F FF
3.2 ディファレンシャルギヤの特性
(1) 速度とモーメントの関係
まずこの機構は太陽歯車と内歯歯車の歯数が同じになった2K-H型機構と考えるとわかり やすい(図5.3-6)。その伝達比を次のように考える。まず図5.3-6においてキャリアHを 固定したときのa、b端の角速度は互いに逆向きであり、2個の太陽歯車の歯数は等しい
(Za=Zb)ので
j z
z
Ha b a H
b H
b a
1
(5.3-1)
102
また他の伝達比は伝達比の相互関係を用いることにより、
j j j
j
b H a b
aH H
a b
ba H
1 1
1 1
2 2
(5.3-2)
原動機
負荷2 負荷1
z z
a ba H M b
a H b
M M
図5.3-6 デフの緒量
つまり式(5.3-1)、(5.3-2)によりこの機構の伝達比は-1、2、1/2の3種類で与えられる。
したがって3端子角速度の関係より
H 1
a
b2( ) (5.3-3) さらにこれを3端子角速度の一般式で表すと
0 1
a 1
b 2
H (5.3-4)ここで上式からωbは2ωHとωaの差として与えることもできる。あるいはキャリアの角速 度はa,b軸の角速度の平均角速度という見方もある。この様な動きはa軸の角速度が大 きくなればb軸の角速度が小さくなるという差動的な運動を行う。自動車が旋回するとき 内側の車輪より外側の車輪の方が旋回半径が大きい分だけ早く回転する必要がある。この 機構が持つ機能はその要求に適合しているので自動車に使われこれを差動歯車或いはデフ と呼ばれる理由はここにある。
ここで問題を単純にするためにこの装置の中に損失はないものとすると、各軸のモーメ ントの関係は
0 Ma Mb MH (5.3-5) この関係と3端子角速度の関係よりモーメントの比の関係は
Ma Mb MH
1 1 2 (5.3-6) したがって
Ma Mb 1 MH
2 (5.3-7)
この関係より、装置内に損失を考えないとすると、この装置では二つの負荷につながれ
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ている両軸a、bのトルク(モーメント)はいずれも同じ大きさで、同方向であることが わかる。このような特性を持つディファレンシャルギヤの端子a、bに負荷がつながれた 場合、角速度がどのように定まるかを次に考える。
(2) 各軸の特性とそれぞれの軸の運動状態
図5.3-6の装置でそれぞれの角速度の大きさを定めるには、各軸につながれた原動機、お
よび負荷の速度/トルク特性によって定まる。問題を単純にするためキャリアには直接原 動機が接続されているものと考える。そして原動機や負荷の特性を次のように与える。
M f f M
M g g M
M h M h M
H H H H
a a a a
b b b b
1 1 1
(5.3-8)
ここで関数fは原動機特性を、また関数 g、hは負荷特性を表している。
出力軸の角速度が同じ場合(ωa=ωb) 式(5.3-8)の特性より
ah
bg
(5.3-9)また先に得た角速度の関係式(5.3-3)より
H a b
a
1
2 (5.3-10) さらにモーメントの関係式(6.3-6),(5.3-8) より
) ( 2
2
a aH H
g M
f M
(5.3-11)この両式の関係は図5.3-7のように示される。すなわち駆動特性f(ω)と負荷特性g(ω)
の2倍の特性曲線との交点Aでこの両式の条件は満足される。
ここでg、hは太陽歯車a、bの両軸に結合された負荷の特性である。もしこの両軸が 自動車のタイヤに結合されていれば、この特性は走行抵抗に相当する。また原動機が自動 車の内燃機関ならば、fは内燃機関の特性を表す。したがってg=hの場合すなわち、車 の両輪の走行抵抗が同じならば、エンジンはあたかも直接車輪を駆動しているかのように、
キャリアの回転速度と同じ速度で車輪を回転させる。この状態は自動車が平坦な道を直進 している状態を示している。図5.3-7はこの状態を示す。
(3) 出力軸の角速度が等しくない場合(ωa≠ωb)
二つの負荷特性g、hが等しくない場合、すなわちg≠hのときもモーメントの関係は 前の場合と変わらない。しかし角速度については次のようになる。
M M
f ( ω )
-
2g ( ω)-g
( ω )H A
ω ω ω H =
-M
= 21M
Ha a
図5.3-8 両輪の負荷特性が互いに異なる場合 図5.3-7 エンジン特性と負荷特性の関係 2g(ω)
g(ω)
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H
a
bH H
g M
h M
1 2 1
2 2 2
1 1
(5.3-12)
したがって
2 2 2
1 1 1
f M g M
h M
H H H
(5.3-13) 一方、モーメントの関係を使うと次のように表すこともできる。
M M M
g h f
a b H
a b H
1 2
1
2
(5.3-14)
g( )
ω M
M = -M
1
ω ω
2 H
H a
f( ) ω
h( ) ω
ω ω
b1 2
a
図5.3-8 両輪の負荷特性が互いに異なる場合
この式(5.3-13)、(5.3-14)の示す意味は次の通りである。つまり異なった負荷特性g、hの 大きさが互いに等しい値を持つ時のωa、ωbの大きさは同じではない。そしてωa、ωbの 平均値はキャリアの角速度ωHに等しい。ここではモーメントが同じ値を持つ負荷の回転速 度ωa、ωbはそれぞれ違った大きさになる。その結果、自動車ならば回転速度の小さくなる 車輪を内側にして旋回しようとする。この回転速度の小さくなる車輪は図からわかるよう に、走行抵抗が他方に比べて大きい車輪である。つまり図 5.3-8のg、hの関係はh>g -である。例えば片方の車輪が砂利道に突っ込んだ場合、その車輪の抵抗は他方に比して大 きくなるのでこの車輪を内側にして自動車は曲がろうとしてハンドルを取られることにな る。
(4) 出力角速度が不安定になる場合
前述のように車の両輪の間で負荷特性(走行抵抗曲線)が異なるとき、自動車は勝手に 曲がろうとする。ここで両輪に作用するモーメントMa、Mbは先に述べたように互いに大き さが等しい。ところが先の二つの図5.3-7、5.3-8で示したような角速度の関係(両輪の角
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速度の平均はキャリアの角速度に等しい)はいつも原動機と負荷の間で成立するとは限ら ない。
ω M
1M
ω ω
2 HO
H2 a1
f( ) ω h( ) ω
ω
ω
b21
2
u
v
m
n po p
p2
1
ω
a2ω
H1ω
b1ω
H0g( )
e
図5.3-9 両輪の負荷特性が著しく異なる場合
例えば図5.3-9のような両輪の走行抵抗が著しく互いに異なっている場合を考えてみる。
まず原動機がpoで回転していたとする。このときの原動機の角速度はωH0であり 1/2MHO
の駆動トルクが車の両輪に同時に作用することになる。ところが走行抵抗gに対しては1
/2MHOの駆動トルクは余裕があるので、走行抵抗gを持つ車輪を加速して、gとの交点 nまで原動機も速度を上げようとする。一方走行抵抗hに対しては1/2MHO の駆動トル クでは不足するので、hを持つ車輪を減速してhとの交点mまで原動機の角速度を下げよ うとする。すなわちpoの点は不安定で、m、nのいずれかに移動しようとしていることが わかる。
今、何らかの原因でm点で車輪が回転したとすると、このときのgに対しては駆動トル クは余るのでg方の車輪は当然加速されようとする。ところが角速度の関係は次の条件を 満足していなければならない。
H 1
a
b2
(5.3-16)このことはh方の車輪はm点では回転できないわけで、g方の車が加速される以上h方の 車輪はm点より減速された位置でこの角速度の関係を満足する点(例えばωb1点)を見つけ なければならない。つまり原動機はm点からpoへ向かう方向で平衡点を見つけようとする。
したがって例えばp1点で角速度の関係を満たすωb1、ωa1、ωH1が見つかるならば、前
の図5.3-8のような状態でこの両輪は駆動されることになるが、それが見つからなければ、
つまりe点がg特性上にない場合。h方の車はますます減速されて最後には止まってしま うことになる(u点)。一方g方の車輪はますます加速されることになる。このことはn 点から話を進めても似たようなことになって結局はh方の車輪は止まってしまう。
この現象は雪道で車がスリップして動かない状態を示している。つまり走行抵抗hは土
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と車輪の間のもの、gは雪と車輪の間の走行抵抗だと考えれば、雪の上に乗っている車輪 は回転しているのに、土の上に乗っている車輪は動かないことになる。このとき自動車を 前進させるのに必要なトルクはg側の車輪は少なくともuの大きさを必要とする。ところ が土の上にあるh方の車輪は停まってしまってもエンジンはさらに回転速度を増加させ、
g方の車輪を空転させるためにエンジンのトルクはu以下に落ちてしまい結局、自動車は 動かない。