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のり付け法の応用

ドキュメント内 Microsoft Word - E-1-15v3.1.doc (ページ 36-49)

第2章 遊星歯車機構の速度の関係

2.3 のり付け法の応用

28 S m

S m

S

c

S m + Sc

S = 0m S = 0

c

Sc (a)

(b)

(Ⅰ) (Ⅱ)

図2.2-2 運動の重ね合わせ

ここで1秒という時間を考えないで、その間に移動した距離だけを考えれば、人は車内 ではSm移動し、電車はSc移動したので、車内で歩いた人の地面に対する移動距離は 全体としてその和Sm+Sc となる。上で述べた直感はこの様な思考プロセスが裏にある。

そして遊星歯車機構ののり付け法はこの考え方からきている。

すなわちキャリアを固定して考えたのは、電車が止まっていて、人の動きだけに注目し た状態である。またキャリアを固定したことの意味はこの状態では遊星歯車機構が通常の 歯車列と同じ状態になり、歯車相互の運動が理解しやすいことからきている。そして歯車 全体の動きを止め、つまりのり付けして全体を動かしたのは人を静止さして電車の動きだ けに注目していることに相当する。ここでは電車とキャリアが同じ役割をしている。

なお上述の論理の中で重要な問題を脇に置いている。つまりここでは時間を無視して距 離だけを考えたことである。実は動きを分解した図2.2-2(b)の状態も(a)の状態も同 じ時間1秒の間に起こった事柄である。また(b)の状態で(I)の状態の後に(II)の状 態が起こったと考えているのでもない。(I)、(II)の状態は同時に起こっている。そし てこの状態は現実の動きではなく仮装の状態である。

したがってここに時間を持ち込むと地面に対する人の速度は秒速Sm+Scであり、電車の 中での人の速度は秒速Smである。これは電車に対する人の相対速度である。当然のことな がら電車の地面に対する速度は秒速Scとなる。

29

係を求める。手続きは前の場合と同じであり、表2.2-2の結果が得られる。

内歯歯車i

Z Z Z

s

i p2

Z

p1

太陽歯車s

遊星歯車1 遊星歯車2

キャリアH

図2.2-3 ラビニオウ型

表 2.2-2 ラビニオウ型ののり付け法

太陽歯車s 内歯歯車i キャリアH

キャリア固定 ns z

zsn

i

s

のり付け z zs n

i

sz

zsn

i

sz

zs n

i s

計 (1z ) zs n

i

s 0 z

zs n

i s

速度変換比 1 0

z z z z

s i s i

1

表2.2-2から内歯歯車を固定したときの伝達比は次のようになる。

n n

z z z

i s

s

i s

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.2-2)

これを先の2K-H型の結果(式(2.2-1))と比較するとZsの符号が変わったのと同じ形をも っていることに気がつく。このことは2段の遊星歯車によって回転方向が逆転したことに よるもので、ここでは遊星歯車の歯数は無関係である。

(2) K-H-V型の場合(例題2)

図2.2-4のK-H-V型機構において内歯歯車を固定したときのキャリアと遊星歯車の回転

状態を考える。まずキャリアを固定した場合、内歯歯車をniで動かしたとする。このとき の遊星歯車は通常の歯車列と同じ関係で内歯歯車から回転運動は伝達される。ここで遊星

30

歯車の軸心は内歯車の軸心とずれた位置にあるが、自在継ぎ手によってつながれているた めに、遊星歯車の回転運動はそのままV軸に伝達される。

V K

H

Z

p

Z

i

図2.2--4 K-H-Vの例

表 2.2--3 K-H-Vののり付け法

内歯歯車 遊星歯車 キャリア

キャリア固定 ni

z

z

i

n

p

i

のり付け ni ni ni

計 0

( z )

z

i

n

p

 1

i ni

速度変換比 0

z z

z

i p

p

内歯歯車の回転を0にするためののり付けには内歯歯車の回転を同じ大きさだけ逆転す ればよい。このようにして得られた表 2.2-3 の計欄の遊星歯車の回転(zi/zp-1)niは自転 であり、このときのキャリアの回転(-ni)は公転である。またキャリア固定の時の遊星歯 車の回転(zi/zp)ni はキャリアに対する相対回転であって、この回転は自転による回転では ない。このようにして得られたキャリア軸Hと遊星歯車軸Vの間の伝達比は次のようにな る。

n n

z z z

v H

i p

p

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.2-3)

(3) 3K型の場合(例題3)

のり付け法を図2.2-5に示す3K型に適用した例を考える。ここで太陽歯車2が固定され ている場合には次のようになる。計算方法は上述と同じであり結果だけを示す。

ここで表2.2-4 の計欄の内歯歯車とキャリアの回転数をそれぞれ ni、nとして太陽歯車 1との伝達比を抜き出して書き直せば。

31 n

n

z z

z z z z z z z z z z z z z z z z z z

i s

s i

s p p s s p p s

s p s i p

i p s s p

1

1 1 2

1 2 1 2

1 2

1 1 2 2

1 2 1 2

1

 

  

( )

( )

( )

( )

・・・・・・・・・・・・・・・(2.2-4)

Z Z

Z Z Z

s1 s2

p2 i p1

太陽歯車1 太陽歯車2 内歯歯車

図2.2--5 3K型

表2.2-4 3K型ののり付け法

太陽歯車1 太陽歯車2 内歯歯車 キャリア キャリア固定 ns1 z z

z zs p n

p s s 1 2

1 2

1z

zs n

i 1 s

1

のり付け z z z zs p n

p s s 1 2

1 2

1z z

z zs p n

p s s 1 2

1 2

1z z

z zs p n

p s s 1 2

1 2

1z z

z zs p n

p s s 1 2

1 2 1

計 (1 1 2)

1 2

z z 1

z zs p n

p s

s 0 (z  )

z

z z z z n

s i

s p p s

1 1 2 s

1 2

1z z

z zs p n

p s s 1 2

1 2 1

速度変換比率 1 0

( )

( )

z z

z z z z z z z z

s i

s p p s s p p s

1 1 2

1 2 1 2

1 2

1

z z z z z z z z

s p p s s p p s 1 2

1 2 1 2

1 2

1

( )

上式の分子及び分母の括弧内は機構の歯数の関係を考慮すれば、次のように変換できる19

19 この結果は後に述べるKutzbach線図の結果と比較するために用いる。

32 z z z z z z z z z z

z z z z z z

z z z z

s p i p s p i p s s

s p i i p s

i s p s

2 1 2 2 1 1 1 2

2 1 1 1

2 1 1

    

   

  

( )

( ) ( )

( )( )

・・・・・・(2.2-5)

 

 

 

z z z z z z z z z z

z z z z z z z

z z z z

p s s p p s p p s p

p p s p p s p

p p p s

1 2 1 2 1 1 2 1 1 2

1 1 1 1 2 1 2

1 2 1 1

    

   

  

( )

( )

・・・・・・・(2.2-6)

したがって

 

n n

z z z z z z

i s

s i s

i p p

1

1 2

2 1

 

( )

・・・・・・・・・・・・・・・・(2.2-7) n

n

z z z z z z

H s

s p

p s p s

1

1 2

2 1 1 2

  ・・・・・・・・・・・・・・・・(2.2-8)

33

3 速度ベクトル線図(Kutzbach 線図)

3.1 ベクトル線図のルール

一対の歯車のピッチ円周速度は互いに等しい。すなわちピッチ点での周速に着目すれば、

かみ合っている両方の歯車はこの周速を共有している。このことを基本にして歯車の速度 ベクトル図を描くことができる。これをKutzbach線図とよぶ。最初に通常の一対かみ合い 歯車について考える。例えば図2.3-1は基本遊星歯車機構でキャリアが固定された状態を示 すが、この状態は平歯車の通常のかみ合い状態である。ここで入力角速度がω1でピッチ円 半径r1の歯車が回転していたとする。この場合は1段の通常の歯車列であるから、歯車間 の角速度の比はピッチ円半径の比に逆比例する事は既にわかっている。これをベクトル図 として表すための手続きは次のようになる。

p

(i)

r r

1

2

O O

1 2

v c ω

1 1

ω

1

ω

2

A

A

2

1

(ii)

(iii)

B A

2

指動線

側面概念図 正面概念図と

線速度ベクトル図 角速度(ω)ベクトル図

ω

1

ω

2

2 1

B'

A' A' A'

(a)

(b)

図2.3-1 一対かみ合いのベクトル図

(1) 線図の描き方

適当な縮尺によって垂線上に線分 O1O2を要素1、2の軸間距離に等しくとる。そして O,Oを中心とする要素1、2のピッチ円を描いてピッチ点pを定める。またこれとは 別にO1O2に平行な線分ABを図の適当な箇所に引いておく。次にABと直角に与えられた 角速度ω1に相当するベクトルω1をAを始点としてとり、そのベクトルの先端A1とBを結 ぶ。この線分BA1に平行でO1を通る線を引く(これを指動線と呼ぶ)。さらにこの指動線 とpから引かれた水平線との交点cを先端とするベクトルを求める。このベクトルが要素 1、2のピッチ点における線速度vを表す。

線速度vは要素1、2が共有するので、ベクトルvの先端cとO2を結ぶ指動線O2cを引 く、さらにこの指動線と平行にBを通る線を引いて、線分AA1の延長上に交点A2を求めれ ば、AA2は要素2の角速度ω2を与える。ここでv/r1は角速度ω1であるが、この線図上 では∠c O1pの正切(tan)である。このことは△ pcO2に対しても成立する。すなわちtan

∠c O2pは要素2の角速度ω2を表す。従って△ A1 BAと△ A2 BAにおいて 共通の高さB

34

Aを持ち、角∠c O1p 、角∠c O2p をもった三角形の対辺はそれぞれの角の正切に相当する ので、 AA1、AA2で角速度を与えることができる。この関係を数式で表すと次のようにな る。

(2) 線図の示す角速度の関係

△ AA2Bと△pcO2は相似形、また△ AA1Bと△pcO1も相似形の関係から

pc pO

AA BA

pc pO

AA

1

BA

1

2

 , 

2 ・・・・・・・・・・・・・・(2.3-1)

上式よりBA、pcを消去すれば

pO pO

AA AA

r r

1 2

2 1

1 2

2 1

 ,  

・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3.-2) 上式(2.3-2)の右側の式は線分の関係を表す左側の式を、ピッチ円半径、角速度の関係でで 示したものである。ここで(2.3-2)式のωの比を絶対値で表しているのは線分がスカラー量で 表されていることによる。しかし図2.3-1からわかるように角速度ベクトルω1、およびω2

は互いに逆方向を向いているので回転方向としては互いに逆向きであることが理解できる。

また線分で表される角速度ω1、およびω2は既に知っているピッチ円半径に逆比例している ことを示している。

(3) 指動線の符号

ここでベクトルωを正切で表すとき、その符号を決めておく必要がある。それには次の ように定める。すなわち右肩上がりの指動線が垂線となす角の正切の場合を正、右肩下が りの指動線の場合を負と定める(図2.3-1)において指動線O1Cが垂線と交わる角の正切が正

(tan∠ PO1C>0)、また指動線O2Cが垂線と交わる角の正切が負(tan∠PO2C <0)

である。

α

右上がり 指動線

tanα>0

β

tanβ<0 右下がり 指動線

図2.3 2 指動線の正方向

このベクトル図を描くときは図 2.3-1 にも示したような系の側面のスケルトン図を描い ておくと系の状態が理解しやい。このスケルトン図は図 2.3-1 (ii)のような機構のスケルト ン図でもよい。そしてスケルトン図において各歯車の軸心およびピッチ点から水平線を引 き出し垂線との交点を求めるのが第1の手順である。

35

(4) ωの長さと正方向の決め方

ところでω1が最初に与えられているとき図 2.3-3に示すように線分ABを単位長さに、

また伝達比を求めたいときにはAA1、または AA2を単位長さにとると便利である。このよ うにすれば図示された線の長さを測ることによって、それぞれの速度の大きさおよび速度 間の関係を決定することができる。

ここで示されている図はベクトル図であるのでベクトルの正方向を決めておく必要があ る。角速度ベクトルは右ねじ系を使い、側面スケルトン図においては常に左方から見るこ とにすると、側面スケルトン図における角速度の正方向は左方から見て時計方向の回転が 正となる。そして正面図は側面図の左側から見た図を示していることにすれば、正面図で の正の回転方向は時計方向の回転となる。

1 A 1 B

A' A

図2.3-3 単位長さの取り方

(5) ωベクトル図の配置

正面図での正の角速度を上述のように決めれば、線速度ベクトル図上での速度ベクトル の正の方向は左から右に向かう方向にとるのが妥当である。ここでωベクトル図は図2.3-1 (iii)-(b)においてB点の下方にωベクトルを描いた。これは後述する遊星歯車機構の線図を 描くときの描きやすさを念頭に入れて示したものである。しかし角速度ベクトルの方向を 考慮すれば、図2.3-1(b)を反転させた同図(a)に示す関係が側面スケルトン図での角速度との 関係と正方向が整合する。ここでは作図上の便益を考え図2.3-1 (iii)-(b)を採用したので、

この部分では角速度の正の方向は逆になり、右から左に向かうベクトルを正とする。多少 の紛らわしさがあるが、この線図でのωベクトル図を補助的役割にとどめておけば、考察 する上での錯誤は大きくないと考えている。もしこの部分で間違いが起こる可能性のある 場面があれば、図(a)にもどって考えればよい。

以上の規定によって要素2の回転方向を見てみると、要素2は要素1の回転方向とは逆 であると同時に負の回転方向で運動していることを示している。

ここで線図を描く上での注意事項を次にまとめて記す。

(6)

線図を描く上でのきまり

(図 2.3-4)

① スケルトン図(側面、または正面)を描くこと

② 角速度線図(iii)では線分AB、AA1またはAA2のどれかを単位長さにとること。

③ スケルトン図の左から見て時計方向回転を正とする。

④ 角速度線図(iii)では右から左に向かうベクトルを正回転とする。

⑤ ピッチ線速度図(ii)では線速度ベクトルの正方向は左から右に向かう。

ドキュメント内 Microsoft Word - E-1-15v3.1.doc (ページ 36-49)