけて、軍中七気を治する方なり。余家、婦人 血症にもちいて特験あるをもって今の名とす。世に称する実母散、婦王湯、
清心湯みな一類のくすりなり。(浅田宗伯)
本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態効能または効果
のぼせとめまいのあるものの次の諸症:産前産後の神経症、月経不順、血 の道症。
b 漢方的適応病態
気血両虚の気滞・心火旺。すなわち、のぼせ、めまい感、頭痛、不眠、い らいら、肩こり、動悸などの心火旺の症候と、ゆううつ感、胸苦しい、腹 が脹る、悪心、腹痛などの気滞の症候に、目がかすむ、しびれ、食欲不振、
元気がないなどの気血両虚の症候を伴う。月経不順、月経量が少ない、月 経痛などを伴うこともある。
構成生薬
当帰3、川芎3、蒼朮3、香附子3、人参2、桂皮2、黄䊫2、檳榔子2、黄連1、
木香1、丁子1、甘草1、(さらに本来は、大黄が入る)。(単位g)
TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
理気活血・気血双補・清心火。より深い理解のために このままでも二味の瀉心湯あるいは黄連解毒湯の一 部を含むが、大黄が加わることで三黄瀉心湯の方意が構成される。
より深い理解のために このままでも二味の瀉心湯あるいは黄連解毒湯の一 部を含むが、大黄が加わることで三黄瀉心湯の方意が構成される。
腹 候 = 腹 力 中 等 度
(2‑4/5)。ときに臍上悸、
臍下悸を認める。
効果増強の工夫
抑肝散、加味逍遙散などとの組み合わせが可能。便秘があれば、三黄瀉心 湯または、大黄甘草湯を少量加える。
処方例) 1)ツムラ女神散 7.5g 分 食前または食後 2)ツムラ三黄瀉心湯 2.5g 分 眠前(兼用方)
本方で先人は何を治療したか?
矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
更年期障害、産前産後に起こった自律神経症候群で、のぼせとめまいを主 訴とするもの。
桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
胃アトニー傾向のある虚弱体質者の更年期・産前産後の諸神経症、ことに めまい。
ヒ ン ト
女神散と同様な主治をもつものが、ご存知の加味逍遙散である。この 方 の鑑別は興味深いテーマである。先人がどのように両者を解説しているかを 比較してみよう。矢数道明氏の『漢方後世要方解説』から引用する。
女神散。
この方は気を順らし、血熱を涼ます剤で、別に安栄湯と名づけ、軍中の神 経症を治するものとしていた。浅田家にて血の道症に用いて特験ありとし、
実母散、婦王湯などの婦人の自律神経障害に用いられる。目標は上衝、眩暈 で更年期の血の道症に効がある。比較的実証のものによい。産前産後の神経 症候群にも用いられる。
加味逍遙散。
(逍遙散は)小柴胡湯の変方で、小柴胡湯よりは少しく虚状を帯び、柴胡姜 桂湯、補中益気湯よりはやや力あるものである。婦人の虚労、結核の初期に 用い、又中和の剤であるから病後の調理によく用いられる。
加味逍遙散は清熱を主とし、上部の血症に効がある。頭痛、面熱、衄血、
肩背こわばる等、上部の血熱を清解する。又婦人の肝気亢ぶり、種々と申分 絶えざる神経症にも広く用いられる。
応用として、 結核初期軽症、 婦人神経症、 気欝症、月経不順、 慢性尿道炎、
白帯下、 婦人の皮膚病にて荏苒として癒えざるものに四物湯と合方して用いる。
産後舌爛、肝硬変症の腹水なきもの。
構成生薬を比較すると共通するものが少なく、合方や兼用方に適した方剤 より深い理解のために 著者の位置づけでは、加味逍遙散と同様な例で、若 干実候寄りの方剤。
より深い理解のために 著者の位置づけでは、加味逍遙散と同様な例で、若 干実候寄りの方剤。
68.芍薬甘草湯
(しゃくやくかんぞうとう)出典 『傷寒論』
傷寒脈浮に、自汗出で、小便数に、心煩し、微悪寒し、脚攣急するに、
反つて桂枝を与えて、その表を攻めんと欲するは、これ誤りなり。之を得 てすなわち厥し、咽中乾き、煩躁し、吐逆する者は、甘草乾姜湯を作りて 之を与え、以てその陽を復す。もし厥いえ、足温まる者は、さらに芍薬甘 草湯を作りて之を与うれば、その脚即ち伸ぶ。(太陽病上篇)
腹候
腹力によらず適用可能である。腹直筋の拘 攣している場合が多いが、それが無くとも 症状のみで適応してよい(腹候図)。
気血水
気血が主に関係する。
六病位
太陰病。脈・舌
舌候はさまざまで一定せず。脈は、痛みか ら弦であろう。
口訣
ありとあらゆる痛みに、一度は適用してみること。(道聴子)
本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態効能または効果
急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛。
b 漢方的適応病態:平滑筋、骨格筋の痙攣性疼痛に頓服として用いる。
末梢性の鎮痙、鎮痛以外に中枢性の鎮静作用も有する。中医学的には筋の 痙攣は肝の機能失調によると考えられており、この鎮静、鎮痙、鎮痛作用 を「平肝」とよぶ。なお、白芍、炙甘草ともに滋養強壮作用があり、身体を 栄養、滋潤する。(『中医処方解説』)
構成生薬
甘草6、芍薬6。(単位g)
より深い理解のために 横紋筋、平滑筋、いずれも治療可能なところに注目。
より深い理解のために 横紋筋、平滑筋、いずれも治療可能なところに注目。
より深い理解のために 使用上の注意として、7.5gの常用量中に甘草6gを含 むことから治療上必要な最短期間の投与にとどめることが大切である。
より深い理解のために 使用上の注意として、7.5gの常用量中に甘草6gを含 むことから治療上必要な最短期間の投与にとどめることが大切である。
腹候=腹力によらず適用 可能である。腹直筋の拘 攣 し て い る 場 合 が 多 い が、それが無くとも症状 のみで適応してよい。
TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
平肝・解痙止痛。効果増強の工夫
鎮痛効果を増すために、附子を加味する。附子の働きは温裏祛寒で、血管 拡張、血行促進の効能をもち、かつ鎮痛作用がある。芍薬甘草湯証で寒証 を呈するものに適用される。
処方例) ツムラ芍薬甘草湯 7.5g㾹 ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g㾸分 食間
本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1 ) 脚気・腓腸筋痙攣・筋肉リユウマチ・眼病・舌強直・寝ちがえ等で痙 攣様にすじがつれるもの。
2 ) 胃痙攣・腸疝痛・嵌頓ヘルニヤ・イレウス・胆石発作・膵臓炎等急性 腹症と云われる発作性の腹痛で、腹壁が痙攣様につれて堅くなつてい るもの。
3 )小児の夜啼きで腹筋が攣急するもの。
4 )下肢無力症、脚弱。
5 )咳を発して放屁するものを治した例がある。
6 )気管支喘息で、呼吸困難や劇しい咳のために筋肉に力を籠めているもの。
7 )歯痛で腹筋ひきつるものを治した例がある。
ヒ ン ト
本方はその成り立ちからも頓用かあるいは短期間の使用にとどめるべき薬 方である。理由はいうまでもなく、甘草を 日量として多く含むために、偽 アルドステロン症を発症しやすいからである。
ここに興味深い臨床研究論文がある。熊田卓、熊田博光、与芝真ほか:
TJ‑68ツムラ芍薬甘草湯の筋痙攣(肝硬変に伴うもの)に対するプラセボ対照 二重盲検群間比較試験.臨床医薬 15(3):499‑523、1999である。本論文は、
肝硬変症例におけるこむら返りに対する芍薬甘草湯の効果をプラセボコント ロールで示したものである。このトライアルでは、ツムラ芍薬甘草湯7.5gを 分 で連日14日用いているが、実薬65例中 例の偽アルドステロン症が発生 したと記されている。いずれも服薬中止のみで治癒したとのことであった。
甘草に由来する偽アルドステロン症の発生頻度を知る上で貴重な記録とい