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さてモーメントの力の成分はモーメントの腕をどのように考えるかによって、その大き さは変わる。すなわち腕の長さを基礎円半径にとれば力の成分は作用線上の力つまり、歯 面に対する法線力Fnになる。またピッチ円半径にとればピッチ点での接線力Fpになる。
その状態をそれぞれ図4.1-2、図4.1-3に示す。ここで駆動モーメントとそれぞれの力の関 係は
M
n1 F r
n b1 1, M
p1 F r
p1 1 ・・・・・・・・・・・・(4.1-.4) さらにピッチ円直径と基礎円直径の関係rb1=r1 cosαよりF
p F
ncos
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.5) なおここではM
1 M
n1 M
p1と考える。
1.2 仮想系と実態系の力の関係
前項において述べたように力の関係は2通りの考え方が可能である。ところで図4.1-2の 場合は力の作用点として、常に作用線上に現実の噛み合い点mがあるが、図4.1-3の場合、
ピッチ点で力が作用するのは、一瞬のみでそれ以外は別の点で力が作用している。したが ってピッチ点は真の力の作用点ではなく、ピッチ円筒が接触して動力を伝えていると考え た時の力の作用点で、仮想的なものである。これを仮想系と呼ぶ。これに対して現実の噛 み合いの状況を示す図4.1-3を実態系と呼ぶ」。ところで仮想系が実態系と等価であるため には、真に存在する系(ここでは作用線上を力が作用する系)において成立する条件の全 てが、仮想系においても同じように満足している必要がある。
ここで実態系において成立する条件とは静力学問題として次の3個の条件からなる。
① 力の作用点での力の平衡がとれていること
② 個々の歯車の中でのモーメントと力の平衡がとれていること
図4.1-2 基礎円で考えた力
図4.1-3 ピッチ円で考えた力
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③ 全てのモーメントの平衡がとれていること
一方、同じ力学系を取り扱っている以上、仮想系においてもこれと同じ条件が同時に満足 していることが必要となる。以下に上の条件のそれぞれについて考える。
(a) 第1の条件 まず力の作用点は図 4.1-2 の場合すなわち基礎円半径を腕としたとき
の力の作用点は噛み合い点mと両歯車の軸心O1、O2の3点であり、図4.1-3の場合すなわ ちピッチ円半径を腕としたときは仮想的な力の作用点としてのピッチ点と両歯車の軸心の 3点からなる。
そこで両図のそれぞれの場合において、作用点での力の大きさを考えると、図4.1-2にお
いてはFn、図4.1-3においてはFpが作用し、図に示すように全ての作用点で力が平衡して
いると考えることができる。従って第1の条件は満足された。なおここでの力の大きさは 両図の場合で異なるが、この大きさの違いは両方の場合でモーメントを共有していること によって、合理的である。
(b) 第2の条件 力とモーメントのバランスは図 4.1-2 の駆動側と被動側の歯車に関し
てはそれぞれ次のようになる。
Mn1 F rn b1 1, Mn2 F rn2 b2, ・・・・・・・・・・・・(4.1-.6) ここで、Fn1=Fn2より
M M
r r
n n
b b 2 1
2 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.7) 同様にして図4.1-3 に関しては
M
p1 F
p1r
1, M
p2 F r
p2 2 ・・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.8)M M
r r
r r
r r M
M
p p
b b
b b n
n 2 1
2 1
2 1
2 1 2
1
( / cos ) ( / cos )
・・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.9)つまり駆動モーメントと被動モーメントの比は両方の場合基礎円半径の比に比例する。こ れは最初に求めた伝達比に比例する関係と同じものであるが、図4.1-2、図4.1-3両方の場 合に個々の歯車のモーメントバランスから求められることを示した。
(c) 第3の条件 この条件は軸受の反力から発生するモーメントの平衡条件の検討を要 求している。ここで両図の場合では軸受反力の大きさ、および方向は互いに異なるが、2 個の軸受反力で発生するモーメントの大きさは図4.1-2では
Mn3 Fnb(rb1 rb2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.10)
また図4.1-3では
M F r r
F r r F r r
M
p pb
pb
b b n b b
n
3 1 2
1 2 1 2
3
( )
cos ( ) ( )
・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.11) 上の2式から、図4.1-2の場合も図4.1-3の場合も軸受反力によるモーメントは互いに等78 しいことがわかる。
1.3 3モーメントバランス
系に作用する3個のモーメントM1、M2、M3の和を求める。まず図4.1-2に関しては
0
) 1 (
) 1
(
1 2 1 1
2 1
1 3 1
2 1
3 2
1
b nb
b b nb b
b n
n n n
n n
n n
n
r F
r r F r M r
M M M
M M M M
M
・・・・・・・・・(4.1-.12)
また図4.1-3に関しては上のMn3とMp3の関係式(4.1-11)を用いることによって
M
p1 M
p2 M
3p 0
・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.1-.13) すなわち両方の場合とも3個のモーメントの和は0であり、平衡条件は成立していること がわかる。この関係を遊星歯車機構のモーメントバランスという。回りくどい検証をしたが、以上のことから仮想的な力の作用点(ピッチ点)をもつ仮想 系で力を考えても、実態系と同じ力の現象を取り扱えることができる。遊星歯車機構系で は仮想系を用いて議論することのほうが多いので、あえて詳述した。
上述の系は一対の歯車を対象として力の関係を考察したが、この系はそのまま基本遊星 歯車機構の力の関係そのものである。基本遊星歯車機構では一方の軸心はキャリアに支え られて他の軸心の廻りを回転することができるが、力の関係は軸心の回転の有無とは関係 なく保たれる。
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2 遊星歯車機構のモーメント
2.1 2K-H 型でのモーメントの関係
(1) 遊星歯車内の力の平衡
基本遊星歯車機構で構成される最も簡単な機構 2K-H 型の力の作用状態を考える。ここ で力の方向としてモーメントに関しては時計方向、力に関しては左から右に向かうものを 正として考える。
A O B