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歯車応用機構の設計

矢田恒二

工学博士 技術士(機械部門)

機械技術協会

(2)

ii

目 次

序 ... 1 第 1 章 遊星歯車機構の構成 ... 3 1 遊星機構の構成要素 ... 3 1.1 基本遊星機構 ... 3 1.2 基本遊星機構の構成 ... 4 2 遊星機構の分類 ... 7 2.1 2K-H型 ... 7 2.2 3K型 ... 10 2.3 K-H-V型 ... 11 3 遊星歯車機構の構成条件 ... 13 3.1 構成のための3条件 ... 13 3.2 歯数の具体的な例... 15 3.3 配置角が同じにならない場合(不均等配置構造)の例 ... 20 第2章 遊星歯車機構の速度の関係 ... 22 1 伝達比... 22 1.1 規格による定義のあいまいさ ... 22 1.2 伝達比の定義 ... 23 2 のり付け法 ... 26 2.1 考え方 ... 26 2.2 運動の重ね合わせ... 27 2.3 のり付け法の応用... 28 3 速度ベクトル線図(Kutzbach 線図) ... 33 3.1 ベクトル線図のルール ... 33 3.2 遊星歯車機構への適用 ... 36 3.3 2K-H 型の場合(例題1) ... 37 3.4 3K型の場合(例題2) ... 39 3.5 K-H-Vの場合(例題3) ... 41 3.6 ラビニオウ(Ravineaux)型(キャリア固定)の場合(例題4) ... 42 3.7 ラビニオウ(Ravineaux)型(内歯歯車固定)の場合(例題5) ... 45 4 傘歯車の速度ベクトル線図 ... 48 4.1 相対角速度ベクトル ... 48 4.2 傘歯車の基本遊星歯車機構の角速度ベクトル ... 49 4.3 2K-H型傘歯車機構 ... 51 第3章 角速度の解析的関係 ... 54 1 ブラックボックスとしての遊星歯車機構 ... 54

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iii 1.1 キャリアに対する相対角速度の意味 ... 54 1.2 基準伝達比と伝達比の相互関係 ... 56 1.3 伝達比の一般的関係(Willis の式) ... 57 2 3端子角速度間の関係... 59 2.1 一般的関係 ... 59 2.2 3K型の基準伝達比と3端子間伝達比の関係 ... 59 2.3.3K型遊星歯車機構における3軸の角速度の関係(例題) ... 62 3 3端子角速度の幾何学的関係 ... 65 3.1 ω平面 ... 65 3.2 J特性図 ... 66 3.3 J特性図と遊星歯車機構の関係 ... 68 3.4 1 本のJ直線に対応する2K-H型機構 ... 71 第4章 歯車に作用する力とモーメント ... 75 1 一対の歯車のモーメント ... 75 1.1 モーメントと力の関係 ... 75 1.2 仮想系と実態系の力の関係 ... 76 1.3 3モーメントバランス ... 78 2 遊星歯車機構のモーメント ... 79 2.1 2K-H 型でのモーメントの関係 ... 79 2.2 3K 型のモーメントの関係 ... 81 2.3 K-H-V型のモーメントの関係 ... 82 2.4 ラビニオウ型のモーメントの関係... 83 3 実態系での力の取り扱い ... 87 3.1 力の作用点の位置... 87 3.2 モーメントの関係... 88 4 まとめ... 89 第5章 2自由度遊星歯車機構のモーメント ... 91 1 遊星歯車機構の2自由度運動 ... 91 1.1 2自由度運動状態... 91 1.2 テコの仕事の例 ... 92 1.3 遊星歯車内の動力流の方向 ... 94 2 3軸の間で成立するモーメントの一般的関係 ... 96 2.1 3端子間のモーメント比の関係 ... 96 2.2 モーメントと角速度の幾何学的関係 ... 97 3 差動歯車機構 ... 100 3.1 差動歯車機構の種類 ... 100

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iv 3.2 ディファレンシャルギヤの特性 ... 101 3.3 差動制限装置 ... 106 第6章 閉路型遊星歯車機構の動力流 ... 110 1 閉路型遊星歯車機構の速度関係 ... 110 1.1 機構の構成 ... 110 1.2 速度の関係 ... 111 2 閉路型遊星歯車機構の動力 ... 115 2.1 動力の流れ ... 115 2.2. 動力流の形態 ... 117 2.3 特性図と動力流分類 ... 121 3 ハイブリッドエンジン(プリウス)によるJ 直線の例 ... 126 3.1 構造と特性図 ... 127 3.2 車両の運動 ... 130 3.3 他の遊星歯車機構による構成 ... 136 4 特性図上での機構定数の表現方法 ... 139 4.1 t直線の決定法 ... 139 4.2 Rに無段変速機がある場合 ... 140 4.3 各直線と座標軸の関係 ... 142 第7章 閉路型遊星歯車機構の速度設計 ... 144 1 歯車列で結合された閉路形遊星歯車機構 ... 144 1.1 動力状態とJ直線およびj14の関係 ... 144 1.2 α領域に動作点をとる歯車列Bの決定問題(例題) ... 146 2 無段変速機を組み込んだ閉路形遊星歯車機構 ... 150 2.1 速度比rと入出力伝達比を与えたときの機構(例題) ... 151 2.2 J直線Ⅲグループによる解 ... 152 2.3 J直線Ⅰグループによる解 ... 155 2.4 J直線Ⅱグループによる解 ... 158 2.5 出力結合型による解 ... 160 3 閉路型遊星歯車機構の応用 ... 164 3.1 IHI-EDドライブ ... 164 3.2 フライホイール/電気ハイブリッド変速機 ... 168 3.3 フルトロイダル型CVT ... 173 4 特性線図の数学的表現... 184 4.1 座標と関数関係 ... 184 4.2 線図の決定手順 ... 185 4.3 最初に変速範囲(rmax、rmin)を与えて描画する場合 ... 186

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v 4.4 最後に無段変速機の変速範囲を求めて描画する方法 ... 192 第8章 かみ合い部分における損失 ... 194 1 理論解析 ... 194 1.1 問題提起 ... 194 1.2 定着している効率の解析解 ... 195 1.3 Buckingham の式の誘導 ... 196 1.4 Niemann の式の誘導 ... 198 1.5 Merritt の式の考察 ... 199 2 解析解の計算精度の限界 ... 204 2.1 モーメント比による効率式 ... 204 2.2 損失量から求めた効率式 ... 207 2.3 計算式が示す損失率の特性 ... 209 2.4 近似式と解析解の誤差 ... 210 2.5 計算式の中での摩擦係数の意味 ... 211 2.6 効率計算式の限界... 214 3 損失のある場合のモーメントの関係 ... 216 3.1 ベース円で考えた場合 ... 216 3.2 ピッチ点で考えた場合 ... 218 3.3 損失のある場合のモーメントのバランス ... 220 第9章 遊星歯車機構の効率 ... 222 1 効率を考える上での基礎 ... 222 1.1 前提条件 ... 222 1.2 損失と効率の関係... 223 2 外歯K-H-V 型機構の効率 ... 225 2.1 固定要素の取り方... 225 2.2 外歯K-H-V 型機構の効率式のまとめとモーメント比の関係 ... 234 3 内歯歯車K-H-V 型機構の効率 ... 236 3.1 退行駆動 ... 236 3.2 内歯歯車K-H-V 型機構の運動状態 ... 238 4 効率算出式を求めるための手順 ... 241 第 10 章 2K-H型と3K型の効率 ... 243 1 2K-H型遊星歯車機構の効率 ... 243 1.1 基礎的関係 ... 243 1.2 キャリア固定の場合 ... 244 1.3 端子②(太陽歯車)を固定したときの効率 ... 245 1.4 端子③(内歯歯車)を固定したときの効率 ... 246

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vi 1.5 表の見方 ... 247 1.6 モーメント比の関係 ... 253 2 3K型遊星歯車機構の効率 ... 255 2.1 3K型の分類 ... 255 2.2 A2型の効率 ... 257 2.3 その他の場合の効率 ... 259 2.4 両角(もろずみ)の式との不一致... 260 2.5 効率の一覧表と効率曲線 ... 267 2.6 効率算出の簡便式... 268 3 遊星歯車機構での特異な現象 ... 275 3.1 自縛現象 ... 275 3.2 外歯2K-H 型遊星機構の運動 ... 278 3.3 効率が基準効率よりも大きくなることの解釈 ... 282 第 11 章 2自由度系(差動状態)のモーメント比の関係 ... 284 1 一般的関係 ... 284 2 2自由度2K-H型遊星歯車機構 ... 286 2.1 回転方向による分類 ... 286 2.2 S-2 系のモーメント比 ... 289 2.3 T-3 系のモーメント比 ... 290 2.4 2K-H型機構のモーメント比のまとめ ... 290 3 3K型遊星歯車機構のモーメント比 ... 292 4 モーメント比の一覧表... 294 5 モーメント比の性格 ... 297 5.1 モーメント比の一般的関係 ... 297 5.2 幾何学的関係 ... 297 5.3 モーメント比から効率を求める方法 ... 302 第 12 章 2K-H型差動機構の効率 ... 304 1. J直線と機構の種類の関係 ... 304 1.1 J直線と機構の対応 ... 304 1.2 J 直線上での機構の運動状態 ... 307 2 差動機構の効率の考え方 ... 313 2.1 キャリアが出力の場合 ... 313 2.2 キャリアが入力の場合 ... 314 2.3 2K-H 型差動機構の効率 ... 314 3 Radzimovsky の式に対する考察 ... 316 3.1 Radzimovsky の効率式 ... 316

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vii 3.2 Radzimovsky の式に対する考察 ... 318 第 13 章 閉路型遊星歯車機構の効率 ... 320 1 JⅠ直線による機構の効率 ... 320 1.1 入力結合型β-4領域の効率 ... 322 1.2 入力結合型α-4領域の効率 ... 323 1.3 入力結合型γ領域の効率 ... 324 1.4 式の表現方法と他の系での効率 ... 326 2 拡張特性図 ... 330 2.1 逆数目盛 ... 330 2.2 拡張特性図とJ直線 ... 330 2.3 閉路型遊星歯車機構の等効率曲線... 332 3 効率の変化 ... 335 3.1 有限の変速範囲の効率 ... 335 3.2 全速度範囲で変速した場合 ... 338 3.3 JⅡ、JⅢ直線の場合、 ... 340 3.4 無段変速機の効率の変化による影響 ... 342 4 CVT を含む効率の良い動力分流型変速機構の設計法 ... 344 4.1 高効率領域 ... 344 4.2 遊星歯車機構要素と端子の組合わせ ... 345 4.3 効率の高い差動遊星歯車機構 ... 347 第 14 章 2 個の遊星歯車機構からなる閉路型機構 ... 348 1 機構の構成 ... 348 1.1 結合要素 B の形態... 348 1.2 機構の結合の仕方... 349 2 無段変速機外挿型 ... 352 2.1 J直線の関係 ... 352 2.2 代表機構πのJ直線の幾何学的関係 ... 353 2.3 無段変速機外挿型の動力流 ... 355 3 無段変速機内包型の運動状態 ... 357 3.1 内包型対応特性線図 ... 357 3.2 内包型を構成する遊星歯車機構の動力流 ... 359 3.3 内包型対応特性図内での動力流の分類 ... 361 3.4 内包型の動力流の形態 ... 365 4 日立式ハイブリッドシステム ... 373 4.1 ハイブリッドシステムの構成 ... 373 4.2 動作点a、b での動力流の状態 ... 374

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viii 4.3 遊星歯車機構の運動状態 ... 376 4.4 内包型の効率の考え方 ... 378 4.5 電動・発電機式無段変速機の特殊状態 ... 382 第 15 章 合成遊星歯車機構の運動解析 ... 383 1 損失のない合成された遊星歯車機構 ... 383 1.1 合成遊星歯車機構の伝達比 ... 383 1.2 合成遊星歯車機構のモーメント比... 388 2 損失のある合成遊星歯車機構 ... 392 2.1 部分遊星歯車機構の動力の流れ ... 392 2.2 部分遊星歯車機構の効率と動力流の関係 ... 393 3 クレイネスの定理の応用例題 ... 397 3.1 3K型遊星歯車機構の効率 ... 397 3.2 ウォームギヤを含んだ遊星歯車機構 ... 399 4 複数の遊星歯車機構から構成される多重閉路機構 ... 403 4.1 一般的な関係 ... 403 4.2 応用例 ... 405 終 章 ... 408 付 録 ... 410 表12.2-2 表12.2-3 索 引 ... 417

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本稿は雑誌「機械の研究」vol.49,No.10 より vol.52,No.11 まで、つまり 1997.10~2000.11 の 3 年余の間連載した記事をインターネット上で掲載するために編集し直したものである。 その内容には 2 本の大きな柱がある。その一つは遊星歯車機構の効率に関する計算式であ り、他の一つは遊星歯車機構を動力伝達システムとして見た場合の設計問題である。 まず遊星歯車機構の効率の計算式は機構の運動状態が直感的にわかりにくいことと、機 構の形態ごとに効率の計算式が変ってくるために、古くから色々な式の提案があった。遊 星歯車機構の効率の基本的な考え方は 1930 年代に固まったものと考えられるが、個々の形 態に対する効率の算出式は同じ形態の機構に対しても、人によって表現方法が異なってい る。そために相互の比較がしにくい状態にあった。また式の誘導の過程で間違った前提を おいたために、得られた結果は物理的に意味のない計算式を提案している例も稀ではなく、 時々奇怪な理論が出現する。それらはたいていの場合、ニュートン力学の基本的な法則を 犯しているが、本稿ではこれら問題のある既出の計算式についても、その問題点の所在を 指摘した。 しかし本稿の目的はこのような算出式に対する批判にあるのではなく、できるだけ統一 的な形で効率の計算式を表現することにある。そのため遊星歯車機構の基本的な形態すな わちK-H-V、2K-H、3K 型に関して、統一的な形で計算式を提示した。併せてその計算式 を支えている数学的、物理的背景についても解説するように心掛けた。 ここで効率計算式の中では動力の流れの方向を決定する必要があるが、本文の中では力 と速度のベクトルの方向で動力の流れを判定する方法を主体に述べている。しかし、この 方法はやや煩雑の謗りを免れない。そのためにこれを数学的に解決する手段として、最後 の章にクレイネスの定理を紹介した。この定理は我が国では殆ど知られていないが、複雑 な遊星歯車機構の動力流の方向の判定には有効である。 本稿のもうひとつの柱であるシステム的取り扱いに関しては、近年、遊星歯車機構が動 力伝達装置のなかで一つのシステム要素として使われる例がでてきた時代的背景に対応す ることにある。その典型的な例としてエンジン+電池のハイブリッドカーの出現を上げる ことができる。 一般に、減速機をはじめ動力変換装置と呼ばれるものは原動機と負荷装置の間にあり、 この両者を効率よく整合させる目的で使われる。そのため動力装置は動力変換装置単独で 設計は完了しない。常に原動機の特性や負荷の性状を考慮しないと最適な動力変換装置は 設計できないと考えられる。 一方、古くから歯車単体、あるいは歯車箱の設計法に関しては内外に多くの著作があり、 名著と呼ばれるものも少なくない。本稿ではこれらの文献と重複するものは極力避けた。

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2 したがって、遊星歯車装置を設計するときに必要な歯車の形状、強度、潤滑法等々の設計 事項については触れていない。 しかし近年、先のハイブリッドカーのようなシステムでの動力伝達装置は単に動力を変 換する役割のみでなく、動力システムの制御要素としての役割ももたされるようになって きている。そのため遊星歯車装置の設計だけでは不十分で、ここでは動力の流れの考察を 含めた動力システムとしての観点が要求される。このような要求に答えるために本稿は遊 星歯車機構を原動機や負荷装置と融合した一つのシステムとして取り扱うため、変速状態 を見通し良く把握できる方法や、システム内での動力流の判定法などを提供することを目 的とした。そしてここで、もうひとつの柱である効率の計算式がシステムの評価関数とし ての役割を果たしうることを示した。 生来、著者は細々としたことよりも、大まかなことを好む癖があり、性格的に精緻な事 柄は不得手である。遊星歯車機構を個別の課題としてではなく、大括りしたシステム的な 観点で遊星歯車機構を取り扱ったのもこの性癖から来ている。 遊星歯車機構をこのような形で取り扱った類書は少なくとも国内では見掛けない。また この分野はごく特殊な分野でもあるのであろう、雑誌に連載後これを単行本にしようとし たが出版社から断られた。出版界の事情が厳しい状況にあることは理解できるのでやむを えないと思っている。しかし泡沫的な形でしか本稿の内容が次世代に残せないこと考える と寂しさも禁じ得ない。しかしインターネットは情報源として書籍にない広がりを持って いる。この技術を使うならば成書にするよりも人の目につきやすいといえる。図らずも機 械技術協会ホームページ内にスペースを頂くことができたのを機会に全体を見直し、これ を掲載させていただくことにした。願わくばこの分野の研究が本稿をきっかけとして更に 展開する人がでてくることを期待してやまない。 2011.05.01

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第 1 章 遊星歯車機構の構成

遊星歯車機構は具体的な形での実現性を考えなければ、紙の上ではいくらでも複雑な機構 を設計することはできる。それは一つの基本的な機構を繋げていく機械的な操作で実現でき るためで、その基本的な機構を基本遊星機構と呼んでいる。ここでの概念は歯車のみを対象 にしなくても有効であるので、本章では「歯車」を除いた言葉で表現し、この基本遊星機構 の提示とそれを構成していく条件について述べる。しかし基本遊星機構によって構成される 抽象的な遊星機構は工学的には意味はないので、現用されている遊星機構を取上げ最も単純 な機構として3 種類の遊星機構、すなわち 2K-H 型、K-H-V 型、3K 型を取上げ、これらが 遊星機構の分類の基本形態であることを示す。さらに遊星機構を歯車で構成する場合、歯数 に制限のあることを2K-H 型遊星歯車機構に例にして示す。 1 遊星機構の構成要素

1.1 基本遊星機構

遊星歯車機構は歯車を使った一つの機構であるが、単に遊星機構と呼ぶ場合は歯車の代わ りに摩擦車を使う機構も含めることにする。図 1.1-1 は遊星機構の最も基本的な形態で、こ こで扱おうとしているより複雑な遊星機構は全てこの機構が組み合わさったものとして考 えることができる。このことからこの機構を基本遊星機構と呼ぶ。そしてこの機構の側面を 概念的に図 1.1-2(i)に示す、このような図をスケルトン図と呼ぶ。 キャリア 太陽車 遊星車 図 1.1-1 基本遊星機構の実体図 図 1.1-2においてsを太陽車、pを遊星車、Hをキャリアと呼ぶ。すなわち基本遊星機 構はこれら3個の要素(太陽車、遊星車、キャリア)から構成される。遊星車はキャリアに よってその軸が支えられ、太陽車に接触している。いま太陽車を固定(斜線表示は固定する ことを示す)すれば遊星車は太陽車の廻りを転がりながら回ることができる。つまり遊星車

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4 は自転をしながら太陽車の廻りを公転することになり、この運動は太陽の廻りを運動する遊 星(惑星とも云う)の動き(遊星運動)に似ているのでこの名の由来がある。

s

p

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p

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p

(i)

(ii)

(iii)

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s H 図 1.1-2 基本遊星機構 図 1.1-2 の3種類の機構のどれもが遊星運動をすることができる。ここで太陽車の半径r s、遊星車の半径rpおよびキャリアの回転軸心と遊星車の中心間の距離rHの大きさの関係 に注目する。まず(ii)の系は(i)の系の太陽車の半径rsがキャリアの軸間距離rHより大 きくなったもの、また(iii)は太陽車の半径rsがキャリアの軸間距離rHに等しいものと考え ることができる。このことは図 1.1-2の系は見かけの形は違っても、rsとrHの大小関係 で決まるものと考えれば、(i)の形でこれら3個の形態を代表することができる。 ところで図 1.1-2の機構のpは3個の要素のいずれかを固定することなしに、そのうち の2個の要素を、入力要素と出力要素として使って、動力の伝達を行おうとしても、残りの 要素が無拘束状態となるために、つまり機構全体の自由度が2であるために動力伝達はでき ない。従って動力を伝達させるためには、自由度を1とする必要がある。そのためにはどれ か一つの要素を固定しなければならない。このような機構では一方の要素(例えば入力要素) の運動が決まれば、他方(出力要素)の運動状態が一義的に決まる。つまり1自由度機構と なる。このような機構を決定機構と呼ぶ。ここで図の機構ではキャリアを固定すれば通常の 伝達機構となる。このとき遊星車を入力要素または出力要素として使える。

1.2 基本遊星機構の構成

入力軸および出力軸はその軸心の位置は原動機や負荷が接続されているので、その軸を動 かすことができない。しかし遊星車は公転運動するために軸心の位置が動きこの軸心固定の 条件を満足できない。遊星車の運動を固定した軸心の回りの運動として取り出すためには、 入力軸または出力軸の間に何らかの要素を入れる必要がある。これを解決する方法として図 に示すように基本遊星機構2個をもってきて、その遊星機構同士を互いに結合する方法が考 えられる。すなわち図1.1-3 のIの系の遊星軸はIの系の出力軸となり、これにつながれた II の系の遊星軸に入力軸の役割をさせる。

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5 I II III 図 1.1-3 基本遊星機構の合成 このようにして構成された機構III もまた自由度2である。従ってこれを決定機構とする ためにはどれか一つの要素を固定することで実現できる。ここでI、II の系の遊星車の直径 が同じであり、太陽車として外接車と内接車の両方を使っている場合は、この機構はさらに 簡単になり、図1.1-4 のような機構にまとめることができる。この機構は遊星機構としては 最も一般的な形である。この機構を決定機構とするためには固定要素の取り方によって3通 りの方法がある。これらの方法はいずれもよく使われる形であるが(c)の系は中間車を持 つ内接車と太陽車の組み合わせであり、厳密に言えば遊星機構とは言えない。しかしこの系 は遊星機構の使用上の一変形と考え、ここではこの系も遊星機構として取り扱う。 (a) (b) (c) 図 1.1-4 一般的な遊星機構 以上の形態を持つ遊星車、および太陽車をローラにしたものはトラクションドライブ式変 速機として様々な形態があるが、これらを歯車にして構成したものが遊星歯車機構である。 この遊星歯車機構の特徴の一つとして通常の平行軸歯車機構にくらべて小型形状ですむと いうことをあげられる。これは複数個の遊星歯車を太陽歯車の周辺に配置するという構成を とることからくる。このような構成にすれば歯車の配置に空間的な無駄を省ける事になるよ るが、そのほかに太陽歯車に加わる荷重がこれらの遊星歯車に分散されて伝達されるために、 歯幅を小さくできることが遊星歯車機構の長所と考えられている。 たとえば容量1323kw で 18000rpm から 1500rpm に減速する装置を図 1.1-4(a)の遊 星歯車機構で構成すると表1.1 1 のような仕様となる。

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6 表1.1 1 1323Kw、1500/18000 rpm の遊星歯車減速装置の仕様 モジュール 2.5 遊星歯車 3個 太陽歯車 遊星歯車 内歯歯車 歯 数 17 85 187 ピッチ円直径 mm 42.5 212.5 467.5 467.5 552.5 796.8 (a) (b) (c) 図 1.1-5 遊星歯車減速装置と平行軸歯車減速装置の比較1 この仕様と同じ減速装置を平行軸歯車減速装置で構成することを考え、その小歯車を太陽 歯車と同じものを使うと大歯車は204 枚の歯数を必要とし、その寸法関係は図 1.1-5(b) のようになる2。しかし平行軸の場合かみ合い点の荷重は遊星歯車機構の3倍になるので、 それに応じた強度が必要となる。したがって遊星歯車機構と同じ歯面応力を持ったもので平 行軸歯車装置を作ると、大歯車の直径は(c)のように、さらに1.44 倍となり、かみ合い 速度もそれだけ大きくなるが、遊星歯車機構では相対速度を使うので、それほど大きいかみ 合い速度を必要としない。 1 H.Barwig、Stoeckicht-Getriebe, Konstruktion、6(1954)、377 2 この計算結果は一昔前の設計手法によっているので、現状ではもう少し小さく設計できるが、ここでは 寸法の比較をするために用いた。

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7 2 遊星機構の分類 前節図 1.1-3 において基本遊星機構を組み合わせることによって別の遊星機構が構成さ れることを示した。基本遊星機構の組み合わせ方はこのほかにまだ幾通りもの形があるが、 一つのユニットとしての遊星機構の自由度は2である。そのためこの機構を決定機構とす るために入力軸、出力軸のほかに、機構全体の運動を規制するための軸が必要となる。こ の軸を補助軸と呼ぶ。図 1.2-2 では固定した軸がそれに相当する。つまり補助軸の運動状 態を外からの条件できめれば(例えば固定すれば)、 入力と出力の運動は一義的に定まる。これら3個の 軸(入力軸、出力軸、補助軸)を総称して基本軸と 呼ぶ。ここでこれら3個の軸のうちのどれが入力軸 で、どれを出力軸とするかは遊星機構を設計すると きに定まることである。 このように遊星機構では構成要素として大陽車、 遊星車およびキャリアがあり、一つのユニットとし て基本軸を備えている遊星機構を考える。このユニットの中では大陽車、遊星車、キャリ ア等の要素と基本軸の組合せにより様々な形態を考えることができる。そしてそれらの形 態ごとに運動状態も異なるので、何らかの分類をしないと整理がつかない。その分類法に は種々の方法が試みられたが、旧ソ連で考えられた方法3 は合理的であり、日本でもこの 方法がよく使われるようになった。ここでは最低限の要素の組合せで、ユニットとしての 遊星機構においてどの要素が上述の基本軸になるかということによって、次に述べるよう に2K-H、3K、K-H-Vの3種類に分類している。これらの機構は基本軸で構成さ れる遊星機構の最低限の条件を満たした機構と言える。なおここでKは太陽車(内接車、 外接車の両方を指す)、Hはキャリア、Vは遊星車を示す4

2.1 2K-H

図1.2-1は太陽車2個 (2K)の軸とキャリアHの軸が基本軸を構成する機構を示す。遊星 機構としては最も一般的な機構である。その他この型に属する遊星機構の例を図1.2-2 に示 す。この例において(a)、(b)は円筒型太陽車に外接車と内接車を用いたもの、(c)は円すい車 を用いたものである。また(d)は外接車2個、(e)は内接車2個を用いている。さらに(f)は(e) から派生したもので、遊星車の半径がキャリアの軸間距離よりも大きい場合に、太陽車と して外接車と内接車を用いた場合の例である。 3 В.Н.Кудрявцев, Планетарные Передачи, Машинострение. Москва, 1966 4 Kはロシア語のколесо(車の意味)からきたのは容易に想像がつくが、Hは多分英語のholder からきていると思わ れる。しかしVはもともとロシア語にない文字で、なぜこれを遊星車を示す記号としたかについてはよくわからない。 入 力 軸 出 力 軸 補 助 軸 図 1.2-1 基本軸の構成

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8 (a) (b) (c) (d) (e) (f) H K K K H K K K H H K K H K K K K H 図 1.2-2 2K-H 型遊星機構の例 (1)具体的事例1 ここで図1.2-2(a)の型に属する遊星歯車機構は減速機として、あるいは増速機として、い ろいろなタイプが製作されている。その容量も最近ではモジュール 0.1以下のものから数 万KWのものまで非常に多彩である。トラクションドライブを使ったこの型の減速機もよ く使われる。 出力軸 キャリア 遊星車 太陽車 リング 入力軸 図 1.2-3 2K-H型無段変速機の例-15 図 1.2-2((b)の型は(a)型の変形であるが、遊星車が2段になっていて、それぞれの遊星車 は外接車か、内接車のいずれか一方に接触しているものである。トラクションドライブ式 無段変速機にはこの例が多い。図 1.2-3、図 1.2-4はその例であるがいずれも遊星車の内 接車と外接車との接触半径が別個にとれることからこの方式が用いられる。 5 椿本チェーンカタログ

(17)

9 図 1.2-4 2K-H型無段変速機の例6-2 (2)具体的事例2 図 1.2-2(c)型を歯車で構成したものは自動車に使われていて、デフの名称でなじみのあ る差動歯車である。トラクションドライブ式無段変速機としては図 1.2-5 に示す形式のも のがあり、いずれも太陽車の接触曲面にトロイダル曲線を使っていることから、トロイダ ル式CVT(Continuously Variable Transmission の略称)と呼ばれている。このうち同 図(i)のものをトロイダル全曲面を使っていることからフルトロイダル、(2)のもの を半分のトロイダル曲面で構成されていることよりハーフトロイダルと呼んでいる。 (1) (2) 図 1.2-5 (c)型による無段変速機の例7 (3)具体的事例3 図1.2-2(d)型および(e)型のものは遊星車が2段になっている。この構成は(b)型と似 ているが、遊星車の両方が外接車または内接車と接触していることが異なる。この例を用 いた無段変速機としては図1.2-6 の例がある。同じような構造を歯車で構成することもでき るが図1.2-7 のような変形形態もよく使われる。ここでは遊星歯車が2段複合歯車列になっ ていて、一つのキャリアに支えられている第1の2段遊星歯車の第2段目が第2の遊星歯 車とかみ合いこれが、太陽歯車とかみあっているものである。自動車の自動変速機に用い られラビニオウ型と呼ばれている。 6 シンポ工業カタログ 7 日本機械学会 P-SC62 トラクションドライブ調査研究分科会 成果報告書 (昭和 60.3) p92

(18)

10 図1.2-6 (d)型の無段変速機の例8 図 1.2-7 (d)型の変形例

2.2

3K型

図 1.2-8 にその例を示すように、キャリア軸が基本軸とならないでユニットの内部に収ま り、3個の太陽車軸Kによって基本軸が構成される形である。例えば図1.2-8 (A)(B)に示す 機構は3K 型の最も一般的な構造であり、この型をうまく使うと大きな減速比を得ることが できる(このことについては後述する)が、ヨーロッパでは歯車で構成されたこの装置を Wolfram 装置とも呼ばれている。また日本では図の(A)型の段付遊星歯車Z11、Z12の歯数 を同じにして、転位係数を変えることにより2個の内歯車の歯数Z2とZ3を変えたものを 不思議歯車機構と呼んでいる。その場合一般に効率が悪い。それは接線力が太陽歯車で異 常に大きくなることによる。このことはトラクションドライブ方式でこの形式の減速機を 構成すると、大きな接線力を発生するために、その接触点では大きな法線力を要求される ことになる。その結果接触点の応力は大きくなり、減速比は材料の強度に依存してきまっ てくる。図1.2-8 (a)、(b)は3K型の変形であるが、遊星歯車が多段構造になっているもの の、外部につながれる軸は3個の太陽歯車から構成されているのでこれも3K型に分類さ れる。。 8日本機械学会 P-SC62 トラクションドライブ調査研究分科会 成果報告書 (昭和 60.3) p92-94

(19)

11

z

z

z

11 2 3

z

12

z

1

(A)

K

K

K

z

z

z

11 2 3

z

12

z

1

(B)

K

K

K

(a)

(b)

K

K

K

K

K

K

図 1.2-8 3K型

2.3 K-H-V型

上述の2個の形式(2K-H、3K)はいずれも基本遊星機構の遊星車の運動の伝達を例えば 図1.1-3 に示すように2個の遊星車を結合する方法で解決するものであったが、ここで示す K-H-V型は基本遊星機構に既にある3個の軸、すなわち太陽車、遊星車、キャリアの軸 をそのまま基本軸として使う方法である。

H

1 2

(a)

K

V

自在継ぎ手

z

z

1 2

(b)

K

V

自在継ぎ手

図 1.2-9 K-H-V型 ところで遊星車は公転と自転を同時に行うが、公転はキャリアで取り出しているので、 ここでは自転を取り出すことが問題となる。その方法としては図1.2-9 に示すように自在継 手を使うのが最も理解しやすい方法であるが、この方法では1個の遊星車の運動しか取り

(20)

12 出すことができない。 図 1.2-10 K-H-V 型の例9 これを解決する手段として図1.2-10 のような機構がある。これは遊星歯車に複数個のピ ン穴がありこれにV要素に取り付けられたピンがはまっている。このピン穴の半径は遊星 歯車の偏心量に等しい。いま遊星歯車が内歯歯車(太陽歯車)の内面とかみ合って遊星歯 車運動すると、ピンはピン穴の内面に沿って転がり、自転回転をV軸に取り出すことがで きる(回転速度の関係は後に述べる)。この構造では遊星歯車が偏心運動するので振動を 発生しやすい。そのため遊星歯車を軸方向に複数個並べて動平衡をとる工夫がされる。ま た内歯歯車と遊星歯車の歯数は近接しているので、インボリュート歯形を使うと干渉が起 こるので内歯をピンで、遊星歯車の歯形をトロコイド歯形で構成した製品が作られている (図1.2-11)。 ここでは遊星機構として摩擦車(トラクションドライブ)で構成される機構も含めて、 その分類について述べたが、次節以後は歯車で構成される遊星歯車機構を対象に述べる。 ピン歯車 偏心遊星歯車 偏心カム 偏心量 内ピン (V要素) キャリア軸心 (太陽歯車) (キャリア要素) 図 1.2-11 K-H-V型の具体的事例10 9 Вест. Машиност. 36(1956)2、25 10 住友重機械工業カタログ

(21)

13 3 遊星歯車機構の構成条件

3.1 構成のための3条件

遊星歯車機構を実際に構成するときには、空間を有効に利用するために複数個の遊星歯 車が太陽歯車の周辺に配置される。このとき遊星歯車の個数、および歯数の間には機構が 成立するための制約として、同軸条件、隣接条件、組み立て条件の3条件があり、この3 個の条件の全てを満足していないと遊星歯車機構は構成できない。次にこの条件を2K- H形を例にあげて示す。 (1)同軸条件 キャリア、太陽歯車、内歯歯車、の軸心がすべて同軸上にあるための条件である。すな わち遊星歯車と太陽歯車の軸間距離aは次式で表わすこ とが出来る(図 1.3-1)。

a

1

d

d

2

1 3 (1.3-1) ここでd:太陽歯車および遊星歯車の噛み合いピ ッ チ円半径 (2)隣接条件 太陽歯車の回りに配置される遊星歯車の数が多くなる と、隣同士の遊星歯車がぶつかることになる。そのため 遊星歯車の数nと、遊星歯車の外径dp’の間には次のよ うな制限がある(図 1.3-2))。

d

a

n

p

'

sin





2

(13.-2) p

d'

π n 2 sin a π 隣接条件 a 図1.3- 2 隣接条件 (2)組み立て条件 2K-H形では複数個の遊星歯車が太陽歯車と内歯歯車の間に等間隔で配置されている。 このとき1個の遊星歯車は太陽歯車と内歯歯車とかみ合った状態ではまりこんでいたとし ても、残りの遊星歯車が等配状態を維持したまま太陽歯車と内歯歯車の間にはまりこめる

d

d

3 1

a

同軸条件 図1.3-1 同軸条件

(22)

14 とは限らない。それは1個の遊星歯車がはまりこむと、太陽歯車と内歯歯車の空間的な歯 の位置が決まるために、最初にはまりこんだ遊星歯車の歯数と同じ歯数の歯車が、別の位 置ではまるとは必ずしも言えないからである。そのためには図1.3-3 に示すような影の部分 を囲む閉曲線が歯車のピッチの整数倍である事が必要条件となる。図1.3-4(b)のような 機構ではその条件は次のように考えることができる。 まずこの機構のモジュールをmとし、内歯歯車及び太陽歯車の歯数をそれぞれzi、zs、 遊星歯車の歯数をzp、その個数をNとすると、内歯歯車と太陽歯車のピッチ円周は遊星歯 車の個数で分割される。そして分割されたピッチ円弧の長さは内歯歯車と太陽歯車に関し ては次のようになる。 内歯歯車 :

2

2

i i

mz

N

L

太陽歯車 :

2

2

a s

mz

N

L

したがって、図1.3-4(a)の閉曲線の長さLは

i s p p s i

z

N

z

N

z

m

z

m

L

L

L

(1.3-3) ここでピッチはπmであり、zpは整数であることから、Lをピッチで刻んでいったときに 割り切れるためには 整数=

N

z

z

i

s (1.3-4) 図1.3- 3 組立条件 2K-H 型歯車機構の中に図 1.3-5 に示すようなラビニオウ型機構と呼ばれるものがある。 これは遊星歯車が歯車列機構となっているもので、自動車用変速機の中では広く使われてい る。この機構の組み立て条件は図1.3.-4 のような単一の遊星歯車からなるものとは異なる条 件が必要になる。ここでの閉曲線は図の太線で示すような曲線に成り、太陽歯車の太線部分 は閉曲線の外側を囲む部分となるので、その長さは次のようになる。

2

2

2

2

s s s

z

m

N

z

m

L

(1.3-5) (a) i s H (b) 2π/N

(23)

15 したがって

2 1 2 1

)

(

P p s S i P p s i

z

z

N

z

z

N

z

m

z

z

m

L

L

L

ここでLがピッチπmで割り切れるために必要な条件として次式が得られる。 整数=

N

z

z

i

s (1.3-6) なお同じラビニオウ型と呼ばれる機構でも図 1.3.-5(b)のように 2 個の外歯歯車から構成 されるものに対しては式(1.3-4)式が適用される(説明略)。この場合、対象とする歯数 は2 個の太陽歯車の歯数zs1、zs2 である。さらに2K-H 型には遊星歯車が 2 個同軸上に ある複合遊星歯車機構も使われるが、その組立条件についてはクドリャフツエフの著作を 紹介した文献11に詳しく述べられている。 (a) (b) 図1.3-5 ラビニオウ型遊星歯車機構の例

3.2 歯数の具体的な例

以上の条件を満たす2K-H 型で遊星歯車 3 個等配の遊星歯車機構の歯数の関係を表1.3-1 に示す。また表1.3-2 は表の図に示す 3K 型遊星歯車機構の歯数の例を示した。ここで 3K 型における組立条件は 2K-H型とは異なるがその条件式はここでは触れないが脚注にある 参考文献の表を抜粋して作り直して示した。また表にある伝達比jH si、あるいはj213は標 記の上添字の要素を固定した場合の各要素の角速度の関係(伝達比)、すなわち減速比ま たは増速比の関係を示すものであるが、伝達比の詳細については2章において述べる。 11 仙波正荘、歯車第 10 巻、p3938-3843、日刊工業新聞(1967) http://www.asahi-net.or.jp/~nn2t-yd/plant_const/const-item.pdf zs1 zs2

(24)

16 表1.3-1 2K-H 型遊星歯車機構の歯車構成 12 i s H ω ω s

p i 12 矢田 機械設計便覧 丸善 (1992) 760-761 太陽 歯車 遊星 歯車 内歯 歯車 太陽 歯車 遊星 歯車 内歯 歯車 Zs Zp Zi jHsi jisH Zs Zp Zi jHsi jisH 17 19 55 -3.23529 4.23529 19 17 53 -2.78947 3.78947 17 22 61 -3.58824 4.58824 19 20 59 -3.10526 4.10526 17 25 67 -3.94118 4.94118 19 23 65 -3.42105 4.42105 17 28 73 -4.29412 5.29412 19 26 71 -3.73684 4.73684 17 31 79 -4.64706 5.64706 19 29 77 -4.05263 5.05263 17 34 85 -5 6 19 32 83 -4.36842 5.36842 17 37 91 -5.35294 6.35294 19 35 89 -4.68421 5.68421 17 40 97 -5.70588 6.70588 19 38 95 -5 6 17 46 103 -6.05882 7.05882 19 41 101 -5.31579 6.31579 17 46 109 -6.41176 7.41176 19 44 107 -5.63158 6.63158 17 49 115 -6.76471 7.76471 19 47 113 -5.94737 6.94737 17 52 121 -7.11765 8.11765 19 50 119 -6.26316 7.26316 17 55 127 -7.47059 8.47059 19 53 125 -6.57895 7.57895 17 58 133 -7.82353 8.82353 19 56 131 -6.89474 7.89474 19 59 137 -7.21053 8.21053 18 18 54 -3 4 18 21 60 -3.33333 4.33333 20 19 58 -2.9 3.9 18 24 66 -3.66667 4.66667 20 22 64 -3.2 4.2 18 27 72 -4 5 20 25 70 -3.5 4.5 18 30 78 -4.33333 5.33333 20 28 76 -3.8 4.8 18 33 84 -4.66667 5.66667 20 31 82 -4.1 5.1 18 36 90 -5 6 20 34 88 -4.4 5.4 18 39 96 -5.33333 6.33333 20 37 94 -4.7 5.7 18 42 102 -5.66667 6.66667 20 40 100 -5 6 18 45 108 -6 7 20 43 106 -5.3 6.3 18 48 114 -6.33333 7.33333 20 46 112 -5.6 6.6 18 51 120 -6.66667 7.66667 20 49 118 -5.9 6.9 18 54 126 -7 8 20 52 124 -6.2 7.2 18 57 132 -7.33333 8.33333 20 55 130 -6.5 7.5 18 60 138 -7.66667 8.66667 20 58 136 -6.8 7.8 伝達比 伝達比

j

H si: ωs/ωi,キャリア固定

j

i sH:ωs/ωH、内歯歯車固定 遊星歯車個数 3

(25)

17 太陽 歯車 遊星 歯車 内歯 歯車 太陽 歯車 遊星 歯車 内歯 歯車 Zs Zp Zi jHsi jisH Zs Zp Zi jHsi jisH 21 18 57 -2.71429 3.71429 24 18 60 -2.5 3.5 21 21 63 -3 4 24 21 66 -2.75 3.75 21 24 69 -3.28571 4.28571 24 24 72 -3 4 21 27 75 -3.57143 4.57143 24 27 78 -3.25 4.25 21 30 81 -3.85714 4.85714 24 30 84 -3.5 4.5 21 33 87 -4.14286 5.14286 24 33 90 -3.75 4.75 21 36 93 -4.42857 5.42857 24 36 96 -4 5 21 39 99 -4.71429 5.71429 24 39 102 -4.25 5.25 21 42 105 -5 6 24 42 108 -4.5 5.5 21 45 111 -5.28571 6.28571 24 45 114 -4.75 5.75 21 48 117 -5.57143 6.57143 24 48 120 -5 6 21 51 123 -5.85714 6.85714 24 51 126 -5.25 6.25 21 54 129 -6.14286 7.14286 24 54 132 -5.5 6.5 21 57 135 -6.42857 7.42857 24 57 138 -5.75 6.75 21 60 141 -6.71429 7.71429 24 60 144 -6 7 25 17 59 -2.36 3.36 22 17 56 -2.54545 3.54545 25 20 65 -2.6 3.6 22 20 62 -2.81818 3.81818 25 26 71 -2.84 3.84 22 23 68 -3.09091 4.09091 25 29 77 -3.08 4.08 22 56 74 -3.36364 4.36364 25 32 83 -3.32 4.32 22 29 80 -3.63636 4.63636 25 35 89 -3.56 4.56 22 32 86 -3.90909 4.90909 25 38 95 -3.8 4.8 22 35 92 -4.18182 5.18182 25 41 101 -4.04 5.04 22 38 98 -4.45455 5.45455 25 44 107 -4.28 5.28 22 41 104 -4.72727 5.72727 25 47 113 -4.52 5.52 22 44 110 -5 6 25 50 119 -4.76 5.76 22 47 116 -5.27273 6.27273 25 53 125 -5 6 22 50 122 -5.54545 6.54545 25 56 131 -5.24 6.24 22 53 128 -5.81818 6.81818 25 59 143 -5.72 6.72 22 56 134 -6.09091 7.09091 22 59 140 -6.36364 7.36364 26 19 64 -2.46154 3.46154 26 22 70 -2.69231 3.69231 23 19 61 -2.65217 3.65217 26 25 76 -2.92308 3.92308 23 22 67 -2.91304 3.91304 26 28 82 -3.15385 4.15385 23 25 73 -3.17391 4.17391 26 31 88 -3.38462 4.38462 23 28 79 -3.43478 4.43478 26 34 94 -3.61538 4.61538 23 31 85 -3.69565 4.69565 26 37 100 -3.84615 4.84615 23 34 91 -3.95652 4.95652 26 40 106 -4.07692 5.07692 23 37 97 -4.21739 5.21739 26 43 112 -4.30769 5.30769 23 40 103 -4.47826 5.47826 26 46 118 -4.53846 5.53846 23 43 109 -4.73913 5.73913 26 49 124 -4.76923 5.76923 23 46 115 -5 6 26 52 130 -5 6 23 49 121 -5.26087 6.26087 26 55 136 -5.23077 6.23077 23 52 127 -5.52174 6.52174 26 58 142 -5.46154 6.46154 23 55 133 -5.78261 6.78261 23 58 139 -6.04348 7.04348 伝達比 伝達比

(26)

18 表1.3-2 3k 型遊星歯車機構の歯車構成 13

z

z

z

11 2 3

ω

ω

1

z

12

z

1 3 全歯車のモジュールは同じ 2

z

z

11 3

z

z

12

-2

z

>

z

3

z

11

>

z

12 1

z

11

z

+

2 13=ω1/ω3 :内歯歯車

2 固定 遊星歯車個数 3 13 В.Н.Кудрявцев, Планетарные Передачи, Машинострение. Москва, 1966 太陽 歯車 伝達比 太陽 歯車 伝達比 Z1 Z2 Z3 Z11 Z12 j213 Z1 Z2 Z3 Z11 Z12 j213 9 39 36 15 12 40 12 72 66 30 24 55 9 45 39 18 12 26 12 72 69 30 27 115 9 45 42 18 15 56 12 78 63 33 18 23.1 9 51 42 21 12 21.7778 12 78 66 33 21 30.25 9 51 45 21 15 35 12 78 69 33 24 42.1667 9 51 48 21 18 74.6667 12 78 72 33 27 66 9 57 48 24 15 28.4444 12 78 75 33 30 137.5 9 57 51 24 18 45.3333 12 84 69 36 21 27.6 9 57 54 24 21 96 12 84 72 36 24 36 9 63 51 27 15 25.5 12 84 75 36 27 50 9 63 54 27 18 36 12 84 78 36 30 78 9 63 57 27 21 57 15 51 45 18 12 18 9 63 60 27 24 120 15 51 48 18 15 38.4 12 48 42 18 12 21 15 57 51 21 15 23.8 12 48 45 18 15 45 15 57 54 21 18 50.4 12 54 45 21 12 17.5 15 63 54 24 15 19.2 12 54 48 21 15 28 15 63 57 24 18 30.4 12 54 51 21 18 59.5 15 63 60 24 21 64 12 60 51 24 15 22.6667 15 69 57 27 15 17.1 12 60 54 24 18 36 15 69 60 27 18 24 12 60 57 24 21 76 15 69 63 27 21 37.8 12 66 54 27 15 20.25 15 69 66 27 24 79.2 12 66 57 27 18 28.5 15 75 63 30 18 21 12 66 60 27 21 45 15 75 66 30 21 29.3333 12 66 63 27 24 94.5 15 75 69 30 24 46 12 72 60 30 18 25 15 75 72 30 27 96 12 72 63 30 21 35 15 81 66 33 18 19.36 遊星歯車 内歯歯車 遊星歯車 内歯歯車

(27)

19 太陽 歯車 伝達比 太陽 歯車 伝達比 Z1231112 j2 13 Z1 Z2 Z3 Z11 Z12 j213 15 81 69 33 21 25.3 18 90 81 36 27 36 15 81 72 33 24 35.2 18 90 84 36 30 56 15 81 75 33 27 55 18 90 87 36 33 116 15 81 78 33 30 114.4 18 96 81 39 24 23.4 15 87 72 36 21 23.04 18 96 84 39 27 30.3333 15 87 75 36 24 30 18 96 87 39 30 41.8889 15 87 78 36 27 41.6 18 96 90 39 33 65 15 87 81 36 30 64.8 18 96 93 39 36 134.3333 15 87 84 36 33 134.4 18 102 87 42 27 27.0667 15 93 78 39 24 27.04 18 102 90 42 30 35 15 93 81 39 27 35.1 18 102 93 42 33 48.2222 15 93 84 39 30 48.5333 18 102 96 42 36 74.6667 15 93 87 39 33 75.4 18 102 99 42 39 154 15 93 90 39 36 156 18 108 90 45 27 25 15 99 84 42 27 31.36 18 108 93 45 30 31 15 99 87 42 30 40.6 18 108 96 45 33 40 15 99 90 42 33 56 18 108 99 45 36 55 15 99 93 42 36 86.8 18 108 105 45 42 175 15 99 96 42 39 179.2 18 114 96 48 30 28.4444 18 60 51 21 12 13.2222 18 114 99 48 33 35.2 18 60 54 21 15 21 18 114 102 48 36 45.3333 18 60 57 21 18 44.3333 18 114 105 48 39 62.2222 18 66 57 24 15 16.8889 18 114 108 48 42 96 18 66 60 24 18 26.6667 18 114 111 48 45 197.3333 18 66 63 24 21 56 18 120 102 51 33 32.1111 18 72 60 27 15 15 18 120 105 51 36 39.6667 18 72 63 27 18 21 18 120 108 51 39 51 18 72 66 27 21 33 18 120 111 51 42 69.8889 18 72 69 27 24 69 18 120 114 51 45 107.6667 18 78 66 30 18 18.3333 18 120 117 51 48 221 18 78 69 30 21 25.5556 21 75 63 27 15 13.5 18 78 72 30 24 40 21 75 66 27 18 18.8571 18 78 75 30 27 83.3333 21 75 69 27 21 29.5714 18 84 69 33 18 16.8667 21 75 72 27 24 61.7143 18 84 72 33 21 22 21 81 69 30 18 16.4286 18 84 75 33 24 30.5556 21 81 72 30 21 22.8571 18 84 78 33 27 47.6667 21 81 75 30 24 35.7143 18 84 81 33 30 99 21 81 78 30 27 74.2857 18 90 75 36 21 20 21 87 72 33 18 15.0857 18 90 78 36 24 26 21 87 75 33 21 19.6429 内歯歯車 遊星歯車 内歯歯車 遊星歯車

(28)

20

3.3 配置角が同じにならない場合(不均等配置構造)の例

2K-H 型機構において組み立て条件が成立しない場合、配置角を均等に割り振ることがで きない。ここでは不均等でも遊星歯車を配置できるかどうかを考える。まず遊星歯車の個 数をN としたとき、等配構造にするためには次式の角度δで遊星歯車を配置する必要があ る。

N

0

2

(1.3-7) 一方、組み立て条件は図1.3-4 の機構では式(1.3-4)が要求されるが、ここでは歯数の 和が割り切れす、端数n/Nが出るものとする。

N

n

A

N

z

z

s

i

(1.3-8) この関係は次のようにも表すことができる。

N

m

B

N

z

z

s i

(1.3-9) ここで

B

 A

1

n

m

N

,

N

(

n

,

m

)

1

上の2 式(1.3.-8)(1.3-9)の左辺の N を式(1.3-7)に代入すると a a i s

N

n

A

z

z

 

2

0 (1.3-10) b b i s

N

m

B

z

z

 

2

0 (1.3-11) ただし

A

z

z

s i a

2

N

n

z

z

s i a

2

B

z

z

s i b

2

N

m

z

z

s i b

2

太陽 歯車 伝達比 太陽 歯車 伝達比 Z1231112 j2 13 Z1 Z2 Z3 Z11 Z12 j213 21 87 78 33 24 27.2381 21 105 99 42 36 66 21 87 81 33 27 42.4286 21 105 102 42 39 136 21 87 84 33 30 88 21 111 93 45 27 22.1429 21 93 78 36 21 17.8286 21 111 96 45 30 27.4286 21 93 81 36 24 23.1429 21 111 99 45 33 35.3571 21 93 84 36 27 32 21 111 102 45 36 48.5714 21 93 87 36 30 49.7143 21 111 105 45 39 75 21 93 90 36 33 102.8571 21 111 108 45 42 154.2857 21 99 84 39 24 20.8 21 117 99 48 30 25.1429 21 99 87 39 27 26.9286 21 117 102 48 33 31.0857 21 99 90 39 30 37.1429 21 117 105 48 36 40 21 99 93 39 33 57.5714 21 117 108 48 39 54.8571 21 99 96 39 36 118.8571 21 117 111 48 42 84.5714 21 105 87 42 24 19.3333 21 117 114 48 45 173.7143 21 105 90 42 27 24 21 120 108 50 38 43.1633 21 105 93 42 30 31 遊星歯車 内歯歯車 遊星歯車 内歯歯車

(29)

21 式(1.3-7)より

)

(

2

0 0 0 b a b a

n

m

n

m

n

m

N

(1.3-12) ここで

2

(

)

0

N

m

n

N

n

m

z

z

n

m

i s b a

したがって

2

m

a

n

b (1.3-13) 以上よりこの場合配置角δaがm個、配置角δbがn個で360 度の配置が完結される。 例題 図1.3-6 に示すような歯数を持つ遊星歯車機構の場合、内歯歯車と太陽歯車の歯数の 和104 は遊星歯車の個数 3 で割り切れないので等配構造にすることはできない。ここでは 式(1.3-8)よりA=34、n=2、(1.3-9)よりB=35、m=1 を得る。 故に 360°=(117.7°)×1 + 121.2°×2 より図 1.3-6 のような配置角となる。 このような不均等配置の遊星歯車機構は各遊星歯車が太陽歯車に及ぼす半径方向の力が 太陽歯車の軸心で平衡がとれず太陽歯車の軸受荷重が発生すること、及びキャリアが回転 するときは遊星歯車の遠心力が不平衡になり、振動を起こす可能性がある事を注意すべき である。 図1.3-6 遊星歯車不等配機構の例14 14前川 仁 日本機械学会 ロボチックス・メカトロニクス講演会 2006.5

7

.

117

34

104

360

a

35

121

.

2

104

360

b

内歯歯車歯数=80 太陽歯車歯数=24 遊星歯車歯数=28 遊星歯車個数=3

(30)

22

第2章 遊星歯車機構の速度の関係

遊星歯車機構が運動したときに生ずる構成要素のそれぞれの角速度の関係は、なれない と理解しにくい面がある。それは遊星歯車の遊星運動が、太陽歯車の角速度に影響を与え る事による。それを解きほぐすためには各要素の間の入力角速度と出力角速度の比率に注 目する。ここではその比率として本稿全般を貫く基礎的な概念である伝達比を導入する。 その上で遊星歯車機構の伝達比を求める方法を紹介する。この関係を求めるための手法と しては、今まで色々な方法が提案されてきたが、ここでは代表的な 2 種類の角速度の算出 法について述べる。すなわち、①比較的簡単な機構では効果のある「のり付け法」、②か み合い点の周速度に注目する「ベクトル線図法」である。ここで述べるベクトル線図法は 次章で扱う角速度の数学的な取扱いの基礎部分であり、本章はそのための導入部分と位置 づけている。 1 伝達比

1.1 規格による定義のあいまいさ

歯車の速度変換に関係のある比率として、JIS B0102-1999(歯車用語)では歯数比と 速度伝達比をとりあげ次のように定義し、さらにこれらの比率に用いる記号を JIS B0121 -1988(歯車記号)で定めている。そしてこの定義は ISO とも整合させてある。 歯数比( u ) :大歯車の歯数を小歯車の歯数で除した値(大歯車歯数/小歯車歯数)。 速度伝達比( i ):歯車列の最初の駆動歯車の角速度を最後の被動歯車の角速度で序した 値。備考 必要があれば、速度伝達比に対して、両者の角速度の向きが同じときは正、 逆のときは負の記号をつける。

Z

a

Z

Z

Z

b c d

a

b

c

d

ω

ω

ω

ω

a b c d

正の回転方向

図2.2.-1 歯車列の例 これらの比率を図2.2-1 の歯車機構に適用すると次のようになる。まず歯数比uは定義か らわかるように常に1より大きい(u>1)。そして歯車a、bの間では

(31)

23 uab=Zb/Za ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1.1) また歯車b、cの間では ubc=Zc/Zb ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1.2) すなわち歯車bの歯数Zbは対象とする相手歯車によって歯数比の分母になったり、分子に なったりする。このことは任意の値をとることができる歯数Z1、Z2を扱っているときに、 そのいずれが大きい値かを考えないと歯数比uが決められないことを意味する。このよう な制約のもとでは歯数比を用いて一つの要素の歯数を特定しない一般的な歯車機構の理論 を構築することはできない。 次に速度伝達比について図2.2-1 の歯車a,b,c,dからなる歯車列を考えると、定義 からまず駆動歯車を決める必要がある。ここでは歯車aが駆動歯車、歯車dがこの歯車列 の被動歯車とするとし、それらの角速度をωa、ωdで表すと、速度伝達比は次式で与えられ る。

i

a d

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1.3) ところでこの値は歯車aが駆動歯車のときに決定されるが、この角速度の比率は歯車a が被動歯車、歯車dが駆動歯車でも歯車a,bの角速度の比ωa/ωdの値は変わらない。し かしこのように駆動と被動が入れ替わった場合は同じ歯車列であっても速度伝達比は次の ようでなければならない。

i

d a

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1.4) このことからわかるように速度伝達比では、速度状態が同じであっても動力の流れの方向、 つまり駆動側、被動側を決定しないと定まらない。つまり速度状態を動力の流れと絡み合 わせているため速度状態を独立に取り扱いたい場合はこの定義はなじまないことがわかる。 なお以前の規格(1988 年判)では備考がなかったために、その歯車列が入力と出力の間 で回転方向がどうなっているかの情報が欠けていたが、この問題は解消された。

1.2 伝達比の定義

規格で定められた歯車列の速度または歯数の比は上述のように歯車列の動きを扱うとき に十分な表現力を持っていない。そこで動力の流れの方向とは関係なく、また歯数の大小 を吟味しなくてもよい比率を考える。そのため歯車列の回転方向を考えた角速度の比で伝 達比を定義する。 さらに JIS で定義されている速度伝達比と区別するために、記号jで表すことにする。 そしてこれに添字をつけ、例えばj12のように表す。この添字の意味は添字第1項の1は 伝達比の分子の角速度を持つ要素を、第2項の2は分母の角速度を持つ要素をあらわす。 さらに角速度に正方向を定める。ここではスケルトン図において左方向から見て時計回転 方向を正とする。つまり角速度ベクトルを考えれば、スケルトン図において左から右に向 かう角速度ベクトルが正となる(図 2.2-2)。またこの伝達比の定義から次のような一連の関

(32)

24 係が導かれる。

j

j j

j

j

12 1 2 12 21 12 21

1

1

,

,

・・・・・・・・・・・(2.1.5) 正方向 正方向 図2.2-2 速度の正方向 このように定義された伝達比を図2.2-1 の機構に適用し、それぞれの歯数との関係を求め ると次のようになる。

j

z

z

j

z

z

j

z

z

ab a b b a bc b c c b cd c d d c

 

,

,

・・・・・(2.1.6) 上式においてZb/Zaに負符号がついているのは、ωは正負の値を持つため外歯歯車同士の かみ合いで回転方向が逆転することを示している。これを一対の歯車の組み合わせに対し てさらに一般的な形で歯数と伝達比の関係を示すと、

j

z

z

12 2 1

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1.7) (複号:+ 外歯歯車と内歯歯車の組み合わせ、- 外歯歯車同士の組み合わせ) このjによる表現法を使えば歯車の大小、動力の伝達方向をあらかじめ決めなくても機 構の構成や、運動状態を解析できるので数学的に取り扱いやすくなる。遊星歯車機構を取 り扱っている文献にはここでのjと同じような考えを採用しながら i を用いて記述してい る例を見かける。しかしそれでは規格で定められた速度伝達比との区別がつかなくなり、 かえって紛らわしくなる。ここでjを用いたのは速度伝達比とその定義そのものが異なる ことをはっきりさせるためであり、それを伝達比と呼ぶことにした。 さて図2.2-1 の歯車列の伝達比jは次のようにして決定される。

j

z

z

z

z

z

z

z

z

ad a d a b b c c d b a c b d c d a

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1.8) これを伝達比の関係で示すと次のようになる。

(33)

25

j =j j j

ad

a b

bc

c d

消去できる部分 伝達比の添字の関係 つまり一連の歯車列の伝達比は、個々の歯車の伝達比の積で表され、速度が伝達される順 番に伝達比の積を記述したとき、先頭の添字と最後尾の添字の間は消去されることがわか る。規格の定義ではこのような形で定義できない。

(34)

26 2 のり付け法

2.1 考え方

トラクションドライブ式の遊星機構では接触部分での滑りは避けられない。そのため速 度変換要素の間での速度関係を簡単に定めることはできない。しかし、歯車で構成された 遊星歯車機構においては、速度が変換される要素の間では歯数で決まる速度変換比率は変 わることはなく、歯車列の構成が決まれば決定される。したがってここでは遊星機構とし てはトラクションドライブ式ではなく、歯車で構成された遊星歯車機構を対象とする。 まずこのように歯車で構成された遊星歯車機構の運動はその幾何学的関係で決めること ができるが、遊星運動をともなって速度関係は直感的に分かりにくくなる。そのために速 度の計算の為の手法にも幾つかの方法が考えられる。ここでは最初に遊星歯車機構の伝達 比を求める最も単純な方法であるのり付け法について述べる。、 この方法を図2.2-1 に示す 2K-H 型の例で説明する。まずここで内歯歯車Iを固定し、太 陽歯車Sを回転した時、キャリアHの回転数を求める。この状態を考えるとき、最初にキ ャリアを固定した場合を考える。この状態は太陽歯車と内歯歯車が中間歯車でかみ合って いる状態に相当し、通常の歯車列になるので回転の比率は容易に求めることができる。す なわち太陽歯車Sが ns で回転すれば内歯歯車Iの回転はこの2個の歯車の歯数の比で決 り、回転方向は逆向きになるので、ni=-(zs/zi)nsである。 I H I Z Z Z s i p S S 図2.2-1 のり付け法を示す 2K-H 型 次に各ピッチ点を「のり付け」して全体をni =(zs/zi)ns で正回転させると、この 二つの操作によって、内歯歯車は最初に逆転した分だけ、正回転方向に元に戻したので、 その回転は0になる。つまり固定したと同じ状態となる。しかしこの様な操作をしてもキ ャリアと遊星歯車の相対的な関係は乱されない。またこの時太陽歯車、キャリア共(zs/ zi)ns で同時に回転するので、太陽歯車の回転は、この2通りの操作後には(1+zs/z i)ns となる。 これらの操作の状態を表2.2-1 にしめす。ここで求めようとする値はキャリアHの回転を 太陽歯車の回転の比としてで解いた最下段の値で求められる。したがって伝達比としては 次式で表される。

(35)

27

n

n

z

z

z

i s s s i

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.2-1) 表 2.2-1 2K-H型ののり付け法 太陽歯車 内歯歯車 キャリア キャリア固定

n

s

z

z

n

s i s 0 のり付け

z

z

n

s i s

z

z

n

s i s

z

z

n

s i s

(

1

z

)

z

n

s i s

z

z

n

s i s 速度変換比率 1 0

z

z

z

s i s

(

)

この方法の特徴は遊星歯車機構をキャリアに固定することによって、通常の歯車列の状 態で速度の変換状態を考えることと、全体を相対的に動かない状態にしてキャリアを固定 して考えたときに動いた移動量を元に戻すことにある。このように全体をのり付けしたよ うな状態で反転運動を行わせることから、この方法をのり付け法と呼んでいる。

2.2 運動の重ね合わせ

のり付け法のような状態が成立するのは歯車のかみ合いが保たれていることが必要条件 である。そしてこの条件の下ではどのような経過を経て到達しても、目的とする状態と同 じ運動状態が実現できれば、その経過の途中の変位関係は重ね合わせることができる18。こ のような手続きを経ることの妥当性は、ここでは力を考えず変位だけを考えていることか ら次のように考えると理解しやすい。 まず電車の中で進行方向に歩いている人の単位時間内での動きを、地面から見たときど のように見えるかを考える。図 2.2-2 のように電車の1秒間の移動速度がSc、人のそれが Smとすれば、1秒後の地面に対する人の移動速度はSm+Scであることが直感的に理解で きるであろう。この直感はどのような論理で感じ取ったものだろうか。 このことは次のように考えたのではないかと思われる。つまり電車が止まっていて(Sc =0)、人が1秒間にSm の距離歩いたとする。これは電車の中では電車の動きとは、無 関係に人の移動距離として車内では観測される。一方、人が立ち止まっていて(Sm=0)、 電車だけが1秒間にSc 動いた場合に、この大きさは人の動きとは関係なく電車の地面に対 する移動距離として観測される。 18 力が作用している状態でも重ね合わせが可能であるかどうかは後に述べる。

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 次に、羽の模様も見てみますと、これは粒粒で丸い 模様 (図 3-1) があり、ここには三重の円 (図 3-2) が あります。またここは、 斜めの線