出典 皇甫中撰注、王肯堂訂補『明医指掌』
手足の流注、疼痛、麻痺不仁、もって屈伸しがたきを治す。
腹候
腹力中等度よりやや軟(2‑3/5)(腹候図)。
気血水
血水が主体の気血水。
六病位
少陽病。脈・舌
舌苔は白、白膩。脈滑。
口訣
この方は麻黄加朮湯、麻杏仁薏苡甘草湯の一等重きものに用いゆるなり。
その他桂芍知母湯の症にして附子の応ぜざる者に用いて効あり。(浅田宗 伯)
本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態効能または効果 関節痛、筋肉痛。
b 漢方的適応病態:湿痺(着痺)。すなわち、四肢や躯幹の痺れ痛み、重 だるい、運動障害、軽度の浮腫、冷えなどを伴うもの。
構成生薬
薏苡仁8、蒼朮4、当帰4、麻黄4、桂皮3、芍薬3、甘草2。(単位g)
TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
通陽利水・活血止痙。効果増強の工夫
ここでは、祛風湿・止痛の附子を加味して、
処方例) ツムラ薏苡仁湯 7.5g㾹 ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g㾸分 食間
構成生薬から補血、袪湿の薬味が少ないので、疎経活血湯と合方が可能である。
処方例) ツムラ薏苡仁湯 5.0g㾹
ツムラ疎経活血湯 5.0g㾸分 朝夕食前
麻黄が比較的多いので消化器症状を呈する例には桂枝加朮附湯と合方する。
桂枝麻黄各半湯の派生方ともみなすことができるからである。
処方例) ツムラ薏苡仁湯 5.0g㾹
ツムラ桂枝加朮附湯 5.0g㾸混合し分 食前
腹候=腹力中等度よりや や軟(2‑3/5)。
本方で先人は何を治療したか?
矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
関節リウマチの亜急性期および慢性期。多発性関節リウマチ、漿液性関節 炎、結核性関節炎、筋肉リウマチや脚気など。
龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
四肢疼痛、麻痺、運動障害で附子剤の応ぜざるもの。
桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
リウマチで、寒証でなく、自汗を伴わない慢性化したもの。
ヒ ン ト
まず関節リウマチやその類症にどのような方剤が用いられるか概観してみ よう。本方をはじめ生薬麻黄が配剤されている麻黄含有剤と非麻黄含有剤に 大別すると、麻黄を含む剤には麻黄湯、葛根湯、越婢加朮湯、麻杏薏甘湯、
薏苡仁湯、五積散などがあり、麻黄を含まない剤には桂枝加朮附湯、防已黄 耆湯、真武湯、疎経活血湯、大防風湯などがある。
本方の主治について、矢数道明氏は『漢方診療医典』で以下のように述べて いる。
「本方は関節リウマチの亜急性期および慢性期に入った場合によく用いられ る。麻黄加朮湯や麻杏薏甘湯よりもやや重症で,熱感,腫脹が去らず,慢性 症に移行しようとするものが目標である。外来で訪れる程度の亜急性期のも のによい。桂枝芍薬知母湯の手前に用いる。奨液性の関節炎や結核性の関節 炎でも、水がたまって腫脹,疼痛のあるものには用いてよい。本方は麻黄加 朮湯と麻杏甘石湯とを合して杏仁を去り、当帰と芍薬とを加えたものである。
表の水の動揺を治すのが麻黄加朮湯で、当帰、芍薬、薏苡仁は血燥を潤すも のである。
以上の目標に従って本方は多発性関節リウマチ、漿液性関節炎によく用い られ、また結核性関節炎,筋肉リウマチや脚気などにも応用される。」
このような記述からすると、疾病が急性期において治癒せず、亜急性期、
慢性期にいたると血の異常を伴うようになり、しかもその働きが低下する。
つまり血虚の状態を帯びるにいたることが理解される。慢性病では多くの疾 病が血虚の状を呈してくるという原則は、治療戦略を立てるにあたり大変重
53.疎経活血湯
(そけいかっけつとう)出典 龔廷賢著『万病回春』
遍身走痛し、日は軽く夜は重き者はこれ血虚なり。遍身走り痛んで刺す が如く、左の足痛み尤も甚しきを治す。左は血に属す。多くは酒色損傷に よつて、筋脈虚空、風寒湿を被り、熱内に感じ、熱に寒を包(兼)ぬ時は、
痛み筋絡をやぶる。これを以て昼は軽く夜は重きに、宜しく経をすかし、
血を活し湿を行らすべし。これ白虎歴節風に非ざるなり。(痛風門)
腹候
腹力中等度よりやや軟(2‑3/5)(腹候図)。
気血水
水血が主体の気血水。
六病位
太陰病。脈舌
原則的に、舌質は淡紅、舌苔は白。脈細。
口訣
瘀血と水毒と風湿を兼ね、筋肉、関節、神経に疼痛を発し、とくに腰よ り以下に発した痛みを目標に用いられる。(矢数道明)
肩関節周囲炎をはじめ、体上部の各種痛みにも良く効きます。しかもこ れまで副作用の経験がほとんどありません。もうひとつ、本方は八味地黄 丸、桂枝加朮附湯とならんで、ARB(アルドース還元酵素阻害)作用の有 る漢方製剤であることが実験的に確かめられていることです。それを根拠 に糖尿病末梢神経障害にもひろく適用されています。(道聴子)
この方、いたって多味雑駁なるをもって、あるいは抹殺して用いざるも のあり。(中略)余が家、この方を常用として、しばしば偉功を奏す。(山 田業精)
本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態効能または効果
関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛。
b 漢方的適応病態
血虚の風湿痺(行痺)。すなわち、四肢や躯幹の痺れ痛み、遊走性の痛み、
軽度の浮腫、関節の運動障害などの風湿痺の症候に、皮膚につやがない、
しびれ感、筋肉の引きつりなどの血虚の症候を伴うもの。
腹候=腹力中等度よりや や軟(2‑3/5)。
構成生薬
当帰2、地黄2、川芎2、蒼朮2、茯苓2、桃仁2、芍薬2、牛膝1.5、威霊仙1.5、
防已1.5、羌活1.5、防風1.5、竜胆1.5、生姜0.5、陳皮1.5、白芷1、甘草1。(単 位g)
TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
祛風湿・補血・活血化痰。効果増強の工夫
1 )便秘があれば積極的に少量の大黄を加味する。(消炎鎮痛効果も期待で きる)
この場合は、局方の大黄末が便利で、0.5g分包としてエキス剤に加味する。
処方例) 1)ツムラ疎経活血湯 7.5g 分 食前 2)局方大黄末 1.0g 分 眠前
2 )鎮痛効果を増強するために、附子末を加味する。
処方例) ツムラ疎経活血湯 7.5g㾹 ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g㾸分 食前
3 )鎮痛効果を増強するために少量の麻黄剤(越婢加朮湯など)を併用する。
処方例) ツムラ疎経活血湯 7.5g 㾹
ツムラ越婢加朮湯 2.5g(1‑0‑1)㾸分 食前(食後)
本方で先人は何を治療したか?
矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
筋肉リウマチ、痛風、漿液性膝関節炎、腰痛、坐骨神経痛、下肢麻痺、脚 気、浮腫、半身不随、高血圧、産後の血栓性疼痛など。
龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より 神経痛、リウマチ、腰痛、浮腫、半身不随。
桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
陳旧性の神経痛、ことに坐骨神経痛、瘀血と湿証が認められれば確実である。
ヒ ン ト
慢性疼痛性疾患でこれほど有用性の高い薬はないと著者は考える。
より深い理解のために 「痺症」とは、筋肉や関節のしびれ痛みを主とする疾 患に相当し、「風湿痺」は遊走性の痛み(風)や軽度の浮腫(湿)のみられるもの をいう。(『中医処方解説』)
より深い理解のために 「痺症」とは、筋肉や関節のしびれ痛みを主とする疾 患に相当し、「風湿痺」は遊走性の痛み(風)や軽度の浮腫(湿)のみられるもの をいう。(『中医処方解説』)