第 2 章 中国における障害のある人びとの実態
4.2 障害者連合会の役割
障害者連合会は、中国政府が設立し、支援するものである。これは1988年3月以降、
多様な障害者のための唯一の組織であった。ここでは、まず中国の障害者組織の歴史展開 を述べ、また障害者連合会の現状と成果を検討し、連合会に対する批判や課題を提示する。
4.2.1 障害者組織の展開
4.2.1.1 初期(1949〜1966年)
新中国政府が成立した当初、多くの障害のある人びとは、街で物乞いなどをすることに よって暮らしていた。また、戦争によって障害者になった軍人、高齢者、孤児なども数多 くいた(中国障害者連合会公報1996: 505項)。新政府はこれらの人びとを救済するため に、「収容施設」と「生産労働の場所」を提供した(真殿 2004)。具体的には、農村部 では障害のある人びとは土地と生産用具を分配され、都市部の人は生産労働の場所に参 加し、小型の手作業団体などで作業を行い、その後福祉工場に発展した事例もある。家族 がいない障害のある人や、子どもや高齢者などは、それぞれ社会福祉施設、児童福祉施設 および高齢者施設に配置された。この時期の障害者福祉は主に政府が主導し、障害者組織 はトップダウンの形で行われていた(葛 2015)。1953年に「中国盲人福利会」が初めての 障害者組織として成立し、その後1956年に「中国聾唖人福利会」が設立されたが、それ らは障害のある人の生産活動および福祉事業へ従事する人員を養成することを目的とし ていた。
4.2.1.2 停滞時期(1966〜1976年)
1960年代半ばからおおよそ10年間の文化大革命によって、中国の各社会福祉も批判の 対象となり、障害者組織はこの時期に停滞状態に陥った。
4.2.1.3 成熟期(1978年〜20世紀末)
1978年に国務院の批准を受けた後、もとの障害者組織が復活し、1984年に「障害者福 利会基金会」を設置した。この基金会は、全国のすべての障害のある人びとを対象とする 福祉団体であり、さらに1988年に障害者事業を推進するために中国障害者連合会(CDPF)
が設立された。この連合会は省(100%)、地・市(95%)、県(73%)に地方組織があ る。連合会は半官半民の全国団体としてサービスの提供を行い、行政にも関与している。
専門家によるサービス提供団体ではあるが、障害のある人びとを代表する組織にもなっ ており、盲人協会、聾唖協会、身体障害者協会、精神障害者協会が加入している(国別障 害関連情報中華人民共和国 2002)。
連合会が設立された後、障害のある人の社会への平等な参加が強化され始めた。1990年 に、全国人民代表大会常設委員会は、中華人民共和国の障害者の保護に関する第一の基本 法である「障害者保障法」を改正した。中華人民共和国国務院は、教育(1994年、2017年 改定)、雇用(2007年)、予防・リハビリテーション(2017年)などの様々な障害規則 を発表した。これらの法律や政策は、障害のある人のための政府による基盤である。
計画経済の時代には、中国政府は市民社会の成長を制限するために、社会団体を厳しく 管理した。そのため、この時期のほとんどの社会団体は政府により設立された。例えば、
大規模な社会団体である中国共産主義青年団、婦女連合会、総工会などは、中国政府の拡 張された支部だと考えられる。中国障害者連合会もこの中の政府主導の社会団体の1つ である。これらの社会団体は様々な種類の職場と提携させられ、本質的に独立した社会組 織ではなかった。
4.2.1.4 分化期(20世紀末から〜)
改革開放以来、中国の経済体制や組織構成は大きく変化した。中国政府が「小政府、大 社会」というスローガンを提示した後に、元々は政府部門が主導していた多くの機能やサ ービスの権限を市民組織に移行し、ある範囲で市民組織の活躍を促進するようにした。障 害者連合会の元代表である鄧朴方は、「国家の管理体制の改革に伴い、小政府、大社会の トレンドに従って障害者事業を進める」ことと、「障害当事者の声を重視し、当事者団体 の役割を果たすべきだ」ということも指摘している(鄧 2008)。
2008年に障害者権利条約が批准され、その後いくつかの民間の小さな障害者団体(以 下「DPO」と略す)が出現し始めた。その要因は2つある。1つは一部の国際非営利団 体が、障害者権利条約を推進し、最も早くから権利擁護を促進した障害のある人びとに 資金を供与したことである。もう1つは中国政府がDPOの管理の政策を緩和したことで ある。DPOは、他のNGOのように中国政府からの資金支援を受けることができず、政 府に合法的に登録することも依然として困難であったが、多くの未登録の組織は権利条 約、法律、政策に関する訓練等の「隠されたアドボカシー」32を実行できるようになっ た(Zhang 2017)。
この一連の影響で、中国の障害者組織は、政府主導の障害者連合会と民間の障害者団体 という二つの種類で展開されている。
4.2.2 障害者連合会の現状
1987 年に設立された障害者連合会は、全国的に展開され、政府の方針に基づき、中国 の障害者事業を推進している。1995年から各地に障害者連合会の組織建設を促進し、「省」、
「市」、「県」という3つのレベルの組織が形成されている。また、2000年までに、全国 における31の省(自治区、直轄市を含める)、384の市(地級市を含む)、2800以上の 県(県級市、区が含まれる)、95%以上の郷鎮(街道)および一部の大規模・中規模の政 府部門、大部分の村委員会、福祉企業等に障害者連合会を設置することが達成し、従来の 民政部で管理された障害者事業を変革し、主導権を握るようになった33。各地方の級別に おける連合会の発展状況は表2.20の通りである。
表2.20 各級連合会の発展状況
出典:『中国障害者事業発展報告(2018)』に基づき筆者作成 年
級別
1996
(個)
2000
(個)
2005
(個)
2010
(個)
2015
(個)
2016
(個)
省 99 129 141 155 158 158 地市 341 396 359 359 359 360
県 2819 2788 3089 3073 3069 3071
郷鎮(街道) 49951 45133 41706 40041 40063 40055
村 -- -- 382944 529349 518569 516080
コミュニティ -- -- 62052 74285 67718 68312
現在の障害者連合会は、機能からみると、研究部、権利保障部、組織連絡部、人事部、
政党委員および各地方政府の関連部署、各種協会などに分けられる。一方、障害種類から みると、視覚障害協会、聴覚障害協会、身体障害協会、知的障害協会、精神障害協会およ びその家族の協会に分類される。そして、障害者連合会の各機能を果たす人員配置の面で は、政府の方針で各部署に障害当事者の割合が 15%以上になるように規定されている。
近年におけるこの割合を満たす各級連合会の状況は表2.21の通りである。
表2.21 規定された障害当事者が管理職につく割合を満たす各級の状況
出典:中国障害者連合会による『中国障害者事業発展統計公報』2013〜2017年のデータ に基づき筆者作成
障害者連合会の活動資金は、主に財政部、国家宝くじ基金、障害者福祉基金、および各 事業部門の賛助から得られるものである。中央政府の方針は、「政府からの補助より、地 方からの投入を主とする」としている。つまり、政府からの財政援助はあるが、政府に頼 りきりではなく、様々なルートから資金を集めている。近年、中国の経済的実力の向上に 伴い、政府は社会福祉に注目し、障害者事業に対する資金投入も増えている。
表2.22 全国障害者事業への投入資金の状況
年 投入額(億元)
2012 101.37 2013 121.06 2014 145.85 2015 395.14 2016 460.60
出典:2012年〜2016年の中国財政部公共財政支出データに基づき筆者作成 年
級別
2013 2014 2015 2016 2017
省(%) 93.8 97 97 96.8 93.5 地市(%) -- -- 68 69.4 67.5 県(%) -- -- 53 53.3 52.7
4.2.3 障害者連合会の成果
中国における障害のある人びとの権利はまだ十分に確保されていると言えないが、近 年、障害者連合会の一連の活動により、障害のある人びとの各権利の確立や、政策法制の 施行、および社会における障害に対する意識の向上に大きな役割を果たした。障害者連合 会が設立された後、障害のある人の社会への平等な参加が強化され始めた。2008 年に、
全国人民代表大会常設委員会は、中華人民共和国の障害者の保護に関する第一の基本法 である「障害者保障法」を改正し、中華人民共和国国務院は、教育(1994年、2017年改 定)、雇用(2007年)、予防・リハビリテーション(2017年)などの様々な障害規則を 発表した。これらの法律や政策は、障害のある人のための政府による基盤である。近年に おいて障害者連合会が参与した法律体系や政策明文の実施状況を以下の表2.23に示す。
表2.23 近年障害者連合会が参与された政策制定の数量
2012 2013 2014 2015 2016 2017
障害に関連する法律、政策の 参与
30 31 18 13 19 21
障害者権利保障に関する規定 の参与
706 543 427 338 285 217
出典:中国障害者連合会による『中国障害者事業発展統計公報』2012〜2017年のデータ に基づき筆者作成
障害者連合会は障害政策や規定が実施された後、具体的にどのような効果や課題があ るのか、障害のある人びとが一番関心を持っている問題は何かについて調査し、定期的に 政府に報告している。また、障害のある人びとのニーズを把握するために、障害のある人 のためのホットラインサービスとカウンセリング窓口を開設し、権利の保障という役割 を果たしている。その他、2017年に連合会は8回の障害類別のニーズに関する調査研究 を行い、全国的人大代表34または政協委員に7件の提案を行った。
このような障害者連合会に対し、多くの研究者はそれを「政府主導の非政府組織」と呼 んでいる(Zhang and Guo 2012: 221–232)。障害者連合会の主な取り組みは、障害のある 人のためのリハビリ・教育・雇用・社会保障・貧困緩和・福祉サービスなどである。また、
障害者連合会のリーダーの任命、資金調達および意思決定は、最終的に政府によって決定 法律
・制定
年