9j14線
3.3 フルトロイダル型CVT
TOROTRAKはフルトロイダル型と呼ばれるトラクションドライブタイプの無段変速機 と遊星歯車機構を組み合わせて、CVTを構成した変速機である。LEYLAND社(イギリス)
が、大型車両用変速機として開発した40。その後国内のJTEKTが技術提携し、JTEKTでも同種 の変速機を開発している。イギリスで開発された変速機の構成を図7.3-13に示す。これを スケルトンで示すと図7.3-14(a)のようになる。ここでJTEKTでは遊星歯車機構部分πが同 図(b)の様な構成になっていてクラッチC1,C2が付いている41。このクラッチの働きは C1=on、C2=offの時同図(a)と同じ構成になり、C1=off、C2=onの時無段変速機Rの みで変速するモードとなる。ここでは同図(a)の構成での動力流状態を考察する。
理想的な自動車用変速機は最大燃費点を通る軌跡で車両を運転できるようにすることに ある。CVTはこのような目的にあった変速機であると考えられている。一方、車両用変 速機の特色として、できるだけ広い速度範囲を変速領域として確保することが要求される。
高燃費を狙うためには変速機の効率は重要な課題となるが、広い変速範囲と高効率は両立 しない課題である。特にこのような閉路型遊星歯車機構では動力還流の問題が有り、広い
40 Greenmood,G.J. The design,construction and operation of a commercial vehicle continuously variable transmission, IMechE 1984, C11/84, 89-101
41 Fucks、R、JSAE Seminar on Toroidal CVT, 29 Nov,2007
174
変速範囲をとろうとすると効率と変速範囲は矛盾する要求となる。ここではこの変速機が これらの問題をどのように解決しようとしているかについても述べる。
無段変速機
遊星歯車機構 出力 入力
図 7.3-13 TOROTRAK 変速機の構造図
s H
r
②
①
④ ③ R i
π
g
1g
2B 入力
出力
(a) (b)
図 7.3-14 TOROTRAK 変速機のスケルトン図
(1) 機構の定数
文献42ではこの機構の歯車の歯数が直接的な形で与えられていないが、比率で表示されて いるのでそれらを本文の表現に合わせて書き直し、この機構の各定数を推定した。まずス ケルトン図7.3-14をさらに線図に書き直すと図7.3-15のようなシステム図がえられる。こ こでRはフルトロイダル型無段変速機であり、このシステムではその速度比rの範囲(変 速範囲)は-0.37~-1.5である。また速度比rとはω
a/ω
b(=ω
4/ω
2)で与えられる。
42 Greenmood,G.J. The design,construction and operation of a commercial vehicle continuously variable transmission, IMechE 1984, C11/84, 89-101
s H
r
③
π
① 出力
②
C1 C2
175
R
π B
g g
1 i 2
a b
o
④
①
②
③
g
3H s
r
図7.3-15 TOROTRAK変速機のシステム図
ここでπの例は従来通り遊星歯車機構である。そして太陽歯車sが無段変速機に直接結 合され、キャリアHが歯車g
2に、内歯車rが歯車g
3に繋がっている。遊星歯車機構の機構 構成は、キャリアHが固定されているときの太陽歯車と内歯車の伝達比(基準伝達比)と してj1
23=jH
sr=(ω
2/ω
3)ωH=0=-2.173が与えられている。この値は内歯車の歯数が 太陽歯車の歯数の2.173倍であることを意味する。さらに歯車g
1、g
2、g
3に関してはそ れぞれω4/ω
i=1.5、ω
1/ω
i=-0.555、ω
3/ω
0=未知数である。ここで論文ではg
3の 値が与えられていないのは、この機構の設計においてはg
3の値は本質的な問題とはならな いためと考えられる。なおg
1が正の値を持っていることから、ここには中間歯車のあるこ とがわかる。以上からこの装置の仕様を表7.3-1にまとめて示す。
表7.3-1 機構の定数
機構名 伝達比 数値
無段変速機 R ω
a/ω
b(=ω
4/ω
2) -0.37~-1.5 遊星歯車機構 π j1
23=jH
sr=-z
r/z
s -2.173 歯車 g1 ω
4/ω
i 1.5
歯車 g2 ω
1/ω
i -0.555 歯車 g3 ω
o/ω
3 未詳
(2) 特性線図への投影
上で得られた各種の定数を線図に投影すると図7.3-16のようになる。まず遊星歯車機構 のJ直線は縦軸(Y)上のj1
23点と(1、1)点を結ぶ直線で表される。j1
23はここではj
Hsrであり、その値は-2.173である。
次にj
14線を定める。これにはj
14の値は遊星歯車の端子①から無段変速機の端子④迄の 伝達比を表しω
1/ω
4で与えられる。したがって
j g
i g
14 1 i
4 1
4 2 1
0 555
1 5 0 37
.
. .
(7.3-1)
そこで横軸(X)上に-0.37をとり、そこから垂線を立て、参照線との交点wを定める。こ のw点と原点を通る線がj
14線である。
176 図7.3-16 特性図
ここで無段変速機の速度比は-0.37から-1.5まで変化する(斜線領域)。この値を縦軸(Y) 上に採る。そしてこれとj
14線が交わる点U、Vを求める。さらにこれらの点から垂線を立 て、参照線との交点u,v点を求める。ついでu、v点と原点を結ぶ直線(tmax、tmin 直 線)を引き、J直線との交点を求める。図では第3象限にあるA点、および第1象限にあ る点Bが求まる(ここはB点は右上方にあり示されていない)。このA、B点は無段変速 機の速度比(-0.37から-1.5まで)を変えたときの出力角速度の限界点を表し、tmax、tmin
の間に囲まれた領域(網掛け部分)が変速機の変化範囲を示す。
ところで速度比r(=ω
a/ω
b)はその定義より、|r|>1のとき、無段変速機の端子 aの速度が端子bより大きいので端子bに対して増速作用をしている。一方|r|<1の とき、端子aは端子bに対して減速作用をする。したがって無段変速機を端子bに対して 増速方向に変化させるとU点はj14線上をV点の方向に移動する。その結果u点は参照線上 を右方に移動するので、t線は右回転してJ直線との交点はA点から左下の方向に向かう。
この交点は無限遠点Cを通りすぎて、右上の方向からB点に向かうことになる。
いま横軸をω
1/ω
3として考えると入力速度が一定である条件(ω
1=const)では、X軸 の両翼の無限遠点は出力停止(ω3=0)の状態であり、原点は無限大の増速点である。そ して(1、0)点は同方向の等速回転、(-1、0)点は逆方向の等速回転を示す。した
Y=ω
2/ω
3、X=ω
1/ω
3
0.68
177
がってJ直線上の交点のA点からの移動は、端子③の速度が端子①にたいして逆方向回転 で増速状態から減速に向かい、一旦停止した後(J直線の無限大点)、正方向回転で再び 増速を始めることを示している。ここで交点の移動がA点から無限遠点を経由してB点に 達するのに対して、A点から直接B点に向かわないのはr
minからr
maxへの移動が-0.37から -1.5に向かう為であって、-0.37→0→+領域→±∞→-1.5の経過のように-0.37から無限 遠点を通って-1.5に到達するのではないことによる。
ここまでに現れた直線の方程式を横軸をx、縦軸をyとして表7.3-2にまとめて示す。た だしこの表でのJ直線に対しては Y=ω
2/ω
3、X=ω
1/ω
3の座標系を使う。またこれ らの直線の簡単な代数解から、交点A,Bの座標は表7.3-3のように得られる。
表7.3-2 直線の方程式
(3) 動力流
特性図上で表される線図は速度の関係ばかりでなく、動力流の関係も示している。すな わち図の直角座標上でJ直線が通過する位置によって動力流の形態が定まる。図7.3-17に 従えばこのシステムの動作点はJ直線上のAから左下に向かい、無限遠点を通過した後は 右上からB点に向かうことはすでに述べた。ここで特性座標の動力流の分類(図7.3-17)
に従えば、A点から左下に向かう領域は動力流の形態ではβ型の動力循環型に属し、端子
②に流れる動力流は端子①に流れる動力流より大きいことを示している。この領域では無 段変速機に流れる動力は歯車列に流れる動力よりも大きい。
一方、右上からB点に向かってくる領域は動力流形態ではやはり動力循環型であるがγ 型に属する。ここではβ型とは逆に端子②の動力流は端子①の動力流よりも小さい状態で 運転する。つまりここでは無段変速機に流れる動力は歯車列の動力よりも小さい。またこ の領域ではω
1/ω
3の符号が反転していることからわかるように、ω
1の回転方向を変えなけ れば(エンジンは逆転しない)、端子③の回転速度(車輪の回転速度)ω
3は逆転することに なる。つまりA点が車の前進方向の領域に有るとすれば、B点は後退方向の領域となる。
直線名 直線の式
J直線 y-1=3.173(x-1)
j14直線 y=-(1/0.37)x tmin y=1/(0.37×0.37)x tmax y=1/(0.37×1.5)x
A:(x=-0.526、 y=-3.84)
B:(x=1.59、 y= 2.86)
表7.3-3 交点A、Bの座標
178
-2 -1
-2.173
参照線
t
min1
1