第3章 角速度の解析的関係
3.3 J 特性図と遊星歯車機構の関係
J直線は一つの機構が定まればきめることが可能である。しかしこの場合、一般化遊星 歯車機構の端子がどの要素に対応しているかによって、J直線は異なったものとなる。そ の例を2K-H型機構を使って示す。
図3.3-5 一般化遊星歯車機構の端子と要素の組合せ
最初に端子①、②、③に対応する遊星歯車機構において要素H、s、iの組合せわは図 3.3-5に示すように6通りある。一般化遊星歯車機構は3K型、2K-H型、K-H-V型 を網羅しているばかりでなく、このように一つの2K-H型においてもその要素と、端子 の組合せの全てを表現している。
まず端子と要素に関して図3.3-5の組合せ番号1の場合を考える。すなわち①→H,②→
i,③→s,であるとする。そしてそれぞれの角速度をω1,ω2,ω3とおき、その特性図 上でこの機構のJ直線を求める。前述のようにJ直線は(1、1)点と横軸との交点(j213、 0)を結ぶ線で表すことができる。あるいはこの線の縦軸との交点はj123でもあるので、
表3.3-1のように(1、1点)と(0、j123)を結ぶ線としてでも与えられる。このことから j213、j123 のいずれかが求まればJ直線は決定できる。
一方、これらの伝達比を求めるための手掛かりになる基準伝達比はjHsi、またはjHis である。端子番号と要素記号との対応と、伝達比の相互関係を用いれば、次の関係が得ら れる。
j j z
z
Hi s s
i
123
j j j
j
213 2
31 1
32
123
1 1
1
1
1 1
・・・・・・・・・・・・・・・・(3.3-3) したがって、式(3.3-3)から図3.3-5の組み合わせ1の機構では0>j123>-1、1>j213が 得られるので、その特性図は表3.3-1に示すようになる。
H s i π
② ③
①
① ② ③
π
H H H H
H H i
i i i
i i s s s
s s
s 1
2 3 4 5 6
組合せ 番号
69
表 3.3-1 組合せ番号1の機構
組合せ番号1の機構 特性図
H s i
π
② ③
①
ω ω ω
ω
1 3 2
3 1
1 j231
j2 13
J 直線
-1
表3.3-2 端子と要素の組合せと特性図との関係(1)
組合せ 番号
j123 要素と端子の対応 特性図
1
j j
z z
Hi s
s i 123
,
H s i
π
② ③
①
ω ω ω
ω
1 3 2
3 1
1 j231
j2 13
J 直線
-1
2
j j
j z z
is H
Hsi
i s
123
1
1 1
1 1
H si
π
③
②
① ω
ω ω
ω
1 3 2
3 1
1 j231 j2
13
J 直線
-1
3
j j j
j z z
sHi
siH
Hi s
s i 123
1 1 1
1 1
s H
i π
② ③
① ωω
ω ω
1 3 2
3 1
1 j2
13
J 直線
-2 -1
j231
70
表3.3-3 端子と要素の組合せと特性図との関係(2)
組合せ 番号
j123 要素と端子の対応 特性図
4 j j z z
Hs i i
s
123
s H
i π
③
②
①
ω ω ω
ω
1 3 2
1
1 j 1
23
j 213
J 直線
-1 3
5
j j j z z
siH Hi s
s i 123
1 1
s H
i
π
② ③
①
ω ω ω
ω
1 3 2
3 1
1 j1
23
j2 13 J 直線
-1 2
6
j j
j z z
is H
Hs i
i s 12 3
1 1
s H
i
π
③
②
① ω
ω ω
ω
1 3 2
1
1 j1
23
-1 J 直線 3
13 j 2
2
このようにして図3.3-5に示す端子と要素の組合せの全てに関してJ直線を求めると、表 3.3-2,表3.3-3のようになる。
このように一つの遊星歯車機構が定まると6個のJ直線のあることがわかった。そして これらからJ直線の組併せをひとまとめにして示すと図3.3-6のようになる。この直線の見 方はいろいろあるが、その一つは縦軸との交点(0、j123)、または横軸との交点(j213、 0)に注目すると、図3.3-6のⅠ、Ⅱ、Ⅲのような3組から成り立っているとみることがで きる。
71
ここでは2k-H型遊星歯車機構を対象にして考えたが、このJ直線の組み合せは、一 つの伝達比から派生的に求められる線の組合せである。そしてこのような関係は遊星歯車 機構の型とは無関係で、3軸を持つ一般化遊星歯車機構で考えられる機構で常に成立する。
2K-H型ではその算出根拠になる伝達比は基準伝達比(jH)であるが、3K型では基準 伝達比は陽には現われないものの、一つの伝達比を拠り所にしたJ直線をベースに他のJ 直線の組が求まることには変わりはない。このようにして伝達比は遊星歯車機構が決まれ ば定まる。そして、そこから求められる6個の伝達比とこの直線の持つ座標上の関係は対 応するので、一つの遊星歯車機構のJ直線は表3.3-4に示すような特長を持った6個の線で 表すことができる。
ω ω ω
ω
1 3 2
1
1
J 直線
3
2 2
j1
23
j2
13
Ⅲ
Ⅱ
Ⅰ
-1 -1
図3.3-6J直線の組合せ
ここでのまとめ
一般化遊星歯車機構には端子と要素との組合せの数が6個あり、それぞれが一つのJ 直線に対応している。
6個のJ直線の組はさらに表3.3-4のように3個の直線にまとめられる。
表3.3-4 J直線の基本的組合せ
直線の組合せ 直線の種類 伝達比の範囲
Ⅰ 実線 0>j123>-1 、-1>j123
Ⅱ 1点鎖線 0>j213>-1 、-1> j213
Ⅲ 破線 2> j123>1、 j123>2
3.4 1 本の J 直線に対応する2K-H型機構
前項(3.3)では遊星歯車機構が定まったとき、その機構のJ直線は6個あり、これらはま
72
た3個の直線グループで代表できることを示した。ここでは立場を変えて1本のJ直線が特 性図上にひかれたとき、それに対応する機構はただ一つの遊星歯車機構だけが対応するか どうかを考える。
今考察の対象として2K-H型機構を取り上げ、J直線が図3.3-7の様に第1、4、3象限 を横切る直線で与えられたとする。この直線が縦軸を横切る座標は0>j123であり、横軸 を横切る座標は1>j313>0である。ここでj123とj213は相互に独立ではないのでj123に ついて考えると、j123 は-1>j123、0>j123>-1、の2通りの場合がある。ここで①
=Hとした場合、このようなJ直線に対応する2K-H型機構は図3.3-7 (a),(b)の機構で表され る。
ω ω ω
ω
1 3 2
3 1
1 j231
j 2 13
J 直線
j1 0> 23
②
①
③
j1 -1> 23
②
① ③
>-1 ( a )
( b )
図 3.3-7 J 直線
この例は端子①がキャリアに対応している例である。ところでj123は次式で表すことが できた。
j
123j
31
21
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3.3-4) そこでこの条件でj123を考えると、上に示したものとは異なった機構をこのJ直線で表す ことができる。すなわち図3.3-7よりj123が負であることを考えると、式(3.3-4)が成立する ためにはj321はj321>1でなければならない。そこで端子③をキャリアとした場合、j321>1を満足する機構は例えば図3.3-8(a)、(b)のようなものが考えられる。この機構もまた 図3.3-7のJ直線を満足する機構である。
73 ω
ω ω
ω
1 3 2
3
1
1 j 1
23
j 2
13
J 直線 j213 >1
②
①
③
j 1
23 = 1 - j3
21
j 3
21 >1
②
①
③ ( a )
( b )
図 3.3-8 j321>1を満足する機構
またj123は次式によっても表すことができた。
j j
123 2
31
1
1
・・・・・・・・・・・・・・・(3.3-5)したがってここでのj123<0の条件より、 j231はj231>1を満たさねばならない。そこ で端子②をキャリアに対応させれば、その機構は図3.3-9 (a)、(b)のようになり、この機構 もまた図3.3-7のJ直線を満足する機構である。
ω ω ω
ω
1 3 2
3 1
1 j231
j 2 13
J 直線
j 2
31 >1
②
① j 1 ③
23 = 1 1 - j2
31
j 2
31 >1
②
① ③
( a )
( b )
図3.3-9 j231>1を満たす機構
以上は同じ1本のJ直線に対して、図3.3-10に示す3個の2K-H型遊星歯車機構の基本型 がどのように対応するかを考えた。その結果、1本のJ直線が与えられたとき、この機構 の基本形の各要素を図3.3-7、図3.3-8、図3.3-9の(a)、(b)図に示すような端子に対応させれ ば、6個の機構を対応させられることがわかった。
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ところで2K-H型遊星歯車機構はこのような基本型以外に、例えば図3.3-11のような変態 形がいくつも考えられる。このような変態形も一般化された遊星歯車機構πの3個の端子 に対応する機構であれば、1本のJ直線が対応する機構は更に多くなる。
(i) (ii) (iii)
図3.3-10 2K-H型の基本型
図3.3-11 2K-Hの変形形態
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