第2章 遊星歯車機構の速度の関係
3.6 ラビニオウ(Ravineaux)型(キャリア固定)の場合(例題4)
(1)線図の描き方
ラビニオウ型の場合の線図は従来の方法では描くことはできない。それは遊星歯車が中間 歯車をもっているために軸直角断面内の全ての構成要素の軸心の位置が同一線上に並んで いないことによる。この場合の線図を考えるために最初にキャリアを固定した場合を取り 上げる(図2.3-9)
I
S
P P
H ω
ω
is
1 2
図2.3-9 ラビニオウ型の構成(キャリア固定)
。
このときの太陽歯車に対する内歯歯車の角速度の関係は次式で与えられ、太陽歯車と内 歯歯車は同方向に回転する。
is si r r ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3-18) これを線図から求める方法は次の通りである。
43 s
p2
p1
r
r r
r
iO'
2
q
q
1 2
O'
1O'
O
1O
2q'
q' q'
q
1
2
v
v
12
O ω
sω
iv 1 A
a b
c
(a) (b)
φ θ
'
' '
図2.3-10ラビニオウ型(キャリア固定)の線図
まず各要素の軸心とピッチ点から水平線を引き出し、これらが垂線と交わる点を定める
(図 2.3-10 (b))。すなわち軸心から出た線の交点O、O1、O2およびピッチ点から出た線
との交点q、q1、q2である。ここで線図としては遊星歯車P1、P2の軸心があたかも垂線 上に並び、そのピッチ点も垂線上に並んでいるように考えることによってベクトル図を描 く。その結果は図(b)のようになる。このような手続きによる結果が正解を与える理由を次 に述べる。
(2) 線図の示す意味
太陽歯車の周速vはrsωsで与えられる( v=rsωs)。一方、図2.3-10(b)において線
分Oqはrscosθである。ここでωベクトル図において線分OAを単位長さ1にとればωs
はtan∠aOq に等しい。
s aOq s
vtan r '
cos ・・・・・・・・・・・・・(2.3-19) したがってv=rsωs より v’=v cosθをうる。
また線分qO1=rp1 cosθ と指動線が右下がり(tan∠a O1q<0)であることより
tan '
cos
cos
cos
aO q v
r
v r r
r
p p
s p
s 1
1 1
1
・・・・・・・・・(2.3-20)
上式において、tan∠aO1q は角速度を示す量であり、その角速度はかみ合っている歯車の ピッチ円半径の逆比の関係にあることを示している。ここで太陽歯車と遊星歯車P1の軸心 O1は固定している。つまり太陽歯車と遊星歯車P1は通常のかみ合い状態にあるから、上式
の示すtan∠aO1qは遊星歯車P1の角速度ωp1に他ならない。
p s
p s
r
1
r
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3-21)44
このことは歯車の正面図での軸心間を結ぶ線O’O’1が速度線図のOO1と平行でなくて も、太陽歯車と遊星歯車 P1の間の角速度の関係は△OO1a の中で成立していることがわか る。ただしこの三角形の高さを示すv’はピッチ点qでの周速ではなくcosθを比例常数と する形で縮小されている。
次に遊星歯車 P1、 P2の間の関係を求める。ここでv1’は負方向の周速度である。そし
てq1O1=rp1cosφ、∠aO1q=∠bO1q1、およびtan∠bO1q1<0であることより
v q O bO q r aO q
r r
bO q v
r r r
p s s
p p
p p p
p
' tan cos tan
cos cos
tan '
cos
1 1 1 1 1 1 1
1 1
2 1 1
2 1 2
1
・・・・・・(2.3-22)
ここで∠bO2
q
1=∠cO2q
2であり、 O2q
2= rp2よりtan∠cO2q
2=ωp2である。したがって、上式のtan∠bO2
q
1はωp2に等しい。このことはv1’とv2’の関係を示し ている線図は遊星歯車P1、 P2の間の絶対座標上での速度変換を示していることがわかる。
p p
p p
r
2 r
1 2
1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3-23)
さて最終段階としてのv2’関係はO2
q
2=rp2、 Oq
2=riであり、垂線上の長さは半径 の大きさを示しているので、線図内での遊星歯車P2と内歯歯車の幾何学的関係は通常の歯 車のかみ合い状態と同じである。したがって
i p
i p
r
r
2 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3-24) 以上の関係をまとめると
i p
i p p
s p
s
s i
s
r r
r r
r r r
r
2 1
2 1
( )( )
・・・・・・・・・・・・・・(2.3-25)
すなわち正面のスケルトン図において、遊星歯車の軸心が線上に並んでいなくても、そ れぞれの要素の軸心の位置と、ピッチ点から水平線を引くことで、各要素の角速度の関係 は保たれることがわかる。
45
3.7 ラビニオウ(Ravineaux)型(内歯歯車固定)の場合(例題5)
I
s
p2
S
p1P P
H
r
r
r r i
1 2
図2.3-11 ラビニオウ型(内歯歯車固定)
s
p2
p1
r
r r
r i
O'
2 2
O'
1O'
O
1O
2q' q'
v’
2
ω ω
sv’
A a b
v’
q
1O d q
v’
2
ω
Hω
11
c
1020
q'
1q
2φ θ
図2.3-12 ラビニオウ型(内歯歯車固定)の線図
図2.3-11に示すラビニオウ型で内歯歯車が固定されている場合、キャリアが遊星歯車P1、
P2を伴って太陽歯車Sの回りを回転する。この状態の線図を描く方法は前述の通り軸直角 断面内の遊星歯車の軸心が同一線上になくても、垂線上に投影すればよいとする考え方が 適用できる。したがってここでの線図の条件としてはキャリアの角速度ωHの指動線上には 遊星歯車軸心の周速度ベクトルの先端c、dが乗っている必要がある。また遊星歯車P2の 軸心の周速度v‘2及びピッチ円の周速度v’20を示す指動線は、内歯歯車が固定されているこ とからq2点を通る。このような条件のもとに線図を描く場合ωHから書き始めるほうが描 きやすい。その順序は次のようになる(図2.3-12)。
ωHの決定→c、d点の決定→q2点を垂線上に取る→b点の決定→bd線の延長線上にa 点を決定→ω2の決定→baの平行線よりω1を決定。
46
このようにして描かれた線図の角速度の数値的な関係は次のようにして求められる。そ れには、この線図のcOの延長線とq2からの水平線の交点eをとり、図2.3-13のような関 係で見ると解析がしやすい。つまり図において横縞の部分の2個の三角形△ceq2、△c b1bおよび縦縞の部分の2個の三角形△dbb1、△daa1の間は互いに相似形の関係が あることに注目すればよい。
O1 O2
a
b q 1
O q d
c
q 2
a e
b
1 1
図2.3-13 線図の相似形の関係
この相似形の関係を使うことによって、各辺の長さの比を求めると
eq bb
o q o q
bb aa
q o o q
a q eq
oq oq aa aq a q
2 1
2 2 2 1
1 1
1 1 1
1
2 2
1 1
, ,
・・・・・・(2.3-26)
上式を整理すると
a q oq oq
o q o q
q o
o q aq a q
1
2 2 2 2 1
1 1 1
(
1)
・・・・・・・・・・・(2.3-27) ここで垂線上のそれぞれの長さの関係よりoq r oq r o q r
o q r q o r o q r
a q r r
r r
r
r a q a q
r
r aq a q
a q r r
r r aq
s i p
p p p
s i
p p
p p s
i
s i
s i
cos , ,
cos , cos , cos
cos
cos
cos
cos ( )
( )
( )
2 2 2 2
2 1 2 1 1 1 1 1
1
2 2
1 1
1 1
1
1
1
・・・・・(2.3-28)
47
線分a1q 、aq、をOq=rs cosθで除した値は、それぞれキャリアと太陽歯車の角速度
を表す。ここで両辺をこの値Oqで除しても上式の関係は崩れないので、この式の線分の 長さの関係は角速度の関係を示す。しかしその線分は長さだけの関係であるので、長さと 速度ベクトルの関係を考えると、線分aqは正の周速度ベクトルの絶対値、a1qは負の周速 度ベクトルの絶対値である。したがって上式を方向を考えた角速度の関係で表せば、
Hs i s s r r r
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3-29)
この値は前に得たのり付け法の値と同じである。つまりこの様にしてえられた線図は内 歯歯車を固定したときのωH、ωsの関係を示している。これらの結果よりラビニオウ型の ように正面内で遊星歯車軸心が直線上に並んでいなくても、ピッチ点とかみ合い点を垂線 上に投影することで、あたかも遊星歯車が直線上に並んだ関係で線図が描けることがわか る。
48
4 傘歯車の速度ベクトル線図