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IHI-EDドライブ 38

ドキュメント内 Microsoft Word - E-1-15v3.1.doc (ページ 172-181)

9j14線

3.1 IHI-EDドライブ 38

ここで取り上げる変速機構(IHI-EDドライブ)は、船舶の発電機を主機関と結合す ることで省エネルギ化を計ることを目的として開発されたものである。その機構の概念図 を図7.3-1示す。

主機関歯車 内歯歯車

遊星歯車

油圧モータ 差動遊星歯車機構

発電機

太陽歯車 キャリア

油圧ポンプ

主軸

図7.3-1 IHI-EDドライブの概念図

従来、船舶用発電機は電源の質を確保することから定速運転が要求されるので、推進用 の原動機とは別に、発電機専用の機関で運転するのが普通であった。しかし省エネルギ的 観点からみるとこのような専用発電機方式は無駄が多く問題があった。これに対してここ で開発されたものは閉路型遊星歯車機構を構成した変速機構を主機関と結合し、主機関の 回転数に関係なく発電機を定速で回転することを狙ったものである。

(1) 構成

この機構のスケルトンは図7.3-2のようになる。図7.3-1では主軸と油圧ポンプPを結合 する歯車は一段歯車で表されているが、実体図ではここに中間歯車があるのでスケルトン 図ではそのようにして表してある。

図7.3-2のスケルトン図からわかるように、主機関からの入力は端子iから入る。そして この動力のうち途中で枝分かれする歯車列Bを通った部分は、遊星歯車機構πのキャリア 軸Hに入る。一方、歯車列で別れた動力は端子④を通って油圧ポンプPに与えられる。さ らにポンプからの油圧は油圧回路を通って油圧モータMに供給されているので、モータを 遊星歯車機構πの内歯歯車rにつなぐことによって、ポンプからの動力は遊星歯車機構に も与えられる。ここで遊星歯車機構の出力は太陽歯車sである。これはまたこのシステム の出力でもある。

油圧ポンプと油圧モータはその役割を可逆的に使うことができるので、このポンプモー

38 宇都宮正時、森隆雄、長谷川文彦、三浦稔:SSGマークIIIおよびIHIEDーDriveの開発 石川島 播磨技報、25(S60)3 172-17

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タ一組を一つの無段変速機Rとみなすことができる。ここでの油圧ポンプは一方向のみの 回転であるが、油圧モータは逆転することができる。そのためポンプからモータの回転を 見た場合、静止点を挟んだ正逆転運動をする。したがってこの無段変速機は正逆転可能な 変速機能を持っている。

s H

① ③

π

=3.00

P M

z z

sr

z

s

z

r

主軸 発電機

図7.3-2 IHI-EDドライブのスケルトン図

(2) 特性図

この機構の歯数、変速比などの詳細は不明であるので、次のような条件にあるものと考 えて解析する。

i) 遊星歯車機構の基準伝達比jHrs

Hrs=j123=-Zs/Zr=-1/3 ii) ④-Rー②間の速度比r(=ω4/ω2):

変速機rは静止状態を挟んで正逆回転して変速するので静止点がω2=0であることより、

その変化範囲は正の有限値Rnorから無限大点を通って負の有限値Rrevまで変化する。

∞> r> Rnor 、 Rmin > r>-∞

iii) 減速比j14=(ω1/ω4) :

歯車列Bには中間歯車があり、減速しているので次の関係で表される。

1>j14>0

これらの条件をもとに特性図を求めるにはまずJ直線を定める必要がある。J直線は座標

(1、1)Ⅰ点を通り、縦軸上のj123の点を通る。ここでj123は-1/3であることより、図

7.3-3に示す(1、1)、(0、-1/3)点を通るJ直線がえられる。

以上の条件を用いて特性図を描く(図7.3-3)。まず速度比の範囲Rを縦軸上にとる。上 下の網模様の領域がそれを示すが、rの値は無限遠点(モータMが静止している状態)か ら有限域におよぶ領域にある。さらに端子①-④-②の回路部分の伝達比の関係t線を求 めるために、j14線(一点鎖線)を決定する必要がある。ここでj14線を決定する順序は次

166

の通りである。すなわち横座標X上に歯車列Bの伝達比j14をとり、そこから立てた垂線と 参照線との交点Ⅱ点と原点を通る直線(一点鎖線)がj14線を表わす。

-1 1 2

-2 2

1 A

1 3

U

-1 B

J 直線

v

rev i

R

nor

R

14

max

j 線

14

V

min

u

参照線

Ⅱ Ⅰ

X Y

図7.3-3 IHI-EDドライブの特性図

さらにt線を求めるためには、j14線が速度比の正転最大変速点Rnorと、逆転最大変速点 Rrevと交わる点U、Vを求め、これらの点から立てた垂線が参照線と交わる点u、vを定め る。このu,v点と原点を結ぶ直線がt線の限界を定める。それらをtmax線、tmin線とす る。そしてこの2本のt線とJ直線が交わる点がこの機構の限界動作点となる。ここでは A点と、B点がその点を示す。そしてrの変化に伴ってt線はtmaxとtminの間の範囲で原 点を通る直線群として表される。

(3) 動作状態

変速機Rを正転最大変速状態からモータが静止状態に至るまで変速すると、U点はj14線 上を右上に移動するのでu点も参照線上を右方に移動する。その結果t線もtmaxから時計 方向に回転し、動作点はA点からJ直線上をB点に向かう。そしてC点において内歯歯車 は静止する。さらに変速機を静止状態から逆転方向に変速させると、内歯歯車は逆転をは じめ変速機Rの逆転変速最大点RrevでB点の状態に至る。

ここでA点からB点にいたる系の動作状態はJ直線上のX、Y座標をω1/ω3ω2/ω3 で表すことで求められる。さらにA-B線上の動力状態は動力流分類図(6章2.3)より、A

-C領域はγ型(動力循環型)、C-B領域はα型(動力分流型)であることがわかる(図 7.3-4)。

167 1

1

ωω1

3

B ω32

ω

C O

γ-1

α-4

v u

2 3

(γ)v

v u

2 3

(α)v t

J 直線

図7.3-4 動作状態での動力流の状態

この変速機は主機関の回転数ω1が変動しても、発電機の回転を一定(ω3=const)にす ることを目的としている。この状態は特性図の上ではA-B線の横座標上をωが動くこと を意味する。したがって主機関の回転数ω1が変動しても発電機の回転ω3が一定であるため には、内歯車の回転ω2をA-B線の縦座標に相当する値に変化すればよい。つまり主機関 の回転変動に伴う内歯車の回転制御は(図7.3-5)に示す関係で行えばよい。

1 1

ω ω31 A t

B ω32

ω

C O

ω2の変化範囲

の変化範囲

ω1

ω ω

1 3

B ω3

ω2

C O

2

図7.3-5 それぞれの角速度の変化状態 図7.3-6 速度の変化範囲と分岐動力 ここでJ直線上の値はj3v21v で表されこの値は分岐動力の比(P1/P2)も表している(6

章2.3)。すなわちC点ではj3v21v =P1/P2=∞、つまりP2=0の状態である(図7.3-6)。

したがってこのときは変速機Rに動力は流れず、動力は直接遊星歯車機構のキャリアに流 れ込むので、効率は最もよい状態になることが想定される。

以上をまとめるとこの系の動力状態は次のようになる。すなわち主機関の回転がω1max

168

とω1minの間で変化しても、発電機への出力回転を一定にするためにはJ線上に沿って端子

②の回転速度をω2maxとω2minの間で変化させることで実現できる。このときω2=0のとこ ろで効率がもっとも大きくなる。

3.2 フライホイール/電気ハイブリッド変速機

39

電気自動車はエネルギ問題が起る度に注目されてきた歴史がある。1970年代もそのよう な時代であった。そのころの電池は鉛電池が主体であったが、この電池の性能が十分でな いために、加速時のパワー不足を解決する必要があったが、これをフライホイールで支援 しようとする発想があった。図7.3-7に示すフライホイール/電気ハイブリッド変速機はそ の様な試みの一例である。そのスケルトン図は図7.3-8に示す通りで、閉路型遊星歯車機構 を採用している。

ここで通常の電池のみによる走行はフライホイールFWを機械的に切り離してモータM によって車輪Wを駆動するが、制動時は車輪のエネルギーをフライホイールに戻し、加速 状態においてフライホイールのエネルギーを取り出すことを狙っている。

電動機

タイミングベルト フライホイール

発電機 遊星歯車機構 アクセル ブレーキ

電池 制御装置

図7.3-7 フライホイールル/電気ハイブリッド変速機の概念図

39 Rowelt、B。H、 Near-tearm ElectricVehicle Program (SAN/1213-1),(1977),NTIS

169

s H

① ③

π

=3.00

FW

W

M G

z zrs

z

z

r

s

図7.3-8 フライホイール/電気ハイブリッド変速機のスケルトン

(1) 動作条件と特性図

制動時と加速時の車輪とフライホイールの間の動力伝達について考える。ここで遊星歯 車機構は先の例(3.1節)と同じ歯数関係を持つものとする。また無段変速機RはモータM と発電機Gからなり、発電機で発生した電力はモータに供給することで、機械的な動力を 電気を仲介にして変速する。さらにモータと発電機は相互に可逆的で、モータと発電機は 簡単にその役割を交代することができるので、無段変速機Rの動力の流れは一方向のみに 流れるのではなく、逆方向にも流すことができる。ただし動力が一方向に流れている最中 にモータを逆転させることはできず、端子②の軸すなわち発電機Gの軸は停止することは できるものとする。

これらの条件から変速機Rの速度比rは先の例と同じように次のような条件で表される と考える。

∞> r> Rnor 、 Rrev> r>-∞

また図7.3-8よりわかるように一対の外歯歯車で結合されているのでj14は負の値を持ち次 のように定める。

0>j14>-1

これらの条件を使って前と同じ要領で特性図を描いたのが図7.3-9である。

ここでの応用例が自動車であることを考えると、端子①の回転方向(車輪の回転方向)

は変わらない。またフライホイールの回転方向もここでは変化がないものと考えられるの で、ω1/ω3の符号は正負いずれかの領域のみであり、符号の変化はない。ここでは正の領 域を考える。

変速機の速度比がRnorの時、この機構の動作状態は図7.3-9のA点である。このとき端子

②と端子③の回転方向はA点が第4象限にあることからω2/ω3は負である。したがってそ の回転方向は互いに逆向きであることがわかる。

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